第11話 携帯電話と生徒会
仮タイトルは「君の小鳥になりたい」
20000アクセス突破しました。
皆様有難うございます。
今日はさや先輩との約束の日だ。
とは言っても球技大会で勝ったのは俺なので、俺がさや先輩に奢られる日だ。
朝から気分が軽い。何でだ?・・・・・そうか!今日一日食費の心配しなくていいんだ!
俺はあまりにも嬉しくて家の中でスキップし始めた。
ルッルッル〜ン♪
自然と鼻歌を口ずさんでしまう。
おっとあまり浮かれていると大変だな・・・そろそろ引き締めるか。
俺は家の中で精神統一した。
それから数分後・・・
「よし行くか!」
俺は気合をいれて待ち合わせ場所へと急いだ。
「やばい・・・ずいぶんと早く来たな・・・」
俺は待ち合わせの1時間ぐらい早く来てしまった。
仕方ないのでその辺をぶらつくことにする。
「あれ〜。カイじゃない。」
「瀬川先輩おこんにちわ。」
俺に話しかけたのは何人かの友達と一緒にいた瀬川先輩だった。
「どうしたの?まさかデート!?」
瀬川先輩もそんなことを言う。
「違いますよ。さや先輩と待ち合わせしているんです。」
「だからそれがデートよ。やるわねカイ。」
「いや・・だから・・・」
この人に何を言っても駄目だろう。どうせからかわれるだけだ。
その瀬川先輩は「だから私たちと一緒に来なかったんだ・・・」と呟いていたが聞こえなかった。
瀬川先輩と暇つぶしとして話した後、俺は瀬川先輩達と別れて再び待つことにした。
しかし待ち合わせの時間になっても一向に来ない。
さすがに俺は不安だったが連絡する手段も持っていないし連絡先の番号も知らない。
なので俺は公衆電話でタウンページを見て電話をかけた。
プルルルル・・・
しかし反応しなかった。俺の不安が最高潮に達したとき、俺の肩が叩かれた。
「ん?」
そこには遅刻してしまって恥ずかしいのか、頬を少し紅くしていたさや先輩がいた。
「ごめんね、待たせて。ちょっと着替えに手間取ってて・・・」
さや先輩は本当に申し訳なさそうな顔をしていたので俺は笑顔で許した。
そしてさっそく俺達は出発することにした。俺はその間に食費が浮くことを考えていて気分が軽かった。
「ここ?」
「そうよ。おしゃれでしょ?」
「はい。」
俺達が入った店は洒落たイタリア料理屋だった。周りを見るとカップルしかいない。
「何か・・・」
「カップルみたい?」
さや先輩が俺に微笑みかけた。俺は恥ずかしさでメニューで顔を隠した。
「ご注文は?」
店員さんがやってきたので俺とさや先輩はメニューを指しながら頼んだ。
何か難しそうな名前がいっぱいあったので俺は無難にカルボナーラを頼んだ。しかしさや先輩はサラダだけしか頼まなかった。
「え?何でですか?」
「あまりお腹すいていないから。」
さや先輩は複雑そうに微笑む。ダイエットでもしているのだろうか・・・なら追及しないほうがいいな。昔はなびに追及して殴られたし。
「そうですか。」
その後俺達はいろいろと雑談をして食事が来たらそれを食べた。
「おいしかったです。ご馳走様。」
「ふふ・・・良かった。」
さや先輩は心底安堵していた感じだ。俺の口に合うのか心配だったのだろう。
店を出て俺はこれからの予定を聞いてみた。
「そうね・・・夕方まで時間あるから映画館にでも行きましょう。」
「はい。」
そして映画館に着いた。俺たちが見るのは恋愛物だ。一応カップルだしな・・・
さすがに映画館のチケット代は奢らせなかった。男としてのプライドだ。本当はさや先輩の分も奢りたかったのだが、俺の生活費について考えると出来ないのが現実だった。貧乏っていやだな。
俺達は席に着いてその映画を見た。その映画はファンタジーも含まれている奴で、恋人を失った主人公が恋人を死霊として蘇らせる物だ。二人の悲しい恋愛に全米が泣いたらしい。
そしてラストのエンディングでさすがの俺も結局涙を流してしまった。さや先輩を見ると何故か寝ていた。
「起きてくださいよ。何で寝ているんですか?」
「んん・・・はっ!しまった!」
さや先輩がものすごく不審そうに起き上がった。一体どうしたんだ?
