第38話 告白と生徒会
ほぼシリアスです。
仮題は真実へ・・・
〜あらすじ〜
俺は修学旅行から帰ってきた。
その夜、俺は自分の見た夢が思わぬ結末を迎えた。
そしてそのリアルすぎる夢は俺に衝撃を与えた。
俺は次の日、早起きできなかった。
目を開けて時計を見るともう10時であることが分かった。
「やべえ・・・頭痛い・・・」
隣を見ると姉さんがまだ気持ちよさそうに眠っている。
やっぱり寝すぎだよな?
俺は姉さんの腕を解いて布団から出た。朝食の準備をしなければいけない。
さっそく調理にかかったが、本当に頭が痛いのでその前に薬を飲むことにした。
「くっ・・・」
あんまり効いていないかも・・・
・・・というか本当に病気なのか?
病気にしては変な症状だし、時々変な声が聞こえる。
「俺は一体何なんだろうな・・・」
結局けだるい体を起こして朝食を作った。
今日が振り替え休日で本当によかった。学校あったら遅刻確定だ。
俺は気分転換に外に出ることにする。姉さんの分の食事はきちんとラップして置いといた。
「いってきまーす。」
・・・
返事は無い。まあ寝ているしな。
俺は外に出た。
外の空気を吸ってみたが体調はあんまりよくなさそうだ。
「はぁ・・・」
とぼとぼ外を歩いているとさや先輩を発見した。
「あれ?何でこんなところに?」
俺はさや先輩に近づいた。
「ん?」
さや先輩は1人ではなく隣の人と話しながら歩いていた。
あの後姿は・・・初河崎さん・・・
俺は急遽進路を変更することにする。
「あれ?カイ?」
しかしさや先輩に見つかってしまった。
俺は遊園地の出来事以来まともに会話も交じわしていない。
よってすぐに逃げることにした。何で逃げるのかはよく分からないが、あの空間にはいたくなかった。
「衛さん、ちょっと急用が。」
「え?」
あろうことかさや先輩は初河崎さんをほおって追いかけてきた。
「な、何で追いかけてくるんですか!」
「逃げるからよ!」
俺はさや先輩と奇妙な追いかけっこをした。普通なら俺がさや先輩に負けるはず無いのだが、今日は体調不良のために体が重い。
「はぁはぁ・・・」
もう息が上がってきた。俺こんなに必死に逃げて何やってるんだ?
ちらりと前を向くともう行き止まりだった。
「あ。」
「やっと追い詰めたわ・・・」
俺はさや先輩にじわじわと追い詰められてしまった。
「う・・・」
「質問1、どうして逃げたのかしら?」
さや先輩が訊いてくる。どうせもう逃げられないので俺は質問に答えるしかなかった。
「あ、それはさや先輩がデート中だったからです。」
「で、デート!?あ・・・あれはそういうのじゃ・・・ないから。」
さや先輩がしどろもどろになっている。図星なんだろう。
「初河崎さんはいい人ですから。さや先輩とお似合いですよ。婚約者なんでしょう?」
「あ、う・・・」
さや先輩がうつむいている。
「もういいですか?」
「よくない。」
さや先輩は俺を解放させてくれなかった。
「どうしてですか?俺もう・・・う・・・」
「カ、カイ?」
「何でもありませんよ。もうほおっておいてくださいよ。」
俺は頭痛が再発して倒れこみそうになったがさや先輩の手前、踏ん張った。
「俺に関わると・・・どうせロクなことにならない。」
俺は精一杯倒れそうになるのをこらえてそう言った。
「・・・嘘。私はあなたをほおっておけない。」
「何で・・・?」
「そんな目・・・あなた去年と変わっていないの?」
俺の目は去年のあの目をしているらしい。本当は寂しいのに自分から孤独になってかつ他人には強がる。そんな目。
「・・・でももういいんですよ。あなたには婚約者がいるんです。構う相手は俺じゃない。」
パチン
「あ・・・」
俺はさや先輩にはたかれた。
「・・・バカ。あなた本当にバカよ。」
「そうですか?そんな俺に構うさや先輩も馬鹿だと思いますけど。だいたいなんで俺なんか・・・ん!!」
俺はその後言葉を告げられなかった。
なぜなら俺の口はさや先輩の唇で塞がれたからだ。
・・・所謂キスというやつだ。
さや先輩が唇を離すと俺はまず訊いた。平常心を保ちながら。
「どうしてこんなことしたんです?」
