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生徒会な日々  作者: 双樹沙希
第二部 激動
65/104

番外編09 伝説の生徒会長(前編)

時期は2学期の初めの方です。

生徒会選挙前なので役職が変わっていません。


「ねえ。」

いつもの生徒会室でさや先輩が俺達に話し掛けた。

「何ですか?」

「今から15年前の話なんだけど、伝説の生徒会長って知ってる?」

俺は…いや、俺達はそんなことは知らなかったので首を横に振った。

「噂なんだけど、どうやらその人ね、100%の支持を得て当選したらしいわ。」

噂の話をするさや先輩は珍しい。

あまりそういうことに興味がないと思っていた。

「私も全て信じていないのだけど、少し気になったのよ。」

確かにそんなすごい人がいたなら俺も興味を持つ。

「それに15年も昔だから情報も無い。卒業アルバムにも情報が載っていない。他の年度にはきちんと載っているのに。それって何か変じゃないかしら?」

確かに。噂の信憑性はともかく、情報が全く無いのはおかしい。

意図的に仕組まれたものと考えてしまう。

「ファイルをバックアップしてみる。」

レイがそう言ってパソコンを使い始めた。

「大丈夫?ハードディスクに残ってると思う?」

「可能性は低いと思うわ。ちょうど14年前までしか痕跡がない。」

レイがパソコンを弄りながら答える。

どうやらバックアップする以前の問題で、ハードディスク自体が当時とは異なっているらしい。

「ならば直接聞き込みをしてみるしかないわね。」

さや先輩の提案で皆が頷いた。

みんなやっぱり興味があるらしい。

まあ確かにこんなに謎があると解明したくなるのは人間の心理だからしょうがない。

「えーと…当時の生徒はこの学校にはいませんよね?」

「それも調査するわよ。」

結構大変な作業になるな…とか思いながら俺達は席を立った。

「じゃあ聞き込みを開始ね。」

さや先輩の言葉にみんな頷いて、部屋を出ていった。



そして…

あまり手掛かりは見つからなかった。

「お、カイ。どうしたんだ?教員室前だぞ。まさか私に…」

「違います。」

即座に否定する。

でないと調子に乗る。

「やはり私とのことは遊びだったのね!?」

「何でそうなるんですか!?」

しかしどうにもこのツッコミ癖は治らないらしい。

「理由で表せないのが…愛だろう?」

「出来ればもっといい場面で言って下さい。」

俺と真里菜先生はそんないつものやり取りをした。

「それでですね、15年前に学校にいた人は教職員とかになっていますか?」

「う〜ん…分からないな。どうした?」

俺は真里菜先生に事情を話すことにした。

「ふむ。そういえばそんな噂あったような気がするな…よし。お前の頼みだ。聞いてやろう。」

「無償でですよ。」

「ちっ。バレたか。」

そう言って先生は去っていった。

「さて、次はどうしようかな?」

俺は一旦生徒会室に戻ることにした。



生徒会室にはレイと咲がいた。

「何やっているんだ?」

「インターネットで調べているのよ。でもところどころ凍結していてあんまり分からないわ。」

レイと咲はパソコンを弄っていた。

なるほど、実に効率のいい方法だ。

「カイは終わったの?」

咲が尋ねてきた。

「ああ。一応真里菜先生に教師を調べて欲しい、と頼んだ。」

「なんだか探偵みたいね。フフ。」

レイがそう言って笑う。

探偵みたいなんてナナちゃんが喜びそうだ。

「ただいま〜。私はダメ。」

はなびはクタクタになって部屋に入るなり椅子に腰をおろした。

「まあ仕方ないよ。今のところ誰も情報掴んでいないし。」

俺達はまだ誰も情報を掴んでいない。本当に掴めるだろうか。

ガラガラ

「私もダメ〜…」

ナナちゃんが帰ってきた。

「はぁ・・・収穫ゼロ。」

俊哉もダメだったらしい。

「さや先輩はまだ帰って来ないな…」

さや先輩だけまだ帰っていない。何か情報でも見つけたのだろうか。

そんなこんなで時間だけは過ぎていく…

ガラガラ

「カイ!生徒会の諸君!」

入ってきたのは真里菜先生。

みんなもう忘れていると思うが、生徒会顧問なのでここには出入り自由だ。

「小坂先生は当時まだここで教師をしていた!」

「小坂先生!?」

「ああ。資料室にいらっしゃるぞ。」

ちなみに小坂先生は一番年配の先生で75ぐらいである。

「そうか…15年間ここで教師をやっていても良いんだ…」

俺達(真里菜先生は除く)は小坂先生の元へと向かうことにした。

さや先輩にはきちんと連絡して。

真里菜先生には一応感謝して。



「失礼します。」

俺達は小坂先生のいる談話室に入った。

「おやおや、倉橋先生の言っていた子たちかな?」

「はい!こんにちわ、小坂先生。俺達は生徒会です。副会長の蛟刃カイです。」

「同じく副会長の水島はなびです。」

「書記の七瀬ナナです。」

「会計の風見レイです。」

「副会計の橘俊哉です。」

「庶務の美作咲です。」

「こんにちわみなさん。それでどのようなご用件で?」

俺達全員(さや先輩を除く)きちんと自己紹介をした後、俺達は本題に入った。

「15年前のことです。」

「15年前…?」

小坂先生が眉をひそめる。

「そうです。15年前の生徒会をご存知ですか?」

「生徒会…う〜む…」

小坂先生が必死に思い出している。

「あの、生徒会長が支持率100パーセントで当選した年なのですが…」

咲が助け舟を出した。

俺は咲とバトンタッチした。咲のほうが俺より上手く出来るだろう。

「おお!そんなこともあった気がするのう…」

