第53話 100万円で生徒会
〜あらすじ〜
前回正直勉強しかしていないので、話的には何も進んでいない。
しかし、今日はテストです。
やっと話が進み始めます。
期末テスト…
これが終わったら冬休みに入ったのも同然である。
しかし運命を左右するテストでもある。
もしこのテストが危うかったら、赤点の危機に突入だ。
コンディションイエローを通り越してコンディションレッドが発動される。
かくいう俺、蛟刃カイも危険信号が出ている。
早くしないと…大変なことになりますよ。
……
…………
まあそんなことはともかく、とにかく期末テストが始まったのだ。
「出来はよかったんでしょうね?」
最後の科目…世界史(俺の赤点科目)が終了してすぐにはなび達に出来を問い詰められた。
「まあこれだけやって出来なかったらもう才能ないわね」
「あなた随分と言いますね」
レイの毒舌に冷静に突っ込んだ。
「でもずいぶん冷静じゃない」
咲にそう指摘された。
そう、冷静ということは…
冷静ということは…
「それなりというところなのね」
咲が続けた。
「さ、先に言われた!あ、いやいや別に先と咲をかけた訳じゃないよ!」
「いや、聞いてないし」
さや先輩にそう言われた。
「すいません。…ん!?」
俺は目を凝らしてよく見てみた。
「何であなたがここにぃぃぃぃぃ!?」
「私もですよ〜」
ナナちゃん登場。
「あ、ゴメン。じゃねえよ!どうしてここに生徒会メンバーが勢ぞろいしてるんだよ!?」
「言っておくが俺もいるからな」
先ほどまで一言もしゃべらなかった俊哉がそう言う。
別に俺は忘れてたわけじゃない。
「ここは生徒会室か!」
「じゃあそうする?」
「やめい!」
今日も俺はツッコミを強要されている。
まあテスト週間のせいでろくにツッコミをしていないからな。
「はっ!いつのまにか俺ってツッコミ依存症にかかっている!?」
そんな俺の発言は無視されて別の話題を話し始めた。
「それにしてもクリスマスパーティ楽しみだね」
「あ、それなんだけど、変更があるの」
「へ?」
俺は我に帰ってさや先輩の発言に耳を傾けた。
「どうやらウチが使えなくなっちゃったの。なんか父の仕事の関係で。ごめんなさいね」
あちゃ〜。まあ仕方ないよな。蓮見財閥なんだし。
俺の家…じゃなくて皇家も似たようなものだし。
今年も姉さんは引っ張りだこだろうな。
「このシスコン」
「ええ!?姉のこと考えちゃダメなんですか!?」
何かさや先輩に変なことを言われたので返しておいた。
「ということは本当にお姉ちゃんのことを考えていたのね」
「あ」
ただ返し方が拙かった。
「ええとそれよりもどうするんですか?クリスマスパーティ」
俺は急いで話題を変えることにした。
この話題は俺を不利にさせるだけだ。
「現状では無理ね」
さや先輩はそう断言した。
俺達は結構楽しみにしていたので非常に残念がった。
「私に一応アテがあるわ」
「え?」
レイがそう言ったので俺達は一斉にレイに目を向けた。
「オアシスよ」
「え?ああ!マスターの店か!」
すっかり失念していた。
「でも所詮アテだから今から了解を取りに言ってくるわ」
「ああ!俺も行く!」
「ありがとうね。頑張って」
みんなに応援されながら見送られて、俺とレイは「オアシス・イン・デザート」へと向かった。
「すいませーん!」
「何だ何だ。お前ら今日バイトじゃねえよな」
店にはまだ人がほとんどいなかった。
おかげでというのか、話しやすい。
「マスター、お願いがあるんですけど」
「何だ?」
マスターは仕事しながらも俺達の話を聞いてくれている。
「クリスマス・イヴの日、ここでパーティやりたいんですけど、ここを貸切にしてもらえませんか?」
「はあ?」
だよなあ。普通の反応だ。
「ここを貸切にぃ?しかもイヴだとぉ?」