「・・・あなた本当に分からないの?」
確かに分かるかもしれないが、分かってしまうと取り返しがつかなくなるかもしれない。
「・・・俺は鈍感ですから。」
こうしてはぐらかせばすべて終わり。いつものように冗談で済むはずだ。
しかしそんなことはなかった。
「私、カイのことが好きだから。」
――――――とうとう言われたその言葉。正直俺は嬉しい。
多分俺もさや先輩のことは好きだから。俺は今までそれを気づかないようにしていたのだろう。だからこそ答えは決まっていた。
「・・・そうですか。俺は恋愛感情はありません。だからすいませんが想いに答えられません。」
俺はさや先輩を拒むことを選択した。俺はさや先輩が好きだ。好きだからこそ幸せになってもらいたい。
俺といるときっと不幸になる。この自分でも得体の知れない存在である俺といると。
「そう・・・私フラれたってことね・・・」
俺は心の中でさや先輩に謝った。初河崎さんならさや先輩を幸せに出来る・・・はず。
「じゃあ俺はこ・・・」
俺の体が傾いた。無理したのが祟ったらしい。あ、駄目だ・・・体に力が入らない・・・
「グッ・・・」
しかしさや先輩がすんでの所で俺を抱きかかえた。
「だ、大丈夫!?」
「う・・・」
意識が飛ぶ・・・そんな感じ。
俺はさや先輩に抱かれながら目を閉じた。
その頃同じような時間帯で・・・
「お前、橘か?」
「あん?」
橘俊哉は橘本家から自分の家に戻る途中だった。
そんな俺は何者かに話しかけられたので振り返る。
「お、お前・・・」
「久しぶりだな。元気にしてタカ?ヒャハッ!違いねえ!」
相手のことは知っている。名は外村弘毅。俺達と昔やりあった不良だ。
こいつはカイと因縁がある。なぜなら俺達は家柄の影響で捕まらなかったが、こいつは捕まった。
多分ここにいるのだから出所したのだろう。
「お前、何しに来たんだ?」
俺は語気を強くした。相手は集団で俺は1人だが負ける気はしない。
「へへっ・・・お前ら不良辞めて高校ライフ満喫してんだって?ハハハ!!ふざけんじゃねえよ!!」
外村がいきなりキレた。
「俺は絶対お前らをゆるさねえ!今日は挨拶だけだ。皇の野郎はまた別の日に挨拶してやるよ!」
そう言って外村は仲間と共に去っていった。
・・・やばいぞカイ。俺はともかくカイは人を殴ることが出来ない。というか加虐することが出来ない。
しかもあいつは俺よりもカイの事を憎んでいる。喧嘩になったら終わりだ。下手すると殺される。
俺は急いでカイの携帯に電話を掛けた。
プルルルル・・・
「ん〜・・・」
プルルルル・・・
「ん〜・・何よもう・・・」
皇マイは電話の鳴る音で強制的に起床させられた。
「ん?何よこの音。」
プルルルル・・・
発信源を探すが眠いためによく見当たらない。
結局途中で切れてしまったのでマイは再び睡眠に入った。
「駄目だ・・・繋がらない・・・もう何かあったんじゃ・・・」
俊哉は不安になってカイの家まで行くことにした。
俺は何も無い空間にまた1人立っていた。
「どこだここ?」
前を見ても後を見ても周りを見渡しても、黒一色の何も無い空間だった。
「おい。誰かいるか?」
俺は何かの気配を感じて叫んでみる。何せ手足が上手く動かないのでどうすればいいのか分からない。
「誰もいないのか?」
「ようこそ。」
「え!?」
俺は前から誰かの声がした。
なので前方を見るが何も見えない。
「おっと、この姿にしよう。」
そうして黒い闇から一人の男が現れた。真っ赤な髪の毛に俺の顔。・・・昔の俺だ。
「な、何で昔の俺!?」
俺は混乱してその昔の俺っぽい男に話しかけた。
「ああ・・・そういえばこれでは分からんな・・・ならこれならどうかな?」
そう言って男の体格や顔、服装までも変わった。
しかし俺はその男の容貌に見覚えがあった。特徴としてあの禍々しい刻印。
「アンタ・・・まさか武満か?」
「そうだ。お前も見ただろう。親友に裏切られて恋人を殺された憐れな男、武満だ。」
俺はその事実に驚愕した。しかしこれは夢かもしれない。
「おっと・・・夢かもしれないとな?」
「!!」
何故か俺の考えが読まれた。一体どういうことだ?