「何で寝ているんですか?」
「あ・・・それは・・・ああそう寝不足でね。」
「・・・・・」
「本当だって!」
そんな嘘つかなくてもいいのに。そんなにつまらなかっただろうか・・・
「まあいいですよ。次はどうするんですか?」
「次は・・あ!」
さや先輩が突然立ち上がったときにふらついてしまったので俺があわてて抱きとめる。
するとすぐに俺から抜け出して遠くに離れていった。
「あ、ありがとう。立ち眩みっていやよね。」
さや先輩の様子がおかしい・・・顔が紅いし照れているのか?
「次は・・・ちょっと公園に寄っていきましょう?」
そう言うとすぐに公園に向かって歩き出した。
そして公園のベンチに腰をかけた。
「ねえちょっと。」
さや先輩が俺に話しかけた。
「何ですか?」
「紅茶買って来て。午後ティーのロイヤルミルク。」
「え!?パシリですか!?」
「お願〜い。」
さや先輩が上目遣いで頼んでくるので仕方なく買いにいくことにした。あくまで仕方なくよ!他意はないんだからねっ!とはなびは言いそうだな・・・とか考えながら探すことにした。
しかし中々自販機にはなくて結局結構遠いコンビニで買うことになった。まあ他の買うよりはマシだろう・・・とか思う。
だが待たせるのも悪いので俺は走って公園に戻ることにした。
公園まで戻ってきた。
「お待たせ。・・・!」
俺は衝撃的な光景を目の当たりにした。なんとさや先輩がベンチでぐったりと倒れていた。
「さや先輩!?」
さや先輩の息が荒い。頬も上気している。俺は会長の額に手を当てた。
「熱っ!!」
かなりの温度だった。俺は会長を病院に連れて行くことにした。
「病院は・・・駄目・・・」
「え?」
「この携帯・・・でセバス・・・チャンを呼べばいい・・から・・・」
さや先輩は最後の気力を振り絞るように俺にそう言う。しかし何故か俺は会長の顔は色っぽいなとか考えていた。・・・・何でだよ!早く電話しないと・・・
って携帯の使い方分からねえ!!俺はこれほど自分を呪ったことはなかった。
「ここのリダイヤルで・・・」
俺がモタモタしていた為に結局会長が教えていた。俺はその番号をプッシュして電話をかけた。
プルルルル・・・ガチャッ
「もしもし。お嬢様どうかなされましたかな?」
「あ、セバスチャンさん!!さや先輩が!さや先輩が!」
俺はかなりテンパっていた。
「落ち着きなされ。あなたはカイ様でございますかな?」
「はい!」
「お嬢様に何があったのかお教えください。」
そして俺はセバスチャンさんに事の顛末を教えた。そしてセバスチャンは急いで来る事になった。
「ごめんね・・・こんなことになって・・・」
「いいよ先輩。俺も気付かなくてごめん。」
俺は苦しそうなさや先輩を出来るだけ安静にさせて膝枕で待つことになった。・・・向こうが膝枕してって言ってきたんだぞ?・・・やましい気持ちも無くは無いけど。
そして待つこと数分・・・
セバスチャンさんがやって来た。俺はセバスチャンさんにさや先輩を返そうと思ったのだが、さや先輩が俺の手を離さなかったので結局俺までついていった。
「じゃあ帰ります。」
俺はさや先輩の家の前で再び別れを告げたのだが、
「駄目。」
さや先輩がまた離してくれなかった。セバスチャンさんも苦笑いをしている。
「カイ様も一緒にいらっしゃってください。」
「はい。すいません、お邪魔します。」
そういって俺はまた、さや先輩の部屋に入った。
俺は冷たいタオルと風邪薬をセバスチャンさんから受け取った。
「あの・・・本当にただの風邪ですか?」
