第3部予告と番外編11 それぞれの勤労感謝
さりげなく今までで最長です。
そしてPVとユニークがいつのまにか270000オーバーと46000オーバーしてました(笑)
第二部が終了していよいよ第三部に入ろうとしています。
ここで軽く第三部を予告します。
第三部は二学期の終わりから三学期までを予定しており、最終部になると思います。
まあどうなるか分かりませんが、私はそう予定しています。
時期的に言うと12月の頭がスタート時期です。
それから期末試験、冬休み、クリスマス、大晦日、お正月、バレンタイン、ひな祭り、ホワイトデー、卒業式、春休み……みたいな流れが大まかです。まあ合間に様々なイベントがありますが、ネタバレなので言いません。
新キャラクターは……これ以上増やすと私も混乱してしまうのですが、どうでしょうかね(笑)
詳しくは言いません。
現在第三部は執筆中です。
しかし私が少し忙しくなったので更新スピードが著しく低下するでしょう。
最後に
質問がありましたら遠慮なく訊いて下さい。
正直全てを理解させられる自信が私にはありませんので。
以上僭越ながら私のコメントです。
あれえ?ほとんど予告してないぞ。
以下は番外編です。
番外編「それぞれの勤労感謝」
これは生徒会選挙運動中の話である。
11月23日、世間では勤労感謝の日と言われている。
まああまり俺には関係がないことだ。
両親はいないし姉も何故かアメリカに戻ってしまった。
だから俺には関係がないのだ……
……
マスターにお祝いでも贈ろうか。
CASE1 カイの場合
さて、何を贈るべきなのだろうか。
はっきり言ってこういうの全然得意じゃない。
ただでさえ金欠なのに…
マスターには怪我中も働かされたしな〜。
……
あれ?
あげなくてもいいじゃん。
いやいや、一応お世話になってるんだぜ。
何を言ってるんですか、あんな髭男ほっといてナンパしましょうよ。
何ぃ!?ナンパなんて出来るか! それにそんな暇は無い!
わかってないですぜ〜。君に女体の神秘が分からんのか。ゲヘヘ。
お前は軟派者じゃなくて単なる変態だ!
……
結論。
こいつら無視。
ていうか何だよこの正体不明の奴ら。
一人確実に変態がいるし。
さて困ったぞ。どうしようか。
……
そうか!
レイに電話しよう!
プルルルル…
ガチャッ
「お電話有難うございます。こちらデリバリーヘルスです」
「……」
おい、これにどう返せばいいんだ?
俺電話したこと無いからわからねえよ。
「もしもし。レイさんですよね?」
一応当たり障りのないことを言った。
「レイさんをご希望ですか? 分かりました。すぐに向かわせます。ご住所は?」
「あ、えーと…じゃねえよ!」
「キャア!止めてください!みんなが見てる前ですよ!」
「俺は何もしてねえよ!!」
ナナちゃんの冗談より性質が悪いのがレイの冗談だ。
「で、興奮した?」
「……」
しました。少しだけ。すみません。
「反応無いようね。切るわよ?」
「ちょい待ち!」
俺は硬直状態を解いて呼び止めた。
「今日何の日か知ってる?」
「インデペンデンス・デイ」
「一応ここジャパンだからそんなの無いよ!」
「焼きたて?」
「そっちじゃねえよ!」
つ、疲れる。しかも全然話が進まない。
「で、その勤労感謝の日が何かしら?」
「知ってるなら言えよ。まあそれはともかく。俺達でマスターに何かプレゼントしねえ?」
「拒否権行使。これで終了。さようなら」
「ま、待ってくれよ!どうして拒否するんだ!?」
「感謝してないから」
「直球かよ!」
レイの奴め…腕を上げたな。
「…じゃあせめて何か教えてくれ!プレゼントになるやつ!」
「そうね。……一般男子が喜ぶ18歳未満…」
「それ以外で」
危ないぞ。乗せられる前に勢いを削ぐ。
それが大事。それが一番大事。
「ティーセットにすればいいんじゃないかしら?」
「おお!って絶対最初に思いついていただろ!」
「じゃあ切るわ。さようなら」
「お、オイ!」
プツッ…
ツーツーツー…
ほ、本当に切りやがった…
ていうかまともな会話の方が短いのってどういうこと!?
