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生徒会な日々  作者: 双樹沙希
第三部 飛翔
77/104

第59話 積もらない雪は生徒会

〜あらすじ〜

皇家の独房に軟禁された俺は父親から驚愕の事実を伝えられる。

俺は姉さんを信じられるのか……?

そんなとき、姉さんの命令で委員長が俺を助けにやってきたのだった。

委員長に連れられて俺は独房の外に出ることに成功した。

委員長の言ったことは本当のようで、確かにSP達の姿が見当たらなかった。

「さあ!こっちです!」

俺は委員長に連れられて走って上の階を目指した。

どうやら屋上でジェット機が待機しているらしい。

「姉さんは俺の元母親と別荘に行っていたんじゃなかったのか?」

「何ですかそれは?マイ様はカイさんがここに来た前日に日本に帰られたんですよ」

「そ、そうなんだ」

あのクソ親父め……俺のことを騙したな。

俺が信じられるのはやはり姉さんだ。

そんなことを考えているうちに俺達は屋上に来た。

「あそこです!」

目の前に一台のジェット機が見えた。

「あれで帰るのか……」

さすがは皇家。

金の遣いどころが違う。

俺達は走って駆け寄ろうとした。

「そこまでだぞ夕陽」

「「!!」」

俺達が振り向くと大量のSPと皇家の当主がいた。

「我々をここまで手玉に取るとは見事だ、夕陽。いや、マイの作戦かな?」

「……」

「まあどちらでも良い。夕陽、カイ、投降しろ」

俺達は威厳のある声でそう告げられた。

「いくらSPの中でも相当な実力者である夕陽でもこの人数はキツイだろう?」

確かに。

俺だってこのSPの一人にすら勝てるかどうか分からない。

まあ委員長なら平気だろうが。

しかしその人数が100人近くだ。

さすがに分が悪いだろう。

「カイさん。合図と共にジェット機まで走ってください」

「え?」

小声で委員長が俺に話しかけてきた。

「もう23日。日本だったらもう24日ですよ」

「!」

そ、そうだった!

時差の影響でもう時間がほとんど無い。

まあ普通はクリスマスパーティに行かなくてもまた他の日に集まればいいと思う。

しかしなぜか俺はこのクリスマスパーティには行かなくちゃいけない気がしたのだ。

「委員長はどうする?」

「食い止めます。幸いジェット機に運転手を残してきているので乗り込めばすぐです」

「でも!」

俺は委員長を犠牲にして自分が逃げ延びることは嫌だった。

「カイさん!」

俺は突然叫ばれたのでびっくりした。

顔がかなり怖い。

こんな委員長は見たことがない。

「お願いです。早く。それに私だったらカイさんが入ったらすぐに乗り込めますよ」

「あ、そうなのか」

俺は委員長の笑顔の真意に気付かずにいた。

「そうです。じゃあ合図出しますよ……」

「お話は終わりか?」

委員長と当主が同時にしゃべった。

「そうですね。では、参りましょう」

「ほう。夕陽、戦う気なのか」

「……」

無表情になる委員長。

そして委員長が俺に目配せをした瞬間、俺と委員長は逆方向へと走った。

俺はジェット機の方へ、委員長はSP達の方へ。

俺がジェット気前に到着したときにはもう後から声が聞こえてきた。

戦っているのだろう。

気になって俺は後ろを振り向いた。

「やべっ!」

委員長をかわしたSP達が俺を追いかけていた。

俺は急いで中に入った。

「委員長!!」

俺は委員長に向かって大声で叫んだ。

すると委員長は軽く微笑んで手を振るだけだった。

「え?まさか!」

そのときジェット機の扉が閉まった。

「ちょっと!」

そしてジェット機は滑走路を走り始めた。

「オイ!運転手!何をしてるんだよ!まだ委員長が!」

俺は運転手に詰め寄った。

「ちょっ!危ないじゃないですか!」

運転手に怒られたが知ったことか!

