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生徒会な日々  作者: 双樹沙希
第三部 飛翔
92/104

第74話 一歩前に生徒会

頭の中がパンクしそうです。

決意を新たにした俺の行動は早かった。

まずは姉さんの動向をチェック。

そして会いたくもない父に相談など……

俺は徹底的にチェックした。

「お前から私のところへ来るとはな」

「今はなりふり構ってはいられないんだ」

「ふむ」

俺はまず当主を味方につけることにする。

「だが私は最初からお前に投票するつもりだ」

「へ?」

俺は拍子抜けした。

「当然のことだろう?劣等感の塊にいれるとでも思ったのか?」

「オイ。それは誰のことだ」

「想像に任せるよ」

「クッ……」

やっぱり気に食わない。

俺の反応を見て楽しんでやがる。

「で、話はそれだけじゃないだろう?」

「ああ」

もちろん姉さんのことだ。

「姉さんは委員長……皇夕陽を推薦した。姉さんが勝算なしにそんなことをするとは思えない」

「そうだな」

それには父も同意した。

「それを裏付けるものとして、意外とあの場が動揺しなかったこと」

俺は思い出した。

委員長を推薦するといったときの驚きのほとんどが分家であったことを。

「つまり動揺しなかった人たちはすでに姉さんが皇夕陽を推薦するのを知っていた……最悪動揺しなかった者全員が姉さんに投票するかもしれない」

「ふむ。大した洞察力だ。私もその部分は気づいている。だが、充分崩せる箇所はある」

父は俺に向かって意地の悪い笑みを浮かべた。

「何かその笑い、嫌なんだが」

「ははははは。随分長く落ち込んでいたわりには元気だな、と思ったのだよ」

「……サディストめ」

俺はコイツにも試されていたのか。

ああなんかムシャクシャする。

「カイ、私がお前を推薦したのはお前への愛情でも、蓮見さやのためでもない」

父が俺を真剣に見る。

「お前なら皇を任せられると思ったからだ。そこの部分は覚えておけ」

「……」

俺は無言で部屋を出た。

……父が俺のことをそう思っていたのは意外だったというか……

でもやはり皇第一なんだな……とがっかりしてみたり……というかあの親にそんな愛情なんてものは無いだろ!

俺はそう自分に言い聞かせて次々と行動を起した。



俺は廊下を歩いていると見知った人が前に見えた。

「高橋さん!」

「カイ様!?」

俺の変貌ぶりに驚いているようだ。

そりゃあ昨日とは大違いだしな。

「心配かけてすいません。俺はもう大丈夫ですから」

「あの、その……」

「と、いうわけで。ありがとうございました!」

「え?え?」

俺は振り返らずに前に1歩踏み出した。



3日目になると家の中が慌ただしくなってきた。

そういえばこの日はDNA鑑定の結果が出る日だ。

だからなのか、全体的に騒がしい。

「結局どういう結果なんだろうな?」

俺は近くにいた人に訊いてみた。

「どうやられっきとした皇家らしいですよ」

「そうですか」

やはり。

だからといって諦めるわけには行かない。

そのとき俺は姉さんと擦れ違う。

「俺は負けません」

「!」

姉さんは急いで振り返る。

だが俺は振り返らない。前しか見据えない。

そしてまた1歩前に進んでいく……



その日の夜、俺の部屋に予想外の客が来た。

……皇夕陽だ。

「カイさんこんばんわ」

「い、委員長……」

「少しお話いいですか?」

俺は頷いて委員長を部屋に入れた。

「エッチなことは期待しないでくださいね」

「するかぁ!!」

入室早々これかよ。

「まあ姉と弟の背徳的な交わりは頭の中だけで」

「頭の中でもしねえよ!」

何で夜中にツッコミをしなくちゃいけない?

「それで、どういう用件ですか?」

俺は委員長を見つめた。

「カイさん、一体どうしたんですか?」

「へ?何が?」

いきなりどうしたのかと言われても困ります。

「前まで結構落ち込んでいたじゃないですか」

「あ、ああ。そうだな……」

何で知っているんだ?

