第55話 ミラクルセヴンですよ生徒会
更新スピードアップ!
〜あらすじ〜
クリスマスパーティの場所取りと100万円のために俺はレイと2人3脚マラソンに出た。
そして結果は無残なものだったが、場所取りには成功する。
しかし、俺に真里菜先生が衝撃的なことを告げる……
12月15日。
今日はテストが返還される日。
しかしそこで事件が起こる。
「カイ、お前補習」
俺に真里菜先生が何かを言った。
「へ?」
よく聞き取れなかった。
「え?何ですか?」
「だからお前補習」
「何だと〜〜〜〜〜!!」
世界史は大丈夫の筈だ。
一体何が悪かったんだ!?
「お前数学に名前書いてないから」
「マジで!?」
俺はテストを確認した。
そしたらマジだった。
「意味分かるか〜!!」
何で気づかなかったのかは多分世界史が赤点回避していたので舞い上がっていたからだと思う。
「バカ」
「酷いわね」
「救いようがないわ」
「ははは…まあ頑張れ」
上からはなび、咲、レイ、俊哉だ。
「Nooooooooooooooooooooooooo!!!!!!!!!!」
俺は補習にかかりました。
次の日…
俺は学校に来ていた。
もちろん普通の人は来ていない。
今日は成績不振者が来る日であるからだ。
俺はだるくてしょうがない。
名前の書き忘れだけで補習になるなんてたまったものではない。
しかも筋肉痛である。
何だか俺は不幸を収集しているみたいだ。
そんなこんなで俺は今教室で数学の問題プリントを解いている。
結構簡単な問題だ。
まあ俺は理系だし、名前さえ書いていたら90越えていたし。
まあ俺が嫌がっているのはそんなことよりも、成績不振の生徒会長の出現が現実になってしまったことだ。しかもまだ着任早々。
いやなスタートである。
俺は着々と問題を解き終わって提出して速攻で帰った。
帰り際、校内を歩いていると見知った顔を発見した。
「おーい!ナナちゃん!」
「あ、カイ先輩」
何か俺を見て
「しまった!」みたいな顔をした。
「あ、先輩も補習なんですか〜?」
「「も」ということはナナちゃんも?」
「はっ!! しまった!!」
今度は顔ではなく口に出した。
「ていうかあれだけ勉強したのに補習ですか?」
ナナちゃんが俺に皮肉を言い始めた。
自分のことを棚に上げようとしていることがバレバレだ。
「君も人のことを言えないよね」
「う゛っ……」
どうやらクリーンヒットしたらしい。
というか生徒会が二人も補習に引っ掛かるなんて笑い話もいいところだ。
その後聞いた話によるとナナちゃんもポカミスをしたらしい。
南無……
「これからお暇ですか?」
その話題が終了した途端にいきなりこっちに別の話を振ってきた。
「へ?」
「実はこれから暇なんですよ。だから少しだけ付き合っていただけませんか?」
「あ〜ゴメン。俺、今日はバイトが入ってる」
俺は手を合わせて謝った。
「つまんない人ですね〜」
ナナちゃんが頬を膨らませて剥れた。
「じゃあバイトに付いて行きます」
と、とんでもないことを言い始めた。
「ええ!?そんなに帰りたくないの!?」
「実は鍵を忘れたので、帰りたくても帰れないというのが答えでした」
「初めからそう言えよ!!」
「じゃあこれからよろしくお願いしまーす」
で、結局俺に付いて来たわけですよ。
「家に誰かいないの?」
「はい!!」
元気よく返事するところじゃないだろ。
そして本当に付いて来たナナちゃんはオアシスに居座った。
「……ずいぶんとなつかれているわね」
何か刺々しい言葉で俺の心を抉るレイ。
まだ例の二人三脚のことを引きずっているらしい。
「なあ……そろそろ機嫌を直せよ」
俺はおそるおそるレイに言った。
正直な話、少し怖かった。
「別に機嫌悪くないわ」
「ソ、ソウデスカ」
俺たちのそんな会話を気にしていないのか、ナナちゃんはマイペースにメロンソーダを啜っていた。
「というか何か今日は店内が華やかじゃない?」
俺は急いで話題を変えることにした。
「それは……」
「それは今日ここに偉いお客が来るからだ!!」
レイの発言を気合の入ったマスターの声が遮った。
