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生徒会な日々  作者: 双樹沙希
第三部 飛翔
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第51話 転調した生徒会

〜あらすじ〜

生徒会所属の高校2年生、蛟刃カイは不良であった。

しかしその後、生徒会に加入、オリエンテーリング、夏休み、文化祭、体育祭、修学旅行をしてもうすでに自分の元の人格になりつつあった。

しかしそんな折に現れた男、武満。

彼の登場と因縁の相手外村、そしてカイのさや先輩への想いなどによって彼は人格崩壊を起こしてしまった。

しかしその後、自分の過去を振り返っている間に届いた唯一の光、「蓮見さや」によって彼は再び自分を取り戻す。

そしてその後の生徒会選挙には会長に立候補。

はなびと共に当選するのであった。


そして物語の最終章が幕を開けた。

冬になったのでコートやセーターを着ている人が増えた。

かくいうはなびも。

おかげでいつもより時間が掛かっている。

「おい、早くしないと遅刻するぞ」

「分かってるわよ!!」

はなびは怒鳴りながらも準備しているだろう……

と、自信がないのは当たり前だ。

俺が着替え中のはなびの部屋に入っていないために分からないからだ。

まあ追い出された訳なのだが。

さすがにはなびも生徒会長になったためか、現在早く起きる努力をしている。

しかしそれでもやはり向き不向きはあるのか、苦戦している。

ガチャッ

「おっ、終わったようだな」

扉を開けて出てきたはなび。

「寝癖あるぞ」

「嘘っ!?」

急いで洗面所に向かったはなび。

そこまで気にすることか?

そんなこんなで準備が終わった俺達二人はやっと登校した。



「お前眠そうだな」

俺は歩きながら眼をこするはなびに言った。

「そりゃあそうよ。夜遅くまで勉強したんだし」

「え゛!?」

今信じられない言葉をはなびの口から聞いたのだが。

「悪い。もう一度言ってくれ」

「夜遅くまで勉強した」

「な、何ですと〜〜〜!?」

やはり聞き間違えではなかったのか。つい絶叫してしまった。

「アンタ失礼ね」

はなびが少し立腹しているが、俺はそれどころじゃない。だってあいつが勉強してるなんて言うなんてゲ○ドウとシ○ジが親子というくらいありえないぞ!!

「熱でもあるのか!?悪い物でも食べたのか!?」

だからそう聞かざるを得なかった。

「頭悪いわね」

「ええ!?」

まさかはなびにそんなことを言われる日が来るとは……

「生徒会長が成績不振だなんて笑い者よ」

「そ、そうだな。その通りだ」

そういうことか……

確かにそうだ。

「何で納得しかしないのよ、アンタも生徒会長でしょう? もうすぐ期末よ」

「はっ!!そうだった!!」

ということは俺もじゃん!!

俺も勉強しなければ!!

「はぁ……全く……」

なんかはなびがいつもより凄い人物みたいだ。生徒会長が板に付いてきたみたいだな。

はなびがこんなに成長しているとは……

「早く行きましょ」

そう言って俺の手を引っ張るはなび。

心なしか顔が赤いような気がするが気のせいだろう。

以上珍しい登校風景。



「おっす」

「おはよう俊哉君」

「おはよう」

しかし教室に入るなりする挨拶はいつも通りだった。

咲とレイにも挨拶した後、俺は二人にあることを頼み込んだ。

「二人とも、お願いがあるんだ」

「何?」

「何かしら?」

二人とも首を傾げる。

「勉強を教えてくれ!!」

俺は深々と頭を下げた。

「ちょっ、止めてよ」

「どうしたの?」

俺は顔を上げずに言った。

「もうすぐ試験なんだけど、多分出来ない。だからお願いします!!俺に勉強を教えてください!!」

恥ずかしい話だが、事実だ。

「いいわよ」

「私も」

あっさりと了承してくれた二人。

「ありがとう!!」

俺は目一杯感謝の意を表した。

こうして今日から俺の勉強を二人に見てもらうことになった。



放課後、俺達は図書館にいた。

はて、仕事はどうしたのか?

