表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

第一話

「新入生の皆さんご入学おめでとうございます……」


 4月、ついに始まる高校生活。

 よーし今日から高校生だ。三年間楽しむぞー!ってことはなくさっさと帰ってゲームしたいしか頭にはなかった。


 長々と続く先生の話。

 早く終わってくれないかなーと欠伸をする。


 ぼーっとしてると後ろから男子の話し声が聞こえる。


「なぁ!あの人可愛くね?」


「ほんとだ。どこ中なんだろ?」


「俺あの子と同じ中学だけど話してんの見たことないぜ。」


「え?じゃあどうすんの?」


「なんかスケッチブックを使うらしい。」


「…は?なんか…変わった子なんだな…」



そんな会話が聞こえてきた。

まぁ女子が苦手な俺には縁のない話だな。

あー早く入学式終わらないかなー。




-------------------------


 なんか…すごい形相で固まってる人がいる。


 高校生活が始まり数日後、俺は昼飯を買いに購買に来ていた。

 売られてるパンを目の前に店員さんに何を買うのか聞かれているのだろうが、びしっと固まり動かない。


 購買のお姉さんもこちらをちらちらと見て目で助けを訴える。

 いや俺にどうしろと…?


 これ俺が動かないとずっとこのままだよな…。

 覚悟決めるか。


 俺は一つ大きく深呼吸して、一歩踏み出す。彼女のすぐ隣まで近づいて、横から声を掛けた。


「木下さん、だよね…?パンを買いに来たの?」


 彼女の名前は木下さん――関わったことがあるわけでもないし、下の名前までは知らない。

 ただ多分入学式で後ろの男子が喋っていた子はこの子のことだと思う。


 俺に気づいた木下さんは目だけをこちらに向けた。

 そして俺に小さな紙を渡した。


「クリームパンとあんパンを一つ…。これを買えばいいのか?」


 彼女はほんの少しだけ小さく頷いた。


「じゃあ彼女にクリームパンとあんパンを。俺にカレーパンとメロンパンください。」


 やっと状況が動いたことにお姉さんもほっとして、俺たちからお金を受け取りパンを渡した。



 もらったパンを持って、俺はそのまま回れ右――教室へと向かって歩き出した。早くしないと昼飯の時間が無くなっちまうからな。



「お前もさっさと教室戻ってパン食べろよ。授業遅刻するぞ」



 俺の言葉を受けて、彼女はコクリと顔を上下に動かした。


 この一連の出来事に対し、木下さんがどういう風に思ったのか、俺にはわからない。だって彼女は喋らないし。


 でも女子を目の前にしていたのに気は楽だった。

 喋らない木下さんは意外と俺にとってはいい相手かもしれない。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