まあでも少し考えれば分かることか。

「俺は姉さんに頼りすぎていた。覚悟が足りなかった。それだけの話。ま、それも人に気づかせてもらったんだけどね。俺、鈍感だし」

「……クスッ」

委員長は少し呆気にとられていたが、すぐに小さく笑った。

「それで、本題は?」

「え!?」

今度は委員長が驚く番だ。

「本当の気持ち……言った方がいいんじゃないのか?」

「私の……気持ち……」

俺は委員長に言った。

「分かるよ。委員長ってさ、あんまり戦う気無いでしょ?」

「そ、それは……」

前々からおかしいと思っていた。

前から覚悟していたことなのに、俺とギクシャクするのは委員長らしくない。

それに推薦されたときの委員長は……なんだか乗り気じゃないような気がした。

「別に俺が有利になるようにしているわけじゃない。でも言いたいこと言わないと……後悔すると思う」

「……鈍感という割には敏感じゃないですか」

「俺も驚きだ」

俺はおどけて見せた。

「……分かりました。本心を言います。覚悟してください」

「へ?」

「私は弟であるあなたと戦いたくありません。傷付けたくありません。正直あなたが部屋に閉じこもったとき、私はすごく後悔しました。マイ様……姉さんのためとはいえ、あなたと戦いたくなどありません。姉さんも同じことを思っています。だから私がスケープゴートになりました。」

委員長がすごい勢いで言い終わった。

何だか恥ずかしいのだが。

「ん?ちょっと待って。そうまでして姉さんは何がしたいんだ?」

「それは……」

突然言いよどむ委員長。

「……まあいいや。で、本題を今なら言える?」

「……カイさんって人が悪いんですね。全てお見通しということですか」

委員長は少し俺を睨んだ。

「いやいやこれはその……」

「当主様の入れ知恵ですね」

「はい」

俺は降参した。

もちろん分かると思うが全て父の作戦だ。

鈍感な俺がいろいろと気づくわけが無い。

……と言って見るけど、実は薄々気づいていたり……

「はぁ……分かりました。私は辞退するつもりです」

「……それでいいの?」

「当主としてどちらがふさわしいのかなんて一目瞭然ですよ。確かな決意をして戦いに赴くカイさんと……ただ言われるがまま戦いに行く私」

委員長は少し目を伏せる。

姉さんのことが気がかりなのだろう。

「だから辞退します」

「……これって喜ぶべきところなのかな?」

「どうでしょう。ですが私も嬉しいことがありますよ」

「え?」

委員長が妙に明るい表情で言う。

俺はもちろんそれを疑問に思った。

「カイさんにお姉ちゃんと呼んでもらえます」

「ああそうか……ってはぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」

つい大声を出してしまった。

「シーーーーーッ!もう夜ですよ」

「す、すいません。でも委員長が変なことを言うから……」

「変なことじゃありませんよ。夢だったんですよ、お姉ちゃんって呼ばれるの」

「……」

俺はつい冷めた目線を送ってしまった。

「言ってくれないんですか?」

「う……」

委員長が目を潤ませながら訊いてきた。

これは反則だろう。

「わ、分かりました……お、お姉ちゃん……」

恥ずかしくなって俯きながら言う。

「もう一度お願いします」

「ちょっ!恥殺す気ですか!?」

「何ですかそれ?」

「俺が今考えました!」

だからけっして誤植ではない。

……メタスマン降臨。

はなびが暴走……

俺、死亡。

……意味が分からん。

「まあいいでしょう。これから二人のときはそう呼んでください」

「は、はい……」

あれぇ?

これってシスコンなのかな?

はぁ……そういえば俺って年上の女性にめっぽう弱い気がする……

はなびとレイと咲……あれ?同世代も弱いぞ。

ナナちゃんとレミちゃん……おや?年下にも弱いぞ。

「って俺って全女性に弱いじゃないですか〜〜〜〜!!!!」

「?」

「いえ、何でもないです」

俺は急いで取り繕った。

「じゃあ私はこれで……ありがとうカイ」

「は、はい……お、おね、お姉ちゃん……」

うわあ!

