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21. チート? ……大目に見て

 

 私の初仕事。レオの群れ討伐、依頼開始だ。


 それと依頼をこなすのはもちろんだけど、せっかく一人になったところだし試したいことがいっぱいあるんだよね。

 例えば魔力での身体強化! 小石を砕けるほどの握力があったのは確認したけど、全身強化されてるから色々できそうなんだよ。ソフィとずっと一緒にいたから今まで自重してたんだけど。

 これはちょっとワクワクがとまらないよ。


 足取りも軽く、ビースク方面の門へと向かう。昨日この街に入ってきたときとは違う門だ。

 門番に頭を下げつつ街を出ると、こちらも目の前は街道になっていた。

 この街道をずっと道なりに行くとビースクにたどり着くという話だ。

 そしてそのビースクの村の近くの森にレオの群れが出ているらしい。


 さてっと。この辺りでいいかな。

 そろそろ門番の目も届かないでしょ。近くの魔力反応もなし!

 実験開始だ。


 まずは、ほんの軽くジャンプしてみる。

 一メートルくらい跳んだ。

 この時点で既におかしい。

 地球ならこれだけで世界狙えるんじゃない?


 少し力をいれてジャンプしてみる。

 三メートルくらい跳んだ。

 予想はしてたけどこれはヤバいね。

 特に着地の衝撃もないみたいだ。


 そのあとも少しずつ力加減を変えてジャンプしてみる。

 うん、ここまで大丈夫なら全力で跳んでみてもよさそうだ。


 思い切りジャンプしてみる。


 う、わー。


 何メートル跳んでるのか分からない。とりあえずめちゃくちゃ高い。ガザアラスの街並みがよく見える。

 これは人間辞めてるよ。


 うん、着地も問題ない。


 次にダッシュしてみる。


 速っ!!


 なにこれ、オリンピック優勝間違いなし。

 というか私もそれなりに稽古で走り込んだりしたけど、その苦労はなんだったのか。

 い、いや、その元の世界での特訓のおかげで今があると考えよう。


 そして、ここまでで体力の消費なし!

 本当に無敵じゃない? いいの、これで?

 いいよね。こんな力でもなかったら、この世界で生きていけなかったかもしれないし。


 最後に……ちょうどそばに大きめの岩がある。

 なんとなく結果は分かる気がするけど。

 えいっ、正拳突き!

 元の世界でこんなことしたら運がよくても骨折は避けられないけど。


 なんと、岩は割れましたとさ。

 うん、だよね、知ってた。拳が痛むこともないし。防御力も完璧だ。


 ふー……。

 ま、まぁ使えるものは使わせてもらうよ。

 チート? ……そうだね。でも、悪意があるわけじゃないから大目に見てほしいよ。迷惑もかけないと思うし。


 じゃあ、出発しようか。

 本当は魔法とかも試したいけど、それをやっていると時間がいくらあっても足りないからね。

 今は負債を抱えた身なんだよ。依頼達成してお金を稼ぐのが先決だ。


 移動はぴょんぴょんジャンプしながら行くことにする。

 普通に走ってもいいんだけど、疲れないとはいえ足が忙しいからね。

 ジャンプして空中にいる間は足を動かさなくていいから。


 ぴょーーーん……

 ぴょーーーん……


 速い速い。景色がどんどん流れていく。

 なんか、こんな移動の仕方をする忍者がでてくるようなアニメがあったような。


 ぴょーーーん……

 ぴょーーーん……


 途中、街道を馬車が通っていたが、近づく前に魔力反応で分かったので、街道を見失わない程度に大回りして見られないようにしておいた。多分、私のことを見たらびっくりするよね。


 ぴょーーーん……

 ぴょーーーん……


 んー、最初は面白かったけど、単調でちょっと飽きてきた。

 でもこれも仕事のためだから仕方がない。




 あ。


 村だ。多分。


 もしかして着いた? 一時間も経ってないと思うんだけど。違う村かな。

 村の裏手のほうに森が広がっている。ここがビースクなら、あの森がレオが出るという依頼の森かも。

 

 ガザアラスは石づくりの壁で街を囲っていたけど、この村は背の低い木の柵で囲っていた。

 そして村の入り口には、やはり門番らしき人がたっている。いや、門というほど立派なものがあるわけじゃないけど。……まぁ門番でいいか。

 ここがなんていう村かあの人に聞いてみよう。


 驚かせないように、門番の目の届くあたりから歩いていくことにする。

 入り口の前まで行くと門番が声をかけてきた。少し困惑しているみたいだ。


「どうした嬢ちゃん、一人か?」


「うん。ビースクっていう村に行きたいんだけど」


「ビースクならここだが。……子供が一人でなんのようだ?」


 目的地に着いてた。徒歩で半日とは何だったのか。

 それにしてもなんか警戒されてる? また私みたいな子が一人はおかしいってパターンかな。


「私は冒険者だよ。レオの群れが出たっていう森はあの裏手の森?」


「ああ、そうだが……。って、嬢ちゃんが冒険者——」


「ありがと」


 まだなにか言っていたみたいだけど、それだけ聞ければ十分だ。

 軽く走って森へ向かう。

 というか、あの雰囲気からして、またアネットさんのときみたいに止められるに決まってる。

 今回は特に村の人の討伐の許可もいらないので、納得してもらってから討伐に向かうなんてめんどうなことはしないよ。


 近づくと森の中に魔力の反応が多く感じられる。反応は三十近くありそう。

 今更だけど、人間も魔物も大なり小なり魔力を持っているってことなのかな。あと一応ほんの少しだけど馬からも感じたから普通の動物もか。

 でも、これもソフィの話と違うんだよね。ソフィの話では魔力を持つのはキングレオみたいな強い魔物だけらしい。そんなことないと思うんだけどなぁ。今度、じっくりと話してみようかな。

 それにしてもキングレオの魔力はすごかった。でも、この森から感じられる魔力は、数は多いけど一つ一つが弱いね。多分これがレオの魔力反応かな。


 そんなことを考えながら森の中に踏み込む。

 人が道具で切り倒したような木がちらほら見られる。この森で林業でもやってるのかな。それでレオが出たため仕事ができなくなって困ってる的な?


