第44話 逃走で生徒会
仮題は「強敵と書いて友と呼ぶ?」
〜あらすじ〜
咲がいなくなって半年後、俺の幸せは崩された。
俺が公園で何かに目覚め、実の姉にレイプ未遂をしてしまった。
そして俺は逃げるようにその場を後にして彷徨った。
俺は姉さんを失った・・・
その日、家にも帰れなかったし行く当てもなかった。
はなびにももう会えない。
今度ははなびを傷つけるかもしれない・・・
俺は行く当てもなくその辺を彷徨った。
…
その最中に一人の男とぶつかった。
俺はその男を見た。
金髪で長身な男…いやまだ多分学生だろう人だった。
「痛ってぇな…」
男は俺を睨んだ後、問答無用で殴り掛かってきた。
ゴスッ!
頭にそんな鈍い音が響いた。
いつもの俺ならここで謝って終了だが、今の俺は精神が非常に不安定だった。
だからか、つい相手を殴り返してしまった。
そしてまた頭が沸騰して気持ちが高まる。
「てめぇ…」
相手はさらにまた殴ってきた。
そして俺は殴り返す。
殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。殴る。殴られる。
そんなのがずっと続いた。
そして一頻り終わった後、俺達二人は共に地面に倒れ込んだ。
「はぁはぁ…」
「ぜぇはぁ…」
二人とも虫の息だった。
俺はもう体が限界だった。
「お前、名前は何だ?」
すると突然相手が名前を訊いてきた。
「何だ。突然?」
俺は頭が少しスッキリしたので落ち着いて訊いた。
「いいから言えよ。」
さらに促してきた。
仕方ないので下だけ言うことにする。
「カイ。」
俺は出来るだけ淡々と言った。
「そうか…」
そう言ってそいつは黙り込んだ。
「オイ。お前は?」
俺だけ名乗るのは不公平だと思う。
「知らないのか?俺を?」
なんかそんなこと言いやがった。こいつって実は結構有名な奴なのか?
「ああ。さっぱりだ。」
俺は正直に答えた。
「…珍しい奴だな。お前まさか不良じゃないのか?」
「ああ。というかこんなに殴り合ったのは初めてだよ。」
俺は今自分がこんな不良と一緒にいるのが信じられない。
いつからこんなことになったのだろう…
「ははっ…変な奴だな。俺は俊哉。」
これが俺と俊哉の出会いだった。
「別名は春木の狂犬。または光芒の孤狼とも言われたこともあったな…」
俺はそれにビックリした。
まさかこいつがあの不良の中でも恐れられている春木の狂犬だとは…
こう言っては難だが似合わない。もっとゴツイ奴かと思っていた。
何せどちらかというとこいつは怖いよりかっこいい容姿だ。
「…恐れをなしたか?」
俊哉が訊いてきた。
確かに今までの俺なら関わりたくなかっただろう。
でも今は違った。
「いや、全然。むしろ拍子抜けした。」
「…」
実際この時そう思っていた。
そしてそう俺が言った後の俊哉の呆気に取られた顔が印象に今も深く残っている。
「そうか…」
俊哉は何とも言えない顔をした。
「ところでお前はこんな所で何をしてんだ?」
まあ当然とも言える疑問を俺に答えさせようとした。
「…」
もう思い出したくもない俺は黙ることにした。
「帰らないのか?」
さらに訊いた。
帰る場所はもう無い。
「…」
俺は沈黙を貫き通した。
「来い。」
俺は強引に引っ張られた。
「お、おい!」
もちろん俺は抵抗した。
「どこに行くんだよ!?」
俺は俊哉に大声で訊いた。
「俺の家。」
「へ?」
このときの俺は絶対にアホ面をしていたこと間違いない。
「何で!?」
「帰りたくなさそうだから。」
こいつはエスパーか。
何で俺の考えていることが分かるんだ。
そうして結局俺はズルズルと引っ張られた。
俊哉の家はボロいアパートの中にあった。
「文句は言うなよ。」
そう言って俺を部屋へと導く俊哉。
何故俺がこの部屋に入ったのかと言うともう行く当てが無いということとこいつを信頼しつつあったからだ。
だって狂った俺を見ても動じなかったし。
まあ経験の差もあるかもしれないが。
「狭いけどいいのか?」
「構わねえよ。」
そう言って俊哉は自分のベッドの上で横になった。
「適当に布団あるから。」
そう言って押し入れを指差した。
「シャワーとトイレはあっち。風呂は無いが我慢しろ。」
俺はその発言をジッと聞いていた。
どうやら俺がここに泊まるのは確定らしい。
「着替えは…明日買え。」
幸い懐は厚い。
まあ皇家の人間だから結構な額が入っている。
だから俺はその日、シャワーを浴びて血を落としてから眠りについた。
次の日、俺は初めて学校をサボった。
代わりに着替えを買いに行った。
正直学校に行ってもどんな顔をすればいいか分からない。
周りのみんな全員が俺を畏れている、そんな感覚に陥る。
俺は一人だとつくづく理解させられる。
俊哉はどうか?
