第77話 そしてまた生徒会
「絶対に忘れない。お前の生き様、お前の存在全部。ありがとう、武満」
俺には武満の血が流れている。
だから武満のことは忘れはしないだろう。
……………………
とうとう帰国の日となった。
生徒会のメンバーも結構俺のこと心配してくれてたみたいだし。
早めに帰らなきゃな。
俺は支度を急いだ。
もちろん姉さんや委員長も一緒だけど。
「俺と委員長はいいとして……問題は……」
姉さんだ。
あの人の私生活のだらしなさは俺が保証する。
仕方なく俺は姉さんの部屋に行く。
そして案の定起きてすらいない。
「ほら姉さん……」
俺ははなびにやるやり方で起しにかかった。
これでも中々起きない。
しぶとい人だな……
俺は苦戦した。
そのとき、腕が布団から伸びて俺を布団に引っ張り込んだ。
「うわあっ!」
そしてガッチリ腕の中に固定された。
「……起きてますね」
「うん」
「フガ〜〜〜!!さっさと支度せんか〜〜〜!」
俺は強引に引き剥がして姉さんを布団から引っ張り出した。
「うう……最近カイが冷たいよ〜」
「泣きまねしなくていいですから。早く支度を。あと1時間もありませんよ」
「ええ!?」
知らなかったんかい!!
俺は心の中で大きく突っ込んだ。
突っ込みに大小あるかどうかは訊かないでほしいけど。
「と、いうわけで早くしてくださいね!」
「は〜い……」
姉さんは渋々支度し始めた。
「全く……」
俺は姉さんの部屋から出て父の部屋に向かった。
もう父がそんなに怖くなくなってしまったのは秘密である。
コンコン
もちろん入る際にノックは忘れない。
「誰だ?」
相変わらず厳格な声だな、と思った。
「カイです。挨拶に参りました」
「入れ」
前までだったらこの部屋に自分から入るなんて想像もしなかった。
「失礼します」
父は仕事をしていた。
朝早くから大変だな……
「えーと……今日帰りますので挨拶に参りました」
「そうか」
それだけ!?
相変わらずぶっきらぼうだな。
「えーと……当主選のことも含め、いろいろお世話になりました。有難うございます」
「当然だ。お前は息子だからな」
このセリフを言っているときも仕事をしながらで、目も合わせてくれない。
別にいいですけどね。
「では失礼します」
「ああ、約束を忘れるなよ」
俺は父に背中を向けて部屋から出た。
その際に父がきちんとこちらを見ていたことを俺は知らなかった。
見送りにはかなりの人数の人が来ていた。
嬉しいやら悲しいやら、父は来なかった。
「はぁ……」
期待するだけ損だな。
「じゃあ行くわよ」
「そうだな」
姉さんに連れられて俺と委員長は飛行機に乗り込んだ。
俺はシートベルトを閉め、窓の外を見た。
高橋さんが大手を振っていた。
俺もそれに答えて少し手を振った。
そして視線を上へずらすと父が窓の外からこっちを見ていることに気がついた。
俺は親指を立てたが、父親は顔を背けるだけだった。
「はぁ……」
「相変わらず素直じゃない父親ね」
「フフフ」
姉さんと委員長がそんな父親を見て言う。
まあそういうもんか。
そして俺達を乗せた自家用ジェット機がアメリカを発ったのだった。
もちろんそのときに父親は、小さくなっていく飛行機に向かって親指を立てたのだった。
久しぶりに帰ってきた日本は、離れる前とほとんど変わっていなかった。
変わったのは時間だけ。
そして……
「もうすぐテストじゃんか!!」
そう、結構長く滞在していたためにテストが5日後に迫っていたのだ。
「カイ〜〜〜!!」
「おっ」
生徒会のみんなの姿が見えた。
久しぶりだ。
早朝なのにみんな揃って俺のことを待ってくれていたのだ。
