第70話 忘若無人(ぼうじゃくぶじん) 2
*
「わざわざ第2体育館裏とは……どんな用事があるんでしょうか」
「アンタ、新入生の2番手やんな。ウチと闘りあって貰いたいん」
「……ヤヤヤ、ヤリあって⁉ そ、そそそそれは願ってもない……ん?」
見た目以上に奥手ぽいな。
さっき見せた感覚の鋭さはなんだったんか。
「拙者が2番手……、そのことは誰も知らない筈。……生徒は『答辞を読む=主席』という認識であった。そしてその謎の変な訛り……お主、何者だ……!」
睨みを利かせた眼には先ほどの鋭さを垣間見た。
なんや、行灯にも程があるな。
「ええっ、変なんはぁー、アンタも同じやでぇ!? ……ウチはぁー、タダのおんにゃの子やでぇ♪ アンタとぉ、一発…………闘ってみたくて……ねえ!」
言い終わる前に«火»を放つ。
シュン
それを2番手は華麗に躱した。
「ンフ、ええ動きやね。しっかし、入学式ん日は人が少なくて暴れるには良いとね。どや? 初日から波乱な幕開けやろ?」
「……拙者の巻物には『女子に手を出さない』とあるのだが身に危険が及べば話は別。それなりの反撃はさせてもらう。もし拙者が勝ったら何故、拙者が2番手だと言うことを知り得たのか答えても――」
「そんなんすぐにでも教えたるわ。ウチが……トップやからや」
バンッ……ドヤァ!
「なっ⁉ ……なるほど、教頭が口籠っていた理由が解けた。……拙者がどんな思いであの場所に立っていたか、其方にわかるか⁉」
「えー? なんでや。別にええやん。主席や思われた方が女子が放っとかんやろ? ガッコ楽しなるで?」
「…………」
コイツ、ムッツリやな。
想像しちょるやろ。
ブンブンブン
「教頭から答辞の話を聞いた時、拙者が主席であると確信していた。だが、次席であったことを伝えられた挙句、本当の主席には断られたと聞く……。そんな拙者が、胸を張って答辞を読んでいたと思うたか!」
「そらすまんが知らん」
「……女子であろうが、もう構わぬ。拙者に喧嘩を売ったことを後悔させようぞ」
「お、やる気になってくれたか。ほな、2番手がどんなもんか見させてもらおかのー」
「いざ尋常に……!」
バッ……
2番手は服を翻すと忍装束となった。
「ほほ、現代の忍者か……おもろい。アンタを倒して平伏させた――」
シュビッ……
消えたように懐に入りこまれる。
目で追えてはいたがその速さのため、一瞬対応が遅れた。
「覚悟……」
ドッ……
掌底で鳩尾を狙われたが間一髪、肘で受け切れた。
「イチチ……あっぶな! 女子相手に腹を狙うたぁ、ちょっち仕置きが必要やな」
「傷付けずに一撃で決めたかったのだが。少しは出来るようだな」
「フェミニストかいな。どちらにせよ、女子の腹狙う時点で許されへんのや」
「腹を狙わずとも拘束することなど容易い。ゆくぞ、《藤堂流 煙遁の術》」
ボムッ……
地面に叩きつけた玉から煙があがる。
死角を作られてあのスピードで不意を突かれたらさすがに受けきらんか。
「《藤堂流 金遁の術》」
カッカッカカッ……
煙の中から無数の金属片が投擲された。
これは……撒菱か!
「《藤堂流 捕縛の術》」
上に投げ出された網はウチの体を覆う。
「……これにて仕舞いだ。主席が聞いてあきれる」
瞬時にMAを展開する。
「【コンフォーコ・スイープ】」
ボッボッボッボッ……
辺りの撒菱と網を燃やし切った。
「なるほどのう。煙に乗じて撒菱で動きを封じ、投網で捕縛するんがアンタのコンボかいな」
「……傷つけずに勝敗を決めるのは難しいやもしれぬ」
「さて、今度はウチの番や。この«火»が忍相手にどれだけやれるか試させてもらうわ」
忍者言うたら基本、隠密や闇討ち。
煙幕やってそうやし撒菱、投網とどちらかと言うたら攻めよりも守りに近い。
そんな相手を倒すんはこっちも意表を突かんとな。
「ハァァァァ……【ヒート・ベザンテ】!」
*
「ばかな……拙者の……負けだ……」
「ハァハァ……。アンタ、もしかして無魔やろ? ちゃうか?」
「く……。敗北した挙句、それすらも見抜かれてしまうとは……」
「それは別にええやん。多様な忍術は目を見張るしの。せやけどそれは忍具在りきの話やった。アンタの弱点、忍法による属性攻撃が圧倒的に遅いことや!」
「…………」
「忍者言うたらもっと早く術が発動してもええんちゃう?」
「く……、拙者は……印を結ぶのが苦手なのだ。しかし当たりさえすれば……」
「誰が待ってくれるんや、あーん? 戦隊モンでも魔法少女モンでも、変身やらカッコつけポーズなんて炎獣は待ってくれへんで。アンタの忍法はもっと磨く必要があるわ」
「無念……さすらばひと思いに……」
「そんなんいちいちエエから。えーと……『藤堂』やったっけ? ウチは『逆井光』や。そんでウチに降りい」
「……は、今なんと――」
「うっさい。ええか、一度しか言わへんで。アンタはもっと強くなれる。ウチもな。んでこのガッコをシめるんや。後に続きぃ、藤堂!」
「……御意」




