第65話 決戦だ生徒会
長らくお待たせしてすいません。
〜あらすじ〜
さや先輩が俺に見せた涙。
俺は無力のまま何も出来ずに終わるのか……
でもそんな俺には仲間達がいた。
俺達はさや先輩を助け出すと決めて行動に移したのだった。
さて咲の思惑通りに事が進むのか……?
決戦の日。
それは人それぞれに訪れるものである。
人はその日に己の命運や存在意義などを賭ける。
そして俺達にとっての決戦の日は今日である、と思う。
俺達は蓮見邸の前にやって来た。
することは単純。
さや先輩に会って……その後は知らん!
咲は会えば何とかなると言っていたが……
それにしてもあまりに先を考えない作戦だ。
助け出す、と言っても俺達の行動に先は無い。
ただ仲間のピンチを助けたい、そう思っただけ。
だからか、俺達の士気は高い。
咲のおかげで美作家のバックアップもある。
これは戦いだ。
俺達は仲間を助けるために戦うんだ。
「で、正面から行く?」
レイが訊く。
「いや、裏から入ろう。潜入するのは俺と俊哉でいい。後は支援を頼む」
「わかったわ。幸い今日は婚約パーティだから警備も甘いわ」
そうレイに言われた後、俺と俊哉は裏手へ行った。
「じゃあ私は撹乱しに行きますね」
ナナちゃんとはなびは正門へ向かった。
「私とレイは学校ね」
咲とレイはバックアップのために学校で俺達に指示を出す。
そしてみんな所定位置についた。
後ははなびとナナちゃんの合図待ちだ。
「俊哉……準備は良いか?」
「ああ。お前は?」
「バリバリOK」
俺は俊哉に親指を立てた。
そして、数秒後に正門あたりがザワザワし始めた。
「合図だ!」
俺達は裏門の監視が気を取られている隙に監視員2人を昏倒させた。
「この服借りようぜ」
「そうだな」
まずは潜入成功、というところだ。
「鈍ってなくて良かったぜ」
「そうだな」
俺達は監視員の服を着て邸内を駆けた。
Hanabi SIDE
あの子も良くやるわね……
私は目の前のナナちゃんの一人芝居を見ていた。
彼女は正門で大声で怪我をしたと言って騒いでいる。
「痛い!!!!痛いです〜!!!!」
「君!病院に行ったほうがいいんじゃないかい?」
「私は私だ〜〜〜〜〜!!」
「はぁ?」
私要らないんじゃないんの?
と感じるほどナナちゃんはしつこかった。
帰ろうとする監視員全員を混乱させて帰さないようにする。
警備員の頭をもっと鍛えるべきだっただろう。
でもそれだけじゃダメだ。
ネタは尽きてしまうだろう。
「すいません、中央病院ってどうやって行けばいいんでしょうか?今から彼女をそこに連れて行きます」
私も参戦することにした。
「あ、それは……」
ナナちゃんのトークに疲れた監視員は私を見てうんざりしていた。
もうカイ達は潜入できたかな?
恥ずかしいからここから離れたい、というのが本音だけど。
「ここはこうこうでこうこう……」
監視員が道順を話したが、私はもちろんあんまり聞いていない。
「もう一度お願いします」
私は時間稼ぎのために言った。
すると警備員が少しうんざりして私に説明した。
「だからこうでこうこう……」
「救急車とどっちが速いでしょうか?」
私は出来るだけ会話の引き伸ばしにかかった。
「それは分からないなぁ……」
「分かりました」
そのとき携帯電話が鳴った。
「もしもし」
レイからだ。
「え?分かったわ」
どうやらカイ達は潜入に成功したらしい。
やっとここから離れられる……
「ほらいつまでしゃべってるの!」
「ですが日本の帝国主義は……」
「何をしゃべってるの!?」
さっきまで痛がっていたのに、どうやって話を摩り替えたのかしら?
