第46話 さやと生徒会
過去編です。
〜あらすじ〜
勉強して何とか光芒学園に入学したカイ。
しかし何故かそこにははなびの姿も・・・
そしてこの前であったある人が舞台に立っていた・・・
俺はいきなり受難の日々が始まった。
その前に俺の今の状態を言っておこう。
髪の毛は目立つからもう染めなかった。まあ地味なバンダナをしていたけど。
すると不思議なことに結構俺は怖がられなかった。
でも孤独だった。
なぜなら自分から接触を拒んでいたから。
そんな俺には俊哉しか話しかけなかった。
・・・と思っていたのだが、例外が一人いた。
生徒会会計で次期生徒会長と謳われる存在、蓮見さや。
俺も蓮見財閥のことは知っていたのですごい家柄なんだと知っていた。
そんな人が、俺に纏わりつくのだ。
正直ありえない。
何で俺なんかを・・・?みたいなそんな感じ。
俺はクラスでは目立たず、協調性が無く、暗い性格として通っている。
そのせいで誰も俺が光芒の紅蓮だと気づかない。気づいたのはさや先輩一人。
まあそれは俊哉にも言えることだ。
かなりのイケメンで人当たりがいい俊哉は春木の狂犬の面影はもう無い。
何がこいつを変えたのか気になるところだ。
閑話休題。
俺はいつものようにさっさと帰宅してアルバイトに行こうと思った。
そんな俺を呼び止めた人がいた。まあ誰だか分かると思うが。
「君!そこの君!」
まあ俺は無視して先へ急いだ。
「君だよ!!」
するとものすごい勢いで追いかけてきた。
「え?」
そして呆気なくつかまった俺。
「何ですか?」
俺は一応先輩なので敬語を使った。
「君さ、生徒会入らない?」
「入らない。」
俺はすぐにきびすを返した。
生徒会?馬鹿馬鹿しい。
俺なんかいたら生徒会崩壊するかもな。
「ちょっと!もう少し考えてもいいんじゃない?」
「いいえ。考える必要ありません。」
本当にこの女はしつこい。
はなびの時のように邪険にしても構わず俺の領域に入ってくる。
というかかなり図々しい女だ。
「そう?う〜ん、君さ、寂しがってるよね?」
「は?」
俺が寂しい?
そんなわけ無いだろ。俺は自ら一人の道を選んだんだよ。
「何か目が訴えているような気がしてるんだよね。」
「・・・勘違いですよ。イタイ女になりますよ。」
俺はかなり語気を強くした。さっさと怯えて俺の前から消えてくれよ!
これが俺の本心・・・のはず。
「そうかな?結構自信あると思うんだけどね。」
何!?この女しつこすぎる!
俺はもう構うなって言っているのに!
あれ?俺結構楽しんでる?
そんな訳ない!
うっとおしくて仕方がないんだよ!さっさとあっちに行け!
「・・・もう俺行きますんで。」
そう言って俺は帰った。
ただ何故か心に迷いが生じていた。
何の迷いか分からないがとにかく迷いだ。
それからと言うものの次の日も次の日も俺はしつこく勧誘された。
「だから俺に構わないでって言ってますよね!」
俺はとうとう怒った。
我慢の限界だった。
「あなた、目が怒っていないわよ。」
「は?」
「本気で怒っていないでしょ?」
そんな馬鹿な話あるわけが・・・
俺はこの女が嫌いだ。・・・嫌いなんだよ!
「ねえ、私のこと嫌い?」
「当然・・・!」
何故言葉に詰まる。こいつのこと嫌いなんだろ!
・・・俺はまさか彼女が傷つくことも恐れているのか?
・・・俺は彼女のこと嫌いなのか?
・・・俺は・・・俺は・・・
「言葉に詰まったのはどうして?」
「・・・とにかく俺には構わないでください。」
「どうして?」
またしつこい。
何でこの女は俺のことをこんなに知りたがるんだよ。
「アンタを傷つけるから。」
「へえ・・・優しいじゃない・・・」
「!」
しまった。つい本心を言ってしまった。
これじゃ逆効果だ。
「あなただって質問すればいいじゃない。」
「・・・何を?」
俺は彼女に質問することなんて・・・
「どうしてこんなにもあなたに構うのか、とか。」
!!