「ちっ」
「ええ!!今舌打ちした!?」
とてもレイらしくない。
あ、いや、それはともかく。
「偉い客、って?」
「何か市議会の人達だって」
レイがふてくされながら言う。
マスターよ、レイの機嫌をこれ以上損ねないでくれ。
そして空気を読んでくれ。
「そ、そうなのか」
俺は声を上擦らせた。
「だから今日は料理が豪華だぞ〜」
マスターは何やらたくさんのレシピと調理法が書かれたメモを取り出した。
「こんなに作るんですか?」
「ああ。俺が徹夜で考えた渾身のレシピ」
徹夜とは……随分と気合いが入っているものだ。
「それ見せてもらってもいいですか?」
今まで黙っていたナナちゃんが突如口を開いた。
「いいけど大切にしろよ。貴重なものだ」
「わかりましたー」
本当にわかってるのかよ。
ナナちゃんはレシピを見て頷いたり唸ったりしていた。
俺も見てみたが、知らない材料がいくつかあったせいでちんぷんかんぷんだった。
「ありがとうございます」
ナナちゃんがレシピを丁寧に返した。
「まあ見ても分からないだろうよ」
はい、わかりませんでした。
そしてマスターも丁寧にレシピを受け取った。
しかし直後マスターの体がふらついた。
「マスター!?」
「いやいや何でもない」
確実に嘘だろう。
思いきりバランスが崩れていた。
「いや、でも!!」
俺は食い下がった。
しかし別の所から答が返ってきた。
「心配ないわよ。どうせ過労と寝不足でしょ」
レイが冷たく言い返す。
「じゃあ今日のその……あの……えーと……あれはどうするんですか!?」
もてなしと言う言葉を度忘れした俺はあまり切羽が詰まっているとは思えない発言をしてしまった。
「やるに決まってうっ……!」
見るからに無理そうだ。
こういうときはどうすればいいんだ!?
「とりあえずマスターは二階に行って休んでて」
レイがマスターに命令する。
つうか立場が逆転してませんか?
「もしものときは……」
「もしもなんてねえよ。何があっても俺がやる」
マスターの決意は固い。
そんなに今日のことが重大なのだろうか。
「はいはい。無理しないで休んでて」
「そんなことが出来るかっ!!」
マスターが叫ぶ。
「どうしてそんなにこだわるんですか? それほど重要なんですか?」
俺は不思議に思ってマスターに訊いた。
「そんなものじゃねえよ」
「え?」
「これは俺のエゴだ。ただ折角作ったレシピを無駄にしたくねえ。そんだけだ」
マスターがかっこよく語るが、体調は相変わらず悪そうだ。
「はいはい。いいから休んで」
レイはもちろん取り合わない。
少しかわいそうな気がしたが、仕方がない。
「休めるか!だいたい俺がいなかったらどうするつもりなんだ!?」
確かに。
「どうせレイちゃんのことだ、お客様に許してもらうまで頭を下げ続けるつもりなんだろ!?」
「……」
え? レイのやつ、そんなことを考えているのか!?
俺は何も言えずにいた。
確かに予約をドタキャンされたら普通は怒る。許してもらえる保証もない。
「どうすればいいんだ……」
俺は頭を抱えた。
「だから俺が……うっ!」
「おっと!」
マスターが倒れそうになるのを慌てて俺は受け止めた。
「カイ、取り敢えずマスターを運んで」
「あ、ああ」
「いや、お前らが代替案を出さない限りは休めん!!」
マスターは妥協した。
しかし俺達に代替案なんて考えつくわけが……
「このミラクルセヴンにお任せあれ!!」
「「「え?」」」
俺達は声がした方向を向いた。
そこにはナナちゃんと同身長でかつ、同じ声の怪しい覆面を着た人物がいた。
みんなはそれを見て声を無くした。
「あのね、遊びじゃないのよ」
レイが冷たく言い放った。
「わかってます。私に料理を任せて下さい!」
そのナ……ミラクルセヴンが頭を下げた。
だがまあ覆面のせいで真剣みがあまりないことに気づいているのであろうか。
「気持ちはありがたいが、嬢ちゃんは無関係だ。無関係の人を巻き込むわけにゃあいかねぇ」
マスターがそう言った。
確かにナナちゃんが何かをやってもなあ……
……
…………!!
