第52話 普通の生徒会
〜あらすじ〜
2学期の終わりを締めくくるもの…
そうテスト!テッェェエッェェェェスト!である。
俺は一応生徒会長なので成績不振だけは免れなければいけない。
そんなこんなで勉強会が始まった。
よく晴れた朝。
しかしそんな朝でも寒いことには変わりが無かった。
「うう…寒っ!」
俺は布団から出たくなくてずっと包まっていた。
まあ日曜日だしまだ起きなくて良いか…
と、そんなことを考えていたら…
ピンポーン♪
「ん?」
何故かこんな時間にチャイムが鳴った。
何で?
「はい」
俺は仕方なく布団から出て上着を着ると、ある程度急いで玄関に向かった。
ピンポーン♪
「はい、分かりましたから」
俺は誰だか確認せずに扉を開けた。(今の時代、この行為は危険なので絶対に真似しないでください)
「おはよう。」
「よう。」
「え?何でレイと俊哉?」
そこにいたのはレイと俊哉だった。
「ええと…なんか用?」
「その顔から察するとあなたは寝てたわね」
「ああ。…じゃねえよ!何でお前らがここに!?」
俺は一応吠えた。
「勉強会するに決まってるじゃない」
「ええ!?聞いてねえよ!」
「だって教えてないからな」
「はあ!?」
折角少し寝れるかと思ったのに…
俺は仕方ないから二人を招き入れた。
二人とも礼儀正しく靴を脱いで、上がった。
…何も文句を言えないな。
「あ、そういえばはなびと咲も来るわよ」
「ええ!?入りきらないだろ!」
突然のカミングアウトに驚く俺。
さすがにこれ以上はきついのではないか?
「大丈夫よ。午後に図書館へ行くから」
「ああそうか…」
もうどうにでもなれ、みたいな投げやりな対応になったが、二人は特に気にしなかった。
カイの家からはかなり距離のある図書館。
…カイ達がこれから行こうとしている図書館に先客がいた。
「さーやってもう勉強しなくてもいいんじゃない?」
「それはどうかしらね」
自称名誉会長の蓮見さやとその友人の瀬川ゆうである。
この二人ももちろん勉強しに来た。
しかしまあやる気に差があるのは顕著であるが。
「…全然集中していないわね」
さやは自分の向かいに座って周りをキョロキョロしているゆうに向かって呟いた。
しかし肝心の彼女は何も聞いていなかった。
「え?」
「もういいわよ」
はぁ…と心の中でため息を吐いてチラリと左を向いた。
「あ…」
さやはそう言ってとある場所を見つめていた。
そこにいたのはナナ率いる後輩5本刀であった。
「…みんな考えていること同じなのね」
「え?」
ゆうはさらに疑問符を浮かべた。
「あそこ」
さやが指を指した先をゆうが見る。
「あれって確か生徒会にいる子よね?」
「そうよ」
そのとき…
「あ…」
「あ…」
ナナとさやの目が合った。
「さや先輩じゃないですか!」
「奇遇ねナナちゃん」
笑顔で会話を交じわす二人。
「さや先輩も勉強しに来たんですか?」
ナナが先に尋ねてきた。
「そうよ。まさかあなたも?」
「そうですよ〜」
「ええ!?一体何の冗談?」
「失礼ですよ!」
「冗談よ」
そんなほのぼのとしたやり取りをして結局彼女達は雑談タイムをスタートさせてしまった。
まあよくあることだ。
これからの展開も予想が出来てしまう。
まあよくあることだ。
「で、一つ訊いてもいいかな?」
場所は戻ってカイの家。
俺は突然自分の家に来て、現在向かいに座っている二人を見ながら言った。
「何?」
「何だ?」
当然反応する二人。
「何でお前ら我が物顔で朝飯をここで食ってるんだ?しかもその飯は俺の。」
「悪い?」
「悪いか?」
と、朝食を食べながら答える二人。
「だぁぁぁ!!そうじゃねぇ!!」
俺はそんな二人に頭を抱えた。
この二人、特にレイには口では絶対勝てないだろう。
「何でここで食ってるんだよ!?家で食わなかったのかよ!?」
さすがにこれで伝わったはずだ。
「ああ、そういうのは些細な問題よ」
「ただ単に食べるのを忘れてただけだ、俺は」
曖昧に誤魔化すレイとは対照的に素直に言う俊哉。
「いや、レイさん、君も忘れただけでしょ」
「まあそうとも言うわね」
俺の問いに今度は素直に答えやがった長い髪を弄っている女。
「あなた達バカですか!?」
「テストです」
「召喚獣です」
「何そのマイナーなネタ!?いや、マイナーじゃないかもしれないけど!!」
今日の俺はテンションが果てしなく高いぜ。
もう朝に感じた寒さを感じない。
ただ朝っぱらからツッコませないでくれ。
疲れる。
「はぁ…」
「どうしたの?」
どうもこうもアンタらのせいだろうがぁぁぁ!とか心の中で言っておく。
もう言う気力ない。
眠い。腹減った。
「ってまだ俺朝飯食ってねえじゃん!!」
突然大声を上げた俺を見る二人。
その顔がなんだかムカついたので俊哉の皿にあるクロワッサンに醤油をかけといた。
レイのやつにかけないのはまあ俺はそこまでえげつなくないから。
「お前結構酷いときは酷い奴だな」
俊哉が淡々と言う。
あまり気にしないのか?
