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リングのホスピタル  作者: 天主 光司
2/12

第二話 エルフの医者

 銀河帝国歴二八八八年

 地球の連邦国家の一つ、ニュージャパンのとある都市

 ショーパブの舞台でけたたましい音楽が終わると、オカマ達のダンスが終わる。お客たちは笑いながら拍手をする。

 一糸乱れない素晴らしい踊りであったが、踊っているのがみんなゴツイ体のオカマ達であり、そして、そのオカマ達全員が、ロリータファッションのドレスに、コーディネイトされたブーツに手袋を身にまとい、ばっちりメークアップしている。

 踊りを終えたオカマ達は、楽屋に戻ってきた。

「エリザベスの姐さん。エルフに詳しい男を連れてきたっすよ」

 ウエイターファッションの若い男が、もう一人男を連れて入ってきた。

「うっ」

 もう一人の男は、カジュアルな服装でメガネをかけたあまり冴えない感じの男だ。いかにも汚物を見るような表情をした。

「なんだよ。ラルゴ。この男。人を汚物を見るような目で見やがって」

 エリザベスが言った。

「姐さん達を、初めて見る奴はみんなこうなるっすよ」

 ラルゴはそう言うと、悪気なさそうに笑う。

「ほんと、お前は遠慮なく言うな」

 エリザベスは言った。

「そう言わずに、この人、頭良いし、物知りだから解決法を知っているかもしれませんよ」

 ラルゴが言った。

「俺はこう言う奴が嫌いだ」

「あら~。私はこういう子好きよ」

 近くに居たオカマダンサーが言った。

「お前何しに来たんだよ」

「ラルゴに、ただ酒奢ってもらえるって聞いたからついてきたんだけど」

「酒は俺が奢るっすよ。エリザベスの悩みを聞いてくださいよ~」

 ラルゴが言った。

「僕はお悩み相談員じゃないんだけど」

「エリザベスさんは、エルフなのにオカマなんすよ」

「それは珍しいね」

「ところで、こいつ何者なんだよ」

 エリザベスが言った。

 他のオカマ達も興味ある感じだ。

「この人は、アイマクさんだよ。エルフに詳しい人だよ」

「僕は歴史研究家だよ。人類史に詳しいだけだよ」

 アイマクは言った。

「エリザベスさんは、性転換手術を受けたいらしいんだけど、良い方法はないかな」

 ラルゴが言った。

「それを僕に相談する? 医者に相談しなよ」

「とっくにしたに決まっているだろ。でも、エルフだから性転換手術はできないって言われたんだよ」

 エリザベスが言った。

「ノーマルの医者に行ったのかい?」

「性転換手術をできるエルフの医者はいなかったからな」

 アイマクは唸る。

「性転換手術のことは詳しくないけど、胸にシリコンを埋めたり、大事なところを切ったりするんだろ。エルフにやっても意味ないだろ」

「医者にも同じように言われたよ。だからお前に聞いているんだ」

「相談するなら、エルフの医者に聞きなよ」

「どこにいるんだよ。そんな奴」

「どこかのエルフの里にコネとかないの?」

「ない」

 キッパリとエリザベスは言った。

「都市エルフか……」

 都市エルフと言う種類のエルフがいるわけではない。五、六十年前まで、ノーマルとエルフは別々に住み分けていた。そしてエルフが住んでいたエリアをエルフの里と言った。だからその里の反対という意味でノーマルが主に住んでいるエリアに住むエルフを都市エルフと言うようになっただけである。

 エルフの多くは、いまだにエルフの里に住んでおり、都市エルフは多くない。そして、エルフの里に住むノーマルはほとんどいない。そんな状況である。

 ちなみにノーマルとは、エルフを除く地球人の事を言う。大きく無理やり分類すると白人、黒人、黄色人に分けられる。エルフは黄色人と見た目は、ほとんど変わらない。

「どうにかならないっすかねぇ」

 ラルゴが聞いた。

「エルフの里の医者に聞くのが、一番なんだけど、僕にはコネがないんだよ。エルフの里にコネがあったとしても、エルフの医者は少ないから、コネがあっても簡単には会えないけどね」