まあ期待はしてなかったけどさ!
「買いに行くか」
俺はなんだかんだでティーセットを買いに行った。
CASE2 はなびの場合
明日は勤労感謝の日…それは休日…
ぐっすり寝ていられる日!!
早速眠りにつこう!!
「ん? …ドッヒャーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」
時計を見たらもう11時だった。
「何でカイの奴起こしてくれなかったのよ!!」
…あ、今日休日だった。
「はあ…」
いつまでもベッドにいてもしょうがないので朝ごはんを食べることにする。
私は1階に降りて、欠伸をかみ殺しながらリビングルームに入った。
しかし食卓には何も無かった。
「ガ、ガガーン!!どうしてえ!?今日は両親がいるはずじゃ…」
その光景を見て私は愕然とした。
朝ごはんが食べられない〜〜〜!
「あ!カイに電話しよう!」
プルルルル…
「現在通話中です」
パキィ…
「つ…つ…使え〜〜〜〜〜ん!!!」
私は携帯を強く握り締めた。
少し変な音がしたけど多分大丈夫。自信無いけどね。
ていうかこんな時間になんで電話してんのよ!
↑理不尽
仕方ないから両親の寝室に入って両親を起こすことにする。
「パパ、ママ!起きて!」
「何だよ一体…」
パパが起きた。
「お腹すいた」
「俺は飯なんか作れんぞ。ママに頼みなさい」
「ママ起きてよ〜!」
パパはこういう時頼りにならないのでママを起こすことにする。
何でパパを起こしたの?という質問は禁止ね。
「ん〜ん?」
どうやらママが起床したようだ。
私のテンションが上昇する。
「ママ、お腹すいた」
「あらそう?でも悪いわね。今日何の日か知ってる?」
「勤労感謝の日でしょ」
何を今更。
私そこまで頭悪くないもん。
「でしょう?だから休むの。ご飯ならお金あげるから外で食べてきなさい」
「ええ!?そんな!」
まさかこんな結果になるなんて…
「パパも何か言ってよ!」
「アハハ…悪いなあ。ママには逆らえんよ、ハハ…」
「…」
このときのパパは今までで一番頼りなく見えた。
「酷いよ!」
そんなことより娘にご飯も食わせないなんて酷すぎる!
虐待ってやつに当てはまるんじゃない?
「何を言ってるの。これはチャンスよ」
「え?何?どういうこと?」
突然不可解なことを言う私のママ。
「カイ君と一緒に食べにいける口実が出来たじゃない」
「ええ!?」
い、いいいいいい一体何がなんだか分からない!
どうしてそこにカイが出てくるのよ!
「何で意味分かりません、みたいな顔しているのよ」
「ふえ!?」
つい変な声が出ちゃった!
恥ずかしいけど家族だからまだいい。
カイがいたら…って何でそこにカイが出てくるのよ!
分かるけど考えたくない!
「ということで頑張ってね〜。娘の恋路を応援応援。さ、あなた寝るわよ」
「ハハハ…頑張れよ」
「…」
こうして私は呆然としたまま寝室を出た。
……
意識が戻ると急に恥ずかしくなってきた。
「う…べ、別にカイと食べたいわけじゃないけど! でもあんなにもママが言うから仕方なくよ! 仕方なく!」
私はカイに仕方なく(ここ重要!!)電話することにした。
プルルルル…
ガチャッ
CASE3 咲の場合
今日もいい朝が訪れた。
今日は勤労感謝の日。私も家族のために何かをしようと思う。
しかし、家族は誰もここにいないのよね。
でも一応プレゼント買って郵送しよう。
私はそこまで綺麗じゃない部屋を見渡した。
「……」
これ女の子の部屋なのかしら?
