第16話 旅の終わり、その後の地獄。
シーナの亡骸にサヨナラを告げて進んだシヤはすぐに強襲を受ける。
その相手はシーナの代理マスターだった。
「よくも47番を!」と言ったシーナの代理マスターは目が血走っていて余裕は無い。
それもその筈でここでシヤを取り逃がせば領地に居る家族がどうなるかの保障はない。
シヤもシーナを失った怒りに支配されていて逃げ出すこともせずに睨みつけると「…お前らがシーナを殺した!」と声を上げた。
「お前のアースボールが致命傷だ48番!」
そう言って剣を構えなおすシーナの代理マスター。
シーナの代理マスターは勝てると思っていた。自身は剣を持っている。
剣が拳に負ける道理がない。
そう思って斬り込む。
怒りに支配されたシヤには武器の有無なんてものは関係のないことだった。
剣を回避するなり二歩踏み込んで兵士の顔面に拳を打ち込むと同時にアイスランスを放つ。
これによりあっという間に兵士は血だるまになって息絶えた。
唸るように息を吐くシヤは「俺は死なない。生きて王都を目指す。そこが今俺の目指す場所。シロー、ヨンゴ、シーナ、ハーモ…お前達皆を俺が連れて行く。皆行くぞ」と言うと駆け出した。
シヤに何かが起きていた。
自分でもよくわからないが何時間も走れたし、少しの睡眠、少しの食事で動けた。
あっという間に王都の外壁が見えてくる。
後数時間、今の自分なら1時間もあれば着くかも知れないと思った。
その時、「そこまでだ48番。よくもやってくれたな」と言う声が聞こえた。
振り返る事も進む事も敵わない身体。
シヤは代理マスターに追いつかれたと思ったが違っていた。
トロイに追いつかれていた。
背後に居たトロイは必死に馬車で追いかけてきていた。
「思わぬ性能テストになったな。
やはり後に作るたびにいい結果になる。
エグゼ様には47番は長期にマスターと離れた事による暴走で自滅と伝えよう。
そして、帰りながら次の素体を手に入れてフォースロットを仕上げたらフィフスロットの製作に入らなければな」
シヤは皆に謝りたい気持ち、今すぐここでトロイを殺したい気持ちだったが遂に何も出来ずに寝かされてしまった。
エグゼ・バグの領地に戻るまで、これでもかと再施術をされるシヤ。
トロイは再施術をすれば元に戻ると勝手に思い込んでいた。だがその無駄な再施術のせいでシヤの記憶は混濁し徐々に薄れていった。
連れ戻されたシヤを見たシイ達もまた長期間の不在によってシヤを忘れていた。
シーシーを除いて。
シーシーは皆の不在中もエグゼに性奉仕を命じられ絶望の中で暮らす。
そして戻ったシヤは記憶が消えているのか何もわからなくなり、自分達を見ても何も言わない。
だが脱走の危険があるからとシヤだけは部屋を変えられ、シヤが戻って数日後にエグゼとトロイの会話からヨンゴとシーナが暴走の末に死んだ事、シヤは驚異的な能力を示した事、そして代理マスター達はヨンゴの代理マスターはヨンゴに殺され、シーナの代理マスターはシヤに殺された事が知らされた。
シヤのマスターはヨンゴがアイスボールで骨折させた事で今は寝込んでいた。
そして数日後、シーシーの前に49番が現れた。
49番は若い少女で戦闘に不向きな少女だった。
49番…、シーナがいれば名前があっただろう。少女なのでシーシーはシンクと心の中で呼んだ。
性奉仕の時にトロイがエグゼと話していた。
「イニットがガニュー殿から貰い受けるはずだった素体をいただいていただきありがとうございます」
「いや、そもそもはイニットの損失の補填だ。イニットが無能にも施術に失敗したのがいけない。そしてイニットが怪我をして施術を行えない以上、これは正しい判断だ」
調達の面倒な素体の入手をしてもらったトロイが「ありがとうございます」とエグゼに感謝を告げる。
首を振って掌を前に出して「気にすることは無い」とジェスチャーをしたエグゼは「しかし流石はトロイだな。49番からの10人は届いてみればひと山幾らの欠陥品揃い。それにも関わらず見事に完成させたな」と言って褒める。
嬉しそうに頷くトロイが「はい。49番は幼少期の熱病が原因で耳が聞こえない素体でしたがその問題も術人間化で消えています」と言って説明をする。
「50番は左手の麻痺だったな」
「はい。それもクリア出来ればひと山幾らで投げ売りの娘達を安く買い叩き術人間にできます」
この回答にエグゼは立ち上がって「素晴らしいぞトロイ!」と言う。
「いえ、47番の件は申し訳ございませんでした」
「構わぬ、それよりもトロイ、51番だが施術前にロエスロエを試させてくれぬか?」
「壊れようとも47番の例もありますから術人間にしてしまえば問題ありません。丁度試せて助かります。しかしそうなると44番は今後どうなさいますか?」
この今後はお下がりとして兵士達にあてがうかという話だ。シーシーはエグゼも嫌だがお下がりはもっと嫌で気が気ではない。
「ふむ、たまには使ってやるからこのままにしておけ。毎日同じものでは飽きてしまうからな」
そう言ってシーシーを呼んで掌で肉団子を食べさせると満足そうにお礼を言うシーシーを見ながら嫌らしく笑う。シーシーは話を聞きながら毎日同じパンとスープを与えておいてよく言えたものだとエグゼを更に憎らしく思った。
その翌日には50番が49番の横に置かれたベッドに来た。
話に聞いていた左手は問題なく使えていた。