 アイマクが言った。

「どうして、エルフの医者は少ないんすか? 医者が少なかったらエルフもこまるでしょうに」

 ラルゴが言った。

「いや。全然困らない。ノーマルがかかる病気にはほとんどかからないし、ケガもほとんど自力で治せるからね」

「そうなんすか?」

 ラルゴは、エリザベスに聞いた。

「まあ、困ったことはないなあ。性同一性障害以外では」

 エリザベスはあまり考えずに言った。

 そもそも都市エルフは、エルフの里を飛び出して来たエルフやその子供なので、エルフの里との関りが薄い者が多い。

「他に方法はないのか?」

 エリザベスが聞いた。

「神官エルフとかの知り合いもいないよね」

「なんだよ。神官エルフって。エルフの拝み屋か?」

「拝み屋って……」

 アイマクは苦笑する。

「エルフで宗教やっている人って聞かないけど」

 ラルゴが言った。

「エルフは、基本宗教やらないよ。神官エルフって言うのはね……」

 そこでアイマクは言葉を詰まらせる。

「知らないのに、適当なこと言うな」

 エリザベスが言った。

「知らないのはあんたでしょうが! 神官エルフを説明するには、人間とは、というところから説明しないとならないから話が長くなるよ」

「なら、良いや」

 エリザベスはそっけない。

「俺は聞きたいっす」

 ラルゴが言った。

 アイマクは嫌そうな顔をする。

「これあげますから」

 ラルゴがコップに酒を注ぐ。

「なんだよ。これ酒かい?」

「結構いけるっすよ」

 アイマクは一口飲む。

「これは美味い」

「ラルゴスペシャルっていうカクテルっす」

「ラルゴが作ったのかい。すごいね」

「で、神官エルフってなんすか?」

 アイマクは説明し始める。


「地球人は、ノーマル種とエルフ種がいるということになっているが、正式には三種類いる。

 一つはノーマル種、

 一つはエルフ種、

 一つは神種。

 エルフ種は、ノーマル種に比べて、生命力も体力もあらゆる面で優れているが、神種はさらにその上を行く能力を持っている」

「それじゃあ、ノーマル種からエルフ種が生まれ、エルフ種の優秀な奴から、神種が生まれたってことなのか?」

「そういう俗説はあるけど、それは全くの嘘だね。そもそもエルフ種も、神種もノーマルの黄色人種の姿に似ている説明がつかないでしょ。偶然、ノーマル種からエルフが生まれたのなら、黒人風のエルフや白人風のエルフがいてもおかしくないのに、黄色人種風のエルフしかいない」

「へぇ。それじゃあ、どうして黄色人種風のエルフしかいないんだい?」

 近くに居たオカマが聞いた。

「元々ノーマル種しかいなかったが、黄色人種のノーマル種の一部が、何らかの方法で神の体を手に入れて神になったんだよ。そして、そのあとに、しもべとして便利なエルフを作り出した。いろいろ文献を調べたり、遺跡とか調べるとそういう結論になる」

「なるほどね。兄ちゃん詳しいね」

 オカマが言った。

「それで、神官エルフって言うのは、何者なんだい」

 ラルゴが聞いた。

「神種は、元々は大勢いたんだけど、その神々の中で、エルフに対する接し方に対する考えが複数あったんだよ」

「どんな風な?」

「簡単に言うと、エルフに優しい神々とエルフに厳しい神々がいて、結果的に生き残った神が、エルフに優しい神だったから、今のエルフの繁栄があるわけだよ」

「それと、神官エルフとどういう関係があるんだい?」

 ラルゴが聞く。

「神官エルフと言うのは、その神に直接仕えているエルフのことを言うんだよ」

「なるほど」

「直接神に仕えているから、神代の時代の知識を持っている可能性が高いってわけだ。神には寿命がないからね。神に近いエルフでさえ、寿命はあるんだけど。神とエルフの境目はその変にあるのかもね」