私はナナちゃんを引っ張ってそこから去った。
彼女は精神科に行かされると多分警備員は思っただろう、うん。
Ray SIDE
私は学校の屋上に咲といる。
屋上の鍵は真里菜先生に予め持ってきてもらった。
「このGPSすごいわね」
「美作モータースのこういう技術は世界一という自信があるもの」
「そうね」
私は本気ですごいと思ったこの超高性能GPS。
さすがは美作モータース。
こういう技術は皇も蓮見も真似はできないだろう。
「無事進入できたみたいだけど、ここからは警備兵がうじゃうじゃいるわ」
「そうね。さすがにあの二人も見つかってしまうわ」
「でもそれであの二人を使えるときがくるわ」
「あの二人?」
私は咲に質問した。
「古澤と長谷川の二人よ」
「なるほど」
古澤と長谷川は咲の直属配下の護衛である。
詳しくは第36話で。
「古澤と長谷川を囮として使うわ」
「でも一回限りしか使えないわ」
「そうね」
私はこのときの咲の顔にある余裕までは計り知れなかった。
どうやらまだ策があるらしい。
「二人が中庭に入る寸前に古澤と長谷川を使うわ」
「わかった」
私は二人に指示を出した。
Kai SIDE
レイの指示によると俺達に援軍がいるらしい。
「じゃあ指示通り中庭に出るぞ」
俺と俊哉は中庭に出た。
もちろん壁伝いで。
「なあ俺達警察に捕まるよな」
「そうだな」
「だよな……」
今更ながら俺達のしていることの重大さに気づいた俺はやはり鈍感だろうか。
「ん?」
「上から人が」
上からパラシュートで二人落ちてきた。
「あれがレイの言っていた援軍じゃないのか」
その二人は俺達に近づいた。
というか今のパラシュートは絶対バレるだろ。
「我々二人が入り口にいる警備員を引き付けますので」
「わかった」
俊哉が返事した。
そして俺達は入り口付近にまでやって来た。
「警備は4人か……随分多いな」
「まあ当然か」
俺的にはむしろ4人じゃ少ないくらいだ。
「では我々が中央突破いたします」
「恩に着ます」
「ご武運を!」
そして長谷川さんと古澤さんの二人が駆けて行った。
「誰だ貴様ら!」
「侵入者だ」
「何だと!?」
何だこの会話は。
落ち着いて考えれば侵入者が正直に侵入者だなんて言わないだろう。
雇う警備員を間違えたな。
そして長谷川さんと古澤さんを追って二人の警備員が持ち場から離れた。
「よし。二人なら何とかなるだろ」
俺達は二人で警備員二人に近づいた。
「どうしたお前ら?」
「?」
普通に警備員に話しかけられて少し困った。
あ、そういえば今の俺達の格好は警備員なんだっけ。
俺は俊哉と顔を見合わせた。
俊哉が俺に合図した。
「どうしたうあっ!!」
「ぐあっ!」
同時に二人を昏倒させた。
「この技術を身につけたのが忌々しい過去のときだなんて皮肉だな」
「いいじゃないか。あのときのお前が今、役に立ったんだから」
俺達は二人を通り抜けてとうとう蓮見宅へと侵入に成功した。
「ふう……ここまで来たか」
「ここからが正念場だぞ。時間もあまりない」
「そうだな」
そのとき扉の向こうから声が聞こえた。
「おい、どうした?」
「まさか侵入者はさっきの二人だけじゃなかったのか!?」
どうやら見つかってしまったらしい。
「俊哉」
「仕方ない。いずれはこうなる。急いでいくぞ」
「ああ」
俺達はさや先輩を探しに先を急いだ。
In広間
「俊哉」
「ああ」
宅内に侵入して数分経った今、俺達は目の前の警備員の大軍を見た。
「これはヤバイだろ」
「そうだな」
俺達ははぁ……とため息を吐いた。
「で、どうする?」
俺が俊哉に訊く。
「決まってるだろ。さや先輩に会わなくちゃいけないのはお前。ならばここに残るのは俺。そうだろ?」
「俊哉……」