「危ないじゃねえよ!早くエンジンを止めろ!」

俺は強引に運転手をどかそうとした。

「カイ!」

「!?」

俺は聞き覚えのある声に振り向いた。

「姉さん?」

そこにいたのは姉さんだった。

「夕陽なら大丈夫よ」

「え?」

俺は小さくなっていく屋上にいる委員長が苦戦しているのを見た。

「全然大丈夫じゃないようですが」

「大丈夫なのよ。夕陽は」

「え?」

何だか姉さんの発言に確信めいたものが感じられた。

「父は絶対に夕陽に手を出せないわ。絶対に」

「……」

何も言えない俺はそのまま黙って席についてシートベルトを締めた。



俺が寝ている間に結構な時間が経った。

俺が起きたとき、空はもう赤から黒へと変わろうとしていた。

もうすぐ24日の夜となる。

「姉さん。ありがとうございます」

「みんな心配していたわよ。はい」

「え?」

「あなたの新しい携帯。持ってた奴は取られちゃったでしょ?」

「ええまあ……」

俺は苦笑した。

「マイ様。もうすぐ着きます」

「カイ、しっかりシートベルトを締めなさい」

「はい」

俺は言われた通りにした。

そしてジェット機が着陸態勢に入った。

「すいません。天候の影響で予定より着陸地点がずれてます」

「ん?ていうかどこだよここ!」

俺は目下の風景に見覚えが無かった。

「ああ。カイは行ったことが無い場所かもしれないわね」

普通に言うなよ。

「じゃあここドコだよ!?」

「う〜ん……まあそこらへんは置いといて……」

「いや、置いたらマズイでしょ!」

こんなやり取りは久しぶりだな。

まさか当主相手にツッコミを連打するわけにも行かなかったし。

そうして着陸に成功して、俺は飛行機から外に出た。

「久しぶりの日本だ!」

俺は日本に帰ってきた。

いや、待てよ。

「ここどこだか分からないからオアシスに行けねえよ!」

ブーン……キキィィィッ

俺の目の前に車が止まった。

というかタクシー。

「えーと……乗って良いのかな?」

「当然でしょ。私は行くところがあるから一人で乗りなさい」

「はい」

俺はタクシーの中に入った。

「えーと行き先は……」

「オアシスですよね。カイ様」

「え!?古賀!?」

タクシーの運転席に座っていたのは俺のクラスメートで影の薄い委員長の古賀まことだった。

「さあ急ぎましょう」

「ちょっと!お前に聞きたいことが!」

俺は慣性力に負けずに踏ん張った。

こいつ、スピード狂だ。

何か冷静な顔をしているくせにとんでもない奴だな。

「お前も姉さんの?」

「そうですよ」

「はぁ……なんかクラスメート全員が姉さんの部下だって感じてきたよ」

「ハハハ。安心してください。僕と夕陽だけですから」

「そうか」

それって安心なのか?

「はぁ……」

結局どこにいても普通の生活は送れずじまいだな。

でも俺はオアシスに行くのが楽しみでならなかった。

久しぶりにみんなに会える。

俺は心を躍らせた。

しかし世の中はそんな甘くは無くて……

「渋滞……」

「ですね」

見事に渋滞に引っかかった。

というか年末でしかもクリスマスイヴなんだから混むに決まっているだろう。

「参りましたね……あ、そうですね」

すると古賀はどこかに電話をかけ始めた。

「え?」

「もしもし。現在渋滞に引っかかっていましてね。あ、今××通りですので迎えに来てくれませんか?皇家のロゴ入りの黄色いタクシーが目印です」

ピッ

そして電話を切った。

「えーと……どこにかけたんだ?」

「変なところではありませんよ」

「いや、変なところってどこ!?」

「デリヘルとか?」

「そこにかける意味は無いよね!?」

俺と古賀がバカな会話をしている間に一台のバイクが隣にやって来た。

「よう。久しぶりだな」

「俊哉!」

バイクに跨っているのは俊哉だった。

「さあ早く」

「あ、ああ」

古賀の電話の相手は俊哉だったのか……

俺は古賀に急かされて車から降りた。

「お前バイク持ってたんだ」

俺はバイクに跨った。

「いや、これはオアシスのマスターの」

「ふうん……」

バイクが発進した。

「ていうかお前免許持ってたんだ」

「いや、無免」

「へ?」

無免って何だよって一瞬考えちまっただろ!