「そうですか」

 ラルゴは急に興奮が冷めたようだ。

「で、どこにいるのか、わからない神官エルフを探せと言いたいのか?」

 エリザベスが口を挟んだ。

「偶然でも出会えればラッキーなレベルだよ」

 アイマクはさらりと言った。

「じゃあ、どうしたら良いんだよ」

「お金をかけずに解決する方法は、この二つしかないんだけど、残りの一つは確実にエルフの医者に出会える方法がある。でも……」

 アイマクは腕組をして考える。

「でも、なんだよ。じらすなよ」

 エリザベスは、怒り気味だ。

「当然お金がかかるよ。宇宙に行かないといけないからね」

「宇宙!」

 一同が驚きの声を上げる。

「アルフヘイム星のリング城には、エルフの医者がいると言われている。そもそも、アルフヘイム星は、環境が厳しいからノーマルが住めるような星じゃないらしいからね」

 アイマクの言葉にエリザベスは考え込む。

「本当に宇宙にエルフがいるのか?」

 エリザベスは悩まし気に聞いた。

「アルフヘイム星は、地球人、人類が初めて発見した、地球系外で住める惑星なんだよ」

「でも、さっき、環境が厳しいって言ってなかったか」

「砂嵐が激しい星だと聞いているよ。だから、砂嵐をなんとかコントロールするための開拓をエルフたちが移民してやってるらしいよ」

「その移民の中にエルフの医者がいるのか?」

 エリザベスが聞いた。

「初めての宇宙移民だからね。だから、もしもの時の為の備えとしてエルフの医者が同行したんだよ。たったの一人だけだけどね」

 アイマクが言った。

「じゃあ、問題がないとわかったら、地球に帰ってきているかもしれないよな」

 エリザベスが言った。

「確かに、その可能性がないとは言えないね。ちょっと調べてみるよ」

 アイマクはスマホを取り出すと操作を始める。宇宙移民局広報部のメールアドレスを調べる。そして、アルフヘイムにエルフの医者がいるか、質問するメールを送付した。

「どのぐらいで返事がくるか分からないけど、返事が来たら教えるよ」

 アイマクが言うと、エリザベスは悩みだす。

「返事って誰の?」

「あ、ごめん。宇宙移民局にアルフヘイムにエルフの医者が今もいるか問い合わせたんだよ」

「その宇宙何とかに聞くと医者がいるか分かるのか?」

「まあ、確証はないけど、最悪どこに問い合わせればわかるか、ぐらいは教えてくれると思うよ」

「頼れるのか、頼れないのかわからんな」

「僕は人類史の研究者であって、なんでも屋じゃないよ。でも、宇宙のことを問い合わせるなら、宇宙移民局に聞くのが良いことぐらいは、知っているよ」

 一般常識である。

「なんか俺のことバカにしてないか」

「なんでそういうことになるのかなぁ。とりあえず、返事が来るのを待ってくれる」

「返事はどれぐらいで来るんだよ」

「今日はもう窓口業務の受付時間外だから、早くて明日だね」

「なんだよ。待っても今日はダメなのかよ」

「ということだから、連絡先教えてくれる。返事か来たら教えてあげるから」

「連絡先って、この店の開店時間なら、ここにいるよ」

「そうじゃなくて、電話番号ね」

「俺。電話持ってないよ」

 アイマクは、ショックを受ける。

「それじゃあ、この店の開店時間になったらここに来れば良いのね」

「そう言うことだな」

 アイマクは溜息を吐く。

「それじゃあ、お酒もらったら、今日は帰らせてもらうよ」

 ラルゴが作ったカクテルのお代わりをもらい、アイマクは飲み始める。

「ただ酒は美味いねぇ」

 アイマクはお酒を飲み終えると、店を出ていく。

 ラルゴの奢りだったので、滅茶苦茶飲んで行った。

「エリザベス。アイマクの兄さん。明日か明後日来るって言っていたけど、明日お店お休みだって教えたかい」

 エリザベスの同僚のオカマが言った。

「そう言えば、教えてないな」

「急いで教えてやりなさいよ」

 エリザベスは面倒くさそうにする。

「そうだな。ラルゴに行ってもらうか」

 しかし、楽屋にはすでにラルゴはいなかった。店内を覗き見るがいないようだ。

「しかたない。俺が行くか」

 エリザベスは店を出ていく。


 アイマクは、店を出ると街をしっかりした足取りで歩く。酔っ払いとは思えないしっかりした足取りだ。

「アイマクさん。あなた酒に強いっすね。見た目全然酔っているように見えないっすよ」

 店からラルゴは、アイマクをつけていた。

「どうしたんだい。いまさら金払えって言われても払わないぞ。奢ってくれるって話だったんだからな。ま、その代わり、アルフヘイムにちゃんと医者がいるかは確認出来たら、エリザベスに教えるから」

