第17話 夏合宿へ生徒会
仮タイトルは「夏だ!海だ!ナンパだ!?」
〜あらすじ〜
7月の始めに水泳大会があり、七日には七夕祭りに行った。そして今回は・・・
始まりはさや先輩の鶴の一声だった。
「夏と言えば海!」
その声に皆が口々に賛同する。
「そうですよね!海が無いと夏が始まりません!」
「うんうん。我も同意じゃ。」
はなびとナナちゃんが真っ先に賛同し、
「海ね・・・懐かしい。」
「俺も海に行くのは久しぶりだよ。」
レイと俊哉が続ける。
「ふっふっふ・・・諸君!実は私は夏合宿を計画している。」
初耳だ。生徒会に合宿なんて前例あったか?
「その夏合宿の凄い点・・・それはなんと生徒会名義にすると学校の経費で落ちるのだ!!」
「す・・凄ええ!」
俺は感嘆する。そんなリアルな問題を既にクリアしているとは。
「場所はどうするんですか?」
レイが当然のように訊く。
「私の姉さん・・・の所有物件だけれど、実は海の近くのペンションがあるのよ。」
さや先輩のお姉さんは前回の生徒会長、蓮見まやだ。俺ももちろん知っている。
「さすがですね。まや先輩には連絡したんですか?」
俺は一応確認しておく。
「ええ。姉さんも夏休みの間はそこにいるらしいわよ。」
「そうなんですか。久しぶりに会って見たいな〜。」
俺がそう呟くとはなびとナナちゃんがジト目で睨んでいた。レイは我関せずといった感じだ。
「大丈夫よ二人とも。姉さんには愛しい彼氏がいるから。」
「な〜んだ。」
ナナちゃんとはなびはそういって安心したようだ。まや先輩と何かあるのか?
「カイはびっくりするわよ。どうせ気づいていないんでしょ?姉さんの相手。」
「え?俺知ってるんですか!?」
意外だ。まさか俺の知り合いか!?俊哉か!?
「俺じゃねえよ。」
俺が聞く前に最初に断ってきた。
「まあそんなことはいいの。日程を決めたいのだけれど。どうする?」
「俺バイトの日程調べないと。まあシフト出来ればそうするけど。」
俊哉がそう言った。そういえば俺もバイトの日程調べないとな・・・
「私も。」
レイもそう言った。まあ俺と同じバイトだしな。
「私は特に予定ないし・・・」
「私もです〜。」
はなびとナナちゃんは特に予定も無いらしい。
「ちなみに私はいつでもいいわよ。社交パーティはあんまりいれたくないしね。」
さや先輩もいつでもいいらしい。一番忙しそうな人なのに。
ということで俺とレイは「オアシス・イン・デザート」に向かった。
「夏合宿だぁ〜?」
マスターは大声で俺達に言った。
「はい。だからいつ店をやっているのかいないのかを知りたいんです。」
マスターは少し考えた。
「ふ〜ん・・・基本的に7月中はずっとやる。8月は全くやらない。」
「何でですか?」
すると複雑そうな顔をして何も言わなかった。
「ズバリ女ね。」
レイが本当にズバッと言う。
「ったく・・・若い奴らはすぐそっちの方に・・・恋愛はそんな甘いもんじゃねえ。」
マスターはひげをごしごし掻きながら告げた。
「ま、俺のはどうでもいい。お前ら7月中だけバイトに来るだけでいいから。最低7日は来い。」
俺達に脅しを掛けるように言うマスター。
「わかりました。」
「はい。」
俺とレイは礼儀正しくお辞儀して制服に着替えに行った。
バイトが終了した後、俺達は夜道を歩いていた。
「何とか8月いっぱいは大丈夫だな。」
「そうね。」
いつものようにレイを送る。いくら夏とはいえもう11時近い。さすがに当たりは真っ暗だ。
「さよなら。」
「ああ。またな。」
俺はレイの家の前でさよならすると自分の家に向かって歩き出した。
ブブブブブ・・・
送信者 さや先輩
件名 夏合宿
本文
予定分かった?
