この世の理に逆らう物達へ
『俺は不要とされた。てっきりそれは俺だけかと思ったが俺だけでは無く、沢山の仲間が俺同様に不要とされていた。俺は自分一人の為だけに社会を変えたいなんて、そんな傲慢とも言える考えは微塵も持っていない。だから俺一人が不要とされたのなら諦めもした。だがそうではない。だから俺は声を挙げた。皆の前で声を挙げた。皆それぞれの場所へと戻り、自らの地位を取り戻せと』
それは宣言ともいうべき言葉だった。それを聞いた物達は、尺取虫や芋虫のようにしてモゾモゾクネクネと闇夜の街を這いずり回り、密かに家の中へと入り込む。そして人が寝ているベッドの中へと忍び入り、産まれた家とも言うべき穴の中へとウニウニウニウニしながら深く深く侵入してゆく……
という夢を見た。それは『持ち主を探して』『この世の理に逆らう物達へ』と、若しくは『排泄物の帰還』と、そんなタイトルが似合う夢だった。
夢の中でそれは穴の中へと戻っていったが、現実世界に於いてはそれが戻る事などありはしない。故にそれは夢らしい夢だったと、そう言えるだろう。実際それは外から来て中へと戻るのではなく、中から外へとガッツリ出ていた。目を覚ましたらゴッソリと出ていた。そう、その夢は正夢ではなく逆夢だった。
2021年07月26日 初版