「いや、いけるかもしれない!」
「「え?」」
突如叫んだ俺にレイとマスターが目を向ける。
「ナ……じゃなくてミラクルセヴンならこの状況を何とかできる可能性がある!」
俺は確証が一応あった。
飯盒炊爨のとき、料理教室のとき、一応素人の俺から見ても料理の腕前は只者では無いということが分かった。
俺はナ……もういいか、ナナちゃんならこの状況を打開できると俺は思った。
「あなたまで気が狂った?」
「レイ、マスター」
レイの言うことをさらりと流して俺は二人を真剣に見つめた。
「ナナちゃんに任せてあげてください!彼女の腕前はかなりのものです。俺はこの状況を打開できるのは彼女だけだと信じています!」
俺の真剣さが伝わったのか、マスターの目が少し優しくなったような気がした。
「しかし……なあ?」
「一度彼女の腕を見てからでもいいじゃないですか。いいかい?」
「あ、はい!」
マスターが折れかけたのでここぞとばかりに俺は追撃を掛けた。
その際もちろんナナちゃんの了解を取るのも忘れない。
「……わかった。腕を見てやるから厨房に入れ」
こうしてナナちゃんはマスター以外の人で初めてここの厨房に立ったのだった。
「そうだな、これを作れ」
マスターがナナちゃんにとあるレシピを見せた。
「分かりました!」
元気良く返事して作り始めたナナちゃん。
野菜を切る動作はもうプロレベルでは無いだろうか。
「……すごいわね」
レイが感心した風に言った。
「ああ。俺も始めはビックリした」
しかもここにきて前より腕が上がっている。
俺にはそっちの方も驚きであった。
「……やるねえ」
マスターも感心している。
「もうあれは素人じゃねえな。包丁捌きならプロも顔負けするかもしれん」
ちなみにマスターもプロであるので、ナナちゃんはすごい評価を受けたことになる。
「やっぱり……ナナちゃんに任せてもいいんじゃないでしょうか?」
「ふっ……ここからが正念場だ」
暑いために覆面を脱いだナナちゃんの顔に汗が浮かんでいた。
しかし顔はどこか楽しそうであった。
料理をするのが本当に好きなんだね、ナナちゃんは。
俺が密かにそんなことを思っているとナナちゃんは調理を開始していた。
「〜♪」
鼻歌交じりなのが気になるが、それも彼女のスタイルなのだろう。
「マスター」
すると突然こちらを振り向いた笑顔のナナちゃんがマスターに話しかけてきた。
「どうした?」
マスターが少し動揺している。
「醤油小さじ1杯、足してもよろしいですかぁ?」
「ちっ。気づいちまったか。ああ、好きにしろ」
「は〜い」
ナナちゃんは再び調理に戻った。
まあ俺的にはさっきのやり取りが不審だったので気になるところだ。
「なあレイ」
「マスターの意地悪よ。あえてレシピに書かなかったのよ。ナナちゃんの技量を見るためにね」
「なるほど」
と、いうことはそれに気づいたナナちゃんはかなりの腕前だ。
「ちっ。あの嬢ちゃんは相当なもんだ。こりゃあ一本取られたな」
マスターの顔に悔しさは浮かんでなく、笑顔が浮かんでいた。
「〜♪」
そうしてテストは終了した。
俺達はナナちゃんの作った和風パスタを食した。
「うまい!」
「そうね」
「やるな」
俺達は全員が美味いという感想を漏らした。
「ありがとうございます〜」
ナナちゃんは照れながら頭を下げた。
「で、マスター。どうですか?」
俺はマスターに訊いた。
「……プロの俺から見たらまだまだ未熟な部分はある。やはりそれは経験の差だろうな。しかし……良くやった」
「と、いうことは!」
俺はマスターの発言に興奮してうずうずしていた。
「文句は無え。今日のことは任せてやる」
「「やった!!」」
「おめでとう」
俺とナナちゃんははしゃぎながら喜んで、レイは拍手しながらナナちゃんを祝福してくれた。
「まさか本当に俺が休むことになるとはな」
「そうね。だから休んでいいわよ」
そして渋々フラフラと2階へ上がっていった。
結構無理していたな、マスター。
「レイ、お前も機嫌良くなった?」
そうレイに訊くとレイは無表情になった。
「……彼女のおかげね」
レイはポツリと呟いた。
「やっぱり生徒会にナナちゃんは必要だな」
その発言にレイも頷いた。
ナナちゃんはみんなを笑顔にしてくれる、生徒会にとって太陽のような存在であることを改めて俺達は思ったのだった。
「フゥ。疲れました〜」
「ごくろうさま」
