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第32話 起死快晴(きしかいせい)

「一か八か……巌くん……協力してくれる……? 岩の礫を出して……ほしい。……あの……演習の時に見せてくれた……ガチガチに硬いやつ……。あれを空中で維持……しておいてほしい……」


「……ああ、だがそんな状態でいけるのか? ――考えがあるのだな。よし、全力でやってみよう。少し時間がかかるぞ」


 僕は無言で頷いた。


「――ごめん凍上さん。巌くんが……魔力を練れるまで時間を作って……もらえる?」


「うん、やってみる。【フリーズロード】!」


ビキビキ……


 そう言うとかなり厚めの氷がガーディアンの足元を覆う。

 足をしっかりと固定されたガーディアンは動けなくなっている。


 これで少しは時間が稼げそうだ。

 ――と思ったらガーディアンは再び口を大きく開いた!


「させない! 【アイシクルフィールド】!」


ビキビキビキ……


 凍上さんはガーディアンの口をも氷漬けにした。

 足元と口、両方の氷を同時に溶かせないことを願うしかない。


「よし、練れたぞ! 【グレイトフル・ユメロック】」


バキバキバキ……


 かなりの強度があるバレーボール大の岩を目の前に出現させた。

 僕は脚を引きずりながらその岩の礫に直接触れる。


 そこから僕の火を岩の中に入れ混む……。

 そしてフレイルボアの時のように発火推進をして回転させる……!


ギュルギュル……


「な……んだこれは……⁉」


 高速回転をする岩の塊。

 巌くんは驚いている。


「――今だ!」


 巌くんにはかなり無謀なことをさせてしまったかもしれない。


おう! ……うおお!」


 高速回転した岩の塊をガーディアンに向けて飛ばす。

 岩がガーディアンに当たる直前で、岩の中に入れ込んだ火を遠隔で爆破させる。


「魔法名……言うなれば……ロック……【ロックブレイカー】!」


ドゴォン……!


パラパラ……


 高速回転をした超高速の硬化岩の礫を相手に飛ばし、それを爆発させることで散弾銃のような効果が得られる。

 その威力はガーディアンの顔半分と上半身を吹き飛ばした。


「――うそ……凄い……」


「皇、すまん……もう一発かましたいがMPが尽きそうだ……」


 巌くんは膝をついている。

 かなり無理をさせてしまったかもしれない。


「う……うん、ありがとう。……これで狙い通りなんだ。これであの光線は打てないはず……」


 凍上さんの氷で、僕の足は感覚がないくらい麻痺している。

 そのお陰できっとかなり痛みを軽減できているのだろう。


「今度は……凍上さん、力を貸してくれる……?」


「皇くん。…………。――わかった」


「さっきの氷をこの辺り――」


「【フローズンロード】!」


 凍上さんは頼みたいことを知っていたかのように魔力を練り上げていた。

 頼んだ瞬間、高純度の氷が辺り一面に敷き詰められた。


ペリペリ……パキッ……ピシィッ


「――見事だな。寒さに強い俺がこの一瞬で『寒い』と感じるくらいの氷を張れるのか」


「確かに凄い……。これならいける……! 巌くん、ガーディアンのまわりを今までよりも硬い、目の荒い岩で覆える? ……できるならあそこの天井まで届かせて欲しい。厳しいこと言ってるのはわかるけど頼めるのは巌くんしかいない」


「……なかなか難しいことを言うが、俺しかできないんだろう。やらないわけにはいかないな」


 そういうと巌くんは力を集約させ始めた。


「はぁぁ……【グレイブグラニット】!」 


 そういうと先程よりも細かい穴がたくさん開いた厚い岩を天井近くまで張ってくれた。

 例えるなら、でっかい煙突付きのかまどのような岩でガーディアンを囲んだ。


「く……」


 膝をつく巌くん。

 MPが尽きてしまったのだろうか。


 僕も痛みをこらえてもうひと踏ん張り……。

 

「《バーニングリミッツ》!」


カッ……!


 岩の中を一瞬だけ灼熱の炎で焼き上げた。


「――凍上さん! あの岩自体を覆うように凍らせて……!」


「え、皇くん? それじゃ岩と氷……属性同士反発しちゃうんじゃ……?」


 如月さんは属性反発の理論を訴えているが、凍上さんは既に魔力を練っている。


「【アイシングフィヨルド】!」


 ほんと、手際がいい。

 そして何よりもMP切れも起こさずこれだけの魔法を連発出来ているのが凄い。


パキパキ……


 岩を覆う氷――いや、岩の隙間を埋める氷!