まあ気にしたところで謝らないが。
「食うか」
俺は冷蔵庫から適当に残飯を引っ張り出して食うことにした。
「ていうかお前の姉さんまだ帰って来ないんだな」
「そうだよ」
俺は平静に俊哉の問いに答えた。
「ふーん」
それに何故か意味深な笑みを浮かべるレイ。
「な、何だよ」
「寂しいんでしょ。シスコン」
「のぁ!!」
何か俺の心にクリーンヒット!!
くっ…俺はシスコンなのか!?
「いや、シスコンじゃねーーーーー!!」
「「いや、シスコン」」
「声を揃えて言うなぁぁぁ!!」
実際少し認めていたりするが、人には言われたくない。
そういえば姉さんは本家にいるんだよな…
「どうした?いきなり考えこんで」
「お姉さんのことについて?」
「あ、いや…何でもない」
俺は昨日の電話を思い出していたので、そう言う風に返してしまった。
そうして二人とも何も言わなくなった。
〈昨日の回想〉
「一体何の用ですか?皇家現当主殿」
電話の相手は俺の父だった。
声を聞くのは数年ぶりであったが、忘れるわけがなかった。
「久しぶりだな、カイ」
相変わらず厳格な声をしている。
正直体が震えてしまう。
「フッ…思えばまともにお前と会話すらしていなかったな」
話が見えない。
まさか雑談をするために俺に電話を掛けてきたわけではあるまい。
「それで、一体俺…私に何の用ですか?私とあなたはもう何も繋がりはありませんが」
俺は平静を装って言った。
しかしそれにしてもあの父親が電話をしてくるなんて気味が悪い。
「確かにな。現在私とお前の間には何もない。」
「ありますよ。壁です。私達は相互に不可侵ですから」
俺は早く電話を切りたかったのでつい強い言い方をした。
しかし相手は動じなかった。
「壁か…言い切ったな。しかし壁なんぞすぐに壊れる」
「?」
「こちらにはそれ相応の武器があるからな」
武器?
何の事だか俺にはさっぱり理解できない。
「まあそんな話をしにわざわざお前に電話を掛けたわけではない」
どうやらやっと本題に入るらしい。
「アメリカに来ないか? いや、今からすぐと言うわけではない。まだ学校があるはずだからな。試験が終わって冬休みになるだろう? そのときでいい」
そのときでいい、って何様のつもりだろう。
まあ実際偉いのだが、少し癇に障る。
それにしてもどうして俺がアメリカに?
この人の意図が読めない。
「すぐに答えの出る話ではない。しかし、お前はどうあっても絶対にこっちへ来ることになる。絶対に、な」
「!」
これは脅しか?
何で俺に電話を?
姉さんはどうしている?
あまりにも疑問が多すぎる。
それに話が見えない。
「では今日はこれで失礼するとしよう」
今日は、ということは後日電話してくるのか…
そう考えると再び体が震えた。
皇家の絶対的な権力は恐ろしい。
あの人だけには俺は逆らえない…
俺はどうすれば…
「おい、どうした?」
「え?あ、いや…テストやばいなとか考えてた」
切磋に出まかせを口にしたが信じてくれるかどうか…
「ふ〜ん」
う…あんまり信じてない。
「ま、あんまり気負いすぎるなよ」
「何のための私達?」
「あ、ありがとう」
何だかそう言われると照れくさい。
「そういえば言い忘れてたんだけど、もうすぐはなびと咲との待ち合わせ時刻よ」
「言い忘れるなよ!」
この二人の格好はまあ俺の家に来たぐらいだから私服なのだが、俺は寝起きの格好…つまりパジャマである。
「仕度しなけりゃやばいじゃないか!」
俺は急いで着替えを始めた。
が、しかし。
「私の見てる前で着替えようとするなんて中々の根性ね」
「あ…」
レイがいること忘れてたあ!!
