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生徒会な日々  作者: 双樹沙希
第三部 飛翔
72/104

第54話 2人3脚で生徒会

〜あらすじ〜

俺は100万円を手に入れる……ではなくクリスマスパーティの場所の確保のためにレイと共に2人3脚大会に出ることになった。

その中には何人か見知った顔もいた。

そして波乱万丈な大会が幕を開けた。



無駄に長いです。

天気は快晴。

気温は低い。

湿度も低い。

だが俺のコンディションは良好だ。

俺達はスタートラインについて開始の合図を待った。

「ではぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!位置についてぇぇぇぇっぇ!!!!ヨォォッォッォッォォッォォオォイ!!」

パァァァァァァアァアァァアアアッァン!!!!

そして何故か厚巻のような音がするピストルの発砲でマラソンがスタートした。

大歓声を浴び、俺達も走り始めた。

「うわあ…みんな早っ!!」

ドンドン追い抜かれている気がする。

最初は20番ぐらいだと思ったけど今はもう50番台じゃないか?

「焦らないで」

「え?」

レイはこんなときも落ち着いていた。

「今は私と呼吸を合わせることを考えて」

「お、おう」

開始前にレイは必ず私の言うことを聞きなさい、と言っていたので俺はそれを忠実に守ってレイの言うことを黙って聞いた。

それにしても…みんなとばしてるな…

おっと集中集中!

するとだんだん俺とレイの息はぴったりになってきた。

「やっぱりね。練習はたかが三日。私達の息を合わせるにはこんなにも時間が必要だったのね」

「?」

「最初からとばしていたら私達は何度も転倒していたわ。あんなふうに」

そう言ってレイは目の前で転倒した何組かを指差した。

「確かに…」

彼らはしょっぱなからとばしていた。

それに比べてレイはきちんと計算していたのであった。

「すごいなお前」

「何言っているの?彼らは抜けるかもしれないけど、それだけだと私と同じ考えだった人は決して抜けないわ」

「ええ!?どうすればいいんだよ!!」

俺はレイの発言に大きく驚いた。

「黙って私についてきて。大丈夫だから」

「お、おう…」

レイがそう言うなら…

俺は黙ってレイのリードに従った。

これって普通は男がやるんじゃないか…?

情けない限りだ。

そしてやっと1キロ地点が見えてきた。

「順位は一応上がったな?」

「ええ…47番だそうよ」

「う…」

少し心配になったが、俺にはレイがいる!

