第56話 再会で生徒会
〜あらすじ〜
ミラクルセヴンの活躍によってオアシスは救われた。
しかし、その帰り道で俺は正体不明の奴らに襲われた。
なす術も無く気絶させられた俺はどうなるのか。
目の前が真っ暗だった。
まさかここに武満でもいるのかな?とか思って周りを見渡してみた。
あたり一面暗闇に包まれているだけで何も起きなかった。
「ん?」
ふと何か違和感を感じる。
頭に何かを巻かれているようだ。
調べようとしたのだが何故か手足が動けない。
まるで縛られているみたいに。
俺にこんな趣味は無いぞ〜とか思いながらもう一度試してみる。
……結果は変わらなかった。
どうやら記憶が曖昧だ。頭もぼうっとしている。
えーと……俺は一体どうなっているんだ?
状況を落ち着いて考えたら自ずと分かってきた。
目隠しに手錠、それにこのふわふわ感。
どう考えても誘拐かまたは拉致されてるとしか思えない。
……え!?
それってまずくないですかね?
今この状態であるということがどう考えても夢とは思えない。
だから現実逃避も出来ずに俺はまわらない頭で何をすればいいのかを考えていた。しかしここも結果は変わらず。
動かない頭で何を考えても無駄だろう。
俺は考えることを放棄した。
しかし先ほどから何かに乗っているのは確かだと俺は思った。
こうして俺は再び意識を手放そうとした。
……
……いや!
この状況はどう考えても普通じゃない!
この状況でもう一度眠ろうなんて愚の骨頂だ!
俺は何とか意識を保って踏みとどまった。
まず何をすればいい?
普通に現状把握であろう。
どうすればいい?
……訊くしかないだろう。
「すいません」
俺が声を突然あげたのには特に驚いた素振りは感じられなかった。
とは言っても目隠しされているのだが。
「俺をどうするつもりですか? あなた達は何者ですか?」
俺はとりあえず基本的な二つの質問をした。
「……」
返答はなかった。
「目隠し取ってもらってもいいですかね?」
「ダメだ」
隣からそんな声が聞こえた。
「俺は何に乗っているんですか?」
「……」
また黙った。
秘密の多い連中だ。まあしかしあれこれとバラす連中もどうかと思う。
俺の頭が段々とクリアになってきた。
「俺を殺すつもりですか?」
「違う」
この質問には答えてくれた。
とは言っても身の安全だけ保障されても仕方がないような……
まあ保障されないよりははるかにマシではあるが。
「俺はどれくらい眠ってました?」
「7時間ほど」
どうやら結構本格的に寝ていたらしい。
と、なると今は早朝なのかな?
「ここはどこですか?」
「……」
それもいえないとは……
たいした情報の足しにはならなかったか。
問題なのはこのままだと明日の補習に行けないのだが。
「すいません。学校行かなくちゃいけないんですけど、ダメですか?」
「……」
今度はこそこそと何人かで話し始めた。
何を相談しているのだろう?
まさか本当に行かせてくれることなんて……無いだろう。
「学校なら休みのはずだが?」
いつの間に調べたんだ?
随分前から俺のことを狙っていたようだな。
「補習がある」
「はぁ……」
「ええ!?何でアンタたちにため息をつかれなきゃならないのかな!?」
俺はとらわれの身分の癖に犯人達にツッコミをいれてしまった。
これってやばくない?いや、どんな状況でも最後までツッコミをいれる!
それがツッコミの生きがい!
だったらいいな。いや、良くねえよ。反語だよ。
「お前達だって補習にかかったことあるだろ!?」
「ない」
「ない」
「ない」
「ない」
「優秀な犯人達ですね!」
みんな意外と優秀な人たちだった。
とは言え補習に引っかからないのが普通であり、特に優秀でもない。
そして今ので分かった。犯人は4人だ。いや、もっといるかもしれないが。
「名前書き忘れたんだよ! 文句あるか!」
「……」
みんな黙った。無視は悲しいぞ。
というか犯人どもとまともに話してる俺って結構異常だな。
「あとどれくらいで目的地に着く?」
「もう少しです」
何故に敬語?
この4人の中に随分丁寧な人がいるとは驚きだ。
「正確に言うと?」
「……」
分からんのかい!
