13. はじまりのまちに着いたよ
馬車に乗っているだけというのも、そろそろ飽きてきた。
ぼちぼち日も傾き始めている。
今日中には街に着くっていう話だったはずだけど——
そんなこと考えていたとき、タイミングよくパブロから声がかかった。
「おーい、お前ら。もうすぐ着くぞ」
身を乗り出して前方を見ると、遠くに巨大ななにかが見える。
あれは……街の外壁? この感じだと街を取り囲んでるのかな?
中世の外国の街みたいだな。映画とかの舞台としてでてきそうだよ。
外壁が見えてから街に着くまではすぐだった。
街の入り口は門になっていて門番らしき人が立っている。
不審人物は通さなかったりするの? 私、異世界から来たけど大丈夫?
それと、なんとなく予想はしてたことなんだけど。
門番も含めて、街の中から無数の魔力反応が感じられる。
つまり——人の位置がまるわかり! プライバシーもなにもあったもんじゃないよ!
でも私も特に意識してないのに、これはつらい。オンオフ機能もなさそうだし、慣れるしかないのかな。なるべく気にしないようにしよう。
門番がパブロに声をかける。
「パブロさん、お帰りなさい」
「おう。あと二つほどでかい荷物も乗ってるけど一緒に通るぜ?」
「?」
「パブロ、あなたねぇ……」
ソフィがすばやく荷台から降りた。
私もそれに倣って降りる。
私たちに気がついた門番は、驚きの表情を浮かべた。
「ソ、ソフィアさん!? ご無事だったんですね! タイロンさんたちと一緒に帰ってこないから心配したんですよ」
「ご心配おかけしてすみませんでした。少し事情があって分かれて行動していたんです」
「いや、本当によかったです。しかも冒険者ギルドから、この街道になんとクインレオがでたという報告もあって、余計に心配になってしまいましたよ。いやぁ、よかった」
本当に心配していたようで、何度もよかったと言いながらしみじみと頷いている。
さすがソフィ、街の人からも好かれているんだね。
クインレオのことは、ソフィの仲間が報告したのかな?
「……それで、そちらの子供は?」
門番がようやく私の存在を思い出したかのようにソフィに尋ねる。
……小さいから気がつかなかったわけじゃないよね?
「この子はリコ。身分証を持っていないんですけど、身元は私が保証します。街へ入れてもらえませんか?」
「そうですか。もちろん高ランク冒険者でこの街に貢献してくださっているソフィアさんがそうおっしゃるのであれば構いませんが」
「ありがとうございます。ちょっとわけありなんです。では通らせてもらいますね」
ソフィのおかげで私も無事通れるみたいだ。……え、ソフィすごくない?
ソフィはそのまま悠々と門を通過するので、私もそれに続く。門番は私のことを不思議そうに見ていたけど、結局何も言われなかったので、軽く頭だけさげておいた。
ガザアラス。
私にとってはこの世界で初めての街だ。仮に私が主人公だとして、RPG風に言うなら「はじまりのまち」ってとこかな。
街の中の印象も外壁を見たときに感じたのと同じで、そのまま中世の外国って感じだ。
改めて私の常識とはかけはなれた世界に来てしまったことを実感する。
そしてパブロとはどうやらここでお別れらしい。
「今回は助かったわ。一つ借りにしておくから、なにかあったら言いなさい」
「はっ、この程度で貸しなんて恩着せがましいことできっかよ。そんじゃあな。リコもまたな」
「うん。ありがとう」
そのままパブロは馬車に乗り込むと街へ溶けていってしまった。
いや、別れのノリ軽いな。
そしてパブロは最後までパブロだった。貸しにくらいしておけばいいのに。
ただ、なんだかんだ言ってもソフィは受けた恩は覚えていそうだよ、なんとなく。私も忘れないようにしよう。
「さ、私たちも行きましょう」
パブロとの別れの余韻など全くないようにソフィが声をかけてくる。
「行くってどこに?」
「私がいつも使わせてもらってる宿屋。食事もおいしいし、お風呂もついてるしおすすめよ。リコもそこに泊まるといいわ」
お、お風呂……!?
この世界にもあるのか!
いやー、よかった。もしなかったら、いずれ自分で作るくらいのこともチラッと考えてたよ。
それにしても、ソフィも宿屋に泊まるのは予想外だった。
「ソフィ、この街に住んでるんだよね? 自分の家はないの?」
「ないわよ。冒険者は仕事で街から出てることも多いからね。私には必要ないわ。もちろん自分の家を持っている冒険者もいるけどね」
「ふーん? そうなんだ。……あ。でも宿屋に泊まるにしても私お金が……」
ヤバい。忘れてた。
冒険者になってお金を稼ぐとは決めたけど、今現在の所持金ゼロ問題が解決したわけじゃなかったよ。
結局、キングレオを売るって案もなくなったし、どうしよう。
「ここまできてなに言ってんのよ。数日分ぐらい私が前払いしてあげるわ。リコが冒険者になってお金を稼ぐにしても、さすがに今日登録して依頼をこなしてってのは無理よ。もうじき暗くなるしね」
「えっと。それは……」
お金を貸し借りした瞬間から対等な友達ではなくなるみたいなことを聞いたことがある。友達なんていなかったから本当かは知らないけどね。
ソフィが友達かという点については疑問が残るけど、それでもお金を出してもらうのはかなり抵抗がある。
「あー、もうめんどうくさい子ね。命を助けてくれたお礼とでも思ってくれればいいわよ。もしそれも嫌っていうなら貸しってことにするから」
命を助けられたのはお互い様だ。
私だってソフィがいなければクインレオに食い殺されていた。
でもやっぱりお金をすぐに工面するのは無理そうだよね。
ここは仕方ないか。
「……うん。じゃあ借りておくことにする。ありがと」
「よろしい。じゃ行きましょう」
私たちはようやく宿屋へ向けて歩き出した。
書きためを投稿するのに、こんなに時間がかかるとは思わなかったです。
いざ投稿しようと思って最終確認すると、修正したい箇所が出てくる出てくる……。
お付き合いいただける方は、ぜひ気長にお待ちいただければと思います。
今日はもう一話、夜に上げる予定です。