「さて、飛ばすからな!」

「ちょっとお前!運転の仕方知ってるのかよ!?」

「勘」

「うわっ!下ろせー!」

「落とすことなら出来るぞ」

「うわーっ!鬼!悪魔!」

俺は振り落とされないように俊哉にしがみついた。

……男にしがみつくのっていい気分がしないな。

とか考える余裕が無いほど俺は地獄を味わった……



「着いたぜ」

「んー……あ!着いたのか!」

死に掛けた俺は意識が混濁していた。

「お前、大丈夫だったか?」

「え?」

突然真剣な表情で俺に尋ねる俊哉。

「何かマズイことに巻き込まれてないか?」

「え?あ、そんなのには全然」

「……」

「じゃあ入ろうぜ」

これ以上訊かれたくないので俺は会話を強引に打ち切ってオアシスの中に入ることにした。

俊哉は黙って俺に付いてきたのだった。

俺は扉に手をかけた。

ガラッ

『あ』

入った途端にみんなと目が合った。

「あ……」

俺達は数秒間何も言えなかったが、さや先輩が沈黙を打ち切った。

「おかえり」

その発言を初め、生徒会のメンバー+マスターが俺に挨拶したのだった。

「あ、えーと……ただいま」

恥ずかしかったので後のほうが小声になってしまったが、別に気にしていないようだ。

いつもだったら「恥ずかしい?」とか「照れてるの?」とか言われそうなのにな。

「ほら早く座りなさいよ!」

はなびが俺を急かす。

「分かったよ。分かったよ。聞こえてるから」

俺は席についた。

「じゃあこれからプレゼント交換をしまーす!」

ナナちゃんが大声で宣言した。

「プレゼント交換か……あ。俺何も持ってねーーーー!!」

そんなこと知らなかったよ!

「まあカイは帰ってきたばっかりだし。仕方ないわ」

「あ、ありがとうございます」

俺がさや先輩に優しくされるのって珍しくないですか?

それとも気のせいですか?

……まさか何か裏でもあるんじゃ……

「そ、の、か、わ、り!何でも言うことを聞くっていうのがあなたのプレゼントになるけどいいかしら?」

「う……」

ほれ見ろ。カウンターが来た。

「じゃあ決定ね」

さや先輩によって強引に決定されてしまった。

みんなは異論を唱えない。

それどころかむしろ快諾しているような気がする。

「おい。くじ作ったからな」

「あ、マスター」

マスターがくじを作ったらしい。

「俺はやらねえからイカサマなんてしてねえぞ」

「それ、イカサマした人のセリフね」

マスターとレイは相変わらずのようだ。

「とりあえずもう時間遅いので早く始めませんか?」

咲が俺をちらりと見てからそう言った。

俺が遅くなった原因だ。

咲は遠まわしに俺のことを責めているのだろう。

「そうだな。じゃあ引く順番を決めろ」

「私が一番目!」

「何勝手なことを言ってるのよ!私は生徒会長なのよ!最初に決まってるじゃない!」

はなびとナナちゃん揉めている。

揉めてると言うよりもじゃれ合ってる、といった方が正しいか。

「俺は最後でいい」

俊哉が言った。

「残り物には福ってか?」

「いやいや単にメンドイから最後でいいだけ」

コイツ楽しんでるのか?