俺はレイを信じて、走った。

「随分慣れてきたわね。練習どおり」

「そうだな」

実は俺達の練習は二つしかやっていない。

カーブと坂の練習だ。

この二つはレイ曰く重要らしい。

だが俺にはよく分からなかった。

「じゃあスピードアップするわよ」

「え?」

「この時間帯になると少しスピードが落ち着いてくる組があるはずよ。一気に抜くわよ」

「おお!なるほど!」

俺達二人はスピードアップした。

が、しかし。

「待って!一気に上げないで!少しずつよ。少しずつ!」

「お、おう。すまん」

レイのことを考えていなかった。

俺とレイでは歩幅が違う。

だからスピードアップするときは俺がレイに合わせないといけない。

「これくらいでいいか?」

「ええ。まだスタミナあるでしょ?」

「ああ。当然」

やっと早歩きよりちょっと早めのスピードになった。

「おっ。これならいけそうだな」

「じゃあ2キロ地点まではこれで。それまで黙るわよ」

「おう」

まあしゃべりすぎると舌を噛む可能性もあるし、スタミナも切れやすい。

俺は黙って走った。

コースは2キロ地点まではほぼ直線だ。

だからここで勝負をつけるやつも多い。

しかし、レイはそう思わないらしく、いつものようにマイペースだ。

レイの顔をチラリと見たが、疲れている素振りは全然見せていない。

こいつって一種の天才だよな…

俺はすぐに視線を前に戻した。

すると前の集団が見えてきた。

しかしレイはちっとも表情を変えることはなかった。

まあこいつは顔にあんまり感情を出さないしな…

っていうかもっと集中しろって自分に突っ込むべきだ。

ということで俺は二人三脚に必死になることにした。



2キロ地点を通過。

「やっと40番ね。まだまだ先は長いわ」

「トップとの差は約40秒以上だって」

「随分早いわね。でもそんなペースだとすぐにバテるわ。これからアップダウンに入るし」

そう、そろそろ山登りに入るのだ。

これから5キロはアップダウンが続く。

そして最後の3キロは入り組んだ下り坂を下ってゴールだ。

だから最初の2キロで疲れていなくても全然楽観視が出来ない。

「じゃ、上り坂になったらペースを落とすわよ」

それまではいつもどおりのペースで走るようだ。

「ん?」

「うおおおおおおりゃああああああ!!!」

後からすごい速さで何かが接近してくる感じがした。

「振り向かないで」

「あ、ああ」

だが気になるぞ。

女の声だし。

「睦姉!引っ張るな!死ぬ!俺死ぬ!」

「うるさいぞ燈真!賞金はアタイの物だぁぁぁぁぁぁ!!」

ピュー

↑古い効果音

いとも簡単に俺達は抜かれた。

「…」

「…」

俺達は走りながら無言になった。

「今のってナナちゃんの…」

「黙って」

「は、はい」

今のは確実にナナちゃんの姉の睦さんと弟の燈真君だった。

燈真君かわいそうに…

俺達は順位を一つ落としたものの落ち着いていた。

「そろそろ上り坂よ。練習通りに行くわよ」

「おう」

俺達は一旦スピードを落として上り坂で息合わせに懸かった。

ゆっくりと息が合ってきて段々とスピードが速まる。

「一気に抜くわよ」

「おう!」

上り坂で苦戦している人たちを次々と抜き去って行った。

どうだ!若さを見せつけたぜ!

抜いたのはほとんど大人たち。壮年の。

しかしさり気なく睦さんたちは抜けなかった。

あの二人滅茶苦茶に走っている…というか強引に燈真君を引っ張っている割には速い。

「そろそろ下り坂だけどすぐにまた登りだから。下りはスピード出さないで」

「あ、ああ」

「ああなりたくなければ」

レイはゴロゴロと下り坂を転がっているカップルを指差した。

「あれは悲惨だな」

俺はレイの言うとおりにした。



勝手に自滅していって参加組が100をきった。

しかもリタイアした組が俺達の前の順位にもいたので、俺達の順位は飛躍的上がった。

現在5キロ地点。

順位は17番。

十分優勝を狙える。

しかしトップとの差は1分ほど。

「前の方はかなり速いわね。二人三脚に慣れているみたい」

「そりゃあこの大会の常連もいるだろうからな」

俺達は淡々とアップダウンをやり過ごしていた。

しかしやはり疲れが足にくる。

レイを見たらやはり多少疲れが見えた。

さすがに5キロも二人三脚なんて中々やらねえよ。

それにしてもさすがに前に見える何人かは上手い。

バランスを崩さないし、息も合っている。

「仕方ないわね…」

「え?」

「スピードアップするしかないわね」

「ええ!?」

「1位にならなければ出た意味がないわ。このままじゃ追いつけない。予想以上に前の集団が速いわ」

「わ、分かった」

あまりにも深刻そうな顔で言うので俺は頷いた。

「じゃあ行くわよっ!」

俺達は徐々にスピードを上げた。

幸いまだスタミナがある。

「これで数人抜いてもとのペースに戻すわよ」

「ああ…」

そういえばレイに教えてもらった。

後ろにいれば前との差が分かるが、前にいると後、との差が分からない。

だから素人ばかりの場合は前にいて逃げ切るより後ろである程度待ってから逆転した方が勝ちやすい。

ようするに前の人たちは俺達がどれくらいのペースで走っているか分からないのだ。

それにたとえ抜き返されたとしても1位には俺達のスピードが分からない。

だから順位は変わらなくても前との差はいつの間にか縮まっているのだ。

俺とレイは小走りの状態になった。

レイの運動神経が良くて助かった。

球技大会も水泳大会も体育祭も全て彼女は活躍した。

今考えてみるとこの大会に出るのがレイとで良かったかも知れない。

一番勝率が高いっぽい。

「もうこれくらいのスピードでいいわ。これ以上あげるとスタミナが切れる」

「ああ」

俺達は一気に前と差を縮めた。

そして予想通り結構疲れている組があった。

「よし!いけるぞ!」

俺達は抜きまくった。

「6キロ地点までこれで」

「おう。わかった」

俺達のペースに何組かはついてきたが、結構な組が置いて行かれた。

「一応この集団の先頭になったわ」

「ああ…」

ヤベエ。結構疲れてきたぜ。

レイはそこまで疲れてなさそうなのに。

俺はそれを隠しながら走った。

しかしすぐにバレた。

「隠さなくていいわ」

「え?」

「疲れていることを隠すと集中できないでしょ」

「う…バレていたか」

レイは何でこんなに洞察力が鋭いのだろうか。

「大丈夫よ。こうなることは想定していたから」

「ええ!?」

まさか俺の方がスタミナがないって言いたいの!?