「ほら、行って来い!」
「悪いな」
俺は俊哉に背中を預けて先へ急いだ。
「さて、どうしようか……」
俊哉が少し苦悶の表情を浮かべているのを俺は知る由もなかった。
俊哉と別れてさらに数分。
一向に見つからない。
こんなことならもっと隅々まで蓮見邸を散策すりゃ良かった。
俺は疲れが溜まってきた。
「ん?」
そういえば婚約の儀って……
「まさか……大広間か!」
俺は闇雲に探していた自分を呪った。
俊哉やみんなが稼いでくれた時間を無駄には出来ない。
俺は大広間へ駆けて行った。
しかしそのとき。
「いたぞ〜〜!!」
「何!?」
あと少しのところで見つかってしまった。
「畜生!あと少しなのに!」
俺は走ろうとするが、疲れ始めている体では逃げられそうもない。
ここで終わりか……
「カイお兄ちゃん!こっち!」
「え?」
聞き覚えのある声に振り向いた。
「レミちゃん!どうして!?」
「話は後!早くこの部屋に入って!」
「あ、ああ……」
俺はレミちゃんに言われるがままに部屋の中に入った。
扉の外からこの部屋をスルーして駆けて行く警備員達の足音が聞こえた。
「ふぅ〜」
「ねえ忘れてた?」
「何が?」
俺は突然現れたレミちゃんに質問を返した。
「私はここの家の次期当主の婚約者の幼馴染なんだよ?」
「はっ!」
俺はレミちゃんから距離を取った。
「アハハ。冗談よ冗談。私は咲っていう人に呼ばれてここに来たの」
「咲が?はぁ……年上をからかうなよ」
「ゴメンゴメン。私もこの婚約止めないといけないし」
「え?何で?」
俺はレミちゃんの発言に疑問符を浮かべた。
「お兄ちゃんって鈍感なんだね」
何故もう分かった。
「私が足止めしておくからカイお兄ちゃんは先に行ってね」
「え……レミちゃんが足止め?」
俺は変な言葉が聞こえたのでもう一度訊き返した。
「そうよ。こう見えても合気道習ってるの」
「え〜。本当かよ〜」
俺は信じることはできない。
「本当よ!信じてくれないの!?」
「いやいやそういうわけじゃ……」
こううときはどうすればいいんだろうな。
俊哉だったら分かるのだろう。
「ほら早く早く!」
「うわっ!」
俺はレミちゃんに押されて扉の外に出た。
その後レミちゃんが合気道のポーズを取った。
「……確かに習ってそうだね」
「そうよ!」
「悪い!先を急ぐから!」
俺は大広間へと急いだ。
「……確かに習ってるわ。先週からね……」
レミちゃんの呟きも俺にはまた聞こえなかった。
「おっ!」
俺はとうとう大広間を見つけた。
「ん?」
しかしその扉の前に一人の人影が。
「お待ちしておりました。カイ様」
「セバスチャンさん……」
立っていたのはセバスチャンさんだった。
「ここまで来れたのは見事です。ですが、この先は通せません」
「俺はセバスチャンさんとは戦いたくありません」
「ですが私はこの家の執事。侵入者を排除する義務を持っています!」
そう言っていきなり俺に殴りかかってきた。
「は、速い!」
俺は寸でのところで避けたものの、あと少し回避が遅かったら危なかった。
「どうですか?私はあなたと戦う理由をもっています」
「俺は……」
「ありませんか?たとえ私がこの婚約の発案者だとしても?」
「な……!!」
俺はセバスチャンさんを見つめた。
一体どういうことなんだ?
「分からないのならば……体に分からせて差し上げましょう!」
「さらに速い!?」
俺は必死に回避する。
「ハハ……今の執事って戦うのも仕事なんですかね……」
俺は冷や汗を掻いた。
この人は出来る!
下手をするとやられる。
「どうしましたか?お嬢様を助けるのではないのですか?」
「クッ……!」
俺がセバスチャンさんを倒さなければ先には進めない。
これは確実。
だが、どうやって勝つ?