メールしてね☆
俺はメールを返した。
送信先 さや先輩
件名 Re:夏合宿
本文
八月いっぱいはオールオッケー
ブブブブブ・・・
送信者 さや先輩
件名 Re:Re:夏合宿
本文
ありがと。愛してるわ。
・・・・これにどんな反応しろと。
そうして俺は家に帰った。
それから俺は7月いっぱいはレイと共にバイト三昧だった。
「これ、7番さんへ。」
俺とレイの相性も抜群になった。
そして1学期の終業式がやって来た。
「みなさん夏休みでも節度のある行動をするように。」
さや先輩の凛となる声が体育館中に響いていた。
「夏を甘く見ると風邪を引きます。十分注意してください。」
生徒達への配慮も完璧。こりゃあ人気が出るはずだ。
「最後に夏休みの宿題は最後まで溜めないように。」
うへえ・・・俺達にも言っているのだろう。はなびもピクッとなった。
「以上です。」
そう言って最後まで凛々しく壇上を降りた。
そして校長の話だ。
「それで何といいますかみんなの元気がおいらに力を。」
・・・空耳だろう。俺今眠いから。
「さてとうとう1学期が終了ね。」
俺達は生徒会室にいた。もちろん1学期最後の仕事だ。
「ん〜・・・眠い。」
「私も。」
俺とはなびは正直眠くて今にも寝そうだ。ちなみに俊哉とナナちゃんはもう寝ている。
「しょうがないわね・・・今から30分だけよ?」
そう言うとさや先輩も眠り始めた。おい、アンタも眠りたかっただけかい。
かくいう俺も睡魔によって意識を失う。
「お前だけ何でのうのうと暮らしてるんだよ!!」
見るからに不良のこの男が俺に叫ぶ。
「お前は絶対に許さねえ!」
そういって男は俺の前から消えた。その男の顔は確か・・・
そこで俺は目を開けた。・・・何の夢を見ていたんだろう・・・
俺が起き上がるとレイ以外みんなまだ寝ていた。レイは読書をしていた。
「寝ないの?」
「眠くないから。」
レイは特にこちらへと目は向けずに本から視線を離さなかった。
「何読んでいるの?」
「完全他殺マニュアル。」
「え!?」
何か物騒なもの読んでますよ!犯罪者予備軍がここにいますよ!
「冗談よ。」
当たり前か。
「じゃあ何?」
「エッチなのだったらどうする?」
「そんなわけないだろ。」
俺はもうレイの冗談に慣れた。掛かってこいや!
「はい。」
そう言って本の中身を見せてきた。
俺はそれを見ると裸の男達が抱き合っている光景を見つけた。
「うわああああ!!!」
俺は急いで本を閉じた。
「何でそんな本を!!」
そう追求するとレイはクスリと笑った。え?冗談?手が込んでるね。
「この本は私のじゃなくてナナちゃんの。」
「あ、そうか・・・」
ていうかナナちゃん。俺にはやはり君を理解できないよ。
「う〜ん・・・」
みんなが起き始めた。俺達は急いで仕事に戻った。ナナちゃんは机においてあったさっきのBL本を手にとって急いで鞄の中にしまった。
「そうそう。合宿は8月1日から8日までになったから。」
俺達はその日程を覚えるように頷いた。
「じゃあ1学期最後だから頑張りましょう!」
『おう!!』
俺達は会長の呼びかけに元気よく応じた。今日が1学期最後・・・
そうしてバイトと宿題の両立をして7月を過ごした。
7月31日。とうとう合宿の前日になった。
「お前ら明日行くんだろ?今日は早めに上がらせてやる。」
マスターがそう言った。
「「ありがとうございます。」」
俺達はマスターの好意に感謝した。
「お前ら本当に付き合っていないのか?」
何故か俺達の関係を怪しむ。
「そんなわけないでしょ!」
俺がまず否定する。そして顔をレイに向けてお前もやれと言う風に顎を向ける。
「そうですよ。彼の片思いですよ。」
「だから何でだ〜〜〜!!」
俺はいつもこうレイに言われる。確かにレイは綺麗な人だと思う。でもそれと好きは別だ、と俺は割り切っている。
「レイちゃんはいつも冗談ばっかりだよね。」
「ふふ。」
「まあいいか・・・」
何故かレイと俺を見て溜息をつくマスター。