「久しぶりだな!」
俺はみんなの元へ駆け寄った。
「お前なんだか変わったな」
「そうか?」
妙なところで敏感な俊哉。
「まあそれでもカイはカイじゃない!」
「ははは」
はなびは相変わらず元気がいい。
「まあ死ななくて良かったわ」
「オイオイ……」
物騒なことを言うのはレイ。
「それより早く荷物置いてきたら?」
「そうだな」
現実的なことを言う咲。
「みんな待っていたんですよ〜」
「ゴメンゴメン。いろいろあって」
ナナちゃんが笑いながら言う。
「これでまた欲求不満が解消されるわ」
「何の?」
「カイ弄り」
「結局それかい!!」
で、相変わらずドSなさや先輩。
「で、挨拶は?」
「ただいま」
『おかえり!!』
俺は、生徒会に帰ってきた。
そして早速……
「勉強スタートね」
「うわあ!!」
咲、さや先輩、レイによって強制的に俺は勉強させられることになった。
場所はさや先輩の家。
まあテスト直前だし仕方が無いけどな。
「さや先輩、受験は?」
「もう終わったわよ」
「うわあ……早いっすね」
さや先輩だから受験のほうは大丈夫だろう。
「咲とレイは大丈夫なのか?」
「人のことより自分の心配したらどう?」
「う……おっしゃるとおりです」
結局レイに言いくるめられる俺。
さや先輩=レイ>ナナちゃん>はなび=咲>俊哉>俺という方程式が成り立っている!?
というか考えたの誰だよ。
こんなくだらないの。
「集中!」
「はいぃぃぃ!!」
俺はさや先輩の声に縮こまる。
こんな男ってどうよ?
ヘタレ以外の何者でもないよね。
そして結局勉強をすることにした。
まあそうしないとやばいしね。
「でさ、俺のいない間に面白いことあった?」
俺はみんなに空白期間の出来事について訊いた。
「面白く無いことはあったわ」
「え?」
レイが真剣に俺を見つめる。
「真里菜先生が今年で学校辞めるそうよ」
「え!?」
何で!?
とは思わなかった。
なぜなら思い当たる節があるからだ。
もちろん教師らしからぬ変な行動もあるのだろうが、確実なのが一つある。
「俺達のせい……だな」
「ごめんなさい」
「さや先輩のせいでもないからさ!悪い人は誰もいないんだよ」
俺はもう心の中にいない武満に同意を求めた。
「まあ一応俺は今から真里菜先生に謝ってくる」
「それを口実に勉強から抜け出す魂胆ね」
「す、鋭いぞ咲」
珍しく咲にしては鋭い。
というか頭いいから分かるのかもしれないが。
「だってカイは先生の家分かるの?」
「う……」
頭使わなくても分かることだった。
「まあ今日は日曜だしゆっくり勉強しなさい」
「ゆっくり勉強!?」
俺はさや先輩の非常な言葉に絶望した。
「ならビシバシやる?」
「いえいえ、ゆっくりやらせていただきます」
俺は今日1日勉強させられ続けた。
向こうでも勉強させられてたんだけどな……
そして俺達はさや先輩の家から帰るまで勉強し続けた。
翌日、俺は真っ先に真里菜先生のところに向かった。
「先生!」
「カイじゃないか!会いたかったぞ〜」
俺は真里菜先生の抱擁をさっと避けた。
「先生、学校辞めるんですよね!?」
「なんだなんだ。久しぶり会ったと思えばそんな辛気臭い話を……」
真里菜先生はシリアスな雰囲気を嫌う人だ。
だからそんな話は聞きたくはないのだろう。
「えーと……俺のせいで……すいません……」
するとズイッと真里菜先生は顔を俺に近づけた。
「な、何ですか……?」
俺は声を上ずらせる。
「心配するなら体で示して欲しいものだな〜」
「え?か、体!?」
俺はカチンと体を固まらせた。
「そ、カ・ラ・ダ」