 岩を熱していたので、氷は少しだけ溶けたがすぐにまた凍った。

 これで、より密度が高くなり頑丈になったはず。

 言うなれば、属性反発の理論を覆すことができた。


 敵のガーディアンは司令塔であった顔の半分をふっとばされたせいか、先程よりも反応速度が鈍い気がする。

 手の色を青や赤に変えているが2属性同時に対応できていない。


 そして岩の壁も先程より耐久力がある。

 これなら簡単には抜け出せないはず。


 ――しかし足の痛みがひどくなってきた。

 見ると氷は溶けて血が流れだしている。

 時間もない。


 痛みをこらえ、最後に如月さんへお願いをする。


「如月さん……。あのガーディアンの足元から風――、風を地面から天井に吹き上げてもらっていい?」


「下から上⁉ やったことないけど……やってみる! いや、やるね! いくよ! ……【エンペラーサイクロン】!」


ビュウウウ……


 風が巻き起こる。

 やはり魔法同士、氷と風も互いに拮抗・反発してしまっている。


 反発し合うってのは本当らしいね……。

 だけど僕が火でつなぎ合わせる!


 如月さんの風を吹かせながら僕は高温の炎を送り始めた。


「……煙突効果って知ってる? これが皆の力を合わせた――【ライジング・サン・バースト】!」


メラメラメラ……ゴゴゴ……


 岩で覆った地面から灼熱の熱風が吹き出す。

 すると急激に暖められた氷が溶けて水になり蒸発、上昇気流を作り如月さんの風と混じる。


ゴゴゴゴゴゴ……ドゴ……ドゴン!!


 超強力な豪風がガーディアンを押し上げ、僕らが落ちてきた〖希少点穴〗の穴へと吹き飛ばした。


「――え、なに今の……??」


「はぁ……はぁ……た、助かったかな?」


「――そうみたいだな。新たなガーディアンが出現する様子もない」


「……あのガーディアンを倒さず〖希少点穴〗を――」


「それよりも! ねぇ! どうやったの⁉ あたしの風だけですっ飛ばせるわけないよ?」


「ふむ、全員の力がなければ突破できていなかったな。まず凍上の足止めにより、俺と皇の合わせ技である【ロックブレイカー】を練り上げるだけの時間が作れた。そして我らの魔法の威力たるや相手のドテっ腹――もとい顔面に風穴を開けることに成功した。これにより肉抜きをした状態となった。頭部を破壊することによりウェイトが軽くなり、視覚による判断力も低下させたんだろう。その後の俺の岩壁と凍上の氷。魔法同士結合することはないと思われたが、皇が岩を熱したのを確認した。一瞬焼いたことにより氷が少しだけ溶けて岩に張り付いたのだろう。これが強靭な氷と岩壁の中核を担ったのだ。最後の如月・凍上・皇の合わせ技。台風の原理と煙突効果か。あれならば巻き上がる火力は倍増するな。水ではなく氷からの蒸発はより一層の気圧変化を生む。それにより如月の風の威力が爆発的にあがったのだろう。どれも皇の機転と炎の自在さが勝利をもたらした」


「――へ? 皇くんって炎の魔法使えるの? 無魔なのに?」


「あ、しまった……今のでバレちゃった――?」


 加減する余裕がなかった。

 さすがに隠し通せるほど、巌くんの目は曇ってなかったか……。


「まぁ無魔なのに«火魔法»が使えるって聞いたことがないけど……この際どーでもいいよっ! お陰で助かったのは紛れもない事実だし! でも何で魔法使えることを黙ってたのさー!」


「これは……魔法じゃないんだ。……魔力も体力もない僕が火を使えたところで……け……結局、炎獣たちには効果がないしさ……。余計に馬鹿にされると思って――」


 足に力が入らなくなりガクンと膝をつく。


「皇くん……だ、大丈夫?」


ゴゴゴゴゴ……


「――それよりも扉が開いたぞ」


 猛者である爺ちゃんですらガーディアンを倒してはいなかった。

 恐らく〖希少点穴〗に落ちるってことは確率的に稀なこと……。

 こんな低レベルの僕たちが突破できたのは奇跡に近いかもしれない。

 この先、何が待ち受けているかわからないけど……もう限界が近い……。


 意識が遠のいてそのまま倒れそうになる。


「皇くん!」


 凍上さんが駆け寄ってくれた。

 こんな嬉しいことはない。


「強めの止血しておくね。【アイシクルキュア】」


ヒュオオオ……ビキビキ……


 患部が冷やされ血が凍る。

 血は止まったが一瞬、痛みは増す。


「く……っ」


 そりゃそうか、ガチガチに凍らせてくれてるんだもんな。


「え、これどうする? 先進むしかないの?」


「いくしかない。教師たちも血眼で探しているはずだ」


 巌くんはそういうと先へ進んでいった。

 他のみんなは尻込みしている。


「む、ちょっと来てみろ。これは――」


 巌くんが手招きしている。

 僕は足を引きずって巌くんのところへ進んだ。

なんか魔法の名前って……

中二感半端ない!!www

そんな魔法名考えてる自分が恥ずかしすぎるwww

……開き直りましょう。


R6.4.17

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