確かにあいつは俺を異端視しない唯一の人間だ。
だから孤独、と言う言い方は悪いかもしれない。
でもあいつはどこかで境界線をきちんと引いている感じだ。
それ以上近づかせない、いや、俺もそれ以上近づかないのか。
そうして俺の決して幸福じゃない新生活が始まった。
そんな生活は幸せでは無いが、飽きはしなかった。
何せ年中喧嘩の日々。
相手を倒しては金を手に入れる、そんな博打生活をしていた。
しかしそれから一週間後、俺に会いに来た人がいた。
俊哉は呼鈴が鳴ったので、外に出て訪問者を確認した。
するとすぐに戻って来た。
「おい。何かお前に会いたいと言ってる女の子が来てるぞ。」
「ああ?」
一体誰だろう?
俺は玄関に行った。
「久しぶり。」
「はなび…」
訪問者ははなびだった。
「何してるの?学校にも来ないで。」
はなびは結構怒っていた。
でもこの時俺ははなびがうっとおしかった。
「何をするのも俺の勝手だろ。」
「な、何よ!その言い方!」
はなびが予想通り怒鳴る。
「うるせえな!」
俺がそう言うとはなびはビクッとしたが、すぐに立て直す。
「家族にすら連絡していないんだって!?心配してるわよ!」
そんな訳無いだろ。
こいつは気休めを言っているだけだ。
「勝手にしてれば。」
俺がそう言うとはなびは目に涙を溜めた。
「バカッ!もう知らない!」
そう涙目になって去っていった。
少し心が痛んだが、もうはなびは俺に関わらせたくは無い。
まあ俺なりの優しさ…みたいなものだ。
「今の彼女?」
俊哉がはなびが去った後にそう訊いた。
「違う。」
「そうか…」
俺は自分からはなびも遠ざけた。
それからもう一つ、俊哉の家に咲の手紙が届いたことがある。
多分それは密かに姉さんが入れておいてくれたのだろう。
俺はその手紙を読まずにゴミ箱の中に入れた。
そして俺は咲にもう別れよう、と手紙を書いた。
こうして咲も遠ざけた。
それから数ヶ月経った。
俺と俊哉は中学生ながら喧嘩は負け無しだった。
そしていつの間にか俺にも春木の死神とか光芒の紅蓮とか言う二つ名がついた。
二つ名が紅蓮なのはこの時の俺は髪を紅く染めたからだ。
こうして何回か警察の世話にもなった。
しかし家柄のためか、何回も履歴を揉み消された。
実は皇の名に何回も助けられていたが、俺は構わず暴れ続けた。
そしてさらに時が経ったある日…
「俺、喧嘩はもうあんまりしないから。」
俺は突然俊哉にそんなことを言われた。
中学二年の3月のことだった…
「何かあったのか?」
「ああ。」
俺は敢えて理由を聞かなかった。
「そうか…」
俺は静かに呟いた。
だが俺は止めなかった。
すでに喧嘩は俺の日常であったからだ。
俊哉はアルバイトを始めた。
昼はコンビニ、夜は風俗だ。
確実に違法なのだが、俊哉の容姿なら大丈夫だった。
そして中学3年に俺はなった。
始業式には出たが、みんな俺の髪の色に恐れをなして話し掛けて来なかった。
まあ別に予想していたから大丈夫だった。
むしろ話し掛けられたくない。
こうして俺はダラダラと過ごすハズだった…
そんなある日、俊哉の家に姉さんがやって来た。
「おう。カイ、お前の姉貴が来てるぞ。」
俺が俊哉の家に帰って来るなり俊哉が俺にそう告げた。
「え…」
もちろん俺は突然の出来事に狼狽した。
「カイ、あなたに言わないといけないことがあるの。」
「…」
俺は沈黙した。
「私達皇家はアメリカに行くことになったから。」
その私達の中には俺が入っていないことがわかった。
「だからその…」
久しぶり姉さんに会ったらこれか…
「あなたは皇家から勘当された…の。」
やはり、いつかこうなることは分かっていた。
「これ、生活費。」
そう言って俺は大金を渡された。
「これを出すからその代わり…高校に進学して。」
俺はこの日、皇家から名を抹消された。
そして俺は名字を変えることになる。
蛟刃と。
人間を襲うヤマタノオロチの刃、つまり俺は人を傷つけるという意味として。
俺はこうすることで自分にそれを戒めたのかもしれない。
そしてこの姉さんの言葉が俺とさや先輩を引き合わせることになる…
蛟刃の意味はきちんと考えていました。
ショート劇場
さや「そういえばあなたって変な名字よね。」
カイ「まあ・・・」
さや「正直に言うとね、ネーミングセンス無さすぎ。」
カイ「それはあまり言わないでください。」