第20話 歩き続ける生徒会
仮タイトルは「一番輝く光、そして大切なもの」
第1部最終話です。50000アクセス有難うございます。
〜あらすじ〜
夏合宿はとうとう七日目に。
俺達はそこでまた一つ大切なものを確認する。
楽しかった日々は早く過ぎ去ってとうとう合宿の最終日前日を迎えた。
思えばこの7日間俺達はいろんなことをした。
定番のすいか割りやビーチバレー。
肝試しをしたり町に出たりもした。
しかし何より一番楽しかったのはみんなと一緒にいたことだ。
この夏合宿は俺にとって決して忘れることのない思い出になるだろう。俺はそれを確信した。
今日もいつもどおり俺は早起きをした。はなびの事件以来俺は寝るときに気を使っている。
また同じことを繰り返すのは勘弁願いたいからな。
そうして下に降りるともうさや先輩とまや先輩がいた。
「あ、おはようございます。」
「おはよう。カイ。」
「おはよう。相変わらず早いのね。」
俺は二人に挨拶を済ませると席に着いた。まだ朝食まで時間がある。
「ねえカイ。この合宿はどうだった?」
さや先輩は俺にそう訊いた。
「とても楽しかったです。また来年も来たいですね。」
俺は正直な感想を述べた。
「そうね。でも私は来年もう卒業だしね・・・」
さや先輩は少し寂しそうな顔をする。
「いいえ、卒業したとしても俺達の絆は消えません。だからまた行きましょう。」
少しクサイ台詞を言ってしまった・・・恥ずかしい。
「ふふ。そうね。その通りよカイ。」
さや先輩は嬉しそうに微笑んだ。
「ふふふ。あなた達のやり取りを見てると微笑ましいわね。」
まや先輩に言われてしまった。そういえばずっと俺たちのやり取り見てたんだな。
「あなた達何に見られていると思う?」
「へ?」
俺は情けない声を出した。
「姉さん。カイを虐めていいのは私の特権よ。姉さんはカズ先輩でしょ?」
「な、何でカズなのよ・・・」
さや先輩がまや先輩に言うとまや先輩は何故か慌て始めた。
「どうしたんですか?」
「何でもないわよ!」
俺はまや先輩に怒られた。まあ本当は怒っていないのだが、俺はそれに気づかない。
「ふふふ・・・カイは私と姉弟?恋人?どう見られたいかな?」
さや先輩は俺にそう訊いてきた。何かきわどい質問だな・・・
「俺は・・・恋人ですかね。」
「へ?」
何故かさや先輩が呆けた顔をしていた。
「姉はもう足りていますし・・・」
俺はもう何年か会っていない姉のことを思い浮かべた。彼女も俺に傷つけられた一人だ。多分俺のことを許せないだろう・・・
「何だ・・・そういう意味ね・・・」
さや先輩はぼそっと呟いた。そして俺の方を向いた。
「どうしたの?」
「いや・・・何でもありませんよ。」
どうやら姉さんのことを考えて難しい顔をしていたのだろう。
「そう・・・」
そこで話は打ち切られた。
するとそこへ「ふぁ〜あ・・・」とあくびしながらカズ先輩がやって来た。
「遅い!!」
ゲシッとカズ先輩のスネをまや先輩が蹴った。
「痛い!!」
カズ先輩が悶えた。しかし眠気は完全に取れたであろう。
「さや先輩・・・あの二人仲悪いんですか?」
俺は訊いてみた。
「はぁ・・・あなたの目は節穴ね。」
何故か相当呆れられた。そんなに仲がいいようには見えないのだが・・・
そしてこうしているうちにみんながやってきた。もちろんラストははなびだ。
朝食を食べ終わり、みんな思い思いのことをしていた。
レイは読書をずっと。はなびとナナちゃんはまた今日もじゃれ合っている。俊哉は音楽聴きながら寝てる。
「はぁ・・・」
俺はついため息を吐いた。
「おや?カイ先輩がため息ですか〜。珍しいんじゃないですか〜?」
「そうかな?」
しっかりとため息を吐いたのがばれていた。
「どうかしたのですか?」
ナナちゃんが真剣に訊いている。失礼だがナナちゃんらしくなくて変だった。
「いや・・・楽しかったことも今日と明日で終わりだな・・・と。」
俺はしみじみ感じた。別に悲観しているわけじゃない。ただ少し寂しいのだ。
「そうですね。でもいいんじゃないですか?ずっと楽しい人生なんてつまらない。でしょ?」
「そうだな・・・さや先輩にも同じことを言われたよ。」
俺はさや先輩の言葉を思い出した。今が楽しい。でもやっぱり俺は今を失うと寂しいのだ。
「ふふふ。実は私も肝試しのときに私はさや先輩にそれと同じことを言ったんです。」
どうやら肝試しでさや先輩と二人きりのときに俺と同じ質問をしたらしい。
「だからこれはさや先輩の受け売りですけどね。」
そうだったのか。
「へえ。やっぱりナナちゃんも不安か?」
俺はナナちゃんに質問した。
「さっきまでは。」
「え」
「楽しいことを失くしても楽しいことをまた見つければいいんです。その先に幸せがあるのは分かっているんですから。」
そう言っているナナちゃんはいつもより大人っぽく見えた。
「・・・凄いな。俺はそう考えることが出来なかった・・・」