今度は俺達の顔を見て話したマスター。
少し神妙な顔をしているような気がする。
「無理だ。イヴの日は店をやらないことにしている」
「そ、そんなあ!そこを何とか!」
俺は必死に頼み込んだ。
「まさかマスターはその日女とデートしたいから休みにさせるわけないでしょうね?」
レイが疑惑のまなざしを向ける。
確かにその可能性もありうる。
「そんなわけねえよ!ただ疲れるから休みにしたいだけだ!」
「本当かなあ?」
俺も疑惑のまなざしを向けた。
「そうかそうか。そこまで疑うのならこの話はここでおしまいだな」
「ちょっと待って!」
俺の発言により事態は深刻になってしまった。
「さっきのは冗談ですから!お願いします!ここを貸しきらせてください!」
「娘さんを僕にくださいでしょ?」
「ってオイ!こんな状況でボケんじゃねえよ!」
こんなときに冗談を言っている場合では無いだろう。
レイは何を考えているのか。
「まあ場合によっては良いんだがな」
「「へ?」」
これにはさすがのレイも驚いたようだ。
「これを見ろ」
そう言って差し出されたのは一枚の広告だった。
「何々…カップル対抗…2人3脚マラソン大会!?」
「…」
レイは黙っていたが俺は声を出して驚いた。
「これがなんですか?」
俺がマスターに聞いた。
「お前らがこの大会に出て優勝できたら店を貸切にしてやる」
「マジかよ!?」
「…」
この大会に出なくちゃいけないのかよ…俺と…レイで。
「勝負の日は3日後じゃない…いくらなんでも無茶よ」
レイが広告を見ながら言った。
「じゃあしょうがねえなあ。イヴの話は無しだな」
「う…」
困ったぞ。
どうすればいいんだ…
レイは兎も角、俺は絶対さや先輩に何か言われるぞ。
「もういいわ。他のところを探しましょう」
レイは俺を引っ張って帰ろうとした。
「ちょっ!」
俺は突然のことにバランスを崩しそうになったが、何とか堪えた。
「優勝賞金100万円…」
ピクッ
俺達二人とも後から聞こえた声に立ち止まった。
「優勝したら100万円か〜。いや〜俺も出たいなあ」
ピクピクッ
俺達二人は完全に立ち止まった。
無理もない。俺達二人は独り暮らし。
金欠なんてしょっちゅうだ。
そこに飛び込んできたそんな甘い話…
俺はゆっくり振り向いてしまった。
そこにいたのはニタリ顔のマスター。
「レイ、出よう」
俺はレイに言った。
「…」
「俺は…お金に負けた!」
俺はそんな情けない発言を大声でした。
「威張るようなことじゃないわよ」
「だが…100万円は魅力的だ」
俺は完全に魔の手に落ちた。
クッ…金の魔力とはこうも恐ろしいのか。
「…仕方ないわね。そこまで言うなら」
とは言っても絶対レイも欲しがっているぞ。100万円を。
「決まりだな」
マスターは広告を俺達に渡した。
「じゃあ頑張って来いよ〜」
ヒラヒラと手を振るマスターを尻目に俺達は店を出た。
「…練習しよう」
「そうね」
俺達は2人3脚の練習をすることにしたのだった。
そして時は着々と過ぎていったのであった…
もちろんその間にさや先輩を始めとする生徒会メンバーから連絡があったが、今交渉中と言ってやり過ごしている。
さてさてその間にいつの間にか2人3脚大会当日になった。
「とうとうだな」
「そうね」
俺達は気合十分で会場にやって来た。
何せ俺達はあれからもう特訓したのだ。
何とかして勝ちたかった。
そしてこのときの俺達の頭の中はクリスマスパーティ云々ではなく賞金のことでいっぱいだったのは秘密である。
「さぁぁぁぁって今年も終わりに近づいていまぁぁぁっぁぁぁぁす!!」
「ん?」
何だか聞き覚えのある言い方だな。このアナウンス。
「しかっぁっぁぁぁし!しっかあぁぁぁぁぁぁし!このカップル対抗二人三脚マラソンは始まってしまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!」
