第48話 光芒の生徒会
〜あらすじ〜
私は彼と出会った。
俺は彼女と出会った。
それが再び暗闇の中に光を差し込ます。
そして光芒が彼を導く。
あれ?何か聞こえる?
俺の耳に何かが聞こえた。
「・・・来たか。」
武満はそう呟いた。
「来たって何が来たんだよ?」
俺は当然質問を返した。
「向こう側からの使者だよ。」
そう言って武満はすうっとまた暗闇に消えて行った。
そして俺に一筋の光が差し込んだ。
「あれ?」
この光を俺は知っている。
というかよく知っている。
そして前方に人影が見えた。
「あ・・・」
さや先輩だった。
「私の声、聞こえる?」
俺は突然の出来事に驚いて何も言えなかった。
「カイ、聞こえる?」
なんでさや先輩が・・・?
「カイ!!」
「あ、はい!!」
俺はいつものくせでさや先輩に返事を返してしまった。
「カイ、ごめんなさい。」
すると目の前でさや先輩が謝った。
「あのとき私はカイを見て恐怖を感じちゃった。」
「・・・いや、それが普通なんです。だってあれが俺の本性だから。」
正直さや先輩が俺に謝る姿を見たくなかった。
だから俺はさや先輩と俺の間に線を引くことにした。
「違うわ。カイは誰よりも優しくてお人よしで、でも時には弱い人を守ったり、みんなの中心になる。そんな人の痛みが分かる人。」
「・・・」
俺は黙ってさや先輩の言うことを聞いた。
「でもね、とっても心は繊細なんだよね。一人は嫌いだし、甘えん坊だし。」
え!?甘えん坊って・・・俺やっぱりさや先輩に甘えているのかな・・・
「そんなあなたが本当のあなたなんでしょ?」
「違います。やっぱり俺は人を傷つけるだけの・・・」
「カイ!!」
俺の発言はさや先輩に遮られた。
「それはあなたの本性じゃないわ!もう一人の・・・」
「先輩!」
今度は俺が先輩の発言を遮った。
「違いますから・・・俺がやってましたから・・・」
するとさや先輩は笑った。
「ほら、やっぱり。」
「?」
俺の言うことを信じてくれたのだろうか。
「あなた、今その人を庇おうとしたでしょ?」
「!」
俺はさや先輩の的を得た発言に動揺する。
「ち、違う。俺は・・・」
「本当に優しいのね。私は誰だか知らないけど、あなたの人生を狂わせたひとを庇うんだもんね。」
「違う!」
俺は怒鳴った。武満を悪く言って欲しくない。
確かにあいつがいなければ・・・なんてことも考えたこともある。
でもあいつがいなければ俺はさや先輩にも俊哉にも出会えなかった。
きっとレイやナナちゃん、そのほかのみんなにも出会えなかったと思う。
「俺はあいつを庇ってなんかはいないんだよ・・・」
俺は目を伏せて最後の方が尻すぼみになりながら言う。
「あいつは俺の手助けをしたんだ・・・だから悪いのは俺であって・・・」
「・・・こっちを向きなさい!」
突然怒鳴られた。
「こっちを向きなさい!蛟刃カイ!!」
「・・・!!」
俺は唇を噛んだ。
俺はさや先輩を見られる?
あんなに澄んだ目を。
俺はさや先輩の目を見て同じことが言えるか?
俺は顔をあげた。
そこには笑顔のさや先輩がいた。
どうして笑っているんですか?
「さっきと同じこと言える?」
「俺は・・・!」
言葉に詰まる。何を言っても俺はさや先輩にはかなわない、そう感じてしまうから。
「私はあなたに惹かれたの。」
「え?」
突然何を言うんだろう?
「最初にあなたに出会ったときね。何て暗い目をしているんだろう、とそう思ったのよ。」
さや先輩が続ける。
「まあすぐに興味は失せた・・・はずだったんだけどね、もう一度同じところを通りかかったらまだ座り込んでいるのよ。おかしいと思ったけどね、普段だったら私は通り過ぎるところをあろうことかもう一度話しかけちゃったんだよね。」
さや先輩は懐かしむように言う。
「あの時分かっちゃったんだ。私、この子をほおっておけないって。だってね、私が治療してたときのあなたの目、すごく優しそうだった。」
「俺が・・・?」
あのときの俺がそんな目をしたのか?
「だからあなたのことも分かったの。この目、周りを拒絶しているけど実は温もりを求めているんだって。」
俺は再び目を伏せた。当たっているからだ。
「だからね、私は躍起になってあなたに付きまとったのよ。まあ1回結構傷ついたけど。」
「すいません。」
多分あのときのことだ。俺がさや先輩を拒絶したときだ。
「だからあなたのことは分かっているつもり。」
「・・・」
さや先輩のそんな目を俺はもちろん直視できなかった。
「そんなにもう嫌なの?」
「はい。もう別に向こう側に戻らなくていいです。」
俺は淡々とそう答えた。
「そう、じゃああなたは傷つけることをなんとも思わない、それでいいわね?」
「はい。」
あれ?さや先輩は俺のこと諦めてくれたのか?
何故か複雑な気持ちだ。
「じゃあ最後よ。これが出来たらもうあなたには関わらないわ。」
さや先輩が何かを決意した目で俺を見る。
「私に・・・お前は嫌い、って私の目を見て言って。」
「!」
俺がさや先輩にそんなことを・・・?
言えるか?