「どういうことか?説明してやろう。」
また考えを読んだ武満が俺に話を始めた。
「江戸時代・・・お前らがそう読んでいる時代に俺は生まれた。俺はその土地の領主の息子だった。ようするに俺は将来的にその土地の領主となる男だったわけだ。」
「本当にそんな人物いるのか?」
俺は半信半疑に訊いてみた。
「皇幸成のことを知っているはずだ。そいつがお前らの先祖だというのは分かるな?」
俺は頷いた。皇幸成のことは昔父親から聞いたことがある。
「お前はそいつのやったことを俺の記憶として見たはずだ。」
「記憶・・・?」
「ああ。お前が夢で見たことは全部俺の記憶。その証拠に俺視点の夢だったはずだ。」
確かに・・・かなりリアルな夢だったからおかしいとは思っていたが、記憶だったとは・・・
「お前はもう死んだのか?」
「ああ。今は思念体としてお前の体内にいるんだ。」
そういうことか・・・こいつの思念が俺の中に宿っていたのか。
「じゃあお前は何で俺の中に潜んでいるんだ?」
「それは・・・チッ・・・またあいつか・・・」
そう舌打ちして武満は消えていった。
「おい!まだ訊きたいことが・・・」
俺はそこで目が覚めるのだろう。・・・俺の意識が表に出る感じがした。
「う・・・」
気がつくと見たことがある部屋にいた。
「ここは・・・」
「気がついた?」
さや先輩が俺に話し掛けてきた。
「あ、えーと・・・俺は一体・・・?」
記憶が多少おかしい・・・なんか俺今まで別世界にいたみたいだったがよく分からない・・・
「突然倒れたの・・・は覚えてる?」
「え?ああはい。」
確か俺はさや先輩に告白されて・・・うう・・・恥ずかしいな。だが俺は断ってその後・・・倒れたんだったな。
「セバスチャンがちゃんと見てくれたの。」
「あ、そうなんですか。」
セバスチャンさんには迷惑を掛けてしまった。
「ところで、この薬は何?」
急にさや先輩の目が鋭くなった。
「え?ただの風邪薬・・・」
俺はそう姉さんに言われたのでそのまま答えた。
「・・・それ、精神安定剤よ。」
「ええ!?」
「セバスチャンが調べたわ。」
何と俺が服用していたのは風邪薬ではなく精神安定剤だったらしい。でも一体なんで隠していたんだ?
「えーと・・・なんで姉さんが隠していたのか・・・さっぱりなんですけど。」
「本人に聞いてみたら?」
ガチャッ
突然セバスチャンが入ってきた。
「どうしたのかしら?」
さや先輩がもちろん聞く。
「ええと・・・皇マイと言う方がお見えになられたのですが・・・」
「さすがは皇家ね。すぐにカイの場所を突き止めたわ。まあいいわ。カイ、手間が省けたわね。」
さや先輩は挑戦的な口調で言う。姉さんと相性悪いのかな?