「じゃあ楽しんで来いよ!」
「はい。」
俺とレイは同時に返事した。マスターにも後押しされて合宿という名の旅行を楽しみにした。
さて家に戻ってみると・・・特に何も無かった。
期待させてすみません。こういう時なんかあると思ったんです。
すると・・・
ピンポーン
「はい!!」
一体こんな時間にだれだよ。俺は扉を開けた。(今の時代この行為は危険です)
ガチャッ
「やあ私のカイ。」
俺は扉を閉めようとした。
「まあ待つんだマイラバー。」
真里菜先生が扉に手を挟んで閉めるのを防いだ。俺は別に本気で閉めようとしていないので一応訊いた。
「何しに来たんですか?こんな時間に来るなんて非常識です。」
「まあまあ家にいると家族が五月蝿いんだ。」
そう言われて俺は真里菜先生の手に大量のビール缶が入っているスーパーの袋が握られていた。
「・・・まさか・・・」
「早速お邪魔するぞ!」
そう有無を言わずに俺の部屋に上がりこんできた。
「ちょっ!俺明日早いの!それに生徒の家に上がりこんでいいのか!?」
「お前の予定は知らん。それに私達は男同士だ。戸籍上はな。だから問題は無い。」
こういうとき自分が男であることを利用しやがった・・・俺の貞操の危機が迫っているんじゃ・・・
「早速飲むか〜!!」
そう言ってもう一本目に口をつけていた。
ああ!俺の明日はどうなるんだ〜!!
そして深夜2時ごろ・・・
「お前も飲めよ〜!」
「俺未成年だから!」
この人は絡み癖があるのかよ・・・どうりで家から追い出されるはずだ。
「じゃあ襲うぞ?」
目が据わっています。怖いです。そして俺はある一つの覚悟を決めた。
「わかりました。少し待っていてください。」
俺はそう言って自分の明日の荷物を持って玄関から外に出た。ようするに逃げました。
俺は俊哉に電話した・・・しかしつながらない。
もう一度・・・
「何だ?もう遅いぞ。」
何とか繋がったようだ。俊哉は起こされて少し不機嫌のようだ。
「すまん!今日だけ泊めさせてくれ!」
「はあ?」俊哉は頭が上手く働かないらしい。
「詳しいことは後で話すから!」
「分かったよ。鍵開けとく。」
プツッ
そう言って電話を切られた。なんだかんだ言っても俊哉は優しかった。
俺は俊哉の家に入った。俊哉がもちろん理由を聞いてきたので正直に答えた。
「それはまあ・・・災難だったな・・・」
俊哉は苦笑する。
「迷惑掛けてすまん。」
「まあいいけどな。適当に布団引っ張り出してそこらへんで寝とけ。」
「ああ。」
俊哉に言われたとおり本当に適当に布団を出してそこらへんで寝ることにした。
「オイ、起きろカイ!」
俊哉の声で目が覚めた俺、結局睡眠不足だ。
「お前いったん家に帰った方がいいんじゃないか?」
「確かに。」
俺は俊哉に言われたとおりに家に戻った。
そこは惨状だった。真里菜先生はそこらへんにぶっ倒れて、ビールの空き缶がそこらじゅうに散らばっている。しかもまだビールが残っている。
「・・・」
俺は言葉を失って律儀に片付けることにした。
しかしあまりにも量が多く、結構時間ぎりぎりになってしまった。
「やば!」
俺は真里菜先生を玄関から外に出した。真里菜先生はアパートの外でぶっ倒れている格好になる。酷い気がするが今の俺の心は鬼だったので特に気にしなかった。
俺は部屋に鍵を掛けて待ち合わせ場所の光芒町駅まで急いだ。
「間に合った!!」
俺は一番遅かったが何とか間に合った。
「・・・事情は聞いているから釈明しなくていいわよ。」
俺はたった今事情を説明しようとしていたところだ。それを先読みで防がれた。
「じゃあ行きましょう?夏合宿へ!!」
さや先輩の声にみんなで「おー!!」と言って歩き出した。
俺達の夏合宿が始まった。
そう、始まった。
もうすぐ第1部完結です。多分。
さや「次回予告」
はなび「夏合宿が始まって」
さや「舟を漕いで」
はなび「海で遊んで……」
さや「転覆して……」
はなび「バーベキューして」
さや「全員死亡」
はなび「ええ!?」