 一番近くの反応に向かっていき、視認できるところまできた。

 あれがレオか。

 確かに見た目はクインレオにそっくりだ。ただ大きさはクインレオと比べるべくもない。日本の大型犬でもレオくらいの大きさのものはいた。

 ただ、肉食らしいし、しかも群れで人間に敵対したりするとなると脅威になるね。


 それじゃ、まずは一匹群れからはぐれているあのレオを狙ってみよう。

 私に気がついていないみたいだし、魔法で遠距離攻撃でいいかな? 

 でも『風の刃』でキングレオの首を切ったとき、結構グロかったんだよね。できればやりたくない。


 とりあえず血が出なさそうな水魔法で。

 右手に水球を生み出して狙いを付けたら、勢いよく撃ちだしてみる。


 えいっ。……って速っ!


 あ。当たった。

 そしてそのまま吹っ飛んで後方の木にぶつかった。

 さらに衝撃でレオの体が弾けた! ……え、首を切るより大変なことになってるんだけど!?


 ……ええええ。

 儲けは薄そうだけど、Fランクの常時依頼にレオの納入があったから、一応死体は持って帰ろうと思ってたんだけど、これは無理だよね。死体残ってないよ。


 あ、ちなみに呪文は言わないよ。ここまで何回か魔法使ってきたけど呪文言わなくても使えるみたいだし。アレちょっと恥ずかしいしね。


 うーん、それにしも一番殺傷力のなさそうな水でこれとは。

 まぁ水球もあの速度でぶつかったら鉄の球と変わらないか。もう少し威力を弱めれば大丈夫かもしれないけど、倒しきれなかったら嫌だしなぁ。

 土魔法は水と同じ結果になりそうだし、この森で火を使うのは論外。


 じゃあ、これでどうだろう。

 次のレオを見つけて、さっきよりも近づく。今度も水球だけど、今回はゆっくり操作してレオの視界に入らない角度から、頭部をその水で包み込んだ。窒息作戦だ。

 レオは水から逃れようとしたのか走り出し、暴れまわっているが水は頭から離れない。そして十数秒後には動かなくなった。と、同時に魔力反応も消えた。倒せたみたい。あんまり意識してなかったけど死んだら魔力反応も消えるっぽいね。


 死体に歩み寄る。見た目はきれいだ。これなら文句なしだよ。『収納箱』にしまっておく。

 でもこれで倒してたら結構時間がかかりそう。三十匹くらいはいるみたいだし……。

 と、ここまで考えたところで、私を囲むようにしてレオの反応が集まってきてることに気がつく。周りの魔力反応に注意を払ってなかったため、気がつくのが遅れた。今倒したレオが暴れていた音を聞きつけてきたのかな。


 そしてその中の一つ、私の背後の反応が急接近してくる。


 振り向くと、大きな口を開きもう目前まで迫ってきていた。

 でも、遅い。いや、これは、レオが遅いわけじゃない? コマ送りまでとはいかないけど、レオの動きの一つ一つがよく見える。クインレオとかキングレオに殺されるかと思ったときと同じで、時間の流れが緩やかになる感覚だ。

 ふと、動体視力が卓越している野球選手は、ピッチャーが投げてからバットに当たるまでのボールの回転数が見えるという話を思い出した。でも、私にはそんな動体視力なかったはずだけど。まぁいいか。それよりも。


 カウンターでレオの顎を突き上げるように拳をたたきこむ。

 こんなによく見えるなら、タイミングを合わせるのなんて簡単すぎる。

 レオは軽々と吹っ飛んで地面にたたきつけられ、動かなくなった。

 魔力反応が消える。


 と、死体を回収にいく間もなく、私を囲んでいたレオたちが一斉に襲い掛かってきた。


 鋭い爪を持つ前足を振り上げてくるが、逆にその足を掴み、勢いを利用して背後から迫ってくる別のレオに投げつける。

 左右から同時に挟み撃ちにしてこようとするが、軽く後ろに跳んで躱し、レオ同士がぶつかったところに反撃をいれる。


 うわー、これは楽勝だ。攻撃は易々と見切れるし、ちゃんと魔力反応を意識してれば死角からの接近も問題ない。後ろに目がついてるみたい。

 そういえば一対多の稽古はきつかったなぁ。少し懐かしく思う。


 しばらく襲ってくるレオの群れをひたすら迎撃していたが、それも数分でぴったりと止まった。

 私の周囲にはレオの死体の山が。うぅ、これはいい気分はしないな。でも有用な素材であり、私にとっては資金源だ。ちゃんと回収しなければ。

 でもまだ終わっていない。まだ十匹くらいの反応が残ってる。すぐ近くに固まっているようだけど、今のところ向こうから襲ってはこないみたい。


 さて最後の仕上げだ。

 さっきみたいな接近戦はわりと楽しかったけど、ほとんど一匹ずつ相手をすることになるから、それなりに時間がかかるしめんどくさいな。


 んー、それじゃあ……。


 十個の水球を空中に生成する。


 一匹ずつだと時間がかかるなら、まとめてやればいいんだよね。


 水球がレオにそれぞれ襲い掛かる。


 しばらくするとレオの魔力反応は全て消えた。

 もうこの森から反応は感じない。


 一件落着、依頼達成だね。


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