「えっとそれは……」
俺は少し後ずさった。
だって男だもん、この人。
心は女だけど体は男だもん。
「どう?」
「う、う、う、うぎゃあああああああああああああああ!!!!!!」
俺は一目散に逃げ出した。
当たり前だけど。
「どうしたの?そんな息切らして」
「何でもないです」
もちろん俺は先ほどのことを自らの胸に留めることにした。
そして放課後になった。
「はぁ……ここでも勉強か……」
俺達は生徒会室で勉強に励んでいた。
メンバーは俺、はなび、レイ、咲。
さや先輩は勉強せずにグデ〜っとソファーに寝転がりながら雑誌を読んでいた。
……私物はここに持ち込んじゃいけないんだけどな。
そんなことをさや先輩には言えないので、俺達は気にせず勉強していた。
「あれ?ナナちゃんは?」
「何か忌引きで早退したそうよ」
さや先輩がだらしなく答える。
この光景をファンクラブが見たらやばいだろうな。
「へえ……」
俺達はナナちゃん抜きで勉強を再開した。
……
そうそう、俺言わなくちゃいけないことがあるんだよ。
「なあみんな」
一斉にこちらを向く。
「あ、その……」
そういえば俊哉もナナちゃんもいないじゃん。
「いや、みんな揃ったときに言うよ」
俺は言うのを止めた。
でも早めに言わなくてはいけないな。
でないと……
? SIDE
「花、いいですか?」
「ああ。君が今回の、だな」
「ええまあ……」
彼女は皇家を訪れていた。
もちろん武満の墓参りだ。
「彼女も逝ったのだな」
「はい」
皇家当主の質問に彼女は目を閉じて答えた。
そこには悲しみはなかった。
「そうか……君は寂しくないのか?」
「それはもちろん寂しいですよ」
どうやら彼の威厳は彼女に特に効いていないようだ。
「でも、寂しがってももう彼女は戻ってきませんし、何より彼女が成仏できないじゃないですか」
そう悪戯っぽく舌を出した。
それを黙って皇家の当主が見ていた。
「そうだな。清美もそう出来たら……」
「あ、私の前の拠り代さんですね。奥様なんですか?」
「そうだ」
彼と彼女の会話には遠慮というものが存在しないのだろうか。
何せ一回りも二回りもそれ以上歳の離れている二人なのに。
「全く結婚後、彼女が突然消えてしまったらしく、それ以来自分の殻に閉じこもるというか、人の愛し方を忘れてしまった」
「あ、そうそう、伝言です、彼女から清美さんに」
「伝言だと?」
彼女は思い出したように言った。
「結構清美さんのこと気にかけていたんですよ、彼女。突然消えてしまって申し訳ない、でみ清美なら大丈夫、頑張って、だそうです」
「ずいぶん短いな」
当主は少し目を細めた。
「何か清美さんは彼女曰く単純な女だそうですから」
「ハッハッハ。否定はしないがな。良かろう、伝えておく」
「ありがとうございます」
彼女はぺこりとお辞儀をした。
「それと……私のことはカイ先輩に内緒にしておいてくださいね」
「ああ。しかしよく隠し通せたな」
「先輩は鈍感なんですよ」
「なるほど。ハハハハハ!」
「クスクス……」
二人はともに笑い合った。
そして……
「そろそろ帰りますね。嘘ついてしまっているし」
「わかった。もう会うことも無いと思うが」
「冷たい人ですね……」
そして二人はまた笑い合った。
季節は春になろうとしていた。
To Be Continued……
何も書くことありません。
そ、そうだ!
しりとりしよう。
しりとりのり⇒りんご⇒ゴリラ⇒ラ、ラ、ランデブー⇒ブラック⇒クロスカウンター!⇒タスマニアタイガー!⇒画竜点睛!⇒稲荷!⇒り、り、リンカーン!
お、終わってしまった!
……何このテンション。