第66話 約束と生徒会
〜あらすじ〜
さや先輩救出作戦は一応終了。
この後どうするのか俺には見当つかなかった。
衛さんによって窮地を脱した俺はみんなのいる学校へと戻って行った。
親切なことに本当に1週間待ってくれるらしく、俺は途中で俊哉とレミちゃんと落ち合った。
「カイ、平気か?」
「ああ。俺は大丈夫。詳しいことは後で話す」
「そうか……」
そして俺達はレミちゃんと別れて学校へと向かった。
「ん?どうした?」
目的の屋上に着いたものの、はなびと咲がいない。
「彼女達は少し事情があるのよ」
「へえ……」
「ジトー……」
「な、何かな?」
何故かナナちゃんにジト目で睨まれた。
「何でもありませんよ」
「あ、ああ……」
ないわけないよな……
「じゃあどうなったか訊くわ。さや先輩は?」
「ああ、そのことなんだけど……」
俺は俊哉とナナちゃん、レイに先ほどの出来事を話した。
「そうなのね。咲ってそこまで根回ししていたのね」
「ああ。おかげで助かった」
俺は満足げな表情をした。
「何あなたは勘違いしてるの?」
「へ?」
俺の今の顔は間抜け面だ。賭けてもいい。
「私達はチャンスを手に入れただけよ。現状は何も変わってないわ」
「あ、そうだったな……」
何を浮かれているんだ俺は。
「これからどうするつもり?」
「そうだな……」
どうすればいいんだろうか。
「どうすればいいんだ?」
俺は逆にレイに訊き返した。
「……これじゃ意味ないわ」
ガラガラ
そのとき咲とはなびが戻ってきた。
「あれ?はなび、どうしたその目」
はなびの目が赤く腫れていた。
「これはその……」
「そんなことよりカイ!」
「は、はい」
俺は強い口調で咲に呼ばれて、背筋がピンとなった。
「どうすればいいのか分からないの!?」
「あ、ああ」
俺はたじたじになって返した。
「あなたが皇家に帰れば全て済む話じゃない!」
「ええええええええええええええええ!?」
俺は絶叫した。
「そうか」
「それもそうですよ!」
「なるほど」
「そういえばあなたはそうだったわね」
俊哉とナナちゃん、はなびとレイがみんな咲に賛同した。
「いや、でもさ……」
俺は躊躇った。
「躊躇っている暇なんてないでしょ!」
そして咲は急いで携帯を取り出してどこかへと電話を掛けた。
「あ、もしもし長谷川?至急例のものを準備して」
「れ、例のもの?」
俺は咲の会話に疑問を浮かべた。
そして電話を切った咲が俺を見た。
「今すぐ行くわよ!」
「え?え?どこにだよ!」
俺は咲に引っ張られて屋内へと入れられた。
そしてみんなも俺を追ってきた。
俺達はその後校門の前に駐車していた車に乗った。
「これから行くのは飛行場よ」
「ええ!?もう行くの!?準備してねえよ!主に心の!!」
俺は車の中で吠えた。
「うるっさい!!」
ゴン
「はでぶっ!」
予想通りはなびから拳骨を食らった。
ていうか俺一応セバスチャンさんの猛攻を受けて体はボロボロなんですけど。
「ところで咲、美作家と蓮見家対立しそうじゃない?」
「大丈夫よ。そこのところも大丈夫」
「本当かよ」
「これは私の独断だから」
「それはある意味かなりマズイんじゃない?」
責任は全て咲にあるということなのだから。
「そんなものはカイが皇家に戻れば全て解決するでしょ?」
「いやまあ……」
マジであの人とまた会うのかよ……
あんまり気乗りはしないな。
でもさや先輩を守るためだ。
覚悟は決めよう。
「あ、そうだ。姉さんに一応電話しておかないと」
「それは私からするから平気よ。事情を説明する時間も惜しいでしょ?」
「そうだ……な」
姉さんのことは咲に任せよう。
「本当俺はみんなに助けてもらってばっかだな……」
「何言ってるのよ!私達は仕方なく助けてるんだから!」
仕方なくを強調するはなび。
はなびらしいな。
「ああわかった。ありがとうな」
「結果出してこいよ」
「出さなかったらハリセンボン飲ましますよ」
「期待はしてないけど」
「私達は信じてるんだからね」
「ああ」
俺はみんなの発言に大きく頷いた。
「着きました、お嬢様」
「ありがとう古澤」
俺達は美作家の私有飛行場にやって来た。
「さすがは咲……」
はなびが感心している。
まあ誰でもそうなるよな、普通。
「じゃあ行って来い!」
俊哉が俺の背中を押す。
「これであなたの生か死か決まりますよ……」
「怖いねナナちゃん!!」
ナナちゃんも一応押してくれる。
「約束だよ?」
約束……か。
俺は咲の約束を破ってばっかりだけど、今回は守らなくちゃな。
「バイトの方は任せて。私があなたの給料も貰うから」
「君は背中を引っ張っているね!」
レイは相変わらず。
でもこれが彼女なりのエールなんだろう。
「カイ」
「はなび?」
はなびが俺に静かに近づいた。
「え?」
はなびが顔を赤くしながら俺に近づいてくる。
こ、これはもしや……
「目を瞑って」
俺は目を瞑った。
ま、まさか……
俺はつい妄想をしてしまう。
な、何なんだ?
ドゴッ!!
