第30話 姉弟は生徒会
仮題は「姉は弟を守るもの、弟は姉を敬うもの」
〜あらすじ〜
文化祭2日目にさや先輩と事故でキスしてしまった俺。
そんな俺に突然の訪問者が・・・
その訪問者は、俺の姉さんだった。
幼い頃の俺はあんまり積極的でなく、いつも姉さんの後ろをついて回っていた。
そんなことを考えていると目の前に泣いている俺が現れた。
俺っていってもまだ小さい・・・3歳ぐらいの俺だ。
これは夢なんだな・・・と改めて実感する。
そうすると公園で泣いていたのところに一人の少女が、姉さんだ。
小さい俺は小さい姉さんに抱きしめられて頭を撫でられていた。
このときから一人は嫌いだったのかもしれない。
小さい俺はひとしきり泣くと、小さい姉さんに抱きついてそのまま眠ってしまっていた。
小さい俺は全然積極的じゃなかったから友達もいなかった。
そんな小さい俺はこのとき姉さんだけだった。
両親はあまり家に帰ってこないからこのとき顔すら覚えているかどうか。
だからいつも家事をしてくれているのは家政婦さんであり、傍にいてくれるのは姉さんだった。
そしてグニャリと視界が歪んだ。
場面が変わったようだ。
今度は夕方の公園だ。確かここは俺とはなびの約束の公園。
小さいは俺・・・多分5歳ぐらいの俺は泣いていなかったが一人ぼっちだった。
とても寂しそうだったが姉さんが来る気配は無かった。
えーと・・・誰が来るんだっだっけかな・・・?
ああ。確かこれは俺とはなびの出会いだった!
小さい俺が一人ブランコに揺られていると、一人の少女がやって来た。
「アンタ、一人?」
最初から遠慮が無かったんだなコイツ。
「うん・・・」
小さい俺は俯きながら俯いた。
「寂しくないの?」
このときから俺のことを妙に構ってきたな。
「うん・・・」
また俯きながら答える小さい俺。ていうか俺って素直じゃないな。
「・・・じゃあどうしてそんな顔してるの?」
俺はいつのまにか泣きそうな顔をしていた。
えーと確か・・・・そうそう、この時の俺は一人ぼっちよりもはなびの方が怖かったんだっけ?こんなにいっぱい話しかけられて怖かったんだよな・・・
「・・・・」
小さい俺はさらに下を向いた。
「行きましょ。」
「え?」
小さいはなびが小さい俺に手を差し伸べた。
「私は一人は嫌。だから友達になろうよ。」
はなびはこのとき結構素直だな・・・なんで今は・・・おっとそんなこと言っている場合じゃない。
「・・・・・」
小さい俺は何も言わない。ここまで自分が消極的だったなんて驚きだ。
「行きましょ。」
そういって小さいはなびは小さい俺の手を掴んで小さい俺を引っ張りあげた。
「わ。わわっ!」
思わず悲鳴を上げる小さい俺。
「ほら!こっち!」
はなびは小さい俺の手を引っ張りながら砂場の方に向かった。
小さい俺はかなり混乱してそうだった。
そして砂場についてどっかりと腰をおろす小さいはなび。
「はい。」
小さいはなびは自分の隣をバンバンと小さい俺に向かって叩いていた。
ここに座れ。ってことだろう。
「う、うん・・・」
小さい俺はおずおずと隣に座った。
「じゃあお城作ろう?」
そう言って小さいはなびと小さい俺は城を製作し始めた。
まあ所詮は幼稚園児の作るもの、あんまり出来はよくなかった。はなびも元々器用じゃないし。
「はい、完成!」
パチパチパチ・・・
小さいはなびは完成したお城を見ながら拍手をした。
「アンタは?」
「あ、うん。」
パチパチパチ・・・
小さい俺も続いて拍手した。
「じゃあアンタ可愛いからお姫様ね。」
「な、何でだよ〜。」
小さい俺は初めて小さいはなびにまともな会話をした。
「僕、男だよ〜。」
「え〜信じられない〜。」
この時の俺ってそんなに可愛い顔してたかな・・・?