ああ!こんなことならメイドの一人や二人連れて来ればよかった〜!!
「はぁ…」
仕方ない。先に部屋を何とかしよう…
私は勤労感謝云々よりそっちを優先することにした。
まあ誰か家に上げたとき恥ずかしいし…
……(掃除中)
「はぁ…」
意外と疲れた。元々体力にそこまで自信があるわけでもないし、身の回りのことは全部使用人任せ。そんな私がバテるのは至極当然のこと。
「さて、あと少し頑張ろうっと!」
……(掃除中)
「お、終わった〜」
定期的に掃除していたのが助かって、そこまで汚くは無かった。
おかげで楽に終わった。
「ふう…ん!?もうこんな時間!?」
時計を見ると9時半だった。
折角早起きしたのに。
まあ朝ごはんを作ることにしよう。
朝ごはんを食べ終わり、出かけることにする。
でも一人でもなあ…
はなびを誘おうとしよう!
私は携帯電話を持った。
…やっぱり止めよう。どうせ起きてない。
まあ至極その通りだったわけだが。
じゃあカイ…は選外で、う〜ん…レイに電話しよう。
プルルルル…
ガチャッ
「もしもし」
「もしもし。咲だけど、今暇かな?」
「どうしたの?」
「一緒に勤労感謝の日の買い物しない?」
一瞬の沈黙の後
「私今日バイトだから」
「ええ!?勤労感謝なのに?」
「だからこそよ」
「なるほど。わかったわ。ありがとう」
ピッ
「はぁ…」
電話を切った私はため息をついた。
私ってやっぱりあんまり友達いないんだね、と感じてしまう。
さや先輩は二人で行くとなると無理。絶対にからかわれる。
ナナちゃんとは…あまり仲が良くは無い。
俊哉君は…男の子って苦手だし…
カイは…
「さっ!一人で行こう!」
強引に思考を打ち切って外出することにした。
「ええと…何でこんなに広いのかしら?」
春木まで来て買い物をしにきたのだが、あまりこっちには来たことが無い為に少し怖い。
人も多いし…
人ごみは苦手なのよね…
まあ早く買って早く帰ろう。
私は人ごみに向かって歩き出した。
……
つ、疲れる!
朝に掃除をした後にこれは効く。
もうへとへとだ。体力無いにもほどがある。
「はぁ…」
今日はため息が多い。
「あれ?咲が何でここに?」
歩き疲れた私に話しかけた声にハッとなって顔をあげた。
そこには見知った男の顔があった。
CASE4 ナナの場合
「ナナ姉ちゃん、勤労感謝の日はどうすんの?」
私に話しかけた男の子は現在小学6年生の弟の燈真。
「何それ〜?」
「ええ!?姉ちゃんそんなのも知らないのかよ!」
「ナナに何を言っても無駄よ」
「それはどういう意味かな?八重ちゃん?」
私はいつものように八重、くるむ、燈真の4人で話していた。
私たち4人は七瀬家の中の仲良しグループだ。
「いいこと聞かせてもらったずぇ〜!私に何か感謝しろ!」
「睦姉は仕事して無いから感謝しねえ」
「何だとこのガキ!」
「イタイイタイ!」
「ははははは!」
その話を聞きつけた睦姉さんが飛び込んできた。
それにしても明日は勤労感謝か…
う〜ん…いつものように家でゴロゴロしたいけど…
……
「よしっ!頑張ってみよう!」
「へ?」
私がそう意気込むと周りの4人がポカンとこっちを見ている。
「何?」
「いや…まさかナナが…」
「ナナ姉ちゃんが…」
「ナナ姉が…なあ?」
「悪いものでも食ったか」
上から八重、燈真、くるむ、睦。
「な、何ですそれ…まるで私がそういうことするのが意外みたいな顔じゃないですか!」
一斉に皆が頷いた。
「な…酷いですよ〜!」
たまにはいいなと思っただけなんだから!
