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生徒会な日々  作者: 双樹沙希
幕間
104/104

番外編14 もしもカイの相手が違っていたら? 咲編

咲編はシリアス度が高めです。

そしてめちゃくちゃ甘いので気持ちが悪く…おっと。何でもないです。

捨てなければいけないことがたくさんあった。

俺達が傷つけた者もたくさんいた。

それでも、俺は想いを捨てることはできなかった。

こうして俺は咲と付き合うことになった。

しかし、はなびは咲とよそよそしくなってしまい、咲と俺とはなびは関係が悪化してしまっていた。

その煽りを受け、生徒会の空気が悪くなってしまい、俺と咲は生徒会を追い出された。

このように、二兎追うものは一兎も得ず状態になった。


「ん…」


俺は眠たい体を起こす。

時間はすでに7時を回っていた。


「おい」


俺は隣ですやすやと眠っている咲に話しかける。

そろそろ学校に行かないといけない時間だ。


「咲、そろそろ学校に行く準備するぞ」


俺は咲の身体を揺さぶってみる。

まだ起きる気配は無い。


「…またか」


俺は溜息をつく。


「キスするぞ咲」


俺は少し緊張しながら言ってみる。

咲の頬がかすかに赤くなる。

…こいつ、起きてやがるな。


「マジでするからな。マジで。本当に知らないぞ俺はマジで」


俺は挙動不審になりながら、キスするのを躊躇ためらう。

理由:アイアムヘタレ。


「…」


俺はしばしば考え込んだ。

咲とキスするメリットは…俺が喜ぶ。

咲とキスするデメリットは…俺が恥ずかしい。

ここには俺達意外は誰もいない。ならば…少しの恥ずかしさを耐えるだけでいいのでは?

朝から俺の頭の中身は暴走し、しかも考えていることはピンクであった。


「すーはー。よし」


俺は意を決して咲の唇に自分の唇を重ねた。


「ん…」


数秒夢中になってしまうが、俺は当初の目的を思い出し、理性を何とか保った。

武満がいたら、我慢なんかできなかっただろうが、すでに武満は俺に興味をなくしている。

何故なら俺は皇家を捨てたから。


「ふう…咲、そろそろ起きてくれ」


咲を起こすことが俺の当初の目標だ。

俺は再び咲を揺さぶった。


「…」


何故だ、白雪姫はキスで目覚めた筈だ。

だが咲姫は目覚めない。

これはアレだ。

もっと凄いことしないと起きないのでは!?

ヤバい。また頭が変になってしまったようだ。

ヤバい。マジやべぇ。


「…」


俺に咲の呼吸で上下する胸が目に入った。

…次の標的はここしかないか?


「…起きないと揉むぞ」


「っ…」


咲は顔が真っ赤になって小さな声を上げるが、それでもかたくなに目を閉ざし、寝たふりを続ける。

これはあれだよな? OKってことですよね?

俺は手をそっと咲の胸へと近づいていくが――――


カチャカチャ


「!?」


そのとき、歴史が、いや部屋の扉が動いた!!

そして何者かがカギで俺達の部屋に侵入してきた!!