「あ、はい。」
俺はさや先輩に返事した。
「セバスチャン、応接室へ通して。」
「かしこまりました。」
セバスチャンはそう言って退室した。
「カイ、あなたは病み上がりなんだから無理しないでね。」
そう言われてカイはさや先輩に肩を貸された。
「あ、いや・・・えーと・・・」
俺がしどろもどろになっている間に俺はさや先輩に肩を貸されて歩かされた。
そして応接間へと入った。
「カイ!大丈夫?怪我は無い?」
入室早々姉さんが俺に早口でまくし立てた。
「大丈夫だよ。それにちゃんと挨拶してよ。」
「すみません。無礼な真似でした、蓮見さやさん。私は皇家の次期当主、皇マイです。」
そう深くお辞儀した姉さん。
「蓮見家次期当主、蓮見さやです。」
そしてさや先輩もお辞儀をした。
「それでどういったご用件でしょうか?」
両者共に椅子に座るとすぐに本題に入った。
「弟のカイがこちらで世話になっていると思いまして。」
「そうですか。皇家の力は恐ろしいですね。」
さや先輩はクスリと笑って姉さんは真剣だった。
何かこの空気は変。日常じゃないみたいだ。
「カイはどうしてしまったのでしょうか?」
「私との会話の途中で倒れてしまったのでここに運び込んだのです。」
さや先輩も姉さんも感情が篭っていない・・・いや、読ませようとしないのか。
「そうですか。それはありがとうございます。」
姉さんがちらりとこちらに視線をやったが、すぐに離してさや先輩を見つめた。
「それでこの精神安定剤は何でしょうか?」
さや先輩がそう言った途端に姉さんの顔が強張った。
「そう・・・仕方ないわね。」
姉さんはやれやれといった感じで答えた。
「カイはね、多重人格障害者よ。」
その言葉に室内が静まり返った。
「あの、姉さん・・・それって・・・」
俺は姉さんに確認を取った。
「カイも薄々気づいていると思うけれど。」
「まあ確かに・・・」
俺は時々自分じゃない何かに体を乗っ取られる感覚に陥るから、その答えは信憑性があった。
「隠していた理由は世間の目というのが一番大きいの・・・」
どうやら俺の存在は皇家にやはり迷惑がかかるらしい。
「でも勘違いしないでね。迷惑だとは思っていないの。ただそうしないと周りが、ね。」
姉さんが顔を伏せる。
確かに優しい姉さんは俺を突き放すことは決してしない。
俺は姉さんを信じることにした。
「分かりました姉さん。で、俺のもう1人の人格って?」
「・・・今それを調査しているの・・・」
「・・・」
周りがまたシン・・・とする
「まあいいわ。そっちはそっちで対処はするから。」
「あ、そうなんだ。」
俺は姉さんの発言にとりあえず安心した。
「じゃあさや先輩、俺はこれで。」
「気をつけて帰るのよ。それとマイさん、今日は有難うございます。」
さや先輩が礼儀正しくお辞儀する。そして姉さんもお辞儀を返す。
・・・こう言っては難だがなかなか面白い・・・実に、面白い。
こうして外に出ると車が一台停まっていた。
「ん?」
俺は訝しげにその車を見たが中から出てきたのは委員長だった。
「い、委員長?」
「あ、夕陽。ウチまでお願い。」
「分かりました。」
そうして委員長が車を運転・・・ってちょっと待てーい!!
「何で車運転してるの!?」
免許は18歳からのはずだ。まさか無免許運転!?
「私もう22歳ですよ。」
「え!?」
なんか今すごいことカミングアウトされたような・・・
こうして俺達は家に帰った。
「セバスチャン。」
「何でしょうか?」
カイ達が帰った後、さやはセバスチャンを呼んだ。
「カイに何か言ったでしょう?」
「・・・どういうことですかな?」
「そう・・・」
さやは少し俯いた。そしてセバスチャンを下がらせた。
「ねえ・・・私、運命に反抗していいのかな?」
最後に1人そう呟いたが誰も聞いている人はいなかった。
運命に翻弄される2人の男女、しかしまだこれが序章であることを2人は知らない。
シリアスです。
もうコメディと言っていいレベルじゃありません。
ほのぼのともしていないし。