第45話 邂逅する生徒会
過去編まだ続きます。
〜あらすじ〜
俊哉と俺は喧嘩の日々を送っていた。
しかし俊哉は急遽喧嘩を止めた。
俺は・・・皇家から名を抹消された。
こうして皇カイは消え、蛟刃カイが誕生した。
俺は皇家からとうとう勘当された。
むしろ今までよく持った方だと思う。
俺は生活費を貰う代わりに高校に進学しなければならない。
今の中学はエスカレータ式で高校まで行けるが、俺は不登校だったから多分許可が降りない。
だから高校は別の所に行くだろう。
俺は仕方がないので勉強を始めた。
「ところでカイ、お前はどこを受けるつもりだ?」
俊哉が勉強を始めた俺に訊いた。
「適当。」
本当だ。
だって本当にどこでもいいし。
「じゃあ光芒学園にしないか?」
「へ?」
俺は俊哉にそう提案された。
「俺はそこを受ける。」
「…レベルは?」
一番気になるところだ。まさか凄く高いわけじゃないよな?
「60ちょっとかいや確か…70あったかも…」
「オイ!絶対無理だ!」
俺は最近喧嘩しかしていない。無理だろ。
「諦めるなよ。俺はこの2ヶ月ど15上がったぜ。」
いや、あがって55だったじゃん。
俺はどれくらいなんだろう?
「まあ一応目標、ってことで。」
そう軽く言って俊哉はまた勉強を再開した。
こうして俺の喧嘩と勉強の両立生活が始まった。
そして時が経って夏になった。
俺達二人は不良らしくなく、ずっと勉強をしていた。
俺達は見る見るうちに成績が上がった。凄い勢いだ。確か俊哉は60、俺は55だ。
そしてそんな最中に事件が起こった。
俺がはなびとの約束の公園にいた時だ。
なぜ来たかというと、落ち着くからである。
ここにいると心が楽になる気がするからだ。
そんな時、見知った顔が現れた。
外村だった。
「よう。最近見ないと思ったらこんなところにいたのか。」
「何しに来たんだ?」
俺は外村を睨み付けた。
「何しに来たか?決まってるだろ!」
そう言って俺を殴りつけた。
しかし俺は怯まずに殴り返した。
「テメェ!」
やれやれだった。こいつは何も分かっていない。
「お前が俺に勝てるわけないんだよ。」
そう言ってこいつをボコボコにした。
そのうち警察がやってきて俺達を補導した。
俺は姉さんから受け取った大金を払ったが、外村はそのまま捕まった。
こいつは2度目だから執行猶予はなかった。
そして最後に俺にこう言った。
「お前だけのうのうと暮らすなんて・・・俺は絶対にテメエを許せねえ!」
最後のこの言葉は結構耳に残った。
でも・・・逆ギレだ。
俺はそのままそいつの顔は見ずにその場を後にした。
「なあ俊哉・・・」
俺は俊哉に一つ訊いてみたいことがあった。
「どうした?」
「お前さ、俺が皇家でも驚かなかったよな?何で?」
俺はずっと疑問だった。だって皇家の直系が不良だぞ?
「ああ・・・そんなことか。」
「そんなことって・・・」
俺はまだこのとき俊哉の家のことを良く知らなかったんだよな。
今考えれば俊哉も俺と似たようなものだから驚かなかったのかもしれない。
「別にお前が何であろうとカイはカイだろ?」
嬉しいことを言ってくれる。でも俺はどこかまだ虚しさを感じている。
俊哉も気づいているのかも、俺と俊哉は所詮他人である、と。
やはり姉さんと長年の幼馴染二人を失うのは俺の心にはきつかった・・・
だが今そんなこと言ってもしょうがない。
俺は高校受験の勉強を再開した。
・・・
そしてとうとうやって来た受験日。
俺と俊哉は全力を出した。
そうして見事光芒学園に受かった。
ちなみに結局偏差は65だった。
俺の偏差は65、俊哉は66だったので何とかギリギリだった。
俺達は受かったことに特には喜ばなかったが、ホッとはしていた。
そしてこのときはすでに俺に喧嘩を吹っかける奴はいなくなった。
まあ俺も好きで殴っているわけでないし別にどうでもよかった。
2月のある日のこと・・・
俺は奇襲を受けて体中ボロボロだった。
「クッ・・・」
完全に油断していた俺は不意を突かれて生憎やられかけた。
そしてその場にへたり込んだ。
俺は立ち上がれない・・・足の骨がイッてるかもしれない。
そんな俺の前に一人の女性が立った。
「・・・・」
その女性・・・いやまだ少女という年齢かもしれないが、とにかく目が合った。
俺はすぐに目を逸らした。
あの目をずっと見ることが出来なかった。
俺と違って輝いている光が宿っているような目を・・・
「ねえ。」
「・・・」
俺は話しかけられた。
まさか俺に構うんじゃないだろうな・・・
「ねえって言ってるでしょ。」
俺は顔を上にあげて反応した。
「そこにいるとゴミ箱にゴミ捨てられないんだけど。」
・・・え?
ゴミ?
