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第12話 暴走をするヨンゴ。

脂汗を流すヨンゴが「俺…足手まといだから…おいて行け…」と小さく言う。

シヤは必死に「ダメだ、行くぞヨンゴ」と言ってヨンゴの腕を持つ。


「お前こそダメだシヤ」

「うるさい、いくんだヨンゴ」


強く言って手を離さないシヤに諦めたヨンゴは「わかったよ…」と言って歩き始めるとシーナが「1番なんだから頑張ってよね」と言って微笑みかける。


「シーナもキツいな…、俺はお前達ほど強くないさ、皆に名を付けたシーナの強さが羨ましい、今も力強いシヤに憧れる」

ヨンゴが情けない顔でシヤとシーナに自分が敵わないと告げる。


「バカ言うな、代理マスターを倒したヨンゴが1番頼もしいだろ?」

「そうよ。ヨンゴが1番よ」



この会話が良くなかった。

真っ青な顔になったヨンゴが震えながら「代理マスター…倒した…」と言う。

シーナはヨンゴの顔を見ずに「そうよ忘れたの?」と聞く。


シーナの問いに答えずに「俺が…マスター……」と呟くヨンゴ。

こんなヨンゴは見たことが無いとシーナが心配そうに「ヨンゴ?」と言った時、シヤが「シーナ!離れろ!変だ!」と言った。


「え!?」と言った時には暴れるヨンゴに殴り飛ばされるシーナ。

それを見たシヤが「ヨンゴ!」と声をかけると絶望の表情のヨンゴが「俺…おれ…マスター?倒した?…だから怖い?足りない?」と言って震えている。


起き上がったシーナが「これが暴走?」と言いながら近寄るとシヤも前に出て「かも知れない。シーナ、ヨンゴを止めよう」と言った。



「あぁあぁあぁあぁあぁあああああ!!!」

叫んだヨンゴは何も構わずにファイヤーボールやアイスボール、アースボールを放って暴れ始める。


「ヨンゴ!やめろ!」

シヤが飛びかかるがヨンゴは驚異的な反応でシヤを蹴り飛ばすとファイヤーボールを撃つ。

シーナがそれをアースボールでかき消してヨンゴを止めようとヨンゴの腕を掴む。


「ヨンゴ!」

「あぁあああああ!…どうしよう…マスター…殺した?…マスター…シイ達を助けてもらわなきゃいけないのに俺が殺した…」


そう言って頭を振り回すヨンゴの勢いで腕を持っていたシーナが吹き飛ぶ。


「違う!ヨンゴ!お前が殺したのは代理マスターでミチト・スティエットじゃない!しっかりしろ!」

シヤがヨンゴの肩を掴んで言うとハッとなったヨンゴがシヤを見る。


「シヤ?お前…シヤだよな?」

「そうだ!俺はシヤだ!お前はヨンゴだ!これから王都に行ってミチト・スティエットに助けてもらうんだ!ファーストロットを紹介してもらってパンのお礼を言いに行くんだろ!」


「パン…?ファーストロット…」

ここでヨタヨタと起き上がったシーナが「そうよ!お爺さんのパン!」と声をかけると一瞬の間の後で「そうだ…そうだよ…ミチト・スティエットを見つけて助けて貰わなきゃ」と言ったヨンゴは落ち着きを取り戻した。



落ち着きを取り戻したヨンゴを連れて歩くシヤとシーナ。

途中途中で暴走の気配が見えるとシヤとシーナは今は王都に向かってミチト・スティエットに助けて貰って早くシイ達のところに帰ろうと言うとなんとか落ち着くが少しするとまた暴走の兆しが見える。


そしてその間隔がどんどん狭まる。

夜明けごろには暴走と平静を行ったり来たりしている。

泣き顔のヨンゴは「シヤ、シーナ、先に行って助けを呼んできてくれよ」と言う。


「何言ってんだよヨンゴ、早く行こう!」

「そうよ!3人で一緒よ!」


2人はヨンゴを見捨てられないという気持ちで必死になって説得をする。


「ダメだ、何となくわかる。次におかしくなったら戻らなくなる。だから頼むよ。シイ達を助けてやらなきゃ」

もうヨンゴの声は震えていてずっと泣いている。


ヨンゴの泣き顔に触発されて泣きながらシーナが「そんなのダメよ!」と声を荒げると呆れるような声でヨンゴは優しく「いいから…俺を助けて全滅なんて笑えないだろ?」と言った。


「ヨンゴ!情けないことを言うな!俺はお前が声をかけてくれた時嬉しかったんだ!その恩を返すんだ!」

「もう…その事も思い出せない…。頼むよシヤ、シーナ…俺の思いも乗せて王都に行ってくれよ…」


この言葉で絶望感を感じたシヤとシーナだったが諦めたくない一心でヨンゴを抱えて歩き出す。


ヨンゴは俯いて気絶をしたように何も言わない。

今のうちに一歩でも前に出ようとアイコンタクトをするシヤとシーナ。

暫く進んだ時…。


「言う事を聞けよぉぉぉっ!!」

突然そう言って怒り出したヨンゴが暴れ始めた。

シヤを殴り飛ばしたヨンゴはそのままシーナを蹴り飛ばす。

そして「さっさと王都に行けよ!」と言いながらアイスランスを乱発し始めた。


それは威嚇なんかではない殺意に満ちた攻撃でヨンゴは明らかに暴走していた。


「止めるわよ!」

「ああ!」


シヤとシーナが2人がかりで止めに入ってもヨンゴはそれに対応してくる。


暴走をすると脳のリミッターが効かなくなるのかヨンゴの動きは信じられないものになった。


シヤの拳を足でいなしながらシーナが足止めで放つアースボールをアイスランスで破壊する。

そして追撃までしてくる。


この攻撃でシーナが動けなくなった所にとどめを刺そうとするヨンゴ。


「やめろぉぉっ!」

シヤは本気でヨンゴを蹴り飛ばす。

大地に転がるヨンゴはすぐに体制を整えるとシヤを睨みつける。


「シヤぁぁぁっ!!」

「ヨンゴぉぉぉっ!!」


ヨンゴがいくらリミッターが外れたと言っても元々の肉体がそれに合わせて鍛えられていたわけではない。

思い切り殴って蹴った反動でヨンゴの身体はボロボロになっていた。

おかげでシヤの攻撃も通る。


数回の殴り合い。同じ訓練を受けたシヤとヨンゴの戦い。

最後は手数になる。

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