第52話 ミチトの生み出す無限術人間。
ミチトはシヤを呼んで自身の針を貸すとシーシーと共に術人間になっていない4人をロエスロエから解放させる。
術人間にされた3人はロエスロエの影響や壊れた心から治す為にミチトの術人間に作り替えた。
そしてヒノとヤオに任せる。
ヒノとヤオは22番にした事と同じように風呂に入れて暖かい食事と洋服を用意して母と呼んでと言いながら抱きしめた。
ミチトはシヤとシーシーが治した4人に話を聞くことにした。
4人は目の不自由な子、耳の不自由な子、口の不自由な子、左半身が不自由な子だった。
何があったかは言わないでいいと言って会話や術でコミュニケーションを取って状況を確認したミチトが憎々しい顔で「…最悪だ」と言った。
その顔は先程シーナを追い込んだ女店主に見せた顔に近い。
シーシーが恐る恐るミチトを見る中アプラクサスが「ミチト君?」と聞く。
「術で不自由な身体をなんとかする方法なんて考えた事が無かったんです。俺では今すぐには治してあげられない。明日できる確証もない。何年も待たせてダメだったと言う可能性もある」
そう言って怒る顔にシーシーはミチトが怒っているのは誰相手でもない自分相手なんだと理解をした。
ミチトはそのまま続ける。
「出来るとしたら…術人間にするしかない。でもこの子達は最初から俺が施術するから記憶の問題も起きない。仮に記憶を消しても消えた子と消された子では差異があって…どこか違和感が生まれて問題になる恐れもあるし他の子達から浮いてしまう。それに無限記録盤は…もう手元に余裕がないんです」
この言葉にアプラクサスは前に出てミチトの手を取って目を見ながら「ミチト君、私は信じてもらえませんか?」と言った。
その顔は事あるごとに青くなったりビクついたりする老貴族のものではない貴い者の顔。
ミチトとは別の頼もしさや力強さに安心感を感じる。
「アプラクサスさん…記録盤はありますか?」
「王都にならあります」
「この子達を助けてくれますか?」
「勿論です。時間をかけて周りの反発を封殺してから養女にします」
「争い事は?」
「させません。仮に私が狙われたり自身が狙われれば戦って貰わないと困りますが攻め込ませる真似はしません」
ミチトが探るように確認をしてアプラクサスが安心させるように全てに答えていく。
「マスター?」
「シーシー、シヤ。この子達は俺が施術してしまうと皆とはまた違う術人間、記憶が残っていたりするんだ。記憶を消しても皆とは違ってしまう。だから王都のアプラクサスさんの所でお世話になろうかと話したんだよ」
ミチトは決して隠し事をしない。
シヤとシーシーをキチンと1人として扱ってくれていて事情を話してくれる。
シヤとシーシーは顔を見合わせてどうするのが正解なのかを考えようとした。
その間にミチトは少女達に確認した。
今のまま人として生きるか、ミチトの手によって人とは少し違う人間として不自由の無い身体になるかを選ばせた。
耳の聞こえない子はミチトの声が聞こえた事に驚き、聞こえた言葉に感動して泣いた。
口の不自由な子は手から想いを伝えられるから言ってと言うミチトの言葉と言葉通りに思いを伝えられた事に喜んだ。
そして全員が術人間化を望む。
人と少し違う人間と言われても治るのならと何べんもお願いした。
左半身が不自由な子はたどたどしい喋り方だったが何回も「助けてください」と言う。目の不自由な子も「お願いします」と言い続けた。
そして記憶の消去はやはり4人は望まなかった。「今までの事があるから治った身体に感謝出来るはずだからこのままがいいです」と言った。
4人の意志にミチトが困り顔で「わかったよ」と言う。
何故困り顔なのかがわからないシーシーは「マスター…辛いの?」と思ったままに聞く。
シヤも「術人間を作るのは嫌いなの?」と聞いた。
ミチトは少し困った顔で頷くと「うん。俺が死んだら皆がどうなるかわからない。記録は残って居ないんだ」と言った。
実際ミチトは一度オーバーフローを無効化する為に仮死状態になった。
その際にイブとライブは異常を見せた。
2人は無限魔水晶の術人間でシヤ達は魔水晶の術人間。
異常に差があったとしてもゼロではない。
だからこそ術人間を産み出す事には否定的な面を持っていた。
シヤがミチトの手を取って「ヨンゴはマスターが居ないと不安になるって言っていた。不安で暴走したから俺たちは心を鍛えるよ!マスターが居なくてもやっていけるくらい強くなる!」と言う。
シーシーも続けるように「私も!だからマスターは私達を助けてくれた神様だから気にしないで!この子達も助けてよ!」と言う。
その言葉の後でアプラクサスは「ミチト君、助けてあげてください。君にしか助けられません」とハッキリと言った。
ミチトは4人の少女、シヤとシーシー、アプラクサスをもう一度見て「…わかりました」と言った。
「マスター!王都に行くならお願い聞いて欲しいの!」
「シーシー?まだ何かあるの?」
「シーナの亡骸は燃えなかったんだよね?ならトウテに連れてこられないかな?」
シーシーは亡骸だとしても残っているのならシーナをトウテに連れてきてあげたかった。
王都に行く今しか頼めないと思って伝えると「…ん?あ!!そうだよ!」とミチトが言う。
「シヤ!何処でシーナを見送ったの?」
「…よくわからない。でも南下して城まであと少しだったはず」
「仕方ない。プロに頼もう」
「プロ?」
孤児院から出たミチトが呼んだのはイブとライブとグレイとウルクン。
シヤが恐る恐る「…狼?」と聞くとミチトは笑顔で「俺の家族だよ」と紹介をした。