相手はそこらへんにいるチンピラじゃない。
喧嘩のプロ級の腕前の人だ。
「どうしましたか?その程度なのですか?だとしたらとんだ見込み違いですね」
セバスチャンさんがまた来た。
俺は初撃の右ストレートをかわしてカウンターの態勢に入る。
「あぐうっ!」
そのときボディに強烈な攻撃を食らった。
そのカウンターを予知されてまともにミドルキックを浴びてしまった。
「甘いですね。単なる年寄りだと思うと痛い目に遭いますよ」
「そう……ですね」
くっ……さっきの一撃はヤバイな。
外村の攻撃なんか蚊みたいなものと感じるくらいだ。
「俺は……さや先輩を助けるんだ!!」
再び俺はセバスチャンさんに向かっていく。
ただ闇雲に相手の動きを見てはダメだ。
この人には視覚で動きは捉えられない。
感覚を使わなければ。
俺は不良時代の経験を思い出した。
「はあっ!!」
初撃はかわされ、カウンターが来る。
しかし俺はそのカウンターもかわしてさらにカウンター。
そしてセバスチャンさんも俺のカウンターをかわして……
といった攻防がある程度続いた。
「はあっ……はあっ……」
俺は今までここに来るのにもかなりの体力を使っている。
だからもうすぐ体力が無くなりそうだ。
「どうしました?」
「はあっ……はあっ……」
ダメだ……この人まだ全然息が上がってねえじゃん……
俺は表情だけ虚勢を張った。
「終わりですか?」
「まだまだっ!!」
しかし疲労した俺がセバスチャンさんに勝てるわけがなかった。
じわじわと体力を削られた後、最後に強烈な一撃を浴びせられる、といった攻防に変わっていった。
「まだやりますか?諦めればこれ以上傷つきませんよ」
ドクン
「!!」
吹き飛ばされて倒れている俺の心臓が高鳴った。
もう……傷つかない……
諦めれば俺は傷つかない……
楽になれるんだ。
だからもう……頑張らなくても……
「お、俺は……」
“ダメの中のダメです”
“お前もらしくねえぞ”
“アンタはさや先輩がどうなってもいいわけ?”
“みんなさや先輩を助けたいと思っているのよ!”
“そんなの全然カイらしくないわ!”
みんなの言葉がフラッシュバックする。
「違う!!」
俺は大声で叫んだ。
自分の愚かさに嫌気が差した。
「ハハハ……」
「?」
セバスチャンさんが首を傾げる。
「ゴメンみんな……また俺は諦めそうになった……けど……俺は絶対に諦めない!どんなに傷ついても、何度だって立ち上がってやる!俺には仲間がいるんだ!」
俺は立ち上がった。
何か体の底から力が湧いてくる感じだ。
「ほう。まだ立ち上がりますか。常人ならばもう倒れてもおかしくないんですがね」
「悪いな……俺はみんなと約束したんだ。さや先輩を助けるって!」
俺は再びセバスチャンさんに向かう。
「その意気だけは認めて差し上げましょう!」
セバスチャンさんがこっちへと向かった。
俺達の拳が交差する。
そして再びその攻防に負けて俺が吹っ飛ばされる。
「やっぱり勝てないか……」
「諦める気になりましたか?」
「普通の方法ではな!!」
「は?」
俺はセバスチャンさんに自分の履いている靴を飛ばした。
「飛んでけー!!」
「こ、これは!?」
セバスチャンさんが驚く。
「普通の戦い方じゃ勝てなければ普通じゃなければいい!」
「クッ……」
セバスチャンさんは予想外の攻撃に一瞬硬直した。
俺はその隙を突いて一気に距離を詰めた。
「はっ!!」
セバスチャンさんは堪らず俺に蹴りを繰り出した。
「読めるぜ!」
俺は向上した身体能力でその蹴りをかわした。
「な……」
俺は上空に跳び上がっていた。
自分でも驚くくらい跳んでいる。
「これでも食らえ!!」
俺は隙だらけのセバスチャンさんに渾身のハイキックを食らわせた。
「グオッ!!」
俺の攻撃で吹っ飛んで倒れるセバスチャンさん。
その後、俺はきちんと着地した。
だが突然体全体に痛みが。
体の節々がもう限界かもしれない……
俺は倒れたまま動かないセバスチャンさんに近づいた。
「どう……なった?」
「……効きましたよ。カイ様の想いは」
「セバスチャンさん……」
セバスチャンさんは仰向けになったまま俺に言った。
「お嬢様をお頼み申します……よ」