「あなたも律儀なかたっすね。あんな不細工なおっさんにさ。あれが性転換しても化け物にしかならないだろ」

 ラルゴがそう言うと、アイマクは怪訝な顔をする。

「そういう言い方はないんじゃないか。ま、君の言い分にも一理あるけどね」

「でも明日は店に来なくてもいいっすよ」

「どうして?」

 ラルゴはすっとアイマクに近づくと、ナイフをアイマクの腹に刺した。

「な、なにをする」

「あ、エリザベスには俺から、伝えておくっす。だから死んでくれ」

 そう言うとラルゴはもう一本、ナイフを取り出すと構える。

「アイマク~」

 エリザベスがアイマクの元にやって来る。

「ち、じゃまが入りやがった」

 アイマクは左ひざをつく。

 ラルゴは逃げ出す。

「お、おい。血が出ているぞ」

 アイマクは、ナイフが刺され傷口から血が出ていた。

「救急車を呼んでくれ」

 アイマクが言った。

「救急車。救急車!」

 エリザベスはその場でアタフタしている。

 アイマクは、エリザベスに頼れないとわかるとスマホを取り出し、自分で電話をする。

「お、俺はどうしたら良い」

 電話をしているアイマクを見てエリザベスが言った。

「僕の側にいてくれるかい。犯人が戻ってきてトドメを刺そうとするかもしれない」

「俺が刺されたらどうするんだよ」

「犯人は、君が僕を呼ぶ声を聴き逃げて行った。二人以上いたら、襲ってこないよ」

「犯人の顔を見たのか?」

「ラルゴだよ」

 エリザベスは驚く。

「なんでラルゴが」

「理由なんか、僕が知るはずもない」

 エリザベスは、アイマクをジッと見る。

「お前、本当に刺されているのか」

「滅茶苦茶死にかけているだろ」

「そうは見えないけどな」

 エリザベスがそう言うと、アイマクはそのタイミングで突然倒れた。

 しばらくすると救急車が来た。


 アイマクは救急病院に運ばれた。

 警察への通報は、病院の職員がしてくれた。

 警察は、アイマクの治療中にやってきた。どっちにしろアイマクは気絶しているので、本人には質問できない。

 エリザベスはアイマクから聞いた通り、ラルゴがアイマクを刺したらしいと警察に話す。しかしながら、エリザベスが直に刺されたところを見たわけではないと聞くと、警察は本人にも確認とると言った。

 治療が終わると、警察が本人から話を聞けるか、医者に質問する。

「命には別条ありませんが、意識がないので無理ですね」

 治療をした医者が答えた。

「犯人がまだ命を狙っている可能性があるが、警備をどうなっていますか?」

「私に聞かれても。でも、悪意を持った殺人鬼から、彼を守るのは無理ですね。ガードマンはいますが、殺人鬼をやっつけるのが仕事じゃありませんから」

「警察病院に移動は可能ですか?」

「難しくはないですよ。普通に救急車で運ぶ分には問題はありませんよ」

 警察官は、電話ができる位置まで移動して、いろいろ確認の電話をすると、警察病院への移動が決まった。エリザベスはそこでお役御免になった。


 エリザベスは、結局店が休みであることを教えられなかったので、お見舞いがてら、もう一度会いに行こうと思ったが、警察病院の場所が分からなかった。

 仕方なくエリザベスは、オカマ仲間に相談したら、警察に聞けばと言われた。警察署にお店の電話を借りてかけたら、場所を教えてもらえる。

 エリザベスは、警察病院に行くと、昨日病院であった警察官と出会えた。アイマクの居場所を聞くと教えてもらえる。

 病室に着くと、警察官がひとり警備していた。

 警備の警察官は、エリザベスを不審そうな顔で見る。

「この人は、アイマクさんの知り合いだ。大丈夫だ」

 エリザベスは中に入れてもらえる。

「面会は私が監視させてもらいます」

「面倒かけて申し訳ないですね」

 アイマクは警察官に言った。

「仕事ですから」

「ところでなんでラルゴに命を狙われたんだよ」

 エリザベスが聞いた。

「刑事さんにも話したんだけど、僕が研究している人類史のことが関係しているみたいだよ」

 アイマクが言った。

「そんなことで、なんで。あいつはただのショーパブのウェイターだぞ」

「理由はわからないけど、ただ、彼は、君の悩みを聞いてあげるために、僕を利用したんじゃなくて、僕を殺す標的かどうかを判断するために、君の悩みを利用したことだけは確かのようだよ」

