第39話 危険信号だ生徒会
仮タイトルは黄色信号はほぼ赤信号。
〜あらすじ〜
さや先輩が俺に告白した。
俺はそれに答えない道を選択した。
そして俺は姉さんから自分が多重人格障害だと告げられた。
俺は次の日、普通に学校に行った。
体調も別に普通だし問題は無い。
だからいつものようにはなびを起こして登校した。
それにしても多重人格障害ね・・・
少し感づいていたけどな・・・そういえば俺のもう1人の人格って・・・あれ?思い出せない・・・
確かに会ったような気がするんだけどな・・・
そんなことを考えているうちに俊哉が慌てて教室に入ってきた。
「カイ!ちょっと・・・」
「どうした?そんなに慌てて。」
俺は俊哉にそう訊いた。
「話がある。ここじゃまずいから屋上に行こうぜ。」
「まあいいけど・・・」
俺は俊哉に従った。
それにしてもあの俊哉の様子、ただ事じゃない。一体どうしたのか。
「それで?話と言うのは?」
俺は屋上について早速俊哉に訊いた。
「・・・実はな、外村が出所した。」
俺はそれを聞いた瞬間頭が真っ白になった。
外村・・・あいつは俺が今までで一番許せない男だ。
「・・・アイツ、お前のこと相当恨んでる。」
「それは筋違いだ。」
俺はすぐにそう返した。俺があいつを恨むことがあってもあいつが俺を恨む道理はない。それは単なる逆恨みだ。自分が俺に喧嘩で負けたからの。
「そうだな・・・でもアイツはそんなので納得できる潔い男じゃないのは知っているだろ?」
俺達はアイツのことを良く知っている。
アイツは俺の姉さんを傷つけたにもかかわらず、自分が俺に殴られて被害者面するどうしようもない男だ。
俺はふつふつと怒りが湧いてきた。あいつの顔も名前ももう聞きたくない。思い出したくもない。
「でもお前、アイツと喧嘩できるか?」
「・・・」
俺は喧嘩ができない。俺はもう喧嘩しないと誓ったからだ。さや先輩に。
それに俺は人を殴ると我を忘れてしまう。何故かサディスティックな性格になってしまう。
「・・・どうする?」
「とりあえず、様子を見る。」
まだ向こうは何もしてきていないので俺から何かすることはできない。
「そうか。でもこれからは俺と極力一緒にいろ。」
「・・・ああ。」
向こうは目的のためなら手段を選ばない男だ。気を付けるに越したことはない。
そうして俺達は屋上から出て行った。
「何してたの?」
当然はなびがそう訊いてきた。あいつはいつも俺の全てを知りたがる。
「男の秘密だ。」
俊哉がまた意味深なことを言う。
「ふーん。」
ほらレイがまた勘違いするじゃないか。
「えーと・・・変な意味じゃないよ?」
「変な意味ってどういう意味かしら?」
うぐ。さすがだ。こいつは侮れない。
ガラガラ!!
「大変です!みなさん!」
突然ナナちゃんが教室に入ってきた。
「ど、どうしたんだ!?」
俺達はナナちゃんの尋常じゃない様子にびっくりする。
「もうすぐ生徒会選挙です!」
「ってそれのことかよ!」
俺はてっきりもっと深刻な事態を予想していた。
でも今の俺の心を和ませてくれたのは嬉しかった。
「な、何でみなさん驚かないんですか?」
「え?そんなに驚くことなの?」
生徒会選挙なんて立候補者すらいなければ信任投票を勝ち取ればそれで終わりだ。
そんなの別に大した問題ではないのでは?
「私、信任投票で勝てる自信ありません!」
「あ。」
「なるほど。」
「確かに・・・」
「って何で皆さん否定してくれないんですか!」
ナナちゃんが珍しくつっこんでいるが俺もナナちゃんが信任投票で勝てるかどうか微妙だ。
確かに根はしっかりしているかもしれないが、周りの人たちは上辺のことでしか評価できない。
ナナちゃんの上辺は・・・不真面目、成績不振、運動音痴、廃人・・・確かにきついな・・・
「カイ先輩なんか失礼なこと考えてません?」
「いや、そんなことはないよ。」
一応否定したが、信じてもらえるかな・・・?
「・・・まあいいですよ。カイ先輩達は楽勝だと思いますから。」
「あ、俺も出るのか。」
俺は今の今まで忘れていた。俺もなんかの役職やるのかな?
「何忘れてんのよ。」
はなびの鋭い指摘が俺を追撃した。
「だってあんまり実感湧かないし・・・」
正直なんかよく分からない感覚・・・俺が生徒会長に立候補?まあないない。
「それで皆さん何か立候補したいのありますか?」
ナナちゃんが訊いてきた。
「ナナちゃんは何かあるのか?」
俺は逆に訊き返した。
「私は副会長の予定ですけど・・・」
「ああ、無難だな。」
ちなみに選挙が必要なのは会長と副会長2人の計3人のみ。
「カイはどうするの?当然生徒会長でしょ?」
レイが俺にそう言う。
「ええ!?俺が!?」
なんか恐れ多いな。俺が生徒会長ねえ・・・
「まあいいんじゃないか。」
「俊哉まで止めてくれよ。」
俊哉も俺に勧める。
「でもそうしたら私と争うことになるのね。」
はなびがそう言った。
「お、お前が会長に立候補?」
「そうよ。悪い?」
いや、悪くないんだけど会長といったらさや先輩のイメージが強いからどうしてもイメージできない。
「咲は?」
「私?私は特にないわ。」
咲は特にないらしい。咲は結構人前に出るの苦手だからな。会計当たりがいいんじゃないか?