「セバスチャンさん!」
しまった!やりすぎたか……
「大丈夫です……軽い脳震盪でござい……ます……それよりお嬢様を……」
俺は大きく頷いて疲れ果てた体で大広間の扉を想いっきり開けた。
ザワザワ……
みんなこっちを凝視して騒いでいた。
「な、何だね君は!」
「さや先輩!」
俺は話しかけてきた中年のオッサンを無視してさや先輩の下へといった。
みんな唖然として何も出来ないでいる今がチャンス。
「カイ!どうしてここへ!?」
「さや先輩を助けに来ました!」
「え!?」
さや先輩が驚いている。
無理もない話だろう。
「外に咲たちがいます!だから!」
「ちょっ!何よ一体!?」
俺は強引にさや先輩を引っ張った。
「ダメよ!」
「俺はさや先輩が好きなんです!だから……こんな婚約破棄してください!」
「あ……う……」
さや先輩が俯き始めた。
「婚約者の前で告白かい?カイ君」
「衛……さん……」
俺は俺達に近づいてくる婚約者の衛さんを見た。
「これは遊びじゃないんだよ。子供は帰りなさい」
「嫌です」
俺は衛さんを睨みつけた。
「何をしている皆!そいつを捕らえろ!」
その間に正気に戻ったさや先輩の父親がみんなにそう言った。
「カイ!早く逃げて!」
さや先輩が悲痛な声で叫ぶ。
「一人では逃げません!」
俺はかかってくる相手の数を計算した。
ざっと100人近くだ。
疲れ果てた体ではさすがに厳しいだろう。
「お待ちください!」
しかし衛さんの鶴の一声でピタリと喧騒が止んだ。
「当主、1週間の期日を与えてあげてはいかがでしょう」
「は?」
俺も「は?」だ。
「衛!?何を言っているのだ!?」
「まあ落ち着いて聞いてください父上。1週間の猶予を与え、1週間後またここに来る。そしてそのとき彼が当主に認めてもらえるような男になっていたらこの婚約は破棄。そうでなかった場合は婚約は成立。1週間婚約を遅らせるくらいよろしくないでしょうか?」
「う〜む……」
当主は衛さんの言うことに考えていた。
「あまりことを荒立てるとマスコミがうるさいですし。それにたかが1週間で何かが出来ると思います?」
「確かにな……」
「クッ……」
完全に俺のことをバカにしている……
衛さんってこんな人だったのか!?
俺の中に怒りがふつふつ湧いてきた。
「そうだな。事を荒立てるのは良くない。小僧、1週間の猶予を与えてやる。1週間後、ここに来い。いいな?」
「ああ」
俺は条件を飲むしかない。
悔しいが今、この状況でさや先輩を連れ出せるわけがない。
「じゃあ君は帰りたまえ」
衛さんが俺に近づく。
「敵に塩を送ることで僕の評価もグンとアップさ」
そして小声でそんなことを言う。
「何?」
この男……最低だ。
「咲ちゃんから話は聞いている。期待してるから」
「!?」
去り際に俺の耳元でそんなことを言った衛さん。
「せいぜい頑張ってくれたまえ」
衛さんはそう言って去っていった。
「咲の奴……こんなところまで……」
咲の行動力の高さに俺は驚いた。
「さや先輩……また1週間後」
「カイ……」
俺は、心配そうなさや先輩の視線を背に受けて歩き出した。
一応作戦は終了……だ。
Saki SIDE
作戦は無事終了。
後は……
「はなび……」
私は泣いているはなびの肩に触れた。
「別に……泣いてなんか……いないもん……グスッ」
無理もない。
はなびのこの行動は自分の失恋と同義だ。
むしろよくここまで耐えられたものだと思う。
そんなはなびをレイもナナちゃんも黙って見ていた。
「はなびは偉いよ……」
「そんな……こと……ない……」
はなびは俯いたまま。
私は天を仰いだ。
カイ、さや先輩を幸せにしなきゃ絶対に許さないから。
そして私の目からも一筋涙が零れ落ちた。
To Be Continued……
さくしゃのあとがきー
正直言ってまだ完全に納得できていません。
大まかな話の筋はこれでいいのですが、その間の細かいやり取りが少し……
まああまり込み入らせると話がややこしくなるかな〜?とかそれよりはいいかな?とか思ったのでこれにしました。
う〜ん……私に文才は無いな。
と、いうわけで作者のつまらないグチを聞いてくれてありがとうございます。
ではまた次回。