今日ももちろんあるはずなのだが、もちろん無しにした。権力で。

そんなこんなでここにいるのは俺、咲、レイだ。

はなびは一人で出来ると言って家に帰り、俊哉は見回りがあるから終わったら行くと言っていた。

だから現在は三人だ。

「さ、早く始めましょう?」

レイが促した。

彼女も自分の勉強があるので、早くやって早く終わらせたいようだ。反面咲は勉強しなくても大丈夫なレベルなので俺に付きっきりで教えるらしい。

「まず何の科目?」

「理数系をお願いします」

英語は自力で何とか出来るので、まず面倒そうな理数系を片付けることにする。

「いや、具体的に」

「数字で」

ということで数字から始めることにした。

咲が理系でかなり助かった。

「じゃあ始めるわよ」

こうして勉強会が始まった。

とは言っても咲の頭が良すぎるためにレイの出る幕は正直無かった。

だから咲が俺をずっと教える状況になった。

そのおかげでと言っては難だが、レイは満足のいく勉強が出来たらしい。

それにしても俺に勉強を教えてくれるなんて咲も変わったものだ。

再会した時にはどうなるかと思った。

「手、止まってる」

「あ」

物思いに耽っていたことを注意されてしまった。ちゃんと集中したいものだ。

「ねえ、あなた達まるで夫婦みたいね」

「え!?」

「ええ!?」

な、何だ突然。

「嫌?」

レイが咲に訊いた。

するとチラッとこっちを見てすぐに背けた。

そんなに嫌いか。

「そういう訳じゃ……」

無理しなくてもいいから。

「そう、なら嬉しいのね」

「いや、だから……」

咲が困っている。

助け舟を出したいのだが、どう言えばいいのか。

「おう。遅れて悪かった」

そんな空間に俊哉がやって来た。

間がいいのか悪いのか。

「ん?どうした?」

「何でもないわ。じゃあ再開しましょう」

こうして何事もなく再開したかに見えたが、俊哉は首を捻り、咲はぼうっとしていた。

返事も上の空だし、顔を見るとすぐに背けるし。

しかしまあそこそこ勉強が捗ったのは言うまでもない。



その日の夜、また一人になった家のベッドに横になりながら考えた。

それは今までのこと。自分はこれからどうするのかということ。

そのうちにいつの間にか俺は眠りについていた。



「おい、聞こえるか?」

突然誰かに話し掛けられた。

目を開けてみると真っ暗闇の空間だった。

この場所を俺は知っている。

「武満なのか?」

「そうだ」

やはりここはアノ場所だったか。

「一体どうした?あれから全然お前の気配を感じなかったが」

俺はまず疑問を口にした。

「……思い通りに出れなくなった」

「え?」

俺はつい間抜けな返事を返してしまう。

「俺の力が弱まったか、お前が強くなったかだ。まあ両者かな」

そう自嘲気味の笑みを浮かべる武満。

どうやらあながち嘘ではないらしい。

「それで今は何で?」

「やっと出れるだけの力が溜まった。まあお前がノンレム睡眠をとっている時だけだが」

話によると今の俺はほぼ通常の人間ということらしい。

「フ…まさか本当にこうなる時が来るとはな」

だから最近武満を見なかったのか。

俺は納得した。

「まあいい。今のは確認だ。表には出られなくなったが、外の世界を見ることは出来るらしい」

「じゃあ今日、俺の視点から外の様子を見てたのか?」

「そういうことだ」

どうやら全ての力を失った訳ではないらしい。

嬉しいのか悲しいのか複雑な気分だ。

「さらばだ。次に会うのはいつかかは知らないがな」

そう言われて俺は身体が上に引っ張られる感じを感じとった。

現実世界に戻るのだろう。

最後に見た武満の表情は何か……



目を開けるといつもと同じ天井が目に入った。

夢の内容は全てではないが覚えている。

俺は特にいつもと変わらずに準備をした。



それから家を出てはなびの家に向かっている時に事件は起きた。

「え……」

俺は目の前の光景に唖然とした。

無理もない。はなびが道の真ん中でピースサインを俺に向けていた。俺は驚愕しすぎて何で道のど真ん中で突っ立ってピースしているんだよ、というツッコミを言い忘れる程であった。

「どうだ!参ったか!」

「何で俺に言う!?」

やっと正気になった俺はいつものペースを取り戻した。

「一人で起きられて嬉しいから」

「いろいろツッコミたいところはあるが…よかったな」

俺がそう言うとはなびは笑顔になった。

「じゃあこれからお前を起こしに行かなくてもいいんだな」

「え……」

そう言った途端に何故か悲しそうな顔をするはなび。

「どうした?」

「え……あ、あはは……何でもないから!でも登校は一緒にしようね?」

「別にいいけど」

何で必死そうに言うのかが分からない。

でもそう答えたらまた笑顔になったからいいか。

「じゃあ早く行こう!」

そして結局俺の手を引っ張って歩いて行ったはなび。

周りから生暖かい視線を浴びているの気付いていますか?