「俊哉は?」
「俺?俺は風紀に行こうと思っている。」
「マジで!?」
どうやら俊哉は風紀委員になりたいらしい。ということは生徒会から抜けることになるのか・・・
「寂しいか?」
「バ、バッキャロー!」
俺達2人で3文芝居をしてみたが、周りからの評価は芳しくなかった。
「じゃあレイは?」
「私は副会長あたりでも、と思ったのだけど。」
レイが副会長か・・・いや、でもこいつはなびより会長が似合っているような・・・。まああくまで俺のイメージだけど。
それにしても・・・もうこんな時期になるなんてあっという間だったな。
キーンコーンカーンコーン
「あ、授業始まってしまいます!それではさらばです!」
ナナちゃんがさっと消えた。
今の何の術!?
その日の放課後・・・
「さや先輩は会長になるの誰がいいと思いますか?」
「・・・」
さや先輩は何故か上の空だ。
「さや先輩!」
「あ、カ、カイ。ど、どうしたのかしら?」
何でそんなに挙動不審なんでしょうか。みんな怪しんでますよ。
「えーと、この中でさや先輩は誰が会長になるのがいいと思いますか?」
「そ、そうね・・・誰でもきちんとできると思うわよ?」
「は、はあ・・・」
今日のさや先輩はどこかおかしいぞ。
「きっと生理ですね!」
ゴツン!
「女性にそれを言うな。」
いつものようにナナちゃんがはなびに制裁を食らった。
「じゃあ何て言えばいいんですか?アノ日ですか?」
ゴツン
「い、痛い・・・でもそのうち快感に・・・」
なるのかよ!
おっとしまった。つい・・
そうして俺はさや先輩に視線を戻した。
「な、何?」
え・・・今俺のこと見てましたか?
「あの、なんかこっち見てましたか?」
「そんなわけないわよ。自意識過剰よ。」
そういつもの調子で言うのだが勢いがなんか無い。一体どうしたものか・・・
「じ〜・・・怪しい・・・」
はなびが俺達2人を見る。
あ、そういえば俺達今一応両思いなんだっけ?ただその事実知っているの俺だけだったり・・・
「・・・まあ人の恋路に言及はしないわ。」
「こ、恋路!?」
オイ、さや先輩メッチャ怪しまれますよ。
『・・・』
おーい。沈黙ですか。この空気は少しまずいんじゃないの?
「まあ人のことなんてどうでもいいですから、まずはこの山のような資料を片付けましょう。」
俺は目の前の机にある山を指して言った。
「う・・・」
ナナちゃんがうめき声を上げた。当然か、これは確かに気が遠くなりますよ。
「じゃあさっさと片付けますか!」
俺はそうみんなに告げて踏ん張った。
最近の体調不良で俺は全然仕事してなかったからな、俺はその分頑張った。
「じゃあさようなら〜。」
そうしてみんなとぼとぼと帰っていく。
「じゃあね。」
さや先輩とナナちゃん、レイ、と順番に帰っていった。
「あれ?俊哉君こっち?」
俊哉は極力俺と一緒にいるらしいのでこっちに付いて来ている。
「ああ。ちょっとカイの家寄る用事がな。」
そう嘘を簡単に言わんでも・・・こいつのポーカーフェイスは結構優秀だな。
「ふ〜ん。」
こうして俺、はなび、俊哉、咲で帰った。
「じゃあな。」
俺は家の前で俊哉と別れた。
「ああ。またな。」
こうして俺は無事に1日が過ぎると思っていた。
あの電話が来るまでは・・・
ブブブブブ・・・
「ん?電話?さや先輩からだ。」
俺はどうしたのだろう?と電話を取った。
「もしもし。」
「やあ。久しぶりだね。皇。」
こ、こいつは・・・どうして・・・
「何でお前なんだよ。外村!」
電話の相手は外村。・・・あれ?これさや先輩の携帯・・・まさか!!
「あれ?そんなこと言っていいのかい?大事な人間が犠牲になっちゃうよ〜。」
こ、こいつ・・・さや先輩を人質に取りやがった・・・
「分かった。何が望みだ。」
「あの公園に来い。お前に殴られた、あの公園だ。」
俺があいつを殴った公園は一つだけだ。はなびとの約束の公園・・・
あんな場所でこいつと会うのはすごく嫌だが言うことを聞くしかない。
「わかった・・・絶対手は出すなよ。」
「お前次第だ。」
ピッ。ツーツーツー・・・
「オイ!!」
畜生!!あの時さや先輩を送ればよかった!今日のさや先輩は注意力散漫だったから・・・!
俺は急いだ。あの公園へと。
そして俺は覚悟した。喧嘩になると。
そして孤独になると。