「は、早く行って!外に!」
残念だが部屋はリビングとトイレ、バスルームしかないので外に追い出すほかなかった。
「おいおい俺もかよ」
ついでに俊哉も出して俺の部屋は再び静寂を取り戻した。
「よし!」
今度こそ俺は着替え始めた。
場所が再び変わり…
図書館の前へと移った。
「何でこの間一緒に勉強会しようって誘って断ったのに、今日はオーケーなの?」
咲がはなびに訊いた。
「え?いやあ…まあいろいろあって…」
「仕事してたんでしょ?一人で」
「何でそれを!?」
咲の発言にはなびが目を丸くした。
まあ咲の場合、勘も鋭い。
「分かるわよ。何年一緒にいたと思うの?」
「それもそうね。でもカイは全然気がつかないけど」
「それはカイだし」
「ああ、なるほど」
とまあこんな会話が交わされていることに本人は気がつかないが。
むしろ気がついたら怖い。
「それにしても早く来すぎたんじゃない?」
「それもそうだね。じゃあ先に入ってみる?」
「そうしよっか」
咲の提案に賛成したはなびは咲と共に図書館の中に入っていった。
「待たせたな」
着替えの終わった俺は二人と共に歩き始めた。
「そういえば…」
俺がそう言うと二人ともこっちに顔を向けた。
「俊哉お前さ、クリスマス・イヴの日空いてる?」
「はぁ? まあ空いてるけどな」
「まだ言ってなかったの?」
すいませんね。今の今まで忘れてたんですよ。
「お前って彼女いないからな〜。空いてて当然か」
「お前もな」
俺にとっては俊哉に彼女がいないのが不思議だ。
「それにしてもどうしてお前彼女を作らないんだ?いっぱい言い寄ってくるだろ?」
俺は俊哉に一番質問したいことを訊いた。
「はぁ…好きでもないのに付き合えるか。それにみんな俺の外見しか見ていないからな」
「フフ…中身あったかしら?」
レイが会話に参加した。
最近は前より積極的になってるしな。
「君は最近誰かに似てきたね…」
俊哉がため息混じりに言う。
確かにさや先輩と少しキャラが被っている、
「なるほど。勉強になりました!俊哉先生!」
「さあ早く行こうぜ」
「そうね」
「ってオイ!俺の扱いやっぱり酷くないですか!?」
俺の話を聞いてくれない状態を味わっていたら、いつのまにか目的地の図書館についてしまった。
「はなびと咲が来ていないようね」
「でももう待ち合わせの時刻なのにな…」
はなびはともかく咲が遅れるなんて珍しい。
「メールするわ」
レイがメールを打ち始めた。
随分慣れた手つきだ。
「送信、と」
レイは満足そうな顔をした。
俺的には眠くてもう帰りたい。
「さて、じゃあ俺はちょっと中に入ってみてみるわ」
俊哉が一人で図書館に入ろうとした。
「え?」
「じゃ」
俊哉は行ってしまった。
俺も入ってよかったんだけど、眠気が…
「あ、メール返ってきた」
レイの発言で俺はレイの方へ顔を向ける。
「え?もう来てるらしいわ」
「マジかよ」
眠くて適当に欠伸しながらツッコんだ。
まあ案の定評価はよくなかった。
「…行くわよ」
「ヘイヘイ」
俺はレイの後について入館した。
そして…
自習ルームが見え始めた。
はなび達気合入ってんな〜とか思いながらドアを開けた。
ガラガラ
「え?」
「あ、カイ。」
「カイ先輩じゃないですか〜」
「久し振り〜」
『カイ先輩!』
なんだこの姦しい光景は。
はなびと咲だけかと思ったら結局いつもの生徒会メンバープラスαじゃないか。
「オイ、聞いてないぞ」
俺はレイに耳打ちした。
「私もよ。驚いてるから」
「え?それで?」
俺にはいつもと変わらないように見えるのだが…
「アンタ早く勉強しなさい!」
俺ははなびに叱咤されて急いで席に着いた。
そして世界史の教科書を開いたのであった。
「夕陽?」
「はい、当主が動きました」
電話で夕陽…委員長が誰かと電話をしていた。
まあ言わずもがなであるが。
「まさかカイと連絡したの?」
「そのようです」
夕陽は無表情で会話をしていた。
まるで一切の感情を封じられているかのように。
「こんなに早く動いてくるとは…まあいいわ。私達の作戦に支障は無いわ」
「イエス。マイマスター」
「そっちはそっちで頼むわよ。それじゃ」
ツーツーツー
夕陽は静かに受話器を置いた。
彼女のいる部屋は残念ながら生活感のない部屋だ。
こんなところに年中いると気が狂ってしまいそうだ。
だが彼女はここにいる。
この部屋の中の唯一の「生」だった。
カイの知らぬところで何かが起きようとしていた…
「はなびの日々」
はなび「♪〜♪〜♪」(鼻歌)
下駄箱にはなびが登場。
はなび「♪〜♪〜♪」
はなびが下駄箱を開ける。
はなび「ん!?」
はなびが何かを手に取った。
はなび「!!(これって…ラブレター!?)」
宛名を確認するはなび。
「カイより」
はなび「!!(まさか…カイから…)」
封筒を人目に付かないところで開けるはなび。
はなび「(えーと何々…今日の放課後、屋上で待っています。話があるので来て下さると助かります…お姉様…!!)」
再度宛名を確認するはなび。
はなび「(…1年、鈴宮カイリ…女生徒…)はぁ…」
封筒をゴミ箱に捨てようとするが、結局鞄に入れるはなび。
はなび「はぁ…どうして女生徒ばかりなの?」
<終>