第49話 選挙さ生徒会
〜あらすじ〜
俺の本当の思いはみんなと一緒にいたい・・・それを気づかせてくれたのはさや先輩だった。
こうして俺は暗闇を抜けて光の方へと向かった。
そして気がついてみるともう選挙期間になっていた。
次の日、俺は全身に包帯を巻いて登校した。
はなびを起こせないので咲に頼んだ。
何故か快く了承してくれたので正直助かった。
まあそんなこと言っても俺の包帯は取れないわけで、みんなからマミーという不名誉なあだ名をつけられた。
しかし俊哉やレイ、はなびと咲は違った反応をした。
「どうした?」
真っ先に訊いたのは俊哉だった。
「交通事故。」
俺はあらかじめ用意していた答えを言った。
「いや、それ酷すぎるでしょ。」
はなびが冷静に言う。
しかし実際、こんな傷だらけになったのはさや先輩と姉さんのせいだ。喧嘩2、他8の割合の怪我だ。
まあ言わないけど。
「俺は轢き逃げされた後にさらにダメージを受けた。」
半分正解だ。
さらにダメージはもちろんあの二人のことだ。
「・・・」
レイは信じていないようだ。
「と、いうことで頼みます。」
俺はその視線に耐え切れずに結局嘘だということをばらした。
「あまり訊かないでくれるとありがたいです。」
そういうと誰も訊いてこなくなった。
そしてその日の生徒会室・・・
「何で来たのかしら?」
さや先輩に入室早々に言われた言葉がそれ。
「え?まずいですか?」
「あなたその状態で何が出来るの?」
「う・・・」
それは図星。でもあなたもこの怪我の加害者なんですよ?
ていうかみんな俺をこいつ使えねーみたいな目するの止めてくれませんか?
「まあそれはともかく。」
俺は何も出来ないけど居座ることにした。
「もう生徒会選挙が迫っているわね。」
みんな頷いた。
「それなんだけど、現生徒会で立候補する人いる?」
手を上げたのははなびとレイとナナちゃん。
「カイは?」
「えーと・・・俺は辞退させていただきます。・・・じゃありません。やります。」
はなびに睨まれたので仕方なしに立候補することになった。
「じゃあはなびとカイは会長、ナナちゃんとレイは副会長ね。」
そう言って一応決まった。
「選挙日は今から2週間後だから頑張ってね。」
「はい。」
俺達は返事をして仕事に戻ることになった。
「悪いなレイ。バイト今日無理っぽい。」
「・・・」
無表情で無言のレイ。
「えーと・・・聞こえてる?」
「聞こえてるわ。」
どうやら無表情で無言で無視か?
「あの、休みたい場合はマスターに言うんだよな?」
「そうよ。」
どうやら無視では無いらしい。
「わかった。じゃあ一応店には行くから。」
そう言って一度家に帰る事にした。
まあ見た目ほど大した怪我ではないのだが、さすがにバイトは無理だ。
俺は帰宅した。
するとまだ誰もいなかった。
そういえばもう姉さんの教育実習期間終わったなーとか思っていたら何か紙切れがあった。
カイへ
またアメリカに戻ります。
年内に帰れるかは微妙。
byあなたの愛しき姉
と書いてあった。
また行くのか。最近なんか多いな。皇家に何かあったのかなあ?
俺は深く考えずに仕度して店に行くことにした。
「おめえの怪我やべえな。」
入店早々マスターからそう言われた。
「見た目ほどではないんですけど、結構痛いっすよ。」
丈夫な俺だから大丈夫でも他の人たちだと結構まずい怪我かもしれない。
「そうかそうか。なら手伝えるな。」
そうニヤリとマスターは笑った。
「え!?だから俺怪我が・・・」
「大丈夫大丈夫。唾でもつけておけよ!」
「いや、多分唾の方が足りないっ!!」
こんな全身の怪我だと逆にきついだろ。
「と、いうことだから手伝ってね?」
「オイーーーー!!お前もか!」
レイも俺を手伝わせる気らしい。悪化したら慰謝料請求してやる。
で、結局俺も手伝った。
・・・
・・・バイト終了。
何か特に失敗もないし問題も無かったけどさ!
悔しいだろ。
慰謝料請求も出来なかったしな!
「はい。」
そんな俺が血涙を流していたらレイが何かを差し出した。
「何それ?」
俺はレイの差し出したものを訊いた。チョコクッキー?チョコビスケット?
「ケーキ。」
「焦がしすぎだろ!なんかもう固いよこれ!」
俺はそのケーキもどきを見て言った。
「失礼よ。そういうケーキなのよ。」
「いや、いくらなんでも周りが焦げてるケーキなんて見たことねーぞ!」
「あなたが知らないだけ。」
いや、絶対にないよね?