「…やっぱりここの鍵持って正解のようね」


「ああ…レイか」


レイは寝ている咲と、その胸に手を伸ばしている俺を交互に見て呆れていた。

そういえば忘れていた。いざというときのために、レイと俊哉にはここの鍵を渡していた。

いざというときというのは、決してこういうピンク色なことでは無かったのだが…


「…! ど、どうしてレイが私とカイの部屋の鍵を持ってるのよ!?」


「あ、ああそれは…」


咲が凄い顔で俺とレイを睨みつける。


「そ、それはだな…」


それに気圧されて俺はレイに助けを求めた。


「はぁ…こういうときのためよ。貴方達、このまま私が来なかったら何をしてたのかしら?」


「う」


「うう」


俺と咲が言葉を詰まらせる。

すでに咲の嫉妬の炎は鎮火されたようだ。


「というかね。私はカイのどこがいいのか分からないのだけど…嫉妬は勘弁して欲しいわね」


「で、でもレイはカイと仲良いじゃない!」


「いえ、仲悪いわよ」


「うおおおい!! そこ否定すんのかよ!!」


レイの保身攻撃にダメージを受けたのは俺だった。

何故俺に飛び火する…


「ならいいわ」


「いいのかよ!?」


咲が納得して話を進める。


「とにかく、ちゃんと学校には行くように。それがここに住む条件だったわよね?」


「う…」


俺と咲は、オアシスの2階に住んでいる。

マスターは前の俺の部屋に住んでいる。

俺と咲が家を追い出され、途方に暮れていたところに手を差し伸べてくれたマスターには感謝をしきれない。

まぁマスターの部屋は今や愛の巣なのだが。


「そうだな…とりあえず学校行くか」


俺達は支度をして、1階へと降りる。


「はいコーヒーよ」


レイが俺達にコーヒーを差し出した。


「ああ…まずっ!!」


「ゴホッゴホッ!」


レイの淹れたコーヒーの、あまりの不味さに俺達は咳こむ。

まさかコーヒーもまともに淹れられないのか…


「レイ…」


咲はジトっとレイを見る。


「復讐と思えばいいわよ。イチャイチャを見せつけられた」


「わざとかよっ! タチ悪いな!!」


そんなこんなで、三人でオアシスを出る。

だが、レイは寄るところがあるようで、離脱した。


「気を使わせて悪いな」


「何言ってるのかしら。貴方達の桃色空気に当てられるのはごめんなだけよ」


レイはそう言って去っていった。


「…」


それを見計らってか、咲は黙って俺の腕に自分の腕を絡める。


「って今通学中…」


「いいじゃん別に」


咲は構わず俺にくっついてくる。

というかまた胸当たってて、そっちの方が恥ずかしい…


「あ」


「あ」


そのとき、はなびと目が合った。

どうやら一人で起きれたようだ。


「え、えーと…」


俺達の間に少しだけ気まずい空気が流れる。

はなびと咲はいろいろあった。

特に、咲がはなびに自分たちが昔付き合っていることを秘密にしていたことで、俺達と確執を起こしてしまった。

そのときはもはや鉄棒ではどうにもならなかったが…

咲が心の底で、はなびにカイを取られるのではないかという心配がその理由らしいのだが、はなびはそれが自分は信用されていないと取ってしまった。


「おはよう、はなび」


「あ、うん…」


はなびは恐る恐る咲の方を向く。

咲はレイとは違い、はなびに対しては怖がっている眼をしている。


「…」


俺はここで咲の方を向く。


「…ぁ…」


咲は昔の弱気で人見知りモードになってしまっていた。

視線は定まらないし、俺の腕から伝わる心臓の鼓動が早くなってきた。


「…」


俺ははなびに向かって頷く。


「…うん」


はなびは意を決したように咲に近づく。

咲は体を震わせる。咲ははなびに負い目がある…俺は咲の背中を撫でる。

そして、頭に手を乗せた。

咲は俺の顔を見上げる。


「…咲。逃げるなよ」


「あ、う…」


倒れそうな咲を俺は抑え、はなびを見る。


「咲…」


はなびが咲に話しかけた。


「ぅ…」


「咲、ごめんね!!」


はなびは咲に頭を下げる。

その行動に、俺と咲の両方が驚く。


「ど、どうし…て…? 悪いの、は…わ、私なのに…」


「私も咲の気持ちに気づいてたから…それを知ってもカイを諦めなかったから…」


「い、いいよそんな、の…! 私…二回もはなびからカイを…はなびの気持ち知ってたのに…!」


「そんなのいいのよ。だって元々カイは咲一筋だったのよ。カイは私の物じゃないし」


「ご、ごめん…ごめんなさい…!!」


咲はひたすら謝る。謝らずにはいられないのだろう。

だが咲は一つ勘違いしている。


「咲、はなびに謝ることはそれじゃないだろう?」


「あ…」


「咲、もう一人で立てるよな?」


俺は咲を見る。

咲は泣きそうな顔をしていたが、意を決して頷いた。

そんな咲の頭を撫で、俺は手を放し、二人から遠ざかる。


「はなび…ごめんなさい。私、はなびを完全に信用して無かった…友達なのに…」


「…」


はなびは黙って咲の目を見る。


「私、怖かったの。カイと付き合ってることはなびにバレたら…はなびが私から遠ざかるんじゃないかって…」


「…」


「私、欲張りだよ…ね? カイとはなび、どちらも手放したくなかったの!」


咲の目から涙がこぼれる。


「だってどっちも大切な人だから!!」


「咲!」


はなびが泣いている咲を抱きとめる。


「私も! 私も咲が大好き!」


「はなび…」