これが俺とさや先輩の出会いで、内容はあまりにも衝撃的。俺がゴミ箱の前でへたり込んでいるせいで、ゴミを捨てられないさや先輩が話しかけたという、全然ドラマチックじゃなかったそんな出会い。
そんな変な出会いだったが俺は一生忘れることはないだろう。
そして結局俺は体を多少ずらしてどいた。
・・・
さや先輩はこのとき俺に構わず帰って行った。
・・・だが、さや先輩とはまた1時間後ぐらいに会った。
服はもう制服ではなく私服だ。
そこで俺を見つけて目を見開いて凝視した。
俺は恥ずかしかったから下をずっと向いた。
他の奴らはみんな俺を無視。
何せ髪の毛が真っ赤で服はボロボロ。
関わり合いになりたくなんてない。
なのに、だ。
彼女は俺に近づいた。
「ねえ。ゴミ箱好き?」
正直殴りたくなった。第一声がそれってありえない。
「・・・」
「いつまでここにいるの?」
「・・・」
ああもうさっさとどっかへ行けよ。
俺だって好きでここにいるわけじゃない。
「・・・ねえあなた足、怪我してるの?」
「・・・」
彼女は俺の容姿にも関わらず普通に接してきた。
俺のこと怖くないのか?
「分かったわ。勝手に見る。」
そう言って勝手に俺の足を見始めた。
「オイコラ。何してんだ。」
俺の第一声はそれ。
「見ての通り足を見てるのよ。・・・あ、結構腫れてるわね。」
「余計なことすんじゃねえよ。」
俺は相手が女とあっていつもより優しく言った。まあそれでも結構ぶっきらぼうにだけど。
「う〜ん・・・ちょっと今じゃ治療できないわね・・・」
「オイ。聞いてんのか。」
俺の言うことを全く聞かないこの女は「ちょっと待ってて」とか言ってどっかに行った。
そういえば俊哉以外でまともに口を利いたのは久しぶりだった。
俺は少し新鮮さを感じたがすぐに元の状態に戻した。
そんなこと考えてると彼女が戻ってきた。
「これならなんとかなるかな。」
そう言って俺に持ってきたのは湿布と包帯。
近くで買ってきたのか、新品だ。
「じゃあ今から巻くから待ってて。」
俺は彼女になされるがままに応急処置を受けた。
殴る気にはなれない。一応俺の恩人だし、女だ。
そしてもう彼女とも会うこともないだろう。
そんな風に思っていた。
こうして俺は歩けるようになったので、ぶっきらぼうに感謝してその場を去った。
中学卒業式・・・
俺は真っ赤な髪のまま卒業式に出た。
はなびはチラチラこちらを見ていた。
でも話しかけることはなかった。
まあまた傷つけるのが怖いから話しかけられたくないけど。
そして先生は俺を恐れて誰も注意しなくなった。
まあ別に学校で暴れないから問題ないけど。
ただ、PTAがうるさかった。
特にクラスの記念写真に一人だけ紅い髪の奴が映ってる、って言うのが嫌らしい。
結局俺が記念写真を辞退したことでその場は収まった。
そしてこれで俺の紅い髪の姿を写した正式な写真は存在しなくなった。
そしてとうとう高校入学式になった。
俺は一応髪の毛をこのときだけ黒に戻した。
俊哉がどうしても、と言うから仕方なく。
そして俺は高校入学を機に一人暮らしも始めることにした。
そんな俺の入学式。
これは驚愕の連続だった。
まずなぜか隣のクラスにはなびがいた。
はなびはエスカレータ式だからそのまま高校に上がるのかと思ったのに、何故かここにいた。
しかもここってはなびにとっては入るの大変だったんじゃないか?
はなびがそうまでして入りたかったのならば、俺はここに入学するのは失敗だと思った。
でも今更取り消せないので俺は諦めた。
そして次に驚いたこと、それは在校生挨拶。
「生徒会代表、蓮見さやさんからの挨拶です。」
パチパチパチパチ!!
すごい量の拍手で迎えられたその人は俺の怪我の応急処置をしてくれた人だった。
もう会うことはないと思っていたのに、まさかの巡り合わせ。
でも俺は髪を黒にして立たせていないからばれないだろう、と考えた。
ばれたら彼女に百パー絡まれると思うからだ。
俺はこうして今日は大丈夫だな、と思ったそんな時、帰り際に見つかってしまったのだ。
「あ、君ってあのときのゴミ箱の子だよね?」
ゴミ箱って何だよ。
「いえ、さっぱり分かりませんが。」
俺は知らん振りして去ろうとした。
「そんなこと言っても無駄よ。だってまだ一部髪の毛紅いわよ。」
「え?」
俺は髪の毛を弄るが、目の前の彼女の意地の悪い視線で気がついた。
「カマかけただけなんだけど、やっぱり君だったんだ。」
「・・・あの、俺に構わないでくれますか?」
俺は彼女にそう言って振り切ろうとした。しかし腕を掴まれた。
「逃げちゃダメよ。私ってものすごく意思が強いのよ。ようするに頑固。」
自慢することじゃないだろ。
「まあプライドも高いと思っているし・・・私ね、あなたに興味持ったの。」
興味?まだ彼女は俺の腕を掴んでいる。
「だから絶対に逃がさないわ。」
これが俺とさや先輩の関係の始まり。
興味本位で俺を知りたがるさや先輩と、そんな彼女に関わりたくない俺の、そんな関係。
俺はこのときすでにさや先輩に惹かれていたのかもしれない・・・
過去編はもう後編になりました。
第2部終了は50話です。