「私が開発したから。」
「それは開発ではなく失敗って言うんだよ!?」
こんなものがケーキ屋で売り出されてしまったら世も末である。
「これから商標登録と特許を申請してくる。」
「いや、止めてくれよ。恥かくだけだから。」
「大丈夫。名義はカイにするから。」
「もっとダメだよ!」
やばいぞこの女。息一つ乱していない・・・それに比べて俺は・・・もう疲れてきた。
「いじわる。」
「可愛く言ってもダメだからね!」
危うく流されそうになったよ。おそるべし風見レイ。
「おいそんなところでいちゃついてないで掃除を手伝え!」
「いちゃついてねえ!」
「そうです。一方的に絡まれたんです。」
「オイッ〜〜〜〜!!いい加減にしろよ〜〜〜!?」
こいつのテンションに乗せられたら負けだ。・・・あ、すでに負けてるし。
そうして結局俺達は掃除もどきもして店を出た。
「その怪我、誰かを守って出来たものでしょう?」
「・・・そうだよ。」
俺はレイには嘘をつけないので正直に答えた。
「あなたはやっぱりすごいわね。」
「そうか?」
何か感心された。しかも今回は嫌味も全く無い感心だ。
「私にはそういうの無理よ。」
「でもまあ人間やれば出来そうじゃない?」
「それはあなただけよ。」
最後にため息を吐かれました。
「ねえレイ。ものは相談なんだけどさ。」
「何かしら?」
俺はあることを相談した。
「俺さ、さや先輩から告白されたんだよ。」
「自慢?」
「いや!違くて!」
俺はレイの冗談だろう発言にいちいち反応する。
「俺、どうすれば良いかな?みたいな。」
「・・・自分の気持ちをそのまま言えばいいじゃない。」
レイが呆れるように呟く。まあ確かにそうなんだけどさ、これって特別な事情があるからさ。
「まあ俺も好きだから両思いなんですけどね、向こうには婚約者がいるんですよね。」
「・・・そんなカオスな状況に身を置いている訳ね。」
レイはまたもや呆れた。でもこういうのはやっぱりレイが一番よさそう。
「私は恋愛したこと無いから上手くいえないけどいいの?」
「え!?無いの!?」
「悪い?」
少し拗ねたようにするレイ。
「いや、そうじゃないけど・・・っていうかよくよく考えたらそうっぽいな・・・」
「馬鹿にしてる?」
「してないしてない!」
「冗談よ。フフ。」
まだ慣れねえな。どうしてレイはこんなに冗談が多いのかね?
「それでどうすれば・・・?」
話を戻してレイに相談することにした。
「向こうは子持ちの人妻と考えると・・・」
「いや、何か状況おかしくない!?」
いきなり子持ちの人妻って変すぎる・・・アダルトビデオみたいな内容だから止めてほしい。
「似たようなものよ。相手がいるには違いないのだから。」
「いや、でもさ!子供がいるといないでは大きく違うよね!?」
「そう?私はどっちでもいい。」
今さりげなくバクダン発言?
「え!?まさかレイは相手が既婚者でも問題ないわけ!?」
「・・・カイってそういう趣味?」
「は?・・・いや、俺じゃねえよ!俺はもっと普通の・・・」
「普通の?」
う・・・墓穴掘った。
俺は比較的ノーマルなんですよ。恋愛も性的なことも。
「まあいいわ。私だったら・・・」
レイが考え始める。
「だったら?」
「どっちでもいい。」
「オイッ!前フリ長いのに答えそれっておかしすぎない!?」
レイの脱力系のボケは俺にクリーンヒット。
「まあ全部あなたが決めることよ。・・・でもね、ここまで来たんだから諦めるのはもったいないと思うわ。」
そう言ってアパートの中に入っていった。
あれれ?いつの間にこんな場所まで。結構話してたんだな、俺。
俺はそのまま家に帰る事にした。
そして次の日、回復力の早い俺は包帯の量が前回の半分以下になった。
だからはなびを起こすことが出来る。
「起きろーはなび!」
俺は元気よくはなびの布団を引っぺがして地面にはなびを投げ捨てた。
「ガウッ!!」
おい、ガウッって何だよ。お前獣か?
「い、痛い・・・」
「え?どこが?」
まさかはなびを怪我させてしまったのか!?何か下腹の方を押さえてるし・・・腹痛か!
「・・・カイ?」
何かゆらりとはなびが立ち上がって睨んできた。
「女の子にそういうこと訊くもんじゃない、わよ!」
ゲシッ!!
「痛いっ!!!!!俺、けが人!怪我人!」
何か蹴飛ばされてしまった。何で訊いちゃいけないんだ?俺悪いこと言ってないような気が・・・
「さっさと出てけ!デリカシー無いんだから!」
そう言われて激痛を我慢して俺は部屋から急いで這い出た。
ねえ、腹痛ってそんなに恥ずかしいかな?
