第67話 エニグマエンドか生徒会
タイトルは気にしないでください。
Nana SIDE
私達が蓮見家と約束をして1週間が過ぎた。
ちょうど今日が約束の期日だ。
私達5人は蓮見邸の中に集合した。
しかし、そこにはまだカイ先輩がやって来なかった。
「カイの奴何してるのよ!」
はなび先輩がいらいらして悪態をつく。
その気持ちも分からなくない。
「ダメね。携帯も繋がらないわ」
レイ先輩は携帯を弄りながらそう言った。
さや先輩はしきりに私達と時計を気にしていた。
先輩も信じているんだろう。
カイ先輩が来るのを。
その婚約者さんは先ほどから目を閉じたまま動かない。
さや先輩のお父さんは余裕なのか、姿すら見せていない。
「本当に何してるの……」
咲先輩も不安がっている。
女性を待たせるなんて随分とカイ先輩は失礼だ。
でもまあカイ先輩だから、と返されたら何も言えない。
でも連絡くらいはした方が良いと思うのですが?
かくいう私も時計を気にしていた。
確かに1週間後と言っただけで時間は決めてない。
だから明確に言えば今日の23時59分59秒までにここに現れればいい。
しかしそんなことするくらいならさっさと現れた方がいいのに……
それとも何かあったんじゃ……
とか考えてしまう。
「まさかアイツ……時差のこと忘れてたりして……」
『あ』
ありえる……
だってカイ先輩だから。
うっかりもののカイ先輩だから。
私達は容易に想像できる光景を思って静かにため息を吐いた。
「もう!でも携帯に出ないのはおかしいですよ!」
私は文句を言いたくなった。
この気持ちは分かって欲しい所です。
そんなことを考えているうちにもう午後になってしまった。
「はぁ……もう……」
はなび先輩はもう悪態つくことも出来ないようだ。
ていうかこの状況じゃ何も出来ないから暇だ。
さすがに山手線ゲームやモ○ハンをするのは空気を読めない。
まあ私は自他共に認めるKYだけど。
で、夕方になったのにまだ来ない。
いつまで待たせるのだろうか。
私達はお腹も空いて大変だ。
ギャラリーは無駄に多いし。
「あれ?カイの奴まだ来てないのか?」
「あ、真里菜先生」
真里菜先生がやって来た。
今日は日曜日だから学校は無いはずなのだが……
「しょうがない奴だな……」
「先生は何かあったんですか?」
「私か?ああちょっと仕事を」
え〜。
この先生が仕事〜?
失礼だと思うけど信じられないですね。
「何だその目は?」
「何でもありませ〜ん」
私は顔を背けた。
はぁ……もうすぐ夜ですよ〜。
Kai SIDE
俺は焦っていた。
何故か?
時差を考えていなかったからだ!
皮肉にもみんなの予想が当たってしまったわけなのだが、もちろん俺は気づいていない。
なので現在はまだ飛行機の中だ。
「ああ!こんなことならもっと余裕持てばよかった!!」
俺は今更になって後悔した。
「頼む!頼むぜ!間に合ってくれ!!」
俺は心からそれを願った。
Toshiya SIDE
俺は時計を見た。
時刻は午後6時。
カイはまだ来ない。
「何やってるんだよ……」
もう1日の4分の3が終わってしまった。
俺達にはどうすることも出来ない。
ただ祈るだけ。
ついでにさや先輩もなんだかんだいってカイに来て欲しそうだし。
早く来ないと俺達全員からのフルボッコじゃすまねえぞ。
俺は落ち着きもなく同じところを行ったりきたり。
「少しは落ち着きなさい」
レイが俺に言う。
「お前は随分落ち着いてるな」
「そうでもないわ。表に出していないだけ」
「そうか」
カイなら分かってしまうんだろうな。
まあそんなものはどうでもいいか……
俺は結局歩き回った。
あれからさらに4時間後、さすがにギャラリーも口々にカイの悪口を言い始める。
「逃げた」とか「臆病者」とか口々に言い始めている。
はなびちゃんはそのたびにこめかみをひくつかせて咲に宥められてる。
それをいいことに悪口はどんどん発展する。
さや先輩の婚約者の衛という男はそれでもずっと目を閉じたままだった。
「もう来ないよアイツ」
「アハハ……やっぱりさやちゃんとは釣り合わないんだよ」
その悪口の合間に当主がやってきたものの、特に何も言わなかった。
「……大人って嫌だな」
俺は思ったことを口にする。
何せ俺にも近くに似たような人がいる。
俺は時計を見た。
22時23分。
タイムリミットまであと1時間37分。
さすがの俺も焦る。
アイツのことだからポカミスで遅れているのだろう。
そのとき突然周りが騒々しくなった。
「何だ?」
俺は窓の外を眺めてみた。
「オイオイ……空から来るなんて随分と格好つけてる登場だな……」
俺は空から降ってきた親友の姿に笑みを隠せずにいた。
Kai SIDE
「ヤッベ〜〜!!あと2時間しかねえじゃん!!」
俺はやっと日本に到着した。
ポカミスのせいで遅くなったが何とか間に合うだろう。