心の中でツッコんだ。
「俺は寝る」
と、言うことで俺は寝ることにした。
まあこのままだと俺は何も出来そうにないし。
寝ても変わらないだろ。
「ん?」
なんか起こされた。
「目隠しと手錠を取りますからジッとしていてください」
いや、だからなんで敬語?
俺は言われた通りじっとした。
まず手錠が取られ、目隠しが取られた。
「え……?」
目の前に豪邸があった。
しかも周りを見ると外国人ばかりだ。
「ここって日本?」
「アメリカですよ。坊ちゃま」
「!」
前の方から聞き知った声が聞こえて急いで目を凝らした。
その顔を忘れることはなかった。
小さい頃から姉さんと共に俺の面倒を見てくれていた家政婦の高橋さんだ。
「高橋さん!? …ということはここは皇家の敷地内!?」
何で俺がこんなところにいる!?
どうしてここに連れて来られた!?
「当主様がお待ちです坊ちゃま」
「俺は会わない」
「ですが坊ちゃまは会うしか選択肢はありません」
クッ…
高橋さんが俺を見て悲しそうな顔をしながら言った。
この人はいつも俺の味方をしてくれる。
「…分かった。何を企んでいるか知らないが会うだけ会ってやる」
俺は意を決して覚悟を決めた。
ここまで実の父に会うことに緊張する人はそうはいないと思う。
俺はゆっくりと歩き出して、見るからに高そうな扉の前で足を止めた。
「久しぶりですね、高橋さん。別れの挨拶をしなくてすいません……」
俺はあの事件の日以来彼女に会っていない。
本当に今更だが謝った。
「いえいえ、お元気そうで安心しました」
高橋さんはニコリと笑って返した。
自然と俺も笑顔になる。
しかしすぐに気を引き締めて、扉を開けてもらった。
「よく来たな」
目の前には使用人をたくさん引き連れた俺の元父親がいた。
「よく来た、って勝手に連れてきた奴の言うセリフじゃないだろ」
俺は内心イラッときたが、それは表に出さなかった。
本当に今更何の用だよ……
「ハハハ。それもそうだな」
全然目が笑ってない。
イラッの他にビクッという感じが俺の中に生まれてきた。
さすがに皇家の現当主。威厳が違う。
「まあまずは入れ」
俺は言われるがままに邸宅に入った。
「こっちだ。付いてこい」
今は付いて行くしか選択肢がない。
俺は成すがままになった。
広い邸宅内を幾分か歩いた後、ふと俺は立ち止まった。
目の前には何の変哲もない扉。
「どうした?」
「え?あ、いえ、何でもありません」
突然の問いかけに敬語で返す俺はやはり皇家の人間だと感じてしまう。
しかし現当主は特に気にせずに歩きを再開した。
……何であんなところで止まったのだろうか……
「ここだ。入れ」
当主は見るからに高そうな部屋に俺を招いた。
どうやら応接間のようだ。
ということは俺を他人として扱っているということだ。
「そこに掛けろ」
俺は客に言う態度じゃないだろとか思ったが、座ることにする。
「さて、まずは久しぶりだなカイ。随分と大きくなったな」
そりゃそうだ。最後に会ったのは中学二年のとき。
「で?」
「そうだな。まあケーキでも食べながら話そう。おい、あれを持ってきてくれ」
「畏まりました」
高橋さんはそう言って下がった。
「今更何の用で?」
「学校はどうだ?」
「へ?」
予想外の質問にアホな声が出てしまった。
「楽しいか?」
「あ、ああ」
何で今更親みたいな質問を受けているんだろう。
「それは良かった」
「……」
こんな父親……ではなく彼の姿は見たことがなかった。
「どうだ?清美に会うか?」
清美は俺の母親だ。
「俺を物としてしか愛してくれなかった人に会うとでも思うんですか?」
「実の親にそこまで言うか」
「それは実の息子を拉致した人のセリフじゃありませんよ」
「言うようになったな」
と言われても内心はかなりビビってます。
「失礼します」
そんな微妙な空気を破ったのはケーキを持ってきてくれた高橋さんだった。
「おお。お前もどうだ?」
「いえ、結構です」
俺がそう言うと、高橋さんが悲しそうな顔をしたのを見逃さなかった。
「と、思ったけどやっぱり食べます」
そう言うと高橋さんの顔に喜びが浮かんだ。