「はなびちゃんの方が可愛いよ〜。」
「そ、そう・・・?」
小さいはなびは小さい俺の発言に恥ずかしがった。というか俺の発言まるでナンパ者だよ。
そうするとまた視界がグニャリと歪んだ。
また別の場面だ。
小さい俺と小さいはなびは一つの大きい家に来ていた。
確かこの家って・・・
ガチャ・・・
扉が開くと小さい咲がいた。確かはなびから幼馴染を紹介するって言われてここに連れて来られた。
「あ、はなびちゃん・・・えーと・・・?」
小さい咲は小さい俺の方を見て言った。元々咲はあんまり積極的じゃなかった気がする・・・
「咲おはよう。この子私の友達、カイ。」
ペコリと小さい俺は頭を下げた。
小さい咲は少し脅えている。
「大丈夫よ。カイって全然弱いから。」
弱いって何だよ小さいはなび。
「え・・・・うん。分かった・・・」
そう言って小さい俺におずおずと手を出してきた。
「私、咲。よろしくね。カイくん。」
「う、うん。よろしく咲ちゃん。」
思えば俺の初恋って咲だったんだよな・・・このときの咲の笑顔に一目ぼれしたのかも・・・
「じゃあみんなで遊ぼう!」
小さいはなびはそう小さい俺と小さい咲に言って駆け出した。俺達二人はそれについていく形になった。
昔はそうだった。俺と咲ははなびの後を付いて回った。
そしてまた視界が歪んだ。今度はどこだ?
ここはどこかの洋館だった。見覚えのある・・・というか俺の家だ。
話し声が聞こえる・・・俺と姉さんかな?
「いい?私にも紹介しなさい。」
「えーと・・・」
確かこれは姉さんが俺にはなびと咲を紹介しろ、と言っていた時だな。なんかこの時の姉さん怖かったな。
「・・・カイを世話する役目は譲れないんだから!」
・・・お前は姑か。みたいな感じだな。姉さんはこのとき俺を取られたと思い込んでいたのだろう。
「わかったよ。紹介する。」
小さい俺は姉さんにそう言った。で、結局姉さんははなびと咲と意気投合しちゃったんだよな・・・結構仲が良くて姉妹みたいだった。
そして視界がまた歪む。
が、何も出てこなかった。
「こんな記憶ばっかり見てお前はさぞ幸せだっただろう!」
俺の目の前に現れたのは真っ赤な髪をしている俺だ。
「クックック・・・お前のこの幸せはお前が壊してしまったのにな!!」
真っ赤な俺が俺に叫ぶ。
違う、違う。俺は言葉が出ない・・・何故か?それが真実だ。
「お前は救われない・・・絶対にな!!アーハッハッハッハ!!!!」
そう言われて俺は突然息苦しく感じた。なんでだ・・・!!
俺はそのまま意識を飛ばした。
息苦しさを感じて俺は起きた。
なんか妙に熱い・・・まるで俺に何かがまきついているよう・・・息苦しさの原因はこれか。
俺は原因を突き止めようとした。
何か夏合宿を思い出した。あの時ははなびだったが・・・今回は・・・姉さん!?
そういえば昨日なんか姉さんが来てたんだ。そしてそのままここに泊まった・・・
<昨日の回想>
「何でここにいるんだよ・・・」
俺は声が震えていた。
「・・・だってここあなたの部屋でしょ?家族なら別に入っても大丈夫でしょ?」
「俺とあなたはもう家族じゃない!」
「でも血の繋がりは消えないわ。」
俺は勘当されて独り暮らしをしているため姉さんとはもう家族じゃない。
「どうして・・・来たんですか?俺、あなたを傷つけました。あなたも傷ついた顔をしていました・・・」
俺は声を振り絞った。
「う〜ん・・・傷が治ったからかな?」
姉さんはなぜか明るかった。しかも軽く冗談も言いやがる。
「な・・・」
俺はそんな態度に驚きじゃ済まされなかった。
「ま、いいじゃない。こうして再会出来たんだから。」
姉さんはそう言って俺の部屋を漁り始める。
「へえ・・・意外と綺麗ね・・・」
さや先輩と同じことを言う姉さん。俺は未だに硬直が解けなかった。
「じゃあ私寝たいんだけど、ベッド一つしかなさそうだからこれ使うわね。」
「ってここに泊まるのかよ!」
やっと硬直から解けた俺は姉さんにツッコむ。
「そうだけど何かマズイ?あ!カイも同じベッドで寝ればいいから大丈夫大丈夫。」
「ああ。それは助かる・・・ってそうじゃなくて!他に泊まる場所無いの!?」
俺って実の姉にもつっこまないといけないなんて思わなかったよ。