…ツンデレじゃあないかあ…
そんなくだらないことを考えて(本人にとってはくだらなくはない)明日この4人と買い物に行く約束をして寝た。
起きてカーテンを開けた。
正確に言うと同室の八重が開けた。
私の部屋は八重とくるむと共通。
くるむはともかく八重とはいろいろ話が合うのでちょうどいい。
「ふあ〜あ…」
大きなあくびをした私。
生徒会メンバーにはあまり見せたくは無い光景だ。
「早速準備するわよ」
「お〜」
「お…」
くるむちゃんはまだ覚醒しきっていないらしい。
まるではなび先輩みたい。
「都姉さんは鋭いから注意しないとね」
八重ちゃんがそう言うとドタドタという足音が聞こえた。
「まさかこれって…」
バーンとドアを開けられ、外には睦姉さんが立っていた。
「オラお前ら!起きろい!」
「みんな起きてますから…」
「あ?そうか…つまんねえな。じゃあ燈真の奴を起こしてくるからよ」
そう言ってドタドタと行ってしまった。
その際に一美姉様のような声で「睦!静かにしなさい!」という声が聞こえたが。
というか一美姉様だろう。
私達は支度もそこそこにリビングに降りた。
「おはようみんなっ♪」
鼻歌交じりに挨拶してきたのは五喬姉さん。今日もわざわざ刺激的な格好をしている。
「燈真が見たら鼻血出して倒れますよ」
八重がツッコんでみた。
「いやいや実の姉に興奮なんてしねえから」
いつの間にか起きてきた燈真自身が否定した。
「そう?なら義理なら興奮するのね」
「そういう意味じゃねえよ!!」
燈真はカイ先輩に似てきているのかも。
「おはよう…」
最後にシノ姉さんが食卓に座った。
一応全員揃ったので食事を始めた。
ところで何で両親がいないのか?
重い理由なんて無くて、ただ単に世界中を飛び回っているだけ。
まあ誰も訊いてませんけどね。
結局私達5人で街に出ることにした。
街に出たのはいいのだが、歩き回っているうちにお昼になってしまった。
「そろそろお昼にしない?」
くるむがそう提案する。
「そうだね。そうしよう」
燈真が賛成する。
そうして私達は近くのレストランに入ることにした。
「チッ!ファミレスは不良の入る店じゃねえ」
「また自分が不良だって言ってるし…」
睦姉さんは正直少しおかしい。
「ん?」
「どうした?ナナ」
私はある一箇所を見つめていた。
CASE5 俊哉の場合
朝になった。
いつものように早朝トレーニングで汗を流す。
それが終わったら軽くシャワーを浴びて朝ごはんを食べるのが日課だ。
そして朝ごはんを食べて少し勉強する。
さすがに赤点だけはまずいからな…
それが終わった後はギターを弾く。
これがいつもだ。
まあそんなにバカ上手くは無いけど。
そんなことをしているうちに11時ぐらいになった。
プルルルル…
「ん?」
携帯が鳴っていた。
この着信音はカイだ。
まさかまた面倒なことに巻き込まれたんじゃないだろうな…
俺は少し不安げに電話を取った。
「どうした?」
「あのさ、今から街に来れるか?」
「へ?」
なんか街の方で面倒ごとでもあったのか?
「何かに巻き込まれたのか?」
「そういう訳じゃなくてさ、飯食わねえ?」
「お前一人で街に出て寂しくなったのか?」
「ち、違えよ!」
まあいいか…
っていうか俺じゃなくてはなびちゃんとかを誘えよな。
まあこいつには何を言っても無駄だと思うがな。
「分かったよ。行くから。場所は春木駅でいいな?」
「ああ。」
「そんじゃ、切るからな。」
プチッ
アイツが休日に外出とは…
今日は勤労感謝の日だしな…
ん?
勤労感謝?