少しショックだ。

「集中よ集中。最後にあなたが頑張らないといけないんだから」

「あ、そうなの?」

「いいから言う通りにして」

「わかった」

俺はレイの発言の真意には気づかずに黙って言う通りにした。

おっ、前の集団が見えてきた。

まあまだ1位の組は見えていないけどな。

そのときチラリとこっちを振り返った組があった。

「あ」

「やばいわ。彼らはスピードアップするつもりよ」

「俺達はどうする?」

「…キープよ。あなたのスタミナが持たなくなるわ」

「う…確かにな」

悔しいが相手のスピードアップを黙ってみているしかないだろう。

が、しかし中々相手はスピードアップをしなかった。

「フフ…これは嬉しい誤算ね」

「え?」

「どうやら相手もスタミナ切れが心配らしいわ」

「そうなのか!?」

すると俺達は一応助かったことになる。

彼らがスピードアップしてしまえば、1位の組が気づいてしまう。

すると1位の組もスピードアップして…となって大変なことになる。

「一応助かったわ」

「ほっ」

「とはしていられないわ。そろそと6キロ地点だからそれまでに追いつかないと」

俺達は徐々に追いつき始めた。

しかし…相手も踏ん張っていて中々抜けない。

「クッ…」

レイの顔に少し苦悶の表情が見えた。

疲れからではない。

多分自分の計算どおりにいかないことが悔しいのだろう。

まあ世の中計算どおりに全て上手く行くわけないが。

俺達は結局追いつけずに6キロ地点を通過。

上りは残り1キロになった。

順位は10位。

さりげなく入賞圏内だ。

だがもちろん俺達にそんなものは関係がなかった。

狙うは優勝。それだけだ。

しかしトップとの差は未だに40秒ほど。

彼らは十分に速い。それは認めなくてはいけない。

「とりあえずさっき抜けなかった4組をここで抜くわよ」

レイは先ほどのことがよっぽど悔しいのか、少し取り乱している。

「ああ」

俺達は200メートルほどで彼らを全て抜いたのだった。

しかし俺のスタミナの減りはレイのそれより顕著になった。

「はぁはぁ…」

「…もう少しの辛抱よ。7キロ地点まで行けば大丈夫だから」

「へ?」

どういう意味かはよく分からなかったが、7キロ地点まではこのままのペースで頑張ることにした。

一応俺達のペースはかなり速いので前の3組が見え始めた。

あれを抜けば3位浮上だ。

しかし7キロ地点までに抜くのはきついかもしれない。

「一応後ろにはつけるわよ」

俺達に誰もついていけなかったので後ろの心配はほとんどない。

「おう」

俺達はいつの間にかスピードがさらに上がっていた。

そのことに俺達は気づかなかった。

ようするにすでに俺達は自分たちの限界を超えていたのだ。

「はぁはぁ…意外と追いついてきたな」

「そうね…」

おっ、レイも疲れてきたのか?