それは面白半分じゃないのか?
単にいい遊び道具を見つけた子供のように俺を見つけたんじゃないのか?
「私はもう確信してるのよ。あなたが寂しがりやだということをね。」
「・・・・」
俺が寂しがりや・・・・
クッ・・・俺はやっぱり寂しいのか!?
そんなはずは・・・俺はもう決めたのに・・・もう人と関わらないって・・・
「何があったのか知らないけど、私でいいならいくらでも手を貸してあげる。」
そう言って俺に手を伸ばした先輩。
俺はその手を掴・・・・
まなかった。
「ふざけないでください。あなたが力になる?無責任なことを。これは俺が選んだ道なんです。アンタは関係ない。」
俺は言いたいこと・・・を言った。
俺はこのことが言いたかったんだ!と、自分に言い聞かせた。
これでいいんだ。
俺の本心はこれだ。
「・・・」
先輩は傷ついた顔をした。
・・・もう知るか。
俺は忠告したんだ。それを守らなかった先輩が悪い。
でも俺はそんな先輩を見たくなくて、さっさとその場を離れた。
そして翌日から先輩は来なかった。
「今日はあの人来ないな。」
俊哉が俺に言う。
「俺には関係ない。」
でもやっぱり少し言い過ぎたかもしれない、という後悔も多少あった・・・
俺は人を傷つけるのは好きじゃない。
「・・・」
「お前は今どうしたい?」
「・・・」
俊哉の意味深な質問には答えない。
だって考えたら考えるだけ先輩のことが心配になってしまう。
でも俺は席を立ってしまった。
「どこに行くんだ?」
「トイレ。」
これは間違っていない。俺は敢えて先輩の教室の近くのトイレに入った。
・・・
何してるんだ俺は。
・・・
・・・・・
もう考えるのやめよう。
俺がトイレから出るとたまたまそこを通りかかった先輩が。
先輩はいつものように俺に近づ・・・かずに後ろを向いて教室に入っていった。
何なんだよ・・・俺、悪者みたいじゃん・・・
は?何言ってんだよ。完璧に悪者だから。
「・・・」
はぁ・・・何であんな女のことで悩まないといけない?
俺は関係ないだろ。
別にあの女が傷つこうが傷つきまいが・・・
俺はスッキリせずにずっともやもやしていた。
それから俺はオリエンテーリングも球技大会もサボった。
だってこんなことやっていたら俺が俺で無くなりそうだから。
いや、俺って何だ?
今の俺が本当の俺なのか?
俺の存在意義は何なんだよ。
結局こんな自問自答ばっかり繰り返した。
そんな不安定な俺はある日、さや先輩が男達に絡まれているのを見た。
「ねえねえ、俺達と遊ぼうよ。」
「そうそう。楽しいところ連れて行ってあげるからさ。」
「結構ですから。」
さや先輩は必死に逃げようとするがあまりにも男共がしつこ過ぎる。
しつこい男は嫌われるって聞いたんだけど、本当のようだな。
「恥ずかしがらなくてもいいよ。」
なおもさや先輩に絡んでくる男達。
俺は何故そうしたのか分からなかったが、気がついたら体が動いていた。
「すいません。嫌がってる人にこれはないよな?」
「何だテメエ!」
もちろん男共は俺に標的を変えた。
「ああ。髪の毛紅くないと分かりませんか?」
「!!」
俺がそういった瞬間に男達の顔が変わった。
完全に引き攣っている。
「チッ!行くぞ!」
そう言ってリーダーらしき男が他の仲間を連れて立ち去った。
「・・・」
俺は無言でその背中を見ていた。
「ねえ。何で助けたの?」
「・・・絡まれてる奴を助けて悪いか?」
俺は自分でもどうしてこんなことしたのか分からなかったので、そう答えた。
「違うよ。他人と接触したくないあなたがどうして私と接触したの?ということよ。」
・・・
俺は助けたかったんだよ。彼女を。
でもそれを認めたくなかった。
でも認めざるを得ないところまで来ている。
俺は頭のバンダナを取って汗を拭いた。
・・・これは冷や汗かな?