出来るだけ委員長と二人にならないようにしなければ!!

俺はそのまま寝た。



で、当日になって委員長の辞退票を俺に流れるようにしたおかげで俺は当選したのである。

もちろん姉さんは結構怒ったらしい。

「カイ!」

姉さんが俺のところにやって来た。

「当選おめでとう……と言いたいのだけれど……」

「な、何ですか?」

まさか……怒られるのか!?

「部屋に来なさい!」

「は、はい!!」

これはやばいぞ。かなりやばい。

何だか体が震えているし。

俺は黙って部屋まで付いて行った。

そして悪魔の部屋に入った。

バタン

ドアが閉まった。

姉さんが振り向いた。

姉さんが近づいてきた。

「う……」

まずいぞこれは。かなりまずい。

「カイ……」

ヒィ〜〜〜〜ッ!!

何かかなり逃げ出したいんですけど。

「寂しかったんだから!!」

ギュ〜〜〜

「グォォォォォォッ!!」

俺は姉さんに思いっきり抱きしめられた。

しかし抱きしめる力が強すぎて、どっちにしろ殺されそうだ。

「し、死ぬ!マジで!ギブ!ギブ!ギブだっつぅの!!」

俺はもがいた。

それはもう必死で。

死の恐怖から。

「ご、ごめんね」

ハッとなった姉さんが急いで俺を離した。

怒られると思っていたのにこう来るとは……姉さんの震えは我慢から来たものらしい。

「あ、あの……姉さんは何がしたかったんですか?」

「それは……」

俺は姉さんの本心が知りたかった。

「わざと俺の敵になったのですか?それとも別の目的が……」

「……そうね。両方、と言ったら欲張りかしらね」

「へ?」

「とにかく私の出る幕はもう無いわ。ただ……」

姉さんの顔に怒りが浮き出る。

「た、ただなんですか?」

俺は引き攣った笑顔になった。

「父に今頃笑われてると思うとイライラするわね」

「ハ、ハハ。分かりますよ、その気持ち」

俺は姉さんに同情をしておいた。

……でも笑われていると思うと確かにイライラする。

いつまでもあの人の手の上だと思うとね。

「じゃ、じゃあ俺はこれで」

俺は急いで姉さんの部屋を出て自分の部屋へと向かった。

しかし……

「やべえやべえ。まさか迷っちまうとはな」

俺は迷子になってしまった。

「オイオイ……この歳で冗談じゃないぜ」

俺は途方に暮れた。

ドクン

「!?」

突然心臓が高鳴った。

そして右を向くと……

「あれ……この部屋は……」

俺は思い出していた。

初めてここに来させられたときのことを。

「確か前もこの扉の前で止まったな……。そういえば武満もなんか言ってたっけか」

俺は興味本位でドアの取っ手を握った。

ガチャガチャ

「あ、鍵掛かってやがる」

どうやら鍵が必要なようだ。

それにして何でこんな変哲も無い扉が……

ん?何の変哲も無い?

おかしいぞ。

他の扉に比べてどうしてこの扉は地味なのか。

まるで何かを隠しているような……

「こんなところで何をしている、カイ」

「うわっ!」

突然声をかけられて俺は声のほうを見た。

「と、当主……」

声の主は当主だった。

「こんな書庫に何の用だ?」

「え?この部屋の中って書庫なの?」

「そうだ」

「へえ……どうりで古臭いと思ったわけだ」

俺は適当に納得する。

あんまり関わり合いになりたくない。

「フン。次期当主とあろう者があんまりうろちょろするな。挙動不審だぞ」

「いやその……それはそうなんだけど……道に迷ってしまって……」

「……」

父が俺を哀れみの目で見つめる。

「な、何?」

「最初の仕事はこの家の内装を覚えることだな」

そして父のSPの一人に自室へと俺は帰っていった。



……うん。

あの部屋には武満の言うとおり何かあるかもしれない。

行ってみるか。



俺は眠ることにした。



そのとき何故か知らないが、俺は無性に武満に会いたくなった。




次回は核心かもしれません。



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