「し、しまった!」
俺は外に出た。
案の定俺の部屋の近くの壁にメイド服を着た人物がしゃがんでいた。
「あ、あの…」
「あ!おはようございます、俊哉様。」
「桜子さん、いつからここに?」
忘れている人もいるから説明しよう。
桜子さんは橘家の使用人である。
というか元々俺の専属だったのだが、一人暮らしを機に俺とは疎遠になってしまった。
年齢は非公表だが俺に近いらしい。
「いえ、今来たとこです。」
「…そんな白々しい嘘はいいから…」
桜子さんは忠実すぎるのが欠点だな…とふと思った。
「それで、またですか?」
「はい、今日は勤労感謝の日です。今日ぐらいはお戻りに…」
「はぁ……」
これは毎年恒例だ。
何で家に戻りたくないのか、と言われると結構困る。
単なるガキの駄々こね、では済まされないが、似たような感じだ。
「はぁ…少しだけですよ。」
最近の俺はこういうことに軟化した。
まあカイのおかげだが。
「ええ!?本当ですか!?」
「何故驚く。」
「だって初めてですよね…」
まあそうだな。
「でも約束があるから少しだけな。」
「は、はい!!」
俺はカイに電話することにした。
プルルルル…
ガチャッ
「どうした?」
「ああカイか。ちょっと用事で遅れる。悪いな。」
「いや、大丈夫。こっちも人数増えたけど平気か?」
「誰か一緒にいるのか?」
「ああ。」
「分かった。13時で良いか?」
「おう。」
「じゃあな。」
ピッ
俺は電話を切った。
誰だろうな?
まあカイから誘った訳ではなさそうだな。
「あの、俊哉様…」
「悪い。じゃあ行こうか。」
「はい。」
俺は桜子さんと外に出た。
……
でもメイド服はないだろう。
正直こっちが恥ずかしい。
「あの、桜子さん。その格好、何とか出来ませんか?」
「お気に召しませんか?」
「いや、そうじゃなくて。」
会話が噛み合わない。
この人は周りの視線を気にしないのだろうか。
ただでさえ美人なのに、服がこれでは目立たない訳がない。
しかも隣には不良のような外見の俺だ。
ちなみにさりげなくこの光景を美空先輩に見られていたのだが、本人は気づかなかった。
そう特に会話もなく歩いていると目的地に着いてしまった。
「久しぶりだな。」
「では。」
桜子さんが指紋と瞳で門を開けた。それにしても随分とハイテクな家だ。
「どうぞ。」
俺は久しぶり実家の土を踏んだ。
まあ久しぶりと言っても夏以来だが。
「おかえりなさいませ、俊哉様。」
敷地内に入ると桜子さんが真っ先に後から挨拶した。
「ああ、ただいま。」
俺はそのまま敷地内を進んで扉の前に来た。
「今開けます。」
桜子さんが急いで鍵を取り出した。
あ、鍵の種類が沢山ある。
カチャッ
桜子さんが扉を開けた。
『おかえりなさいませ!俊哉様!!』
「ああ、ただいま。」
いつ見ても凄い光景だがもうさすがに驚かない。
「親父と祖父はどこだ?」
「お二方共に自室だと思われます。」
「ありがとな。じゃ、ちょっくら行ってくる。」
CASE6 さやの場合
今日も夜遅くまで勉強した。
「ふう…」
ん?