「カイはどうするつもり?」

「俺、ですか?そうですね、俺は残ったものでいいです」

「そう、あなたらしいわね」

さや先輩にそう言われたが、どこらへんがらしいのか俺にはよく分からない。

「さや先輩は何番目ですか?」

咲が訊いた。

「咲ちゃんは?」

「3番目です。レイが2番目」

「じゃあ4番目でいいわ」

おお、年下に譲るなんて……大人だな。

いや、まあ普通か。

そして、順番はナナちゃん、レイ、咲、さや先輩、はなび、俺、俊哉に決まった。

「ちょっと!何で私が5番目なのよ!」

「だってお前が揉めている間に2〜4番目が決まっちまったから」

「うう〜〜〜〜」

そう言って俺に八つ当たりするはなび。

「まあまあ残り物には福があるというじゃないですか、はなびさん」

「じゃあ無かったらアンタのせいね」

「ちょ、それ理不尽っ!」

俺に全ての罪を擦り付けるはなび。

らしいといえば……まあらしい。

そして、くじびきが始まった。

「恨みっこなしですよ〜」

ナナちゃんから順番に引いていき、俊哉まで引き終わった。

「じゃあみんな一斉に……ドン!」

さや先輩の合図でみんなそれぞれのプレゼントを見た。

すると、

ナナちゃん←さや先輩のマフラー

咲←はなびの少し形の悪いマフラー

レイ←レイのコーヒーメーカー

さや先輩←俺の何でも言うこと聞きます権

はなび←俊哉の図書券1万円分

俺←咲の高級コート

俊哉←ナナちゃんのクッキー

という結果になった。

「随分綺麗なマフラーですね〜」

と、ナナちゃん。

「これ、はなびのでしょ?」

「何で分かったの?」

「え!?いや、何となくよ」

咲のは確実にはなびが編んだマフラーだな。

「結構虚しいわ。正直いらない。ここに置いとくわ」

レイの気持ちも分からなくもない。

自分のプレゼントが当たったんだもんな。

「フフフ。カイの権利ゲーット」

「う……」

よりにもよってさや先輩が当ててしまうとは……

俺の未来に希望はあるのか!?

「っとそれよりも……随分と高そうなコートだな」

「当然でしょ。私のよ」

咲のコートか。なら納得できるな。

「カチューシャ……って誰の?」

「あ、それは俺の。悪かったなカイのじゃなくて」

俊哉がなぜか謝る。

「べ、別にいいわよ」

「なあ何で俺のじゃなくて悪いんだ?」

「どうでもいいでしょ!」

ゴッ!

「痛っ!」

何でキレられなきゃいけない!?

それに今鈍い音したよね!?

「お、美味そうだな」

俊哉のプレゼントはクッキーか。

ナナちゃんだろうな。

「ん?」

そのとき、俺はナナちゃんに見られていることに気がついた。

「どうしたの?」

「そのコート……欲しいです!交換してください!」

「ええ!?」

一体何を言い出すんだこの子は。

「いいじゃないですか〜」

「いや、まあ咲の許可を取ってからじゃないと……」

「別に良いわよ」

「あ、ソウデスカ」

どうやらあっさりと俺はプレゼントを交換することになった。

「まあいいか」

もらえればなんだっていいし。

「さて、カイ」

「あ」

肝心なことを忘れていた!

俺はさや先輩の言うことを何でも聞かなくちゃいけないんだった!

「へ、変なことはダメですよ?」

「変なことって?」

「そ、それは……」

相変わらず容赦が無い人だった。

まあ分かっていたけどね!知っていたけどね!でも目から熱いものが!ってこのセリフ2回目だ〜〜〜!

「そ、そんなことより早く命令してください!」

ピッ

「ん?」

物音がしたので振り向いた。

「録音完了。編集完了。あなたのドMさが全世界に」

レイが何かを言った。

「へ?」

「命令してください!」

「うわあ!何録音してるんだお前は!!」

こんなやりとり前にもあったような気がするのだが。

「まあ冗談だから削除」

「ほっ」

まあレイはすぐ消してくれるし……

ん?さや先輩も録音してるんじゃ!?

「命令してください!」

予想通りまた聞こえた。

「さや先輩!!」

「私じゃないわよ!」

え?

何かもう1回録音されてるから流れ的にさや先輩だと思ったんだが……

「甘いですねカイ先輩……いや、海鮮パイ!」

「それ、口頭じゃ分からないから!ってそんなんじゃなくて!録音は止めろ〜〜〜〜!」

するとナナちゃんがフフフと笑い出した。

「何を言ってるんですか?後輩は先輩を見習うものですよ」

「その部分は見習わなくてもいいよ!」

「見習ってくれてありがとうナナちゃん」

「いえいえさや先輩」

何かもうややこしくなってきたな……

「とりあえず消してください」

「え〜。もう投稿しちゃったよ〜」

「オイッ!それはないだろ!」

本当に全世界に配信されてしまう。

「大丈夫です。「小説家にな○う」に投稿しましたから」

「良くねえよ!つうか音楽ファイルは投稿できないだろ!」

「そうですか?小説を読○うのカテゴリの「恋愛」で検索すれば「ドMな俺に命令してください!」って出ますよ」

「そんなわけないだろ!というか実際に検索する人がいたら困るだろ!」

実際に検索する人って誰だろうね!?

「まあいいじゃないですか」

「良くねえよ!しかも題名的にノ○ターンノベルズっぽいよ!」

「ねえそんなに「小説家に○ろう」の話が楽しい?」

さや先輩に追及された。

「「……」」

楽しいわけが無い。

「早速話を戻すけど」

「う……」

どんな命令をされるんだろうな……

少し怖い。

「簡単なことよ。みんなで写真撮らない?」

『え?』

あれ?写真を撮るだけ?