 エリザベスはアイマクのセリフを理解できなかった。アイマクはその様子を見て取る。

「まあ、たぶん僕を殺すことを諦めていないと思う」

「お前、そんな恨まれていたんだな」

 エリザベスが言った。

「いや、さっきも言ったけど、恨まれているんじゃなくて、人類史が原因だから」

 アイマクがツッコむ。

「人類史が原因ってどういうことだ」

「たぶん、神官エルフのことが絡んでいると思うんだけど、命が狙われる理由まではわからないね」

 エリザベスは、アイマクの説明に全く納得いかなかったが、これ以上聞いても何も理解できないと理解した。

「一つ聞いて良いかい?」

「なんだよ。難しいことは無理だぞ」

 アイマクは苦笑する。

「ラルゴって、ノーマルかい、それともエルフかい?」

 エリザベスは少し考え込む。

「知らん」

「それが分かれば、ある程度、絞れるんだけどね」

「そもそも、ラルゴとどうやって知り合ったんだよ」

 エリザベスが聞いた。

「立ち食いソバ屋で、ソバ食っていたら向こうから話しかけてきたんだよ。で、世間話をしていたら、人類史を研究していると教えたら、あんたの悩みを聞いてやってくれってね。言われた。一杯奢ってくれるというから相談に乗ることにしたんだけどね」

「それで、ノコノコ良く着いて来たな」

「理由は良く解らないけど、僕の行く場所、行く場所に現れては、奢ってくれたりしたからね」

「そう言うの危険だと思わなかったのですか?」

 刑事が口を挟んだ。

「いやあ。全然思わなかったよ。悪い奴はそう言うのが上手いんだよ」

 アイマクは苦笑する。

「エリザベス。お見舞いありがとうね」

「そうだ。今日は、店休みだって言いに来たんだった」

 突然エリザベスが思い出して言った。

「そうだったのか。でも、まだ、宇宙移民局からの返事はなかったよ」

「なんだ、まだかよ」

「残念だったね」


 一週間後

 アイマクは退院になった。

 そして、宇宙移民局からの返事が、来たのは昨晩だった。返事を受けたことを、警備の警察官に話したら、気を利かせてエリザベスに連絡を取ってくれた。そのため、退院を出迎えてくれることになった。

「来てやったぞ」

「わざわざありがとね。あ、それと、アルフヘイム星のリング城に病院があって、そこにシェレンと言うエルフの医者がいることが分かったよ。たぶん、彼女なら、君を性転換できるんじゃないかなぁ」

「本当か」

「今のところはね」

 意味あり気に言った。

「今のところとは、どういう意味だよ」

「アルフヘイム星に行くには、大分お金かかるよ。その費用は準備できるかい?」

「どの位かかるんだ?」

「ちょっと待って」

 アイマクは、スマホを取り出すと検索する。

「ざっと調べたけど、およそ百五十クレジットぐらいかかるみたいだね」

「そ、そんなにかかるのかよ。たけーな」

「それにプラスして、手術費用も掛かるだろうから、簡単じゃないと思うんだけど」

「性転換手術に五百万クレジットかかるらしいから、ずっと貯金してたんだが、さらに百五十クレジット追加かよ」

「まあ、お金では協力できないけど、必要な情報を調べるのは、手伝ってあげるよ」

「なんだよ。やけに親切だな」

「一応、この前、殺されずに済んだのは君のおかげだからね」

「そうなのか? 救急車を呼んだのだって結局お前が自分でやったじゃないか」

 アイマクは笑う。

 自分が声をかけたおかげで、アイマクがラルゴに殺されずに済んだことをエリザベスは理解していなかった。アイマクは無理に教えるのはやめておくことにした。

「あと、性転換手術の費用が、五百万クレジットと言うのも、きっとノーマルの場合の費用でしょ。エルフだとどの位かかるかは、わからないわけだから、すこし多めにお金を貯めた方が良いと思うよ」

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