医者に診察されていないので少し不安になる。確か薬って飲むのを間違えると死に至ることもあるからな。
「左様でございます。私めは医師の免許を持っておりますゆえ。」
ほう。セバスチャンさんは執事としてかなり有能なようだ。
「では。」
セバスチャンさんはそう言って部屋から退室した。
部屋には俺とベッドで横になっているさや先輩だけになった。
「その・・・」
俺が口を開くが、さや先輩がそれを遮った。
「本当はこんなはずじゃなかったのに・・・」
さや先輩は悲痛な面持ちだった。
「私がサービスする予定が・・・逆に迷惑かけちゃったね。」
さや先輩がいつになく萎れていた。相当落ち込んでいるみたいだ。
「・・・なんでその体調で来たんですか?」
俺は疑問に思ったことを訊いた。
「楽しみだったのよ。本当に。でも・・・」
俺が今度は遮った。
「俺じゃ頼りになりませんか?確かに今日の先輩の体調に気付けなかったことは申し訳なく思っています。ですが、もっと俺を頼ってください。先輩が頼られるのが好きなように、俺も好きなんです。確かに先輩と比べたら俺なんて・・・」
「そんなことないわ!」
自嘲的な笑みを浮かべる俺に反応したさや先輩。しまった・・・病人を興奮させてしまった。
「あなたは頼りになるわよ・・・でも私プライドが高いから・・・」
弱っているからか、いつもより本音をさらけ出しているように見えた。
「いいんですよ。毎回じゃなくてもいですから。たまにで良いです。」
俺が笑みを見せるとさや先輩も笑みを浮かべてくれた。
「まあ病人は休んでいてください。」
そういって俺は部屋から出ようとするが、腕を掴まれた。
「ごめんね。私が寝付くまでここにいてくれる?」
さや先輩らしくない強制の掛からないお願い事。そんな不安そうな顔されたら出て行けなくなる。
「いいですよ。それまで傍にいますから。」
そうして俺はさや先輩が寝付くまで手を握ってあげた。
先輩が寝たのを確認すると俺は静かに部屋を出て行く。さすがにいつまでもいるわけにはいかない。
部屋を出て廊下に出るとセバスチャンさんがいた。
「カイ様。少しお話よろしいですかな?」
「はいまあ・・・」
俺はセバスチャンさんについていって大きいリビングに来た。
「それで、何でしょうか?」
「単刀直入に訊きます。お嬢様のことをどう思っていますかな?」
「えーと・・・どうって?」
「好きか嫌いかということです。」
何故セバスチャンさんにそう訊かれるのか分からなかった。だが俺は真剣なセバスチャンさんに真剣に答えた。
「さや先輩のことは好きです。」
これは嘘じゃない。俺は先輩のことが好きだ。
「それは恋愛感情ですかな?」
「いえ・・・・違うと思います。俺は単にあの人に憧れているんです。俺に生きる意味を与えてくれた・・・大切な人に。」
そういうとセバスチャンさんの顔が多少穏やかになった。
「そうですか。失礼なことを訊いて申し訳ございません。恋愛感情があると傷ついてしまいますからな。」
「どういうことですか?」
「お嬢様には婚約者がいます。」
その言葉を訊いた途端に俺の頭に何かの衝撃が走った。
「ですがあなたなら安心です。虫のいい話なのですが、カイ様にそれまでお嬢様のことを見ていただきたいのです。」
「え?」
セバスチャンさんの突然の言葉にびっくりする俺。
「お嬢様はああ見えて脆い部分があります。だからカイ様にお願いするのです。」
「俺は・・・」
どうする?決まっている。答えは既に出ている。でもなんで俺は言いたくないんだろう?
