糸を辿れば
僕は思う
欲しいは繋ぐことができる
何もしなければただの糸
力を入れればどんな糸も赤に変えられる
だから
「自分は今、猛烈に彼女の鍵が欲しい」
「はぁ?」
「わかってくれ、蒼、彼女、自分の天使、長谷川月の家の鍵が欲しい」
「えっと……110番?」
「ナチュラルに友を差し出すな?」
「いや、ナチュラルに犯罪発言すんな?」
「あれは入学式の日」
「おい、勝手に語り出すな? 今日は特にやべぇーな、寝てないのか?いや、そうであれよ?」
「よくあるだろう? 入学式に一目会ってから恋に即落ち、それから心を掴んで離さない、ついでに鼻も離さない」
「匂いフェチか!? というかキモイ!!」
「あれからというものいかに彼女の視界に入ることなく近づき御姿を目に焼き付けた、そして、ついに俺は成し遂げた」
「何を?」
「この目に写った美しさを書き記した」
我が友に見せてみせる
制作時間1ヶ月
彼女の御姿(シャーペンで書いた)を!
「うわぁ〜やべぇーな、瓜二つ過ぎて怖い」
「だが、足りない、美しさが! 月成分が足りない!」
「なんだ、その聞いたことの無い成分は」
「分からない、なぜ俺には正確に書けないのか」
「描けているよ? 世界中の似顔絵師が驚くくらいには瓜二つだよ?」
「そこで気づいた、彼女の家の鍵が欲しいと」
「思考の過程が見えん!」
「なぜだ!? なぜ分からない」
「わからんし! まず無理なんだろ?」
「ふふ、分かっていないな、今のこの世は連絡手段が進化している、そんな世の中、今やその人の連絡先を知りたいと思えば知っていそうな友人の伝手だけでその連絡先をゲットできると」
「まぁ、聞いたことはあるけど、それ最終的に本人に否定されれば無理なんだよね」
「ああ、だが、この計画の最後は彼女のお母様。つまり御聖母殿だ」
「いや、御聖母って……はぁ、どうやってやるつもり?」
すっと制服のウチポケットから取り出す、例のものを
「ワラです」
「は?」
「ワラです」
「……………………バカ?」
ジトーと見た後に溜息を1つつき吐くように一言発した
「否定はしない! だが、可能性があるのはこれしかない!」
「いや、阿呆やろ」
「この計画は」
「無視か!」
「名付けてわらしべ計画で鍵がゲット作戦」
「いや、まんま!」
「栄えある最初を〜」
溜めて指を指す
「ハズレすぎるわ!」
「そこをなんとか」
「はぁ……まぁいいや、じゃあコレでいい?」
そう言って差し出してくれたのは今日つけていたピアス
うちの高校校則がユルユルだからな……
「ふむ……それ持ってクラス行けば良いもんに変わるんじゃない?」
「そうか、名案だ! 行ってくる!」
食堂を小走りで出る、急いで御聖母殿の下に行ける品にせねば
「絶対に無理だと思うんだけどアイツならやるよな……」
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ガチャ
「は~……今日も疲れたな……」
「おかえりなさい!」
「…………………」
「………」
え? 部屋間違えた……?
いや、相手家族じゃないし……
え?
「えっと……どうしても会いたくて」
「何やってるの? いや、本当に何やってるの? 奏ちゃん」
「月ちゃん、突然だけど愛してます。付き合ってください」
「ものすごく怖いので遠慮します」
「そ、そんな…」
「いや、大分怖い。部屋に入ったら女の子が座ってるとか怖い! しかもの突然な告白!」
「えーじゃないかー」
「えーじゃない」
「う~~~」
「……と、友達からなら」
悲しそうに唸る美少女を見てるとこっちの悪者感が凄くついそう言ってしまうと
パーッと花のような笑顔になった
「ありがとう! これからよろしく月ちゃん」
何となくやばい子と友達になったのかもしれない
けどこんなに可愛い笑顔が見れるのは少し嬉しいかも
期待と不安
ちょっと不安の割合が多いけど
新しい可愛い友達に顔がにやけてしまう
No.3