「あ!その生徒会長さんの名前覚えていますか?」

まさか本当にあったとは…

「噂は本当だったんですね〜。」

ナナちゃんも感心している。

「う〜む…名前はきついのう…しかし一体どうしたのじゃ?」

「その年の生徒会の情報が全くといって無かったので、何かあるのではないか、と我々が考えたのです。」

我々と来たか…

咲の話し方はやはり俺達より世間を知っている話し方だな。

「うむ。この資料室には無かったのかい?」

「はい。私が探しました。」

俊哉がそう言う。

ん?私!?こいつもなんか大人の世界を知っているな…

でも教師相手に畏まり過ぎ。面接じゃねえよ。

「残念ながら手掛かりは見つかりませんでした。」

「ふうむ。ならば校長室にしかないであろうのう…」

「校長室!?」

確かにあそこにはいろんな生徒のデータがある…

しかし生徒はもちろん立ち入り禁止だ。

「校長先生に頼むことは出来るのでしょうか?」

咲が訊く。

「難しいであろう…個人情報保護法によって禁止されておるからのう…」

「確かに…」

俺がそう呟いた。

そういえばそんな法律のせいで連絡網を作るのが大変になっている。

「そうですか…」

「役に立てなくてすまんのう…老いのせいであまり覚えておらんて…」

「そんなことはありません。噂の信憑性を確かめることが出来ただけでも十分な収穫です。ありがとうございました。」

『ありがとうございました。』

咲が扇動して頭を下げたので俺達も感謝を述べて頭を下げた。

そうして俺達は退室した。

「スマンのう…約束なのじゃ…」

最後にそう呟いたのだが、誰も聞いてはいなかった。

しかしレイはしっかりと見ていた。

だが、何も言わなかった。



「はぁ…やっぱりダメなのかなあ…」

生徒会室に戻った俺はグデェとだらしない格好で座った。

「ダメよ。行儀が悪い。」

レイに注意されたので急いで態勢を戻した。

「でもどうするの?」

はなびがみんなに言う。

「さや先輩を待つしかないな。」

「そうですね〜。」

ナナちゃんが同意した。

もう頼りになるのはあの人だけだ。

正直真里菜先生はアテにならなかった。

そう先輩を待っていると誰かが部屋に入ってきた。

「おっ!お困りのようですね〜。」

「…」

みんなが一気に沈黙する。

「ちょっ!どうして黙るんですかっ!みんなの永遠のアイドル初島美空ですよ!」

「…」

みんなは彼女から視線をはずして何事も無いかのように振舞った。

「それでさ、今はどうする?」

「モ〇ハンやりましょうよ!」

「いや、ナナちゃんと俊哉しかもっていないから。」

さすがにこの状態でゲームはマズイよなあ。

「無視しないで下さい!」

「あ、先輩。」

咲が今気づきました〜、みたいな感じで話しかけた。

というか咲は素でそうなのかもしれないが。

「折角耳寄りな情報があると言うのに?」

「…」

「おっと…やっぱり欲しいですよねえ?欲しいですよねえ?」

美空先輩が勝ち誇った顔で訊いてきた。

「いや、どうせ何か請求するんですよね?」

「ばれちゃいましたか〜。」

悪びれも無くそう答える先輩。

だから俺は意地悪することにした。

「じゃあいいです。そこまでして欲しくないんで。」

「そうね。」

レイも同意してくれたおかげでみんな同意した。

しかしまあみんなも分かっているんだな。この人の対処法。

「と、俊哉君まで…」

俊哉に拒否されたのが一番のショックだったらしい。

見るからに落ち込んでいる。

でもまあ気にしないことにした。

俺は今、鬼だな。

「さて、じゃあ暇つぶしで山手線ゲームやろうぜ。」

「いいわよ。」

ということで始めることにした。

順番は…俺、はなび、俊哉、ナナちゃん、レイ、咲、だ。

「じゃあ、東京。」

「新宿。」

「渋谷。」

「秋葉原。」

「上野。」

「原宿。」

「って何普通に始めてるんですか〜!?」

そんな声が聞こえたが、無視した。

「浜松町。」

「日暮里。」

「西日暮里。」

「代々木。」

「巣鴨。」

「目黒。」

「無視しないで下さいよ!?私より山手線の方だ大事なんですか!?」

「そうだよ。」

「うん。」

「当たり前だよな。」

「そうね。」

「残念でしたね。」

「まあ当然よ。」

みんな結構酷いけど、ノリがいい。

「ひ、酷い…」

「じゃあ続き〜。」

そうして再開することにした。

「せめて私も入れて〜!」

ガラガラ

「それは叶わないわ。」

さや先輩が登場した。

「さや先輩!?」

みんながそっちを注目する。

「実は卒業文集で見落としていたことがあったの。」

「見落とし!?」

一体なんなんだ…?

「そこに会長とお幸せに、と書いてあった部分があったのよ。」

「え!?ということはそのことを書かれた人はそれなりに会長を知っている人なんじゃ…」

「そうよ。生徒会のことなんか何一つ書いてなかったんだけどね。そこにはそう書いてあった。」

そう言って俺たちにその部分を見せてきた。

「確かに…」

「あ!」

ナナちゃんが声をあげた。

「どうしたの?」

「この人…」

ナナちゃんはその伝説の会長の手掛かりを持っている人を指差した。

「この人?七瀬一美…まさか!」

「私の姉です。一番上の…」

「!!」

突如巡ってきた一世一代の大チャンスか!?

彼女の元へ俺達は向かう…

その先に何があろうとも。



「…結局私って空気なんですねえ…」

そんなことを呟いている人がいたとかいないとか。




何か続きます。

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