「すぐに決めなくて結構でございます。お話はここまでです。」
セバスチャンさんは俺が返答を決めかねているうちに話を打ち切った。
「あの・・・セバスチャンさん。さや先輩の両親は一体?」
俺は疑問に思ったことを口にする。
「海外で働いておりますゆえ・・・」
俺は納得した。俺も似たようなものだから。先輩が大人びている理由の一つかもしれない。
「ではお時間取らせて申し訳ありません。送らせて頂きます。」
そう言われて俺はセバスチャンさんの車で家に帰った。しかしずっとセバスチャンさんの言葉が耳に残って離れない。
俺はどうしたらいい?と考えていたらもう午後6時になっていた。
夕飯作るの面倒くさいな〜と思ったので今日はナックにするかとハンバーガー屋に入っていった。
正直現実逃避をしているのは分かっている。でも今は何も考えたくないんだと思っているところに目に入ったのは携帯電話で話をしているおじさんだった。
その瞬間に俺は何かが覚醒した。食べる暇ももったいないという風にさっさと食べて俺はある場所へと急いだ。
私が目を覚ましたときもう既に夜の10時だった。もちろん隣にカイはいなかった。
コンコン
「はい。」
多分セバスチャンだろうと思って許可を出す。しかし扉の向こう側にいた人物はカイだった。
カイは何故か満ち足りた顔をしている。
俺が向かった先は携帯電話ショップだ。俺はある決意をしてここまでやって来た。
正直機能とかよく分からないので、一番安い奴を買った。
本当は手続きに時間が掛かるのだが、とある手段で早く終わらせた。本当は使いたくなかったが。
そして俺は携帯電話で蓮見家の電話番号(セバスチャンに掛けた番号)をダイヤルした。
「もしもし。」
「夜分遅くにすいません。答えが出たので報告が。それと先輩に会わせてください。」
俺は無理を承知でお願いした。
「いいですよ。今どこでしょうか?」
俺はセバスチャンさんに迎えに来てもらった。
「それで答えというのは?」
「俺がさや先輩にしてやれることを考えました。これがですね、なかなか思いつかないんですよ。心の支えって言われても具体的によく分からないですしね。」
俺は車の中でセバスチャンさんに話していた。
「でも簡単だったんです。俺はさや先輩を笑顔にしたい。笑ってくれればそれで良いんです。」
セバスチャンさんは真剣な表情でこちらを向く。
「俺がさや先輩の支えになります。」
言えた。何故このことばが言えなかったのか・・・よくわからない。でも俺がさや先輩を大切に思っているこの気持ちは本物だと言い切れる。
「分かりました。家まで行きましょう。」
そう言って再び俺は蓮見家に向かった。
俺は今さや先輩の部屋の前にいる。大きく深呼吸してからドアをノックした。
「はい。」
俺は扉を開けた。するとさや先輩が突然困惑し始めた。
「ええと・・・用事があってきました。」
一応俺はまず部屋に入る任務を成功させた。
「何かしら?」
ずいぶんと熱が下がったらしく前よりも遥かに楽にしていた。
「これ携帯電話。俺のですけど・・・」
俺はさっき強引に買った携帯電話を見せた。
「え!?買うつもり無いんじゃないの!?」
さや先輩の疑問は当然だと思う。前にさや先輩にそう言った記憶があるし。
「状況が変わりました。さや先輩の携帯の電話番号とアドレスを教えてください。」
「何突然!?」
俺はその台詞に自分の気持ちをぶちまけた。
「もう嫌なんです。さや先輩!不安だったり嫌なことがあったりしたら俺に連絡してください。すぐに駆けつけますから。」
これが俺の決意。さや先輩が結婚するまで、だが。俺はさや先輩の支えになる。そう決めた。
その台詞にさすがの先輩も顔が真っ赤になった。当たり前だ。俺も恥ずかしい。
こうして俺の携帯の記念すべき最初の一番目のアドレス欄にさや先輩の電話番号とアドレスが登録された。
しかし携帯電話の使い方が分からなくてさや先輩に次の日に教えられるまで何も出来なかったのは秘密の話。
「はい。症状は次の段階に進んでいます。」
薄暗い部屋で少女が誰かと会話をしていた。
「分かりました。引き続き彼、蛟刃カイを監視いたします。」
彼女の監視対象の名前は蛟刃カイというらしい。
「はい、マイマスターお気をつけて。こっちに任せてください。きちんと完遂します。」
そういうと少女は決意したように言う。
「この私、城凪夕陽が。」
そう、物語はまだ始まったばかりだ。
次回は多分ほのぼのになります。
カイ「次回予告だぞ」
さや「次回は……何!?」
カイ「え?」
さや「怪獣大戦争だ!!」
カイ「嘘こけ〜〜〜〜〜!!」
さや「嘘よ。それが?」
カイ「もういいです……次回は俺とはなびが遊ぶ約束をしたので、その話ですよ」