「おはようございます!!お姉様!!」

「おはよう」

「今日もいいお天気ですね!」

「そうね」

「予算のことで相談が」

「私よりレイの方がいいわよ」

はなびは登校中にもこのようにいろんな生徒に話しかけられるようになった。

多分俺よりも外部に行って活動することが多いために、生徒との交流が深いということが主な理由であろう。

しかしこうもテキパキと返答出来るとは…練習したのか、慣れなのか。

というか俺にはほとんど誰も話しかけて来ない。

……別にいいですけどね。

「すいません…」

「何?」

そんな俺に話しかけた人がいたので、つい期待した眼差しを向けた。

「あなたは神を信じますか?」

しかし俺の眼差しは一気に冷めていったのだった。



俺達が学校付近までやって来た時に、俺は校門付近に見知った人が立っているのを見た。

「あ、さや先輩。おは―――」

俺が挨拶しようとしたその時にすごい形相で俺は睨まれて俺は言葉を失った。

「えーと…」

「昨日私に何も言わなかったでしょう?」

「え?あ…」

「おかげでずっと一人で部屋で待っていたわ…」

さや先輩が下を向いて肩を震わせている。

非常にまずい状況なのでは?とか考えている場合などではない。

「す、すみません!」

俺は土下座しそうな勢いで謝った。

立場的には俺の方が偉いはずなのだが、この人相手では関係が無かった。

「申し訳ありません。この度の不手際は必ずお詫びいたします」

はなびも頭を下げた。

つうかよくそんな言葉をスラスラ言えるようになったな…

「え?はなびちゃん…?」

はなびの変貌振りにさや先輩も驚いているようだ。

何せ生徒会室内のときと今では全然対応が違う。

「べ、別にいいわよ。今度から気をつけて頂戴ね」

そう言って背中を向けて行ってしまったさや先輩。

俺はある程度その背中を見送った後にはなびを見た。

「はぁ〜」

はなびは脱力して尻餅をついた。

どうやらさりげなく無理をしていたらしい。

「何だ、お前も無理してたのか」

「当然よ。はぁ…疲れた〜」

俺は疲れてるはなびを無理矢理立たせて引っ張って歩いた。

しかし何故か妙に重い。

はなびってこんなに重かったか?

そう思って振り返ってみるともう一人くっついていた。

「疲れました〜。はなび先輩〜」

「ちょっと!何してんのよ!」

ナナちゃんがはなびの腕にしがみついていたのだ。

はなびは抵抗するが、ナナちゃんは離れない。

ていうかそんな力あるなら疲れて無いじゃん。

「あの、どっちにしても引っ張ってるの俺だから…」

俺は二人を見てため息を吐いた。

すると二人とも互いの顔を見合わせた。

そして二人で頷き合うとナナちゃんはなびの腕から手を放して俺のもう片方の腕にしがみついた。

「これで左右のバランスは完璧です」

「そういう問題じゃないだろ!」

「早く!カイ、引っ張ってよ」

「くっ…こいつら…後で覚えてろよ…」

俺は結局二人を引っ張ることにした。

しかも後で覚えてろと言っても、所詮それは口だけだと理解しているのか、二人は全く気にする素振りも見せなかった。

俺は登校でこんなに疲れを感じたのは初めてだった。



そして悪魔の期末試験のために今日も勉強した。

いつも(とは言ってもまだ1日だが)のように図書館で。

その後帰宅すると俺は疲れのためか、ベッドに身を投げ出した。

「疲れた…もう何も考えたくねー」

そのまま眠りにつこうと思ったのだが、それは叶わなかった。

プルルルル

「ん?」

一本の電話が俺の元に届いたからだ。

電話番号を見ても知らない番号だったので少し怪しかった。

俺はその電話を取るかとらないか迷ったが、結局取ることにした。

「もしもし」

「カイか。私だ」

「!!」

その声を聞くのは何年ぶりだったのか…

俺は予想外の声の主に驚いた。

この声を忘れるわけが無い。

「一体何の用ですか?」

震えた声で返してしまう俺。

「皇家現当主殿」

…俺の元父親。



この電話がまたカイを大きな渦の中へ巻き込むことになる…

「さやの日々」


さや「喉渇いたから自動販売機で何か買おうかな」

さやが自販機に近づいた。

さや「うーん…コーヒーでいいかしら?でも緑茶も捨てがたいわね〜」

腕を組んで自販機の前で唸るさや。

さや「決めた!紅茶にしよう!」

結局コーヒーと緑茶のどちらでもない選択をした。

さや「えーとお金入れるところはどこかしら?…あった!」

ジー

……

ジー

さや「一万円札使えなかった…」

結局彼女は何も買えずに立ち去るのだった。


<終>



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