「痛〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
俺の胸に痛みが走った。
「な、何するんだよはなび!」
「しばらく会えないからその分のパンチよ」
「いらねえよ!そんな痛み!」
はぁ……やっぱりはなびははなびだったか……
「はなびも奥手ね……」
「はなび先輩の恥ずかしがりや」
何か後ろの方で俺達のことをぶつぶつ言っている輩がいるが、無視した。
「じゃあ俺は行ってくる」
『行ってらっしゃい!』
俺はみんなに微笑んで美作家のジェット機に乗り込んだ。
そして俺はアメリカへと飛び立っていった。
Nana SIDE
「ところでみなさん」
私はみんなに訊いた。
「私達ってどう処罰されるんでしょうかね?」
『……』
予想通りみんな黙った。
カイ先輩に心配かけないようにみんな配慮したし。
そっち側は真里菜先生に任せるしかない。
Kai SIDE
さてさてまさか皇家にまた戻るなんて思わなかったぞ。
正直言えば憂鬱だ。
二度と戻る気は無い。
だが、今はそんなことを行っている場合じゃない。
「皇」の名前は驚くほどの力を持っている。
確かにこれならば蓮見家に対抗できる。
俺は複雑な気持ちのまま機内にいた。
「あ、そうだ。一応本家に連絡しないとな」
俺は携帯を取り出した。
「あ。皇家の電話番号に着信拒否設定がかかってる。全く……姉さんも心配性だな」
俺は密かに解除して皇家に電話を掛けた。
プルルルル……
ガチャッ
「もしもし」
高橋さんの声だ。
「もしもし蛟刃カイですけども」
「坊ちゃま!?一体どうされたのですか!?」
予想通り高橋さんは驚いている。
まあ俺もまさか戻るとは思わなかったし。。
「今からすぐ本家に行く。当主にそう伝えてくれ」
「ええ!?今からですか!?」
「ああ。着地地点を確保してくれ」
「は、はいぃぃぃ!かしこまりました!!」
俺はそう言って電話を切った。
当主はどんな顔をするのだろう。
やはり予想通りといって笑うのだろうか。
結局奴の言うとおりになったのだからやはり笑うのだろう。
はぁ……ムカツクぜ……
そして結局相手を前にすると気圧されるんだぜ。
本当にイライラするな。
だがまあ今はそんな小さいことにこだわっている場合じゃない。
今は……寝よう。
「カイ様着きました」
「ん? ああ」
運転手に起こされて俺は外に出た。
するとみんな俺に銃を向けていた。
「な、何で!?」
俺は急いで両手を挙げた。
あ、忘れてた。
ここ、アメリカだ。
「カイ、わざわざ美作の飛行機を使ってきたのか」
「時間があまり無かったもので」
当主の登場だ。
「どうせ俺の目的を知ってるんだろ?」
「そうだな。マイの来ないうちに済まそうか」
だからいちいち姉さんを引き合いに出すな。
俺の反応を見て楽しむな。
「では中に入ろう」
俺は黙って当主に付いていった。
外装や内装は1ヶ月前の何ら変わっていなかった。
まあ当然か。
「入れ」
俺は言われるままに応接室に入った。
「座れ」
命令口調なのは置いておこう。
「それで、話とは?」
ニヤリ笑いを浮かべる当主殿。
やはり笑うか、本当に気に食わないぜ。
「知ってのとおりお願いがあって参りました」
「ほほう。それで?」
コイツ……絶対分かってるだろ……
でも怖いから口には出せない。
「俺……いや、私を皇家に戻らせてください」
俺は生まれて初めて土下座した。
さや先輩にもしたことがない。
「どういう風の吹き回しだ?」
分かってるくせにあえて訊きやがる。
厭らしい言い方だ。
「私は今ある問題に直面しているんです。その問題を解決するには皇家の力が必要なんです」
俺は顔を上げずに言った。
「ほう、居場所は生徒会と言ったばかりなのにか?」
「そ、そうです」
こいつ絶対にサディストだ。
「そうかそうか。私も鬼では無い。この条件を飲んでもらおう」
「条件!?」
俺はその条件とやらを聞き入った。
Hanabi SIDE
カイが飛び立った次の日。
予想通り私達の行動は問題になった。
マスコミには圧力がかかっているおかげで報道はされなかったものの、学校ではそうはいかない。
もちろん私達にもそれ相応の罰が下る。
何より問題なのは、罰の下った人全員が生徒会系の人間ということだった。
私に至っては生徒会長。
しかし、真里菜先生のおかげで俊哉君とカイを除く私達4人は警告処分で終わった。
履歴書にも影響の出ないレベルである。
しかし、実際に突入したカイと俊哉君はそうはいかない。
停学3日間になってしまった。
履歴にも残ってしまう。
それでも真里菜先生の尽力で3日で抑えられた。
俊哉君は「平気平気。それよりカイだろ」とか言っていたけど本当に大丈夫だろうか。
しかも俊哉君は風紀委員長を辞職してしまった。
本人は当然だろと言っていたけど……
カイも生徒会長を辞めさせられてしまうだろう。
でも後悔はしたくない。
それ相応の見返りが返ってきたと考えればいい。
でもやっぱり私たち4人の罰が軽いというイメージは払拭できない。
なんだかんだいってカイと俊哉君に守ってもらった感じだ。
「カイ先輩来てないからマズイんじゃないでしょうか……」
「大丈夫だぞ。カイのお姉さんから連絡があったからな。だがやはり生徒会長は辞めさせられるだろうな……」
「そうですか……」
真里菜先生の言葉にみんな落ち込んだ。
「私の力が及ばなかったばっかりに……」
「先生のせいじゃありません。むしろ良くやった方です」
咲が先生を慰めた。
「今はカイの成功を祈りましょう」
私はみんなにそう言った。
そして約束の日へと徐々に近づいてく。
しかし
当日になったにも関わらずカイは来なかった……
To Be Continued……
やっと終わりが見えてきました。