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第23話 完全懲悪(かんぜんちょうあく)

「おはよう一年諸君。これから反省会とカンファレンスがあるから一旦学校に戻るー。学校に着いたら班ごとに集まって空いてる教室を借りろー。んで、良かった点と悪かった点それらを話し合ってまとめておけー」


 学年主任の先生が話している。


 うんうん、学校らしいね。

 楽しくてしょうがないよ。

 長いこと、こういう学校の雰囲気を味わってなかったからな。

 学生っぽい些細なことが嬉しくてしょうがない。


「あーだるう。——ちゃっちゃと終わらせて味家乃屋みやのやいかなーい? あ、皇もくる? 巌は?」


「いや、俺は。——だが、乃屋のやと言えばコスパ最強の『ヤワラカ』。行きたいがオナゴにまぎれて行くのは少々気が引ける」


「え、巌くんってもしかしてスイーツ男子?w」


「なんで『ヤワラカ』知ってるのw しかも味家乃屋を『乃屋』って略すの、相当な通じゃない? さては常連? あそこのソフトめちゃうまいよねー。なら行く決定っしょ。皇ぃー、あんたにはボアとカレーの件があるから1本ごっそしてあげる。だから来な!」


「…………」


 ——半ば強引に行くことになってしまった。

 まぁいっか。

 これも同じ班ならではかな……。

 少しは打ち解けたってことで。



「というわけで反省会を行いまーす」


 班長の村富さんが仕切る。

 副班長の巌くんが教室を借りてきた。

 如月さんは何もしなそうなので僕が話し合ったことを提出用の紙にまとめた。



―――――――――――――――――――――――

¦ 第一回 不死山3合目散策          ¦

¦ 1班 村富、如月、巌、皇           ¦

¦                       ¦

¦ 目標                     ¦

¦ ・敵を早急に殲滅し、被害の拡大を抑える。   ¦

¦                        ¦

¦ 反省点                    ¦

¦ ・敵に対して必要以上の力を使ってしまった。 ¦

¦ ・ルートを見誤り、到着が予想以上に遅れた。  ¦

¦ ・料理担当を一人に任せてしまった。      ¦

¦                        ¦

¦ 良かったところ              ¦

¦ ・各自持ち得る属性で敵に対応できた。     ¦

¦ ・全員の力を合わせて乗り越えた。      ¦

¦ ・サポート魔法が強力だった。(ココ重要!) ¦

¦ ・自炊になったが作ったカレーがおいしかった。 ¦

¦                        ¦

―――――――――――――――――――――――



「ふう、言われたことは書いたと思うんだけど……これでいいかな?」


「皇……。あんた、字、達筆……」


「ふむ、見事な筆さばき」


「へー……」


 みんな僕の書いた書類に目を落としている。

 ……なんかいちいち恥ずかしい……。


「ま、まぁこれ出してミーティングも終わればアイス食べに行くんだよね?」


「お、やっと行く気になった?」



 ミーティングは適当に終わらした。

 まぁいっかぁ。

 ――って最近コレ、口癖だな。

 直さなきゃ……。



 そうして僕らは味家之屋へやってきた。

 お昼前なのに店の外まで並んでいる。


「うわ! 昼時なのに混んでるね!」


「やっぱ人気だよココ。『マリモッツォ』も『シルフィーユ』も好きだったけどやっぱ『ヤワラカ』は王道、外せないよね」


「うむ、それら全て甘くてうまいよな」


 ……巌くんの今まで見たことのない目の輝き……。

 本当に甘いの好きなんだ……。


「——おや、誰かと思えば1班の4人ではないか。君たちも来てたのかね」


 誰かに話しかけられる。

 3班のアッシュく——凍上さんもいる!


「アッシュ様! 3班のみんなも来てたんだ!」


 村富さんの声のトーンが1オクターブ上がっている。

 わかりやすい。


「お。アシモ、元気? ソフト食べな。G(ジャーマン)G(ジンジャー)(ソフト)。あれが一番刺激的だから」


「ア、アシモ……??」


「うん、アシモ。あだ名、気に入った?」


 アッシュくんの顔が引きつっている。


「き、如月くん……、コホン。すまないが僕らは1位通過をしたのでね。軽い祝杯をあげるのさ。だからソフトクリームではなくハンドメイドケイクを注文したわけで――」


「え、そうだったの? さすがアッシュ様!」


「へー、凄いんだアシモは」


 何やらそちらで楽しんでる様子。

 巌くんはというと、そちらには目もくれず列の前方を見ている。


 ——あ、アッシュくんと目が合った……。

 こっちに来た——!


「やあ皇くん。君もいたんだね。散策の結果は残念だったよ。君には期待したんだけど」


 ……魔法ナシ、腕力ビリの僕に期待って……。

 なんだろ、あてつけなのかな。

 でも応援してくれてるとか?

 本心は全くわからない。


「じゃあレディたち。行こうか」


 よく見ると同じ班のメンバーは全員女性だ。

 その中に凍上さんはいる。


 ——ハッ、凍上さんとも目が合った……。

 やっぱり素敵だなぁ……。

 でも入学式以来話してない……。

 逆にあの時、話せたことがラッキーだったのか。

 そりゃそうだよな……前世から運悪かったし。

 どうにか仲良くなれないものだろうか。


 ――って、ジーっと見られていた。

 ヤバ、て、照れる……!


 僕はつい目をそらしてしまった。

 ……自己嫌悪に陥る。

 はぁ、こんなんじゃお近づきなんてなれないよな。

 今度は僕から……話しかけてみよう。

 でもこの性格じゃあな……。


「それではまた」


 ケーキを受け取ったアッシュくんは店内に入っていった。


「アッシュ様……やっぱかっこいいわぁ。容姿端麗、成績優秀、それでいて英雄の孫なんてやばくない?」


「家はお金持ち。確かに玉の輿ねぇ……」


 盛り上がっている。

 うちらもそろそろ順番か――


「お⁉ マッブ! ねえねえ、おねーちゃんたち、暇してんの? 俺たちとソフトクリーム食べなーい?」


 と思っていたらまた横から話しかけられている。


 見たことない男2人——。

 ナンパってやつだろうか。


「えー? 今ちょっとツレと来てるんでー」


「あたし、ナンパとか初めてなんだけどウケる!」


「えー、ツレがいるの? この兄ちゃんら?」


「俺らといるほうが楽しいよ? もっと美味しいの買ってあげるからおいでよ」


 結構強引だな……。

 でも誘われて嬉しいんだろうか。

 こういう場合はどうしたらいいんだろ。


 ——燃やす?

 今なら遠隔着火で髪の毛とかごっそり燃やすことくらい容易いだろう。


 だが人前でいきなりやっていいものか……。

 まぁ本格的に危なくなったらそれもやむを得ない――。


 身構えていると、店内からアッシュくんが颯爽と出てきた。


「いやはや、レディにコバエがたかっているとは。振り払ってさしあげなくては」


「なにぃ? コバエだ⁉」


「てめぇ、ちょっと面貸せや」


「そうですね、殺虫しなくては」


 そう言って路地裏へいってしまった。


「……え、アシモ大丈夫かな」


「大丈夫! 強いから! わざわざ来てくれたのかな? ほんと素敵すぎ!」


「……僕、ちょっと見てくる……」


 そういって並んでいた列を抜けて路地裏へ向かった。

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