「はい。これにどうぞ」
「ヘリコプター?」
目の前にあるのはヘリコプター。
それ以上でも以下でもない、単なるヘリコプター。
「これで行くのかよ」
でも時間が無いので俺はそれに急いで乗り込んだ。
「はい、これも」
渡されたのはパラシュート。
「ええと……ようするに上空から行くんですかね?」
相手は俺の質問に頷いた。
「マジかよ……スカイダイビングなんてやったことねえよ……」
俺は目の前のインストラクターを見た。
彼は余裕そうだ。
「諦めて飛ぶか」
俺は覚悟を決めた。
まあ全部時差を忘れていた自分が悪いのだが。
俺は黙って着席した。
「速い速い!もう蓮見邸か!」
俺はスカイダイビングの準備をし始めた。
何とか間に合う……
俺がさや先輩を守る……
もう少しだ……あと少しだ……
「では開けます」
「ああ」
ヘリコプターの扉が開いてインストラクターの人が飛び出した。
そして俺もそれに続く。
「えーと……」
俺はヘリコプター内で教えてもらった方法でパラシュートを弄った。
「まだですよ!もっと降下しないと風で飛ばされます!」
「あ、そうか……」
俺はインストラクターの合図を待った。
早く合図してくれよ。怖いし。
重力加速度のせいで俺のスピード凄いんだぜ。
「そろそろです」
「はい!」
俺は言われたとおりパラシュートを開いた。
「おっ!いい位置に行くな」
俺は安心した。
これで大丈夫だ……ん?
マズイ。このままじゃ蓮見邸の窓にぶつかる。
このスピードでぶつかったらどうなると思う?
下手すると死ぬよな?
俺はそこで俊哉と目があった。
「俊哉ぁ!!窓!窓!」
俺は大声で叫ぶが聞こえていないだろう。
なのでジェスチャーをした。
すると俊哉が手をポンと叩いて窓を間一髪開けた。
それと同時に俺も窓から屋内へと入ったのだった。
「ふう……」
みんな唖然として俺を見ていた。
まあ当然だろうな。空から現れる、というのも中々無い光景だ。
でも失礼だよな……
「皇カイ。只今戻りました」
「はっ!」
そう言われてさや先輩のお父さんがハッとなる。
「お前!窓からなんて失礼だぞ!」
「あ、ははは……」
まったくもってそうです。
弁解の余地は無い。
「まあまあそうカッカするな、蓮見の」
何で親父がここに?
親父の声が大広間の入り口から聞こえた。
「お前は……我豪!何でここに!?」
もちろんだろう。
普通、皇家の当主がここに来るわけが無い。
「まあ息子の晴れ舞台を見に、な」
嘘だ。俺のことを試しているんだ。
「何だと!?まさか小僧、お前は!?」
「皇家次期当主候補、皇カイです。以後お見知りおきを」
「カイ!あなた本当に!?」
さや先輩が驚いている。
まあ事情の知らない人はみんな驚いている。
「お、お主がそのような身分だったとは……」
オイオイ……皇の名を使っただけでこれかよ。
さや先輩が驚いている。
「それで俺をさや先輩の婚約者として認めてもらえますか?」
「そ、それは……!!」
圧迫されてるさや先輩の父親。
俺の親父の睨みも少なからず効いているようだ。
「カイくん……君は皇家の人間だったんだね……」
衛さんも驚いている。
「と、当主!!」
衛さんの父親らしき人がさや先輩の父親に叫んだ。
「この約束は衛が勝手に結んだもの!初河崎家とは何ら関係ありません!そんな約束を守る必要なんて無いですぞ!!」
自分が劣勢になったらこれか……
呆れるぜ。衛さんもかわいそうに。
「蓮見家当主殿。お答えを」
「……ふむ。確かに。皇家の人間となれば話は別だ」
俺の表情が緩んだ。
「しかしだな……お前はさやを一生かけて守れるか?」
何だよいきなりこの人も父親みたいなことを言いやがって。
さっきまでは娘の都合なんてお構いなしだったじゃないか。
「当然です。俺は約束はきちんと守ります!そう、さや先輩に約束しましたから」
俺がさや先輩に微笑を向けると、さや先輩は少し照れていた。
「ふむ。よかろう」
「当主!!」
初河崎家の当主が叫ぶ。
「もう決まったことだ。お主は下がれ」
「ぐうっ……」
あの男は自らの栄達についてしか考えてない。
さや先輩を何だと思ってるんだあの男は。
最後にあの男は俺を一睨みして退室した。
「さて、ここからは大人の話だ」
「!?」
親父が蓮見家当主に言い放った。
「この婚約を機に蓮見家は我らの傘下に入ってもらおう」
『!?』
「何だと!?」
親父はこんなときに何を……
「お主らの財力は強力な武器だ」
「親父!」
「何だ?」
親父が俺を思い切り睨んだ。
やっぱり怖い。体が震えてきそうだ。
だが、こんなことさせるわけにはいかない。
「それはいけません!蓮見家とは今後とも対等な関係であり続けるべきです!」
「ほう」
俺は親父を睨み返した。
「ふむ。そこまでいうなら……この話は無かったことにしよう」
「え?あれ?」
何ですぐに引き下がったんだ?