いや、言うしかない。そうすれば全て終わる。
そう、全て。
俺はさや先輩の目を見た。
相変わらず光を宿している、そんな目だ。
「俺は・・・さや先輩が・・・」
俺はそう言葉を繋ぎ始めた。
「き・・・嫌いです。」
何とか言い切った。
しかし俺は下を向いていた。
「・・・私の目を見ていない。もう一度。」
も、もう一度・・・一度言うだけでも辛いのに・・・本当この人はドSだな。
「俺はさや先輩が・・・」
また目線が下がる。
「カイ!私の目を見なさい!」
俺はビクッと体を震わせた。
ただキライって言えばそれでいいのに、なんで言えないのか?
それは昔のさや先輩が傷ついた顔が頭をよぎるから。
あの顔を忘れたことは一度も無かった。
「俺は・・・!」
さや先輩が近づいてきた。
「俺は・・・!!」
さらに近づくさや先輩。
気がつくともう俺とさや先輩の距離は30センチほどしかない。
「はい、言ってよ。」
「・・・!!」
ダメだ・・・俺はさや先輩を傷つけることが出来ない・・・
「俺は・・・」
もうこれ以上言えない。
「傷つけるのが本性なんでしょう?やってみてよ。」
そうさや先輩が俺を促す。もうやめて欲しい。
そうして俺はどんどん追い込まれていった。
「言えないのなら認めるしかないわね。」
「!!」
もう認めるしかないのか・・・?
俺は向こう側に戻りたいって?
本当は傷つきたくないし傷つけたくないことを?
「私があなたを守るから。だから、こっちに戻ってきてよぉ・・・」
最後の方が涙声になりながら俺を抱擁するさや先輩。
「私が・・・一生かけて守るからぁ・・・だからお願いぃ・・・」
さや先輩を泣かせるなんて・・・俺は・・・とんでもなく馬鹿な男だ・・・
何が俺を引き止めているのか・・・
それはやっぱり武満への負い目か。
武満をおいて俺一人幸せになってもいいのだろうか?
「カイ・・・」
そうして俺を見つめてくる。
「返事は?」
俺は・・・戻りたい・・・
何度傷つけても傷つけられてもさや先輩がいてくれるなら・・・
俺は大丈夫だ。
だから俺は覚悟を決めた。
「いえ、俺は返事できません。」
俺がそう言うとさや先輩が悲しそうにした。
「俺があなたに守られるだけでなく、俺が一生かけてあなたを守ります。だからもう泣かないでください。」
俺はさや先輩を抱き返した。
「カイ・・・」
俺達はこうして暗闇のに注いだ一筋の光の中で抱き合った。
俺はさや先輩を帰した後、一人暗闇の中に残った。
まだやることがある。
「武満!聞こえてるか!」
するとすうっと禍々しい刻印が刻まれている武満が出てきた。
「どうした?」
「ずっと見ていただろう?俺は帰る!俺の居場所はあそこだ!」
「ククク・・・やはりあの女は只者じゃないな・・・」
するとクククと武満は笑いながら俺に言った。
「お前も一人にはしたくない・・・でも俺は、幸せになりたい!」
「俺を切り捨てるか?優しいお前が?」
武満は俺を見定めるかのような口調で訊いてきた。
「違う。お前も、一緒だ!俺はお前を捨てない!だからずっと俺の中にいろ!」
「ククク・・・・ハハハハハハハハ!!!面白い男だな。何故か俺は今のお前の考えが全く読めない。」
武満は不敵に笑う。
「しかしいいのか?俺がいるとまたお前は傷つけられる。」
「ああ、構わない。その度に何度だって俺は立ち上がってみせる。俺はもう一人じゃないからだ!」
俺は武満の目を見て言い切った。
・・・
沈黙が流れる。
そして先に目線をずらしたのは武満だった。
「・・・良かろう。お前の生き様・・・見てやろう。お前の絶望に歪んだ顔が楽しみだ。ハハハハハハハハ!」
武満はそう言って俺の目の前から消えた。
俺はその武満がいた空間を少しだけ見つめるとさや先輩が残した光芒を辿った。
その先には光がある。
俺の大切な・・・光が。
目を開けると涙目のさや先輩と姉さんがいた。
「先輩・・・姉さん・・・」
「心配したんだから!バカ・・・」
さや先輩は俺をそう言って抱きしめた。
姉さんはそれを多少羨ましそうに見ている。
「まあこの役は今日だけ譲るわ・・・」
何か呟いていたがちょっと怖かったので聞かないことにした。
「心配掛けてすいません。」
「もういいわよ。私達、両思いなんだし。」
「へ?」
俺はさや先輩の発言にボケッとした。
「だって一生守る、って言ったでしょ?それってプロポーズじゃない。」
あ・・・
俺は見る見るうちに顔が赤面していった。
「いや、それは言葉の綾と言うか・・・その・・・」
「え?違うの?」
そう言って目をウルウルさせるさや先輩。
「いや、違わないけど・・・違うっていうか・・・あはは・・・」
「わ、私ね、そういうのまだ早いと思うのよ!」
姉さんがさや先輩をどけて俺に言った。
「な、何するんですか?マイさん?」
「まだカイは私のもの〜〜〜〜!!」
俺は右腕はさや先輩に、左腕は姉さんに引っ張られた。
セバスチャンさんは遠くで俺を憐れみの目で見つめていた。
いや、助けてよ!俺一応殴られて傷だらけの病人・・・
「う・・・」
俺はそのまま傷口が開いて倒れた。
「あ、カイ!」
2人は同時に俺の状態に気づいた。
「ご、ゴメンね。」
「ゴメンねカイ。」
2人とも謝ったから良いか・・・
俺はもう一度意識を飛ばした。
『ああ!!また寝ちゃダメ〜〜〜!!』
遠くでそんな声が聞こえた。
そしてこのとき俺はさや先輩にもう一度助けられた。
やっと終了です。
ですがまだ第2部続きます。
次回からは雰囲気が一新します。
次回は選挙編です。