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第26話 恋話盲目(こいわもうもく)

「であるからして――魔法名は重要なのです。特許庁に登録されていない新しく考え出された魔法ならば、注目されて利用者が増えると言う訳です」


 あれから村富さんは病気で休んでるという。

 詳しいことは教えられていないが心配である。


「利用権とは登録された魔法を刻印・術式・配列から魔力砲身に読み取らせて使用できるようにするものです。つまり、魔法を特許申請して登録しておけば、他の人が使った分だけお金が入る仕組みになっております」


 もしかして……実はフレイルボアの蒸気にやられてたとか⁉


「皆さんも今後、自分で考え出した魔法があったら登録しておきましょう。魔法特許庁は設立されて間もないので――」


 いや、でもその後カンファも出てたしアイスも食べてるから関係ないか……。


「魔法登録されているものと自分の魔法との類似性が75%以上だと登録できません。ですから――」


 フレイルボア……、あの後無事に5合目へ帰ることができたのだろうか。


「あと先程も言ったように、魔法名も自分で考えてください。識別と宣伝が必要ということなので――」


 あー、『SLIソフト』美味しかったなー。

 また味家之屋行きたいなー。


「じゃあ班になってー。魔法を自分で編み出しててなおかつ、まだ登録していない人がいたら登録までの流れを行ってください。登録したことがあるという人がいたら教えてあげてー」


 あー……凍上さんの班は楽しそうだな……。

 楽しいからあんなにも素敵な顔して――。


バシッ


「いてッ」


「皇くん……? 随分上の空ね。まさか自分が魔法を使えないから魔法特許は必要ないと思ってない?」


「あ、いやそんなことは……」


「流れだけでも覚えておきなさい。このご時世、必要なことだから」


 ――怒られてしまった。

 今日は朝からずっとそうだ。

 何故だか身が入らない……。


 でも班長の村富さんがいないんじゃ誰が仕切ればいいんだろう。

 ……なんか如月さんも少しおとなしくなっちゃった……と言うか静かだし、巌くんは相変わらずだし。

 あんな性格でも村富さんのテンションに救われてたとこもあるんだな。


「――あぁ、3人! ごめんなさい、伝え忘れてたわね。あなたたち1班は班長が病欠だったのよね。えーと、確か散策の記録では……と。……うーん、次の散策もすぐあるし教頭の許可も出てるわね。じゃあ……3班の凍上さん。1班に入って」


「はい」



 ん……え……?


「ちょ、ちょっと待ってください。彼女は3班のメンバーで――」


 アッシュくんが止める。


「1班のバランスを考慮したものです。1位通過の3班からビリだった1班へ1名異動。これで互いの班は現在4人同士。大丈夫でしょ」


「それなら咲耶さくやくんの方が適任では――」


「何勝手に言ってるの? これは上層部の決定事項です」


 ……なんだなんだ、どうなってるんだ……!?


 隣に凍上さんが……座る。


「――よろしく。臨時かもしれないけど」


 ひ、ヒー⁉ と、凍上さん!

 一気に緊張が高まる……!!

 一体どうしろと……!?


「それじゃあ副班長の巌くん、班長になって仕切って。新しい副班長はそっちで決めてね。凍上さんは不死山での自身の役割とかも班員に話しておいて。村富さんの具合にもよるけど、もしかしたら呪界散策以降もそのメンバーになるかもしれないから」


 え……ってことは村富さんは長期の病欠扱いになるのか。

 大丈夫かな……普通に心配だ。


 ――けどこれはどうしたことか!

 別の班だったから少し諦めがついてたのに、まさか奇跡的に同じになってしまうなんて……。


 緊張でお腹痛くなってきた。

 恥ずかしいところを見られたくない!!!


「むう、班長という柄でもないが任命されたならやるしかない。じゃあ始めるか。俺の魔法で特許をとってないものは――」


 好きな人がいるっていうのはなんか……生活にハリがでるね。

 なんだろ、頑張れるっていうのかな。

 別に好きな人がいない時も頑張ってやってたつもりだけど、より一層頑張れる気がする。


 さすが恋のパワー。


「フフ……」


「む、凍上。なにかおかしいか?」


「あ、コホン。大丈夫です、続けてください」



 このあとも結局、集中できなかった。


 恋のパワーってよりも、盲目になってるのかもしれない。


 それだとダメだ、鍛錬を忘れないことだ。





「――ほほ。恋じゃな」


「ブッ……じ、爺ちゃ! 急に何言ってのんお!」


 ……噛んでしまった。


 あまりに的確に指摘されたから動揺を隠せなかった。


「前にも言ったじゃろ。お主はわかりやすいっての。ワシくらいの域になってくるとの。剣の切っ先で相手の心が読めるんじゃからの」


「いやいや、それはさすがに嘘でしょ……」


「ほっほっほ。さて、そろそろ新技でも覚えてほしいもんじゃが。その恋の力とやらで会得してみせぃ!」


 僕は恥ずかしさを振り払って無心に剣を振った。


 恋は生活に支障をきたすこともある。

 鈍足にも俊足にもなる。

 それをわかっているからこそ、やる時はやる。

 気持ちを切り替えてメリハリをつけなくては……。



 その日は普段の練習量の2倍近くこなした。

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