ふと時計を見たらもう次の日になっていた。
「ふあ〜あ…」
つい欠伸が出てしまったので、相当眠いのだろう。
よって眠ることにした。
いつもより遅めの時間帯に目が醒めた。
しかしそれは計算されていること。
翌日が休日だということを予め考慮した結果だ。
寒さに負けて、布団にまたくるまってしまうと、二度寝する可能性があるので、さっさと体を起こすことにした。
しかしまあ布団から這い出た途端に寒さを感じ、挫けそうになってしまうが。
それはともかく、私は急いで私服に着替えて、リビングに向かった。
『おはようございます、お嬢様』
「おはようございます、みなさん」
すでにセバスチャンと他の使用人がいたので、全員に挨拶をした。
「昨日言った通り、今日はみんな仕事はお休みね」
私は今日が勤労感謝の日だったので、全員に休みを与えることにしたのだ。
『はい!!』
セバスチャンを除く全員が元気よく返事をした。
「セバスチャン、あなたまだ納得していないのかしら?」
「い、いえ…」
昨日、セバスチャンはこの件に大反対した。
それを私がはね除けて、強引に決めた。
みんな渋々了承したのだが、セバスチャンだけは納得をしなかったのだ。
「と、いうことで私の世話はしなくていいから。仕事したら給料カットよ」
最後にそう言って私はリビングから出た。
そして自室に戻る。
今日は食事も自分でしなければならない。
だから買い物もしなければ。
それと使用人たちへのプレゼントも買わなければいけない。
両親の分は……
一応買うことにする。
私はゆうに電話した。
プルルルル
ガチャッ
「もしもし」
「さーや、どうしたの?」
「今日一緒に買い物しに行かない?」
「OKOK」
ゆうが快く返事をしてくれたので安心した。
「じゃあ10時に駅前で」
「オッケー。楽しみにしてるからねー」
ガチャッ
ツーツーツー
よし。準備しよう。
駅前に来たのはいいが、少々早すぎたようだ。
さりげなく咲ちゃんらしき姿が見えたが、確証が無かったので話しかけなかった。
「あれ?さすがさーやだねー。感心感心」
「いつものことでしょ」
「まあそうだけどさ。はぁ…さやとつき合う男は苦労しそう…」
「何か言った?」
「別に〜」
少しだけしか聞こえなかったが、どうせロクなことではなさそうだ。
まあ、ゆうが真面目な話をする訳がないのだが。
むしろ、したら病気だ。翌日に槍が降り注ぐだろう。
「じゃ、行きましょう」
とりあえず、行くことにした。
時間がもったいない。
「そうだね」
私の後をゆうが付いてくる。
ある程度買い物が終わった。
時間は昼をもう過ぎていた。
随分と長く買い物をしてしまっていたらしい。
「そろそろお昼にしない?」
「そうね」
ゆうの提案に賛成する。
まあ自分もお腹空いていたのだが。
「じゃああそこのファミレスにしない?」
「わかったわ」
今度は私がゆうに付いて行った。
「いらっしゃいませ〜。何名様で?」
「二人です」
「あちらの席にどうぞ」
私とゆうはウェイトレスに案内された席に着いた。
いざメニューを取ろうとしたその時、携帯電話が鳴った。
私は急いで確認したが、特に変化がなかった。どうやら私ではなくてゆうの携帯だったらしい。
「はい、もしもし。…はい、…はい、…え?今からですか?」
何を話しているのだろうか。まあ多分バイトだろう。
「分かりました。すぐに行きます」
電話を切ったゆうは私に両手を合わせてきた。
「ゴメン!!急用が出来た!!」
「大丈夫よ」
「本当にゴメン!!」
そう言うと急いで店から出て行った。
私はゆうは昼食どうするのかな? とか考えていた。そのすぐ後に入り口付近で聞き覚えのある声を聞いた。
私はちらりと視線を向けて確認した。
CASE7 レイの場合
勤労感謝の日…
例年私には正直縁の無い日。
でも今年は違う。
私は何だかんだでマスターへ恩返しすることに決めた。
「え!?レイちゃんは今日、無給で働くの?」
私は頷いた。
「ふーん…まあいいけどな。怪我だけはしないでくれよ」
「はい」
電話をしてくれた咲には悪いが断らせてもらった。
今日ぐらいはこういうことしてもいいとは思った。
「じゃあ今日1日頼むぜ」