俺は素直にナナちゃんに感心した。こういうところで包容力があるのではないか?と思ってしまう。
「ちょっと単純なだけですって〜。」
ナナちゃんはいつもの調子に戻った。何か安心する。
そして俺達はこのままずっとしゃべっていた。
「よう俊哉。」
「何だ?」
俺はたまたま立ち寄った海岸の断崖に俊哉を見つけたので話しかけた。
「何か今まで有難うな。」
俺は俊哉に感謝した。理由はありすぎていえない。
「何だよ急に。今更感謝なんて一体どういう風の吹き回しだ?」
俺は今気分がよかった。
「俺は今滅茶苦茶機嫌がいいんだ。だから素直に感謝されとけって。」
俺がそういうと俊哉は困った顔をしたが、すぐに笑顔になる。
「わかったよ。一生しとけ。」
俺はその後俊哉と爆笑した。
ペンションに帰るとはなびが何かを弄っていた。
「何やってるんだ?」
「ひゃわっ!!」
ずいぶんと面白い悲鳴を上げてはなびが驚いた。
「びっくりするじゃない!何よもう・・・」
「悪かったよ。で、今何やってたんだ?」
俺は話がややこしくなる前に謝っておいた。
「これよこれ。」
それは小さいオルゴールだった。どうしてそんな物を?
「ちょっと落としちゃって・・・」
何だかばつが悪そうだ。俺はそのオルゴールを受け取った。
「これ、動かないのか?」
俺はぜんまいを回してみるが全く鳴らなかった。
「うん・・・どうしよう?これ凄く高いものだったら・・・」
はなびは本当に不安そうだ。確かにこのオルゴールが何百、何千万もしたら悪夢だろう。
「まあお前の自業自得だし。」
「うう・・・」
俺がそういうと少し泣きそうになってしまった。・・・言葉選びは大切に。
俺は原因を調べることにした。・・・しかしよく分からない。もともとオルゴールの構造もろくに理解していないのだ。
というこで俺はレイに訊くことにした。彼女なら何か出来るかも・・・
「・・・」
レイはじっとオルゴールを見るだけでほかに何もしなかった。
「なあ・・・」
「このオルゴール、ねじが足りないわ。」
俺の声を遮ってレイが俺に言う。
「え?それだけ?」
「そうよ。多分落としたときに外れてしまったのよ。」
これで一件落着だ。俺ははなびの元に戻った。
「あ、ありがとう・・・」
顔を真っ赤にしながら言うはなび。こっちまで照れるだろ・・・
「じゃあもう気をつけろよ。」
俺ははなびに釘を刺しておいた。
「うん・・・ねえカイ・・・」
はなびが妙にしおらしくしていた。
「どうした?元気出せよ。」
「私ね・・・す、すすすすす・・・」
はなびが何故か言いよどんでいる。一体「す」を何回言うつもりだろう?と考えてしまうほどテンパっていた。
「すがどうしたんだ?」
「えっとす、すすすすすす、好き・・・」
はなびのテンパリ具合は尋常じゃない。
「スキー?俺達昔行ったよな。」
「あ・・・うん。」
何故か落ち込むはなび。俺と一緒にいること嫌なのかな?
「スキーか・・・懐かしいな。」
あの頃は無邪気で俺に不幸が訪れることなんて知りもしなかったし、感じもしなかった。
一体どうして今更?俺は混乱した。
「えーとその・・・とにかくアリガト!」
俺は最後に真っ赤になって感謝したはなびを微笑ましく見た。はなびはその後、レイに感謝するために書庫へといった。
俺はその後グータラに過ごしてしまった。
ああ・・・最終日は明日なのに・・・
俺は何で部屋で昼寝してしまったのだろう・・・
「よっと!」
俺はベッドから起き上がろうとした。
ズキッ
「痛っ!」
突如俺を原因不明の頭痛が襲う。一体何なんだ?
しかし頭痛が収まることはなく、俺は布団の中で苦しんだ。
「ぐぅ・・・」
頭が誰かに締め付けられている・・・そんな感じ。俺は耐え切れなくなって意識を手放した。
・・・
「はっ!」
俺は飛び起きた。確か俺は頭痛がして・・・そのまま意識を失ったような・・・
時計を見てみたがたいした時間は進んでいなかった。
「何なんだ・・・?」
俺はベッドから降りる。服が汗でべとべとしていた。
「はあ・・・着替えるか。」
俺は着替えることにした。
コンコン
「入るわよ。」
「待って!」
さや先輩が俺の返事を待たずに部屋に入ってきた。
「何だ。着替えていたの。この薬、カイ宛にだって。」
「へ?」
俺はさや先輩から謎の薬を受け取った。
「じゃあ私はこれで。妖しい薬じゃないでしょうね?」
そう言って部屋から出て行った。ていうか俺の着替え見られたよ。何とも思ってもいなかったよ・・・
そして俺は手に持っている薬を見た。誰が送ったのだろう?というか本当に胡散臭そうだ・・・
俺は包みを開けた。
するとそこには「城凪夕陽」と書いてあった。
「委員長か・・・そういえば委員長には水泳大会の件でお世話になったな。」
俺は袋の中身を取り出すと頭痛薬、と書いてあった。
プルルルル・・・
知らない番号だ・・・
「はい、もしもし。」
「カイさんですね。私は城凪夕陽です。お薬届きましたか?」
電話の相手は委員長だった。というかなんで俺の番号を知っている?