「咲。もう一人で考え込むのは止めよ? 私もいつも一緒にいてあげるから…ね?」


「ありがとう…はなび」


「…」


どうやら仲直りが済んだみたいだ。

俺は二人に近づく。


「みなさーん! 彼は二股男でーす!!」


「いいぃ!?」


俺は突然聞こえた声に振り向いた。


「ナナちゃん! 君は何て事を!!」


ヒソヒソヒソヒソ

な、何か噂されてるぞ…


「最低よねえ…」


「こんな可愛い子二人を…」


「ひでえ男だ…」


「うわああああこれは名誉棄損で訴訟して勝てるレベルだあああああ!!!!」


俺ははなびと咲を見る。

何故か二人とも白い目をしていた。


「え? どういうこと?」


「じゃあ私は咲と登校するから」


「ということでじゃあね☆」


はなびと咲は曝された俺を一人ぼっちにして、去っていった。


「……」


「カイ先輩どうしました?」


「ははっ…そうだよな…愛情よりも友情だよなぁ…」


「カイ先輩にホモフラグが立ちました!!」


「ねぇよんなもん!!」


結局雰囲気なんてあって無いようなもので、俺は学校に向かい、出禁にされていた生徒会室へと顔を出すことにした。


「おはようございまーす」


「遅かったわね」


「カイ、ここに来たということは…」


生徒会室にいたのは、さや先輩とレイだった。

俊哉はまだ登校していないらしく、はなびたちは来ていない。


「ご迷惑をおかけしました」


俺はさや先輩に頭を下げる。


「…解決したということだな」


「はい」


「じゃあとりあえず罰として私の肩を揉め。お前たちのせいで仕事の量が増えたからな」


「う…はい」


俺はそうしてさや先輩に奉仕する羽目になった。

なお、咲も罰せられ、咲はさや先輩に恥ずかしいことをさせられたらしい。

気になるが…さや先輩も咲も教えてくれなかった。

ただ、咲がスカートを気にしていたのが印象的だった。







俺と咲はオアシスで働いていた。

俺はともかく、咲も新しく働いている。

まぁ二人揃ってお世話になっていることだし、当然のことだ。


「咲、ブレンドおかわり3番さん!」


「はい!!」


咲はよく働いてくれるし、もの覚えも早い。

初めのころは、働くこと自体が初めてだったせいもあってミスもしていた。

でも今はその頃の面影は無くなっていた。

ただ…


「ちょっと!! コーヒー遅いよ!!」


「ひっ!」


こういう強面の男性には免疫が無いらしい。

元々男性が苦手だからな咲は。

俺はそこの席に近づく。


「すいません。只今お持ちいたします」


俺は謝りながらコーヒーのおかわりをその男性へと運んでいく。

こういう役は俺の役割になっている。


「あ、ありがとう…」


咲は目を潤ませながら俺を見る。


「ひゅーひゅー」


レイが棒読みで冷やかす。


「仕事しなさい」


こんな忙しい時に無駄口叩いてる場合じゃないだろうが…

こんな風なのが、いつものバイトの風景であった。








閉店し、戸締りの確認をする。


「いいか! ちゃんと卒業まではするんだぞ?」


マスターは俺達にくぎを刺す。

今日も危うく学校に行きそびれそうだった。


「うっす」


「は、はい」


「…私がきちんと面倒見るから平気よ」


レイが溜息を吐きながら言った。


「ちゃんと監視カメラと盗聴器も仕掛けてるし」


「アンタ何してんの!?」


レイがとんでもないことを言い出した。


「大丈夫よ。毎日確認して毎日外してるから」


「君も何なの!?」


咲もとんでもないことを言い出した。


「やるわね」


「そう簡単にカイとの二人っきりを邪魔させないわ」


「…何か女の子って怖いですよね」


「俺はあんな女の子は知らん」


マスターはそそくさと帰る支度を始めて、すぐに出ていこうとしていた。


「って逃げるのかよ!!」


「あらマスターって酷いのね。か弱い私を送らずに一人で帰るなんて…」


「レイにか弱さなんてあったか?」


俺はボソッとつぶやく。


「カイ?」


レイが俺を冷たい目で見る。

うおおおおお。何か寒気がしたぞ今!

こえええよこの女。


「カイは余計なこと言わないの!! ささっ! 早く帰らないと遅くなっちゃいますよ!」


咲はぐいぐいと二人を外に押しやり、無理やり戸締りをした。

…何か咲ってときどき超行動的になるよな。

レイとマスターが帰ったのを見計らい、咲がこっちを見る。


「♪」


「あ」


すっげえ笑顔だ。しかも可愛い。マジで反則っすよ。


「カ~イ♪」


「うおっ!」


咲は俺に抱きついてキスをする。

突然のことに俺は混乱する。


「ずっとずっとずうぅぅぅぅぅっと大切にしてね?」


「ああ。もちろんだ」


俺は咲を抱きしめ返し、キスもし返した。

俺達の未来には様々な困難がまだまだあるだろうが、咲と二人だったら乗り越えられるような気がした。





ナナ「というシナリオは所詮番外編なのです!」

咲「…///」

ナナ「だからカイ先輩とくっつくことなんて一生ありません」

咲「ええっ…! そんな…」

さや「あら? 咲ちゃんってカイのこと嫌いなんじゃ…」

咲「あ…そ、そうですけど…」

カイ「…恥ずかしいのは咲だけじゃないぞ」

さや「まぁこんな世界もあったかもしれないわね」


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