いやいや喜ぶことじゃないな。

そしてそろそろ7キロ地点なのだが、予想以上に早く前に追いついた。

「あらぁ?カイ君じゃない」

「あ、おばさんとおじさん…」

その集団の中にはなびの両親の組を発見した。

「どなた?」

「はなびの両親だよ」

「なるほど」

レイは納得した。

「というかカイ君、そちらの子は彼女なの?」

「違いますよ!」

「彼の片思いです」

「ってまたそれかい!」

はなびのお母さんは案外元気だ。

「疲れてないんですか?」

俺は訊いてみた。

「オホホ…昨日の夜は営まなかったから元気なのよ、ダーリンも」

「…」

「…」

外で言うことじゃないだろ。

「ア、アハハ…」

はなびのお父さんはかなり困っている。

まあこの家は母が一番強いしな。

「…そんなことより早く行きましょう」

「そうだな」

俺は3位のはなびの両親を抜きにかかった。

「ちょっと待ってよ!これだから若い子達は先走るんだからもう…」

俺達はこうして3位に浮上したのだった。

「…個性的な家庭ね」

レイは苦笑した。

「でも羨ましいな」

「…そうね」

俺とレイはこうして8キロ地点を3位で通過した。

2位はもう見えている。

しかしトップとの差は40秒以上だった。

どうやらダントツの速さだ。

「あれ?何だか楽になってきたぞ」

俺は体が前より疲れていないことに気づいた。

「はぁはぁ…」

「ええ!?」

今度はレイが疲れ始めていた。

「カーブ曲がるときね…外回りの方が疲れるでしょ?」

「え?ああ」

俺は突然何かの説明を始めたレイの話に耳を傾けた。

「さっきまではあなたが外回りになることが多かったのよ…でも7キロ地点からは私が外回りになるほうが…」

「わかったわかった!もうしゃべるな。とりあえず2位になるぞ!」

どうやらレイの説明したとおりなのだが、俺に今まで負担がかかっていたのだが、7キロ地点からはレイの方に負担がかかるらしかった。

だから俺が疲れていたときにレイはそこまで疲れていなかったのか。

「大丈夫か?ペース下げる?」

「…いいからあなたは集中して」

レイは結構強情だった。

その間に2位の後にまでつけた。

「ん?」

俺は女のほうに見覚えがあった。

「おうカイか」

「真里菜先生!?」

なんと女のほうは真里菜先生だった。

ちなみに男の方は生活指導の先生(オリエンテーリングで俺と同じ部屋の)だった。

「こら蛟刃!不純異性交遊で捕まえるぞ!」

生活指導の先生が俺に怒鳴る。

「アンタは良いのかよ!」

「私男だもん」

「はっ!そうだった!」

どうやら真里菜先生は男だから大丈夫らしい。

……

「っておかしくない!?カップル対抗だよね!?」

「カップルは別に男女じゃなくてもいいだろ?」

「何ぃぃぃぃ!?」

俺は無駄に体力を使っていることに気づいていない。

「というか体育教師がいるのに2位って遅いわよね」

レイが皮肉を言った。

レイが教師にそんなことを言うのは珍しい。

そう、珍しく闘争心剥き出しのレイ。

「それは私が足を引っ張っているからな!ハッハッハ!」

「自慢することでもねえだろ!」

あ、走りながらツッコミをするのってすんごい疲れる…

「レイ、いいからさっさと抜こうぜ」

「そうね」

「待てい!」

ガシッ

突然真里菜先生が俺の左腕を掴んできた。

「な、何しやがる!」

「フッフッフ…妨害禁止とは言われていない!」

「アンタ人間として腐ってるよ!」

俺は真里菜先生を引き離そうと必死になる。

生活指導の先生は真里菜先生のその行為を黙認していた。

所詮自分たち以外はみんな敵、というわけか。

俺はさらに力を入れるも離れなかった。

「ハハハハハ!そのまま地獄に落ちるがいい!」

真里菜先生のセリフにレイも内心怒っていそうだ。

青筋が浮かんでいいる。

「レ、レイ…何とかできない?」

「…わかったわ。先生、この勝負が終わった後にカイを好きにしていいですから、その手を放してください」

「ええ!?」

レイは俺を売った。

「それは本当か!?風見!嘘はついていないだろうな!」

何故かそこにがめつく真里菜先生。大人気ない。

「はい。約束します」

「ってオイ!」

そして真里菜先生は俺の左腕を放した。

「約束破るなよ〜!」

「はい」

レイはやっと解放された、とうんざりした顔をした。

「俺を売るのか…」

「悪いかしら?今はこれしかないのよ」

「う…」

俺は一瞬憂鬱になったが、すぐに気を取り直すことにした。

「それにしても無駄な体力を使ってしまった…」

ツッコミのせいもあって俺とレイのペースは非常に落ちていた。

「でも誰も後から来ないな」

「みんなバテたのね」

バテたのは俺達だけでは無いらしい。

「あ、もうすぐ9キロ地点だ」

「あと1キロか…」

1位との差は多分埋まっているはずだ…

俺達は水分を補給して先へと進んだ。

「順位は2位…え!?」

「何かしら?」

「1位との差…65秒…」

「!?」

これにはレイも驚きのようだ。

「まさか最後にまだ余力が残っていたというの!?」

レイがうろたえた。

「だがまだ1キロある!行くぞ!」

「そうね」

俺達は急いでトップを追いかけた。

しかし全然トップが見えてこない。

俺達の疲労はピークに達していた。

「まだまだ!」

何とか掛け声を掛けながら前へと足を進ませる。

「ん?」

「え?」

そのとき前方に男女の二人組みがベンチに座っているところを発見した。

「あれってトップの組だよね?」

「そうね。エントリーナンバーの札をつけているし」

まさか奇跡が起きたのか?

