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48番のシヤ。~俺、器用貧乏なんですよ。外伝~  作者: さんまぐ
トウテでの暮らし。これからの事。(全5話)
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第30話 シーシーの名前。

名前が思い出せない術人間達が名付けの為にヤオ達に呼ばれた。

こうなると困るのはシーシーで、シヤが名前を思い出せない以上、名乗る必要も無いと思っていたが新しい名前にも抵抗があって更に本当に大切に扱ってくれるヤオとヒノの真剣さを見ると名前をもらった後ではシーシーに戻れなくなるのでは無いかと思ってしまう。


シーシーは名づけの為に並ぶ列を外れてトウテの北側を目指す。

道具屋を探すがどれが道具屋かわからない。


「新造された街なのに生活感溢れる街並みはなんなのだろう?」

シーシーはそんな事を思いながら歩くと前方から2人の老人が来る。


「あぁ?術人間の娘っ子がどうしてここにいるんだ?」

「むぅ?何か困り事か?遠慮なく言うがよい」


2人の老人に言われたシーシーはどうしていいかわからなくなり泣きそうな顔になってしまう。

「おいおい、泣くなって、ミチトか?ミチトって何してたっけ?」

「もうすぐクラシを王都に連れて行くと言っていたな」


2人の老人はミチトは忙しいし捕まらないかも知れないと頭を悩ませる。


「ならイブとライブならすぐに呼べるぜ?」

「それがいいな」


ここでイブとライブまで呼ばれると話が大きくなりすぎてしまうと思ったシーシーは「…おじさん。道具屋のおじさんに会いにきたの」と小さく言った。


背の低い方の老人が「あぁ?ヤァホィか?」と確認をしてくるがシーシーは名前を交わしていない。


「名前、聞いてないの。困った時はおいでって言ってくれたの」

その言葉に変な顔もせずに「ふむ、ならばこっちだ」と背の高い方の老人が言い、背の低い方の老人が「着いてきな、俺はエクシィ、こっちはライドゥな」と言って歩き始めた。

後ろを歩きながらシーシーは「はい。よろしくお願いします」と言う。


道具屋までの道のりでエクシィもライドゥも決してシーシーに名前を訊ねない。そして優しい。これだけでトウテのありがたさが身に染みる。


道具屋はすぐそこにあってシーシーに気付いたヤァホィは嬉しそうに「やぁ!来てくれたんだね」と言って店に椅子を置くと「エクシィ、お茶入れてよね」と言ってシーシーの前に座る。


ヤァホィは優しい笑顔で「おはよう。昨日は孤児院だよね?ベッドはどうだった?」と聞く。

シーシーは首を横に振って「昨日はお屋敷のお庭にテント」と言うと慌てた感じで困った顔になったヤァホィが「え?女の子なのに?ヤオちゃん達は何やってんのかなぁ…」と心配そうに不満を漏らす。


この顔に慌てたシーシーが「違うの。私がシヤと居たくて!」と前のめりでヤァホィを止めて「…シヤに思い出してもらいたくて」と続けた。


ここにお茶を持ってきたエクシィが「そう言えばその服、シヤの仲間か?んじゃあ帰りに寄ってくれよ」と話しかける。

ヤァホィは「今内緒話中だからエクシィは帰って」と言ってさっさとエクシィを追い出すと臨時休業の札を出してしまう。


「ごめんね。シヤ君の記憶の話だよね?思い出したらお嬢さんの名前がわかるのかな?」

「うん。シヤが思い出せないのに名乗るのが嫌なの」


それはただのワガママでしかない。

それが許されるはずもないと思うシーシーだったがヤァホィは変わらず優しい笑みを浮かべる。


「そっか、じゃあお嬢さんはまだ名前がない子になってるんだね?」

「うん。それでどうしていいかわからずに来たの。今ヤオさんとヒノさんが名前をくれてるの。他の子達は皆貰ってる…」


シーシーが言いにくそうに話すのを察したヤァホィは「でも君は皆と付けた名前があるから困ってるんだね」と続ける。

シーシーは理解して貰えたことを嬉しそうに「うん」と頷いた。


「昨日シャイニングって名前を貰った子と話したの…。きっとヤオさんとヒノさんが私にも綺麗な名前をくれると思うけど…思い出したからやめるって言えなそうで、でもシヤがこのまま思い出さなかったら私はずっと名無しだから…」


シーシーは本当に困ってしまい泣きそうな顔をしている。

ヤァホィは優しい笑みのままうんうんと頷いて聞く。


「ふふ、簡単さ。よく頼ってくれたね。任せて」

この言葉がとても嬉しいシーシー。

だが頼りたいが本当に頼ってしまって良いのかわからない。

そんな気持ちで「いいの?なんとかしてくれるの?」と聞く。


「勿論さ、君達は良くない大人ばかりを見たから信じられないかも知れないけど本当は大人は子供達のために力を尽くす者なんだよ?」

そう言ったヤァホィが「逆にありがとう」と言って笑顔になる。


「え?ありがとう?」

シーシーは目を見開いてヤァホィを見る。


「そうだよ。僕なんかを頼ってくれてありがとう」

そう言ったヤァホィの言葉にシーシーは心救われる。



ヤァホィはお茶を飲んで立ち上がるとシーシーに「任せてよ。行くよ」と言った。

シーシーは嬉しそうに立ち上がって「うん…!おじ…ヤァホィさん」と言う。


「僕の名前を覚えてくれたの?ありがとうお嬢さん」

「……私の名前はね…」


「今は言わなくていいよ。シヤ君が思い出さないと僕がモヤモヤしてミチト君に何とかしてって頼んじゃうからね」

その言葉に不思議そうな顔で「マスターならやれるのかな?」と聞くシーシー。


「んー?今は無理でも明日には出来ちゃうかもね」

「明日?え?なんで?」


意味が分からない。何で今日がダメで明日なら出来るのだろう?

そう思っているシーシーに「ふふ…」と笑ったヤァホィが内緒話をするように小さな声で「彼は器用貧乏だからね」と言って笑った。

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