「・・・すいません。俺はあなたを傷つけるからあなたと関われません。」
「・・・もう傷つけられたんだけど?」
「う・・・」
それを言われると返す言葉が無い。
俺は彼女を傷つけた・・・
「まあ昔の話は置いておこう。あなたは私を傷つけた、ということはあなたは私に何かで償わなければいけない。そうよね?」
「え!?そうなんですか!?」
俺はオーバーリアクションになった。
・・・あれ?俺は今普通に会話してるよな・・・
「そうなの。と、いうことで私の言うことを一つ聞いて。」
「え・・・生徒会に入れ、ですか?」
彼女は首を横に振った。
「友達になりなさい。」
「え!?命令!?」
「あ、つい・・・」
さや先輩の本性を知った瞬間だった。
「ま、これは命令ということで。」
「でも俺は・・・」
そう言うと俺はさや先輩にバンダナを取られた。
それは俺が汗を拭いた奴・・・
「これ、貰うから。」
「え、どうしてですか?」
俺はそこまでそのバンダナは大事じゃなかったので、取られてもそんなに焦らなかった。
「私とあなたの約束の証。」
「約束の証?」
そう言ってさや先輩は何かを取り出し始めた。
「財布出して。」
「え!?カツあげ!?」
まさか俺がカツアゲされる側になるとは・・・
「違うわよ。いいから出しなさい。」
命令されたのでしぶしぶ俺は出した。
・・・ってしぶしぶでも何で出しちゃうのかねえ?俺ってこの人には弱いのかも・・・
「んしょ。」
そうしてさや先輩は何かを俺の財布に入れた。
「え?何ですかこれ?」
「お守り。」
そこにあったのは「さや」と書かれたワッペンだった。
「・・・」
「嬉しくないの?」
いや、何でこんなことするのかな?って思わない?
「何で?」
「私とあなたの絆の証。」
「え!?」
どうやら俺とこの人はもう切れない糸が出来てしまったらしい。
・・・俺、もう大丈夫なのかな?
「俺はあなたを傷つけるかもしれません・・・それでもいいんですか?」
「もうこれ以上傷つけられても怖くないわよ。」
そう俺に微笑を返した先輩。
この人は大丈夫なのか?
・・・俺、もう孤独は嫌なんだ・・・
・・・
・・・だから俺はもう一度頑張ることにする。
「・・・仕方ありませんね。そこまで言うなら友達になりましょう。」
「は?」
俺のその発言に何故かさや先輩が目を見開く。
え?何かまずかった?
「何そのいやいやなるみたいなの。」
「あ、別に嫌じゃなくて・・・」
何か俺の発言に文句つけられました。
「男だったら結婚してぐらい言いなさい!」
「いや、それ行き過ぎですよ!」
「ふ〜ん・・・」
あれ?また何かまずかった?
「あなたってそういう風に笑えるのね。」
「え?あ・・・」
笑ったのなんて何年ぶりなんだろうな・・・
「笑うとね、嫌なことも全部吹き飛ぶのよ。」
俺はじっとさや先輩の話しに聞き入った。
「一緒に笑い合うって・・・幸せなことよ。」
俺はこのときなんでこの人に惹かれたか分かった。
この人は光なんだ。
俺にかすかな光芒を残してくれる光なんだ。
俺はそれに照らされたんだ・・・
そして俺はこのとき大切な光を知ったのだ。
「・・・」
昔を思い出してみたけど結構恥ずかしいこと言ったものね・・・
「私が、カイを救わなくちゃ。」
そう心に決心する。
私の光があなたの暗闇に届きますように・・・
もう少しあと少しです。
カイのツッコミもこれが初めてです。