「俺の番号なんで知ってるんだ?」
「それはマコト君が教えてくれました。」
マコトって古賀のことか。あいつ委員長に無断で教えやがったな・・・
「まあそれは分かりました。」
「お薬届きましたか?」
委員長はもう一度尋ねる。
「はい。ていうかこれ何ですか?」
俺はもちろんこの質問をする。妖しい薬はマズイ。
「今少し調子悪くありませんか?」
「え?」
俺はさっきまで頭痛に襲われていた。確かに調子が悪い。
「悪くなければ良いんですけど、悪かったらこれを飲んでください。風邪薬ですよ。」
「風邪薬ですか?」
「そうです。夏に風邪を引く人は多いらしいですからね。」
俺は委員長の言葉に耳を傾けていた。
「で、体調悪いですか?」
俺は委員長は良い人そうなので正直に言う。
「少し悪い・・・さっき頭痛が・・・」
「それはいけません!すぐにお薬を飲んでください!効かなくても気分が紛れますよ。」
間髪いれずにそう言われたので俺は飲んでみることにした。
「分かった。何粒だ?」
「そうですね。一回3粒です。」
今回は前回より多かった。
「分かった。」
「じゃあ効いてきたなら私に電話ください。」
そう言って電話を切られた。俺は着信履歴から委員長の番号を引っ張り出して登録した。ふふふ・・・もうこの程度のことは朝飯前さ・・・
しかし未だに俺はワンセグとカメラは使えない。
それはともかく俺は委員長に言われたとおり3粒飲んだ。
「ん・・・?」
俺は体が楽になった気がする・・・ていうか効力早いな・・・
俺はすぐに委員長に電話した。
「もしもし、カイさん。どうしたんですか?」
「もう効いたんだけど・・・」
俺はありのままを委員長に話した。
「ずいぶん早いですね。まあこの薬の効力は個人差がありますから。」
「そうなのか?」
「そうですよ。効かない人もいるんですから。」
「ふうん・・・」
俺はどうやらこの薬が効く人間らしい。何か選ばれし人間みたいで少し嬉しい。
「でも薬が効いてよかったです。これからも服用してくださいね。」
「服用って・・・俺そういえば金払わなくていいのか?」
そういえば無断で薬貰っているしまずいんじゃないのか?
「お金は要りませんよ。全ての人に幸あれのボランティア精神ですから。ではこれにて。」
そう言って電話を切った委員長。優しい人だな・・・とつくづく思う。
その後一気に元気になった俺はみんなと海に再び行った。サーフボードに乗ったり遠泳をしたりなど、存分に動き回った。
「ふう・・・」
俺は疲れ果ててペンションに戻ってきた。
「ずいぶん疲れてるな。」
俊哉に話しかけられた。
「そりゃそうだ。何しろいつもの倍ぐらい動いていたからな。」
俺ははっちゃけすぎてしまった。
「先にシャワー浴びてきなさい。」
さや先輩に従って俺はシャワーを浴びに自室に戻った。
夕食を食べ終わって俺達はキャンプファイアーをした。
最後の夜ということなのか、みんな静かだ。
「ねえみんな、楽しかった?」
さや先輩が俺達に言った。
「ああ。」
「そうです。」
「もちろんです!」
「悪くはないわ・・・」
「そうだな。」
俺達はみんな楽しかったらしい。
「ふふふ。ありがとう。結構不安だったのよ?楽しくなかったら私のせいだし。」
さや先輩は言葉と裏腹に笑っている。
「私も楽しかったわよ。みんなと一緒にいれて。」
「・・・・」
俺達はさや先輩の言葉を黙って聞いた。
「だからさ、最後の夜なんだからみんなもっと盛り上がろうよ!!」
『おお!!!』
俺達はみんなで叫んだ。・・・レイはどうか知らないが、レイも楽しそうだった。
夜の闇の中のひとつの光、その周りに俺達はいた。
その光はキャンプファイアーの火なのだろうか。
いや、火が消えても光は消えない。
俺達の光はさや先輩・・・そして生徒会なのだろう。
俺達の光は消えない、何があってもこの光だけは守らなくてはいけない。
今度こそは必ず・・・と俺は誓う。
そして歩き続ける、俺達は。
そう、歩き続ける。
そして物語はまだ続く・・・
第1部終了です。
もちろんまだ物語は続きます。
一応第2部は2学期が舞台です。
もちろん新キャラクターも出ます。
一応謎を明らかにしようとする激動の第2部を予定しています。
皆様長らくお付き合い有難うございます。