「へえ・・・意外とツッコミにキレがあるのね。」
「ありがとう・・・じゃなくてだな・・・!」
どうして俺はこんなにノリがいいんだよ。ノリがよすぎると自分の身が破滅することがあるよ!?(作者体験談)
「せっかく無料で泊まれる場所があるんだからそこを使わなきゃ損でしょ?」
「無料って・・・ここか!」
もう姉さんがここに泊まるのは確定だ・・・俺は諦めることにした。
「わかったよ・・・でも俺は狭いから床で寝る。タオルケットでもかけるから。」
俺は床で寝ることにする・・・が、姉さんに袖を掴まれた。
「駄目よ。部屋の持ち主にそんなこと出来ないわ・・・」
「じゃあ姉さ・・・・あなたが床に寝ますか?」
俺は慌てて言いなおした。別にいいのだが・・・俺のプライドが・・・
「別に言い直さなくていいのに。姉さんって昔みたいに呼んでよ。」
「呼ぶ代わりにここから出て行ってくれますか?」
「さ、寝よう。」
都合よく姉さんはここに居座ることにした。
「姉を床で寝させる弟は最低よ。」
そう言って姉さんは俺のベッドで寝始めた。
「ねえ何で早く寝ないの?」
「俺、今帰ってきたばっかり。シャワー浴びないと。しかもまだ9時ですよ!!」
俺はまだ寝る時間じゃないことを姉さんに告げる。
「よい子は9時に寝るものよ。」
俺は小学生か。確かに小学生の頃は馬鹿みたいにそんな規則を守っていたな・・・
「はぁ・・・先に寝ててください・・・」
「じゃあ待ってる。」
俺はもうどうでもよくなった。そしてシャワーを浴びることにした。
シャワーを浴び終わって部屋に戻ると姉さんは勝手にテレビをつけて見ていた。電気代使うんだよ!あんまり見ないでくれ!
「あ、終わったの?」
「あ!」
俺はいつもの癖でパンツ一丁だった。姉さんがいることすっかり忘れていた!
「へえ・・・いつも出るときパンツ一丁なんだ・・・」
「うわあ!」
俺は急いで着替えに行った。
そして、11時になったので俺達は寝ることにした。
一緒のベッドで。
「やっぱり狭いですよね・・・」
「う〜ん・・・こうしよう!!」
そういって姉さんは俺に抱きついて俺を引き寄せてきた。
「うわ!何するん〜〜〜〜〜!!」
俺は思い切り締められた。く、苦しい・・・・・・
「久しぶりのぬくもり〜〜〜〜!」
「ん〜〜〜〜〜〜!!」
このままだと俺眠りは眠りでも永眠するよ・・・俺の意識はそこでブラックアウトしましたとさ・・・ちゃんちゃん。
<回想終了>
って俺昨日死に掛けたのか!無事に明日を迎えられて本当によかった・・・
「あれ?あ、カイちゃんおはよ〜!」
何故ちゃん付け?
「あれ〜まだ6時だよ〜?」
寝ぼけているのか、いつもより可愛いじゃねえか・・・
「あ!朝ごはん!・・・作って?」
こいつは根っからのお嬢様だ。ご飯なんて作れるわけ無いか。
「今失礼なこと考えてたでしょ?」
「いや、全然。」
俺は嘘をつくことにした。
「そう・・・じゃあ私寝るから。出来たら呼んで〜。」
そう言ってまた寝始めた。・・・寝すぎだろ。
それは兎も角俺は俺は朝飯を作ることにした・・・
「うわ〜おいしい。」
「お世辞はいいよ。」
俺は姉さんに料理を褒められた。・・・まずい!はなびのこと忘れてた!!
「ゴメン!俺ちょっと朝用事があるんだ!」
そう言って俺は家を出ることにした。
後でなんでなんで?とか言っていたような気がするが気にしないことにした。
その後俺は速攻ではなびを起こして速攻で朝食を食べて速攻で登校した。
「はぁはぁ・・・アンタが私を起こし遅れるなんて珍しいじゃない・・・」
「まあ俺もいろいろあって・・・」
はなびは体調不良だと思ってくれたらしく、これ以上聞いてこなかった。
「じゃ、行こうぜ。」
何とか遅刻を免れて俺達は教室に入っていつもの日常に戻った。
まだ俺はこのとき気付かない振りをしていたのかもしれない。
自分の運命に。
そろそろ核心に迫ろうか、という感じです。
咲の叫び
「私最近出番無くない!?」
カイ「上の方のセリフは流しましょう」
咲「流すな」
カイ「うおっ!」
咲「次回予告。次回はまだマイさんのお話です」
カイ「ええっ!姉さんが学校に!?」
咲「カイのシスコンっぷりにも注目です」