親父は踵を返して帰っていった。
「我豪め……そういうことか……」
「え?」
何か蓮見家の当主が唸ってるんですけども。
「分からないの?」
レイが近くに来た。
「今のあなたの行動は次期当主候補としての威厳を見せる行動になったのよ」
「え?そうなの?」
「あなたの父親が演技してあなたの評価を高めたのよ」
「そ、そうだったのか……」
俺はレイの発言に納得した。
「それよりも」
はなび達もやって来た。
「やることがあるでしょ」
俺はさや先輩を見た。
「さや……先輩」
俺はさや先輩に近づいていった。
「カイ……」
「さや先輩……」
「私に無断で何してるのかな?」
「ええ!?俺いきなり糾弾!?」
何故かさや先輩に怒られた。
「で、でもこれは……その……」
「アリガト」
「え?」
今、ありがとうって言ったのか?
「何でもないわ。それよりあなた無茶したわね」
「え?あはは……」
俺は再びさや先輩と笑い合えるようになれた。
今度は婚約者としてだけど。
でも俺達の関係は変わらない。
さや先輩の尻に敷かれる俺、という俺の立場は。
Another Story
俺はあの後、衛さんと二人で外に出た。
見送りのためだ。
「あの……衛さん。すいません」
「どうして謝るんだい?」
「それはその……衛さんもさや先輩のこと好きじゃなかったのかな〜?みたいな」
そういうと衛さんは笑い始めた。
「え?違うんですか?」
「違うよ」
俺は心の中でほっと胸をなでおろした。
「僕にはね好きな人が別にいるんだよ」
「そうなんですか?」
「そうだよ。距離が近すぎて分からなかったんだけどね、僕はその女性をずっと守っていくと誓ったんだ」
「そうなんですか……」
衛さんも大変な恋愛してるんだな……
「どういう方なんですか?」
「ははは……まだまだ子供だよ。元気が有り余ってて、いつも笑顔で俺の後に引っ付いて来るんだよ」
「それって……!」
「おっと、迎えの車だ」
衛さんは車に乗り込もうとした。
「じゃあねカイ君。また会えたら……酒でも酌み交わそう」
「俺まだ未成年ですよ」
「じゃあ二十歳になったら連絡してよ、ははは」
「さようなら」
「さようなら」
俺は衛さんと別れた。
そして俺は……
ちゃんとやるべきことをやらないとな。
その日の夜、俺はさや先輩と話しこんでしまって帰るのがものすごく遅れた。
「オイオイ……皇家次期当主候補にSPなしですか」
とは言っても俺がSPたちを無理に帰らせたのだが。
「カイ!」
「ん?」
大声でさや先輩に俺の名前を呼ばれた。
「さや先輩!?どうしたんです?」
「忘れ物!」
「?」
どうやら俺は何かを忘れてしまったようだ。
俺がさや先輩の下へ足を踏み出したそのとき……
パァン!!
銃声が鳴り響いた。
それと同時に俺の頭にものすごい衝撃が。
「あ……」
「カ、カイ!!」
俺、撃たれたのか……
俺は意識を完全に失ってその場に倒れこんだ。
「カイ!しっかりして!カイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
さや先輩の声がその場に木霊した。
To Be Continued……
家の事情で再び更新が遅れるかも、です。
申し訳ございません。