いや、始めたんだろ。
「そして実況は私、大沢右京だぁぁぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁぁぁ!!!」
「…」
「…」
彼を厚巻2号と命名しよう。
「では、概要を説明いたします」
そして舞台にもう一人、落ち着いた感じの女性がやって来た。
「あれ?あの人見たことない?」
「そうね」
記憶に間違いがなければ彼女はナナちゃんの姉である双葉さんである。
「コースはここ、光芒町商店街から…まあパンフレットを見てくれたほうが早いと思います」
「おい!」
「つっこまない、つっこまない。無駄に体力使うわよ」
「あ、そうだな。すまん」
ツッコミの癖がこんなところで出てしまった。
というか双葉さんって意外と面倒くさがりやなんだなあ…
「そしてぇぇぇぇっ…優勝者にはぁっぁぁ!」
「賞金100万円!2位は20万円。3位は10万円。4位は図書券5万円分。5位は図書券2万円分。10位以内に入賞した場合は図書券1万円分です!皆さん頑張ってください」
解説者と実況が語った。
「へぇ…なんだ、結構賞金が出るんだな」
「甘く見ないほうがいいわよ。参加組数は100組以上なんだから」
「ええ!?」
ということは1位どころか10位以内もキツイじゃねえか!!
隣を見たらあからさまに体格のいい奴らがいたり、この大会に命を掛けている奴らもいる。
かなり大変な大会だな。
「じゃあ早くスタート地点に行くわよ」
「お、おう」
やっべえ…緊張してきた。
白雪姫以来の緊張だな、これは。
俺達はスタート地点へと向かった。
―Saya SIDE―
「ねえセバスチャン」
「何でしょうか?お嬢様」
私は自室にセバスチャンを呼んだ。
「翼を欲しいと思ったことは無い?」
「翼…ですかな?」
「そうよ。自由に飛び立てる翼…」
私がそういうとセバスチャンは少し困った顔をした。
まあ普通の反応であろう。一般的に突然このような質問をされると困るはずだ。
「私は…お嬢様に仕えていることを誇りに思っておりますゆえ、そのようなことを考えたことはありませぬ」
「そ、そう…ありがとう」
少し照れくさいが、嬉しいことを言ってくれる。
「お嬢様…何かをお悩みですかな?」
「そうね…」
セバスチャンはどのような立場で私を見ているのか気になった。
蓮見家に仕えている身としてなのか、私の執事としての身なのか…
私はセバスチャンを試すことにした。
「ねえセバスチャン。仮にね…仮に私が蓮見家を追い出されたらあなたはどうするつもり?」
「…」
セバスチャンがハッと息を呑んだかに見えた。
セバスチャンも私が何を意図しているか気づいているのだろう。
「正直に答えて。これは命令よ」
これは私の最後の抵抗。
蓮見家に対する正当なる反逆。
単なる我儘だけど、私は自分の力を知りたい。
どうせ勝算などない。
ならばやれることを精一杯やってみるまで。
私はまっすぐにセバスチャンを見つめたのであった。
蓮見家と皇家の両家に大きな動きが見え隠れし始めた。
「レイの日々」
レイ IN 図書館
レイ「……」
読書中のレイ。
30分後……
レイ「……」
まだ読書中のレイ。
1時間後……
レイ「……」
まだまだ読書中のレイ。
3時間後……
レイ「……」
すごい集中力でまだ1回も席を立っていないレイ。
10時間後……
館員「あのすいません……」
レイ「……」
結局1回も席を発たなかったレイ。
館員「もしも〜し。聞こえていますか〜?」
レイ「……」
館員「まさか……エコノミー症候群!?」
レイ「……」(耳栓中)
で、結局肩を叩かれて気づいたレイであった。
※(普通の人だと1回も立たないのは危険です)