これってラッキーなのか?

「おう。やっぱり2位はオマエラか」

「久しぶりね。あなた達」

「まや先輩とカズ先輩!?」

トップはまや先輩とカズ先輩だった。

彼らは俺達と併走した。

「普通に勝っても面白くないしね。2位を待つことにしたの」

「つうわけで俺達と勝負だ!」

「クッ…」

最後の敵がこの人たちだなんて…

俺とレイはついていくことで精一杯だった。

「彼らはさっきちゃんと休んでた…」

レイも苦しそうな顔をする。

「クッ…どうすれば…」

俺は目を閉じた。

すると目の前が金色になった。

一体なんだこれは!?

力がいきなり湧いてきたぞ…

「レイ、俺にしがみつけ」

「え?」

「いいから!早くっ!」

レイは半信半疑に俺にしがみついた。

「とばすからしっかり掴まってろよ!うおおおおお!!」

俺は全速力で走った。

「な、何!?」

カズ先輩とまや先輩が俺を見て呆気に取られている。

それはそうだ。俺も驚いている。

一体どこにこんな力があるのか…

そしてとうとう俺はトップに躍り出て後を引き離しにかかった。

「な、何が起きているの?」

「分からん!だが、もうすぐゴールだ!」

ゴールテープが見えた。

観客が見えた。

レイは顔を少し緩めた。

かくいう俺も笑顔になった。

観客の声が聞こえる。

俺は全速力で走った。

俺は…勝った…

ドサッ

「「ん?」」

言っておくがしがみついていたレイが落ちたわけではない。

俺達の目の前にボロボロになった二人の男女が落ちてきた。

「え?」

俺達はその光景に呆気に取られていた。

「行くぞ燈真!」

「目が回る〜。いや、俺が回っているのか?まあ何でもいいや〜」

「「ええ!?」」

落ちてきたのはナナちゃんの姉の睦さんと弟の燈真君だ。

「勝つのはアタイだ〜〜〜〜〜!!!」

「あ〜れ〜」

そうして猛ダッシュしていった。

「って俺達も急ごう!」

俺もダッシュした。

「ゴォォォッォォォォォオッォル!!」

「あ」

「あ」

100万円の夢が消えた。

……

「っていうか何が起きたんだか分からないんだけど!説明してくれませんか!」

「あ、カイ君。このマラソンはショートカット禁止っていうルールないのよ」

「ええ!?彼らショートカットしたんですか!?」

ひ、酷い。いくらなんでもあんまりだ。

「これはね、勝負じゃなくてエンターテインメントだから」

「…」

「…」

俺達は何も言う気がなくなった。まあ言いたいことは山ほどあるが。特にレイはそうだろう。

100万円どころかクリスマスパーティの場所取りも失敗したのだ。

「ハッハッハ!面白いものを見せてもらった!」

そんなへたり込んでいる俺達にマスターが寄って来た。

「なんですか?」

「私達はただの負け犬ですが」

レイはすごく卑屈になっていた。

思えばレイが勝負事で負けたことって無いんじゃないかな?

「まあまあ。面白かったからイヴの日に店を貸しきってやるよ」

「ええ!?」

マスターは慈悲を掛けてくれたのか!?

「…単に私達をこの大会に出したかっただけでしょ」

「痛いところを突くね…」

「…」

「…」

何はともあれ俺達は貸切の権利と20万円を手に入れた。



後日…

「ねえカイ、どうして場所を取れたのにレイの機嫌が悪いの?」

はなびが俺に訊いた。

「え!?あはは…」

レイの機嫌が直るのにかなりの時間を要したことは言うまでもない。



「真里菜の日々」


真里菜「いいぞ〜。カイ、すごくいい」

カイ「もう止めてください……」

真里菜「何を言っているんだ。そんなに我慢できないのか?」

カイ「確かに我慢できませんから早く脱がしてください」

真里菜「まだダメだ」

カイ「そんな……」

真里菜「もっと固くなるまでやってやる」

カイ「そ、そんな……」

真里菜「さあたっぷり写真に収めてやるからな」

以上俺が真里菜先生によってコスプレさせられているシーン。まあ約束だから。


「次回予告」らしきもの


なんとなんと悪の市議会議員が俺達の前に立ちはだかった。

しかし突然現れた正義の味方ミラクルセヴン!

ミラクルセヴンは俺達を助けることが出来るのか!?

頑張れ!ミラクルセヴン!

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