そして結局市議会の方々へのもてなしは大成功に終わった。
ナナちゃんの可愛さも好評で、一気にここの株が上がった。
「はい」
俺はナナちゃんにウーロン茶を手渡した。
「ありがとうございます〜」
ナナちゃんはそれを受け取ってごくごくと飲み始めた。
すごい疲れたんだろうな、語尾に力が入っていない。
「実はですね……ミラクルセヴンになったのはこれが初めてじゃないんですよ」
「え? そうなの?」
俺はナナちゃんに訊き返した。
「はい。夏休み頃から覆面料理人としていろんな場所に出没してたんですよ〜」
「そうだったの!?」
俺は知らなかった。
「だから腕がかなり上がっていたのか〜」
「え? まあはい。エヘヘ……」
ナナちゃんは顔を赤くしながら照れていた。
「ねえそんなところでイチャついていないで皿洗いを手伝いなさい」
「すいません」
後片付けと準備は俺とレイの役目だったので、俺はレイにそれをたしなめられた。
「あ!もっとイチャつきましょうよ〜」
「いやいやイチャついてすらないから」
「えー。折角隣同士あなたと私さくらんぼ状態だったのに〜」
「分かりにくい表現をするな!」
俺はいつものようにナナちゃんにツッコミを入れながらレイの方へ向かった。
「ナナちゃん」
「なんですか?」
突然マスターに呼ばれたナナちゃん。
「嬢ちゃん、ここで働かない?」
「え!?」
これに驚いたのはナナちゃんだけではない。
「君はもっと上手くなるよ。だからここで修行しない?」
「えーと……」
まさかナナちゃんのことをここまで評価していたとは……ナナちゃんはどうするのだろうか。
「ごめんなさい」
「!!」
マスターは少し驚いた顔をした。
「私、家族の分全ての料理を作っているのです。だから私にそんな暇がないんです。すいません、お気持ちは嬉しいですけども……」
「そうか……だが、家族は大事だからな。気が向いたときや暇があったらでいいよ」
「はい!そのときは喜んで!」
こうしてここにちょくちょくナナちゃんが手伝いに来ることになったのだった。
「いや、まさかこんなことになるとは……」
レイとナナちゃんを送った後、俺は一人夜道を歩いていた。
もちろん家に向かってである。
今日一日疲れたな……
帰ったらすぐに寝よう……
あ、でも補習課題もやらないと……
俺は明日も補習だと言うことに憂鬱な気分になった。
そんな俺はいきなりまぶしい光を浴びた。
車のヘッドライトだ。
まぶしいな……と顔の前に手をかざすと車は俺の目の前で停まった。
「え? 何?」
俺が呆然と立ち止まっていると、車の中から黒ずくめの男達が俺を囲んだ。
「何か用ですか?」
俺は恐れずに訊いてみた。臆病な態度は相手に付込まれる隙を与えてしまう。
「蛟刃カイさん、ですね?」
「……アンタ達は?」
俺はその言葉に警戒心をマックスにした。
こいつらは俺の味方ではない、と脳が俺に知らせてくる。
「我々と来ていただきましょう」
そう言って一人が俺を掴もうとしたので俺は即座に避けた。
不良のときの経験がここで活きてくる、というのが皮肉だった。
「……アンタらは何だ?」
俺はもう1度訊いた。
「……」
「だんまりか」
俺は周りを見渡す。
正直逃げるのはきつい。
ならば大声を出して助けを呼ぶのが手っ取り早い。
俺は助けを求めようとしたが、それよりも相手の男の方が早かった。
俺の口にとあるハンカチを嗅がせてきた。
「助けうっ……!!」
俺の意識はそのハンカチについた何かによって朦朧とした。
これはまさかクロロホルム?
嗅いだことないけど。
俺はそんなことを考えながら意識を手放した。
「ナナの日々」
ナナ「正義の料理人、ミラクルセヴン只今参上!テヘ」
カイ「……生徒会室でその格好をするのか……?」
ナナ「七瀬ナナとミラクルセヴンは表裏一体……普段は次元の狭間にミラクルセヴンがいるんですよ!」
カイ「そんな設定いちいちつけたんだ!?」
ナナ「必殺技は切り刻み」
カイ「それだけ聞くとなんか怖いね!」
ナナ「もちろん主題歌も作りました〜。セヴン、セヴン、セヴン、セヴン、セヴンセヴンセヴン!セヴンセヴンセヴン!遥k」
カイ「うわあ!ダメだダメだ!JAS○ACから苦情が来る!」
<終>
次回予告
突如敵に捕まったカイ。
そこで彼はとんでもないことを敵から聞かされる!
ミラクルセヴンの出番は無いのか!?
ありません。
冗談はさておき、とうとう二人が対面します。