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第22話 率先炊飯(そっせんすいはん)

 作っているところをみられるのも恥ずかしいので皆には他の用事を頼もう。


「あ、あのさ……僕テントを張るのとか苦手だから料理を担当するよ」


「……ああ、俺はそっちをやっていよう」


「えー、皇が料理……? できんの?」


「でもカレーは簡単っていうから大丈夫なんじゃない?」


 言うことだけは言うんだから……。

 まぁいいか、食べられればきっと文句は言わないだろう。



トントントン……


 手際よく作っていく。

 爺ちゃんほどのスピードはないが、僕なりのやり方で丁寧に作っていく。


 これも全部、両親が亡くなってから料理を覚えたんだ。

 婆ちゃんも僕の料理だけはきれいに食べてくれてたし。

 なんだかんだ言っても、「コレやっといてよかったー!」って思うことって多々ある。

 料理はずっと使えるし。

 婆ちゃんの面倒みてたから将来は介護士とかできるかもだし。


 あとこれも持ってきといてよかった『爺ちゃんの包丁』。

 短すぎるから武器にはならないけど、いざって時に使うつもりでいたんだ。

 ——しっかし切れ味がやばいよこれ……。

 さすがこの世界では屈指の刀匠、感謝しよう。



「わー……いい匂い。へーおいしそう。やるじゃん、皇ー」


 テントを張り終えた皆が集まってきた。


「前に作ったことがあって。覚えてたからさ」


「うむ、腹が鳴るな」


「ちょっと一口味見!」


 如月さんがスプーンで掬ってつまみ食いをする。


「——!! えうんま! マジヤバい」


 真顔になった如月さんは、村富さんの口にスプーンを無理矢理突っ込んだ。


「アッグ! っちょっと! 熱い! ……んだけどなにこれ、うますぎ! え、外だから? 皇だから?」


「コクがあって芯までしっかり火が通ってて一晩寝かせたのかって思うくらい濃ゅぅい……」


 ……超恥ずかしい。


 別にドヤってもないしマウントとる気でもない。

 ただみんなが苦手そうだったから料理がちょっとできる僕が名乗り出ただけなんだ。

 想像以上に褒めてくれて照れる……。

 でもムカつかれたりしないかな……。


「うむ、確かにうまい。本気で腹が減ってる。もうメシにしよう」


 そう言って全員座って食べ始める。



「いただきまーす」


「んー……おいっしい! お父さんゴメンだけど、今まで生きてきた中で一番美味しいんじゃないかなコレ」


「今まで食べてきたのは何だったの——って思うくらい……。これが本物のカレーだと言うの⁉」


「これなら毎日でもイケるな。助かったぞ、皇」


 ……超絶賛してくれる。

 確かにキャンプカレーは割増で美味しいからなぁ。

 あと、火加減の調整も同時にやってたし。

 カレーは親父の十八番でもあったからな。

 これだけは子供の頃からずっと教わってきたから……。



 昼間の散策で疲れていたんだろう。

 ——みんなすぐ寝たようだ。

 一応、炎獣対策にテントの周りを巌くんが岩で固めてくれた。

 出ないとは思うんだけどね……。


 僕ももう寝よう……。







 まだ薄暗い時間……いつもの癖で早く起きてしまった。


 ……ちょっと早いけどランニングするか。


 僕はみんなが起きていないことを確認し、日課だったランニングに出かけた。

 近くを走るだけだ。


 他の生徒は近くの民宿に泊まっている。

 朝はみんなと合流して反省会、その後教師を交えたカンファレンスがある。


 昼には解散すると思うから、昨日の事を爺ちゃんに話そう。

 炎獣を参考にした火の活用方法を。



 軽く辺りを走って戻ってきたら如月さんが起きていた。


「あ、おはよ。あのさ——、皇くんのお陰で色々助かった。ごめんね……今まで悪く言っちゃったりしてさ」


 ——ドキッとした。

 そうか、見た目はギャルでも性格は素直だったんだ。


「いや、僕が悪いんだ。全然弱いし役に立ってなかったし」


「そうね、戦闘はぎこちなかったもんネー」


 そう言ってペロっと舌を出して笑われた。


 こうやって女性と話す事なんてこと、ほぼ無かったもんな。

 少し緊張……。

 女性恐怖症……とまではいかないけど、ちょっとやっぱり身構えちゃうんだ。

 仕方ないけど。



 ……みんなも起きてきた。

 さ、クラスと合流しよう。

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