あのこと このこと はんぶんこ
紙芝居を想定した書き方をしているので違和感があるかもしれないです。
クロはミャーオと鳴く子猫。
シロはニャーンと鳴く子猫。
クロ
「ミャーオ。ミャーオ。僕は黒猫、黒いクロ。僕のお目目はお月様みたいに黄色いキラキラ」
シロ
「ニャーン。ニャーン。私は白猫、白いシロ。私のお目目はお日様みたいにオレンジキラキラ」
双子の猫の子、クロとシロ。
2匹は仲良し子猫の子。
*
ある日、お日様昇った日。
ごはんの時間になりました。
クロはムスリと膨れ面。
煮干しがイヤと尻尾を振る。
クロ
「ヤダヤダ。煮干しは苦いんだ。硬いし不味いし、美味しくない」
シロ
「あらあら、そーお?私は煮干しが大好きよ。だって骨が丈夫になるもの」
カリカリ。モグモグ。ニャーン、美味しい。
ご機嫌で煮干しを食べるシロ。
グーグー、ミャーオ。クロのお腹が小さく鳴った。
お散歩してからお昼寝して。
また、ごはんの時間になりました。
クロはムスリムスリと膨れ面。
レタスがイヤとヒゲを張る。
クロ
「ヤダヤダ。レタスは味がしない。匂いもしないし美味しくない」
シロ
「あらあら、そーお?私はレタスが大好きよ。だって毛艶が良くなるもの」
シャキシャキ。モグモグ。ニャーン、美味しい。
ご機嫌でレタスを食べるシロ。
グーグー、ミャーオ。クロのお腹が大きく鳴った。
グーグー。グーグー。クロのお腹が鳴っている。
お腹が空いた。何か食べたい。
でもでも、煮干しもレタスも美味しくない。
シロは煮干しもレタスも美味しそうに食べていた。
美味しいのかな。どうなのかな。
お腹空いたな。どうしようかな。
シロ「ねぇねぇ、クロ。半分こしよう」
シロが言った。
シロ「1匹で食べるより2匹で食べる方が美味しいよ。どっちも体に良いものだから美味しいよ。ね?一緒に食べよう?」
クロ「うーん…半分こにするなら…」
2匹で食べたからちょっとだけ。
煮干しもレタスも美味しかった。
*
ある日、お日様昇った日。
散歩の時間になりました。
クロはムスリと膨れ面。
ネコジャラシの道がイヤだって。
クロ
「ヤダヤダ。ネコジャラシはあっちにユラユラ、こっちにフラフラ。全然捕まらないから面白くない」
シロ「あらあら、そーお?私はネコジャラシ大好きよ。だって、遊ぼ遊ぼって言ってくれるもの」
フワフワ。ポテポテ。ニャーン、面白い。
ご機嫌でネコジャラシと遊ぶシロ。
ポツーン。ミャーオ。クロは独り。
ごはんを食べて、お昼寝して。
また、お散歩の時間になりました。
クロはムスリと膨れ面。
電車の道がイヤだって。
クロ
「ヤダヤダ。電車はうるさいんだ。それに速くて大きくて怖いから、全然面白くない」
シロ
「あらあら、そーお?私は電車が大好きよ。だって風がビューッと吹いてとても気持ちいいもの」
ガタガタ。ゴトゴト。ニャーン、面白い。
ご機嫌で電車を眺めるシロ。
ポツーン。ミャーオ。クロは独り。
ポツーン。独り。寂しいなぁ。
クロの耳がしょんぼり落ち込む。
つまらないな。なにかしたいな。
でもでも、ネコジャラシも電車も面白くない。
シロはネコジャラシも電車も楽しそうに遊んでた。
面白いのかな。どうなのかな。
つまらないな、どうしようかな。
シロ「ねぇねぇ、クロ。半分こしよう」
シロが言った。
シロ「1匹で遊ぶより2匹で遊んだ方が楽しいよ。きっと良い方法を教えてあげる。ね?一緒に遊ぼう?」
クロ「うーん…半分こするなら…」
でも、ネコジャラシも電車も半分にできない。
どうするのかな?
ガタガタ。ゴトゴト。電車が来る。
そよそよ。サラサラ。…ブワリッッ!!
ビューンッッ!!!風が吹いた!!!
バサーッと、さあ、ネコジャラシが倒れた!!
シロ「それ!今だ!」
電車の風で倒れたネコジャラシに、シロとクロが飛びついた。
シロ「ほらね?捕まえられた」
ニコニコしながら言うシロに、クロはニマニマ笑って頷いた。
2匹で遊んだらちょっとだけ。
ネコジャラシも電車も楽しかった。
双子の猫の子、かわいい子。
2匹で仲良く半分こ。
シロ「ね?クロ。楽しでしょ?」
クロ「シロと遊んだから、ちょっとだけね」
クロはちょっとだけ笑ってそう言った。
*
ある日、お月様が昇った日。
夢見る時間になりました。
シロはニャーンと飛び起きて、小さく丸まり震えました。
クロ
「シロ。どうしたの?」
シロ「怖い夢を見たの。とっても暗くて寂しい夢。とってもとっても悲しいの」
クロがシロの涙を舐めてあげましたが、涙は止まりません。
どうしよう。クロは考えました。
クロ
「あ、そうだ!ちょっと待っててね。シロが好きなもの持ってくる!シロが教えてくれた美味しいものと面白いもの!」
美味しいものは煮干しとレタス。
面白いものはネコジャラシと電車。
でも電車は持ってこれないから、電車の話をした。
電車がオレンジだったって。
それでもシロは泣き止まない。
どうしよう。どうしよう。
シロは言ってた。
1匹で食べるより2匹で食べる方が楽しい。
1匹で遊ぶより2匹で遊ぶ方が楽しい。
だから全部半分こ。
あ!そうだ!
クロ「ねぇねぇ、シロ。怖いの半分こしよう!」
クロはシロに寄り添ってそう言った。
クロ
「僕は怖いのが得意だから、シロの怖いの半分もらう。僕はシロに泣いてほしくないから、シロの悲しいの半分もらう。
僕はシロと楽しいことして笑うのが好きだから、
だからお願い、泣かないで。
怖いのも悲しいのも半分こ」
2匹一緒ならなんでも楽しい。
2匹一緒なら何も怖くない。
シロはやっと小さく笑った。
シロ
「クロと一緒ならちょっとだけ。怖いのなくなったよ」
クロとシロの双子の猫の子。
小さな可愛い子猫の子。
愛しい子たち。
どうか、優しい良い夢を。
随分前につくった作品。
思い入れがあるので記録。