意外だな〜。

いや、まさか俺だけ変な服着せて撮影するのかもしれない!

それはもううんざりだ!

「じゃあみんな集合して〜」

そう考えているうちにみんなが集まった。

「俺が撮るから任せておけ」

「はい、お願いします」

写真を撮るのはマスターらしい。

「カイ、何してるの?」

「え?あ、このままでいいんですか?」

「他に何があるっていうの?」

本当に分らなさそうな顔だった。

「イエ、ナンデモナイデス」

「何でカタコトなのよ」

「そんなことはないですよ。さ、早く入りましょう!」

俺はさや先輩に悟られる前にさや先輩の手を引っ張った。

「おう、並んだな」

準備は完了した。

さあ後は撮るだけだ。

「女性のチチの数は?」

マスターが言った。

「2!って何言わせてんですか!」

『……』

ん?何でみんなこっちを見ているんだ?

しかもはなびは震えてるし、ナナちゃんと咲は顔を真っ赤にしてるし。

「ハッハッハ!女性にお父さんは一人しかいねえよ!ガッハッハ!何想像してんだよお前!」

「クッ……マスターめ」

結局俺は弄られキャラなのであった。



その後、ドンチャン騒ぎでみんな酔いつぶれてしまった。

「マスター……あなた逮捕されますよ。未成年に飲酒勧めて」

そういうマスターも酔いつぶれているのだが。

「ねえカイ」

「あ、さや先輩」

さや先輩はまだ潰れていなかった。

「ちょっと外に行かない?」

「え?良いですけど」

酔いでも醒ますのだろう。

俺達は外に出て歩き出した。

首もとのマフラーが暖かかった。

「今日は楽しかったわね」

「そうですね」

俺たちの間にしんみりとした空気が流れた。

「羽を伸ばす、ってこういうことを指すのかしら?」

「いつも伸ばしてるような……」

「何か言った?」

「何でもありません」

危ない危ない。つい口に出してしまった。

「まあ最後ぐらいは楽しいほうがいいものね」

「ん?まあそうですね」

最後って……さや先輩も卒業だから生徒会にいるのも最後ってことか。

「ねえカイ……キス、しよっか」

「ええ!?」

俺の心臓がいきなり高鳴った。

「ど、どどっどどどどうしてですか!?」

かなりテンパってるのが分るだろう。

「したいから」

「う……」

何て理屈だ。さや先輩らしい。

「嫌かしら?」

「そういうわけじゃっ……」

むしろしたいぐらい……って何言ってるんだ俺は!

さや先輩と俺じゃ釣り合いがとれるわけが無いだろ!

「じゃあいいわね。キスして」

「いや、でも……」

いつのまにか命令になってるし。

うう……どうすればいいんだ!!!!

「キスしなさい」

「う」

気がつくと体が動いて俺はさや先輩と唇を重ね合わせていた。

……いつも命令されているせいで体が勝手に動いてしまった。

「ん……」

恥ずかしいから目を閉じている俺にはさや先輩の声と心臓の鼓動がモロに聞こえた。

そして……どちらともなく唇を離した。

……さり気なく俺は舌を入れられたような……

何か頭がぼうっとして分らない……

「ありがと」

「ん?」

さや先輩が何か言ったようだが俺にはよく聞こえなかった。

「さよなら」

そう言って俺の前から去っていくさや先輩。

俺はもう遅いから家の人でも心配してるんだろうな、とか考えながらその背中を見送っていた。

……このさよならが俺の運命を大きく変えることになることに鈍感な俺は気づかなかった。



Mai SIDE

「大丈夫?」

カイと別れた後、私は夕陽のことを心配した。

カイには心配するな、といったけど本当は私も不安だった。

「はい」

だから電話の向こうから夕陽の声が聞けてほっとした。

「ごめんなさい。これしか方法が……」

「マスター、私はマイ様の為なら何だって……!」

「夕陽!もう止めましょう?」

私はそんな夕陽をいていられなかった。

「マイ様?」

「夕陽、あなたに話があるの。姉としてね」

「!?」

向こうで夕陽が息を呑んだのが分った。

私は、嫌な女だ。



To Be Continued……





次回予告


次回は大晦日と正月です。


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