カイの頭に生理痛というワードは存在していなかった・・・
学校に行くと俺達のポスターが張り出されていた。
まあ選挙だしおかしくは無いな。ただし、報道部によって発行された新聞には変なことが書いてあった。
見出しに「会長はまさかの夫婦対決!?カイVSはなび!!」と書いてあった。
「おい、はなび。これどうする?」
俺ははなびの意見を訊いた。
「べ、別にそのままでいいわよ!」
「は?」
はなびは嫌じゃないのか?あ、でもこいつ顔赤いから我慢してるのか。大人になったねはなび。
「ところで腹痛は大丈夫?」
そう訊くとはなびは顔を真っ赤にして睨んできた。
「死ねっ!!」
ゲシッ!
「だあっ!!」
股間を蹴られた俺は悶絶してそこらへんをのたずり回った。はなびは俺を無視してズンズンと先に行ってしまった。
「あの人が会長候補・・・?」
「えー。心配よね〜。」
うるさいよ。聞こえてるよ。
俺の陰口をたたく生徒諸君。・・・いや、でも冗談抜きで痛いっす。俺の罪はそんなに重かったか?
「おはようございます先輩。股間押さえて蹲ってるのって新たなプレイですか?」
「あ、ナナちゃん・・・」
「そのプレイ手伝ってあげましょうか?」
「いや、遠慮しておきます。」
身の危険を感じた俺は急いで立ち上がってその場を去ることにした。
選挙運動って具体的にどうすればいいのかね〜。
股間の痛みが無くなりつつある俺は特に当ても無く彷徨った。
「う〜ん・・・」
「カイ、どうしたの?」
さや先輩がそんなおれに話しかけてきた。
「いや、具体的にどう選挙活動すれば良いか分からないんですよ。」
俺は生徒会長になったさや先輩ならどうすればいいか分かると思ったのでそう訊いてみた。
「そうねえ・・・私のときは何もしなくても大丈夫だったしね〜。」
オイ。嫌味かコラ。
「ていうかカイって選挙勝ちたいの?」
「あ。言われてみれば俺は別にどっちでもいいな。」
そういえば俺は別にそんなに頑張らなくてもいいじゃん。何焦ってたんだよ。
「・・・そんなやる気ない人が会長なんて出来るわけないんだから、やる気無いなら辞退しなさい。」
「う・・・」
ごもっともです、はい。俺、辞退するか・・・
俺は辞退しようと思った・・・いや待てよ。
・・・はなびが会長になったら俺どっちにしろこき使われるじゃん!!
「いえ!俺はやります!どんなに厳しい選挙でも勝ち抜いて見せます!」
俺は高らかにそう宣言した。
「そ、そう・・・?」
さや先輩は少し引いていたが俺は気にしないことにした。
「明日から選挙運動開始だ!!先輩!誰かいい応援者紹介してください!」
俺はさや先輩にそう告げると急いで教室に戻った。
こうしちゃいられない!
早速俺は生徒会選挙の準備をすることにした。
「美空先輩!」
俺は一生行くことないと思っていた報道部の部室に行った。
「あ、カイさん!」
すると突然美空先輩が泣き始めた。
「え?え?」
「感激です・・・まさか訪問者がいるとは・・・そして私の名前を覚えてくれていたなんて・・・」
俺は初めてこの人を不憫だと思った。
「まあ俊哉君では無いのは残念ですが。」
「え?俊哉連れて来て欲しいんですか?わかりました。連れて来ます。」
悪いが俊哉を交渉道具として使わせてもらおう。
「本当ですか!」
「ただし、条件があります。」
もちろんただでとは言わない。さや先輩直伝の交渉術の恐ろしさを味わえ。
とにかく相手の足元を見ろ!だ。
「俺のマニフェストの発行と・・・はなびの情報を調べて欲しいんです。」
「・・・こっちが一つなのにあなたは二つですか?厭らしいですよ。」
・・・ばれたか。まあいい。
「分かりました。じゃあ俺はプラス俊哉とのデート権もあげます。」
「う・・・」
お。迷ってるぞ迷ってるぞ。俊哉って結構すごいな。←親友を交渉に使う最低な男
「分かりました。飲みます。」
「ありがとうございます!」
俺はこうして報道部の部室から出て行った。
・・・
その後俊哉にそのことを言うと一発殴られました。
まあ仕方ないけど。これであとは演説を成功させれば終了だ!
-Saya SIDE-
私は久しぶり帰ってきた父に呼ばれた。
「さや、座りなさい。」
「はい。」
私は父と相対して座った。
「お前に話がある・・・」
「何でしょうか?」
少し・・・いやかなり悪い予感がする。
「お前ももうすぐ高校を卒業だ。よって高校を卒業後正式に初河崎君と結婚しなさい。」
「!!お父様!それは・・・!」
いくらなんでも早い。
「文句を言うな。お前は覚悟して跡継ぎになったのであろう?」
「・・・・!」
それを言われるともう何も言えない。
前までは諦めていたのに今は諦めたくないのだ。我侭だって分かっている。
でも私は決心できない。
「話はそれだけだ。」
そう言って父は私の前から去った。
私は唇を噛むだけだった・・・
生徒会選挙まであとわずか・・・
でも私の自由も後わずかしかなかった・・・
次回、第二部最終話!