マスターの掛け声に無言で頷いて仕事を始めることにした。
もう日が暮れそうな時間帯になった。
そういえばあの咲の電話の後にカイからも電話があったが、適当にごまかしておいた。
「ふう…休日だからいつもより人が多いな。レイちゃん、休んでもいいぞ」
「大丈夫です」
流石にこの程度でバテるなどしたらやっていけない。
チリンチリン
「おーい、団体客だぞ。」
「いらっしゃいませ。」
私は入り口まで駆けて行った。
「!?」
確かに団体客だった、よく知ってる…
CASE8 生徒会の場合
俺はマスターにティーセットを渡すために夕方3時にデザート・イン・オアシスにやって来た。
何故か団体で。
実は一人で居ることに寂しさを感じてしまったので、俊哉に電話したのだ。
そして俊哉に会う前に駅前で咲に出会った。
その後にはなびから電話をもらって、はなびも来ることになった。
その後に俊哉から再び電話をもらった。
どうやら遅れるらしいので先に三人でファミレスに入ることにした。
そこでさや先輩と出会った。
そのすぐ後にはナナちゃん達と会って、ナナちゃんだけ俺達に付いて来た。
最後にファミレスに俊哉がやって来て、レイ以外の生徒会メンバーが揃ったことになった。
要するに、偶然に偶然が重なってこうなったのだ。
そして今俺は店の中でレイと対峙していた。
「え?お前、バイト?」
「咲から聞かなかったの?」
「いや、全然」
俺はレイから自分はマスターに無給労働をプレゼントしたことを聞いた。
そんなこと思い付きもしなかった。
「それにしても、偶然にしては出来過ぎているわよね」
「確かにそうですね〜」
さや先輩とナナちゃんが俺を疑う。
いや、俺は全く身に覚えが無いぞ。
「でもこうして見ると凄いよね」
「さりげなく約束していないのに揃うなんて」
はなびと咲は感嘆した。
「それだけ絆が深いってことじゃねえか?」
俊哉が俺に訊く。
「う〜ん……どう思う?」
俺はレイに訊いた。
「あなたと絆があるのかどうか疑問に思う」
「いや、そこは疑わないで!!」
結局いつもの雰囲気になったのだ。
「おうカイ、ティーセットありがとうな!!お前も働け。」
「な、何で!?」
そしてレイは俺を強引に奥に連れていく。
「君はこういうのが好きなんだね!!」
俺は結局働かされたのだった。
みんながいる前で。
でも悪い気分では無かった。
CASE∽ 変人の場合
次の日、俺達はいつものように生徒会室で仕事をしていた。
バン!!
すると突然扉が開かれた。
「みなさん勤労ご苦労様です!!」
そこにいたのは美空先輩だった。
「すいません、何でメイド服なんですか?」
「みなさんが喜ぶと思ったんですが…」
みんな固まった。
「ええ!?ダメなんですか!?俊哉君は好きですよね!?」
「え?俺?」
いやいや、俊哉はそっち系は趣味じゃないだろ。
「だって昨日、メイド服を着ている人と歩いていたじゃないですか!!」
「え?…あ……」
その発言にみなが俊哉を見て固まった。
え…俊哉ってそういう趣味が…
「やっぱりそうなんですね!!」
「ちょっ!!誤解だ誤解!!」
しかしみんなの視線は信じていなかった。
どうやら今日は俺ではなく俊哉の厄日のようだ。
ちなみに誤解を解くのに苦労したのは言うまでもない。
おまけ
「桜子さん」
俊哉は珍しく実家に帰ってきた。
「俊哉様!?一体どうして!?」
桜子さんは動揺した。
無理もない、このようなことはほとんど無い。
「プレゼントがあるんだ」
俊哉は桜子さんにお洒落な服を渡した。
「え!?このような物、受け取れません!!」
桜子さんは拒否する。
「これから俺と会う時はこれを着て欲しい。それとも俺のプレゼントは気に入らないか?」
「そんなことはありません!!むしろ嬉しいです!!…あ」
「決まりだね。きっと似合うから。」
俊哉は満足そうに帰っていった。
「(これでもう誤解されないぞ)」
と考えながら。
一方桜子さんは…
「(まさかこれっていつかデートしようってこと!?)」
と顔を赤くしながら考えていた。
いやあ、誤解って面白いね。
fin
次回から第三部です!!
長らくお待たせして申し訳ありません!!
更新していないのに読んで下さった方々には本当に感謝しております!!