俺ってお人好しだなぁ。
まあ別に言いけど。
そう思いながら一口食べてみる。
あ、美味い。
「美味いか?」
「まあまあだな」
でも認めるのは癪なので誤魔化した。
するとまた高橋さんの表情が曇って……
「と、思ったけど結構美味いな」
俺はヘタレだ。
「だろうな。これは庶民なんかには手も出ないほどの値段なのだからな」
値段が高いからって美味いとは限らないだろ。
とか話している間に食べ終えてしまった。
「おかわり致しますか?」
「いえ、それよりもそろそろ本題に入らないか?」
まさか本当に世間話をするためだけに拉致った訳ではないだろう。
「ふむ、そこまで焦る必要など無いが……。お前がせっかちだからな。話そう」
当主はそう切り出した。
Saya SIDE
「さて、調べさせてもらったよ」
父が私を部屋に呼んですぐにそう話し始めた。
「?」
私の頭にはもちろん疑問しか浮かばない。
「蛟刃カイ、と言うそうだな」
「!?」
何でカイの名前がそこで出てくるのか。
思い当たる節が多すぎて私は理由なんて考えなかった。
「お前が婚約を渋らせている原因だな」
「……」
「分かっているのか?お前は蓮見家の次期当主だぞ。どこの馬の骨かも知れない男とは釣り合いなど取れる筈もないことなど知っているだろ」
「カイはそんなのじゃない!!」
カイを悪く言われたことについムキになって叫んでしまった。
「ふん。随分惚れ込んでいるようだが……」
「……」
「これなら例の件を早める必要があるな」
「何のこと!?……まさか!?」
私の予感はすぐに当たる。
「向こうも乗り気のようだからな。まあ当然であろう、この蓮見家との縁談なのだからな。ハハハ」
まさか自分の行動が裏目に出るとは思っていなかった。
「お前はクリスマス・イヴにも予定を入れているらしいな」
一体どこまで知っているのか……
「もちろんそれは「待って!!」ほう?」
嫌な予感がしたので相手の言葉を打ち切った。
「それだけは止めて!私達の生徒会には手を出さないで!」
「……」
「これで終わりにするから……」
私の我が儘で生徒会を終わりにするわけにはいかない。
「最後にするから、カイには手を出さないで」
「ハハハ。良かろう。クリスマス・イヴまでなら好きにしろ。その代わり、2月には縁談を進めるぞ。受験期間だが問題なかろう、お前なら」
問題ありすぎだ。
「……はい」
渋々了解をしてしまった。
これで私の運命は決まった。
いや、元々そうなる運命だったのに、私が我儘言っただけだ。
そう自分に言い聞かせる。
でなければやっていられない。
「話は以上だ。下がれ」
「はい……」
私はこの日、静かに涙を流した。
Kai SIDE
「な……何を言って……!?」
俺はその父の言葉のあまりの衝撃の大きさに言葉が詰まってしまった。
「分からないのか?」
俺に問いかけるその瞳は真剣そのものだ。
冗談のはずが無い。否、この人は冗談なんか言わない。
「皇家に戻ってこないか? と言っているんだ」
「何で今更……」
ついまた言葉に詰まる。
俺は……どうすればいい?
なあ……誰か答えてくれよ。
俺は戻りたいのか?
俺は戻りたくないのか?
二度と戻らないって決めたのに……
心がここまで動揺するなんて……
俺は……
俺は……
To be continued……
「咲の日々」
さや「ねえ咲ちゃん、質問があるんだけど」
咲「何ですか?」(仕事中)
さや「あのね、SMのSとMって何の略かしら?」
咲「サディストとマゾヒストですよ」(仕事中)
さや「へえ。じゃあ具体的にどういうことをするの?」
咲「それはSがMに……って何の質問してるんですか!?」
さや「あれぇ?まさかそっち系の知識も豊富かな〜?」
咲「そ、そんなわけ……」
さや「へえ。大学卒業したのにそんなことも知らないの〜?」
咲「そ、そんなわけ……」
さや「じゃあ知ってるんだ」
咲「う、うう……もう帰る!」
ガタガタ
バタン
さや「ふふふ」
<終>
次回予告
突然の再会に戸惑うカイ。
そして父から告げられた衝撃の発言。
彼は一体どうするのか!?
二者択一が彼を苦しめる!