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番外編TIPS:政府関連編:協定


 神と人類との間に結ばれたルール。人類といっても殆どの協定はバッカス政府が結んだものであり、協定の存在を知る統覚教会や埒外士族が「バッカスの独断」に関して非難の声をあげる事もあるが、ほぼ黙殺されている。


 バッカス王国が誕生した事により、在りし日の情熱こどもごころに火がついた神は「王国軍ではなく冒険者ギルドを作り、世界開拓を進める」ことを条件に「容赦のない魔物の運用は出来るだけ控える」という協定を結んだ。


 協定はそれ以外にも数多く結ばれ、お互いに協定に抵触しない範囲を探り、出し抜き合う謀略の日々が始まったが、神にとっては剣と魔術の冒険を繰り広げる冒険者達の活動は童心を思い出す楽しい日々の始まりでもあった。


 政府に限らず人類は抜け目なく、神が洞窟内にせっせと魔物を配置したというのに、冒険者が河の水を引き込んで一網打尽にし、神が軽く発狂する事もしばしばあった。バッカスの歴史上、これは珍しい事では無かった。


 それでも神はバッカスとの戦いを「楽しい」と思っていた。


 自由気ままな人類プレイヤーをどうやって苦しめてやろうかと舌なめずりし、夜なべして策略を巡らせる創造主ゲームマスターの立場を楽しんでいた。


 それはもちろん、人類にとってははた迷惑どころか、神に対する深い憎しみを抱くに十分な命のやり取りではあったが、少なくとも神は楽しんでいた。


 だが、これ以外の悲劇たのしみも好んでおり、それはバッカス王国建国から500年近くの年月が経ってもなお変わらずにいた。



「彼の消息は……?」


「フェルグス達に追わせているが、痕跡が完全に途絶えたらしい。昨日からさらに追加で42名の騒乱者を捕らえたぐらいだ」


 城の執務室にて、政務官長に少年の消息を――アルゴ隊が拾った巨人の少年の消息を聞いた魔王は苦い顔で「イアソン君にどう説明すればいいの」と嘆いたが、直ぐに首を振って自分の発言を恥じていた。


「違うわね……イアソン君に対して、どう言い訳するとかそういう事を考えている場合じゃないわ……。ごめんなさい、スプマンテで彼を連れ去られてしまったのは完全に私の落ち度です」


「監視を兼ねて例の少年を護衛していたのはお前の使い魔だけではない。ペイルライダーがああも折り悪く……向こうによって都合の良い時に来た影響も強い。その手引きをしたであろう神からの返答は?」


「いつもの厭らしい笑顔で多くは語らなかったわ。協定には抵触してないと言い張って、自分の方から言える続報は24時間以内に伝えると言ったぐらい」


「そうか」


「……その、さっき言っていた捕縛した騒乱者42名というのは……」


「また子供だ。全員分の検査結果はまだだが、今のところわかっている者は全員、遺伝子上は例の騒乱者カタキラウワの子供だ」


 魔王はしばし絶句し、騒乱者の常識を疑ったが、倫理そんなものを気にかける相手であればとうの昔に収監出来ていると政務官長に告げられていた。


 ただ、政務官長はそれ以上のこと――政府が派遣した追跡部隊の行方を阻んでいる子供の騒乱者達が、父親パパへの献身のためなら自分の命すら容易に投げ出すほど教育されている事は告げなかった。


 言ったところで何も変わらないどころか、追跡部隊への悪影響を警戒して。人道に関する事において彼は王を信頼していなかった。だからこそ王が苦手とする分野に関する事は政務官長じぶんの権限の及ぶところで止めていた。


「ともかく、もはや事は都市郊外での事件となった。お前は都市内での政務に集中して――――少し外すぞ、私事に関する連絡が来た」


 政務官長は物言いたげにしている魔王を置き去りにし、政府の設備と魔術師を経由して届いた交信魔術に応答していた。


「私だ。ソーテルヌ島の方は今どうなってる、イアソン」


『馬鹿でかい――が――! 至急、迎えを寄越し―――! こっちの船――られ――いや、迎撃の準―――――! 一士族の士族戦士団だけじゃ対応は不――だ! こんなの山脈が動い――ような――――推定5000メートル級―――! デカイだけじゃない、こ――、魔――大量生産――』


「よく聞こえん。雑音相殺は?」


「行っています。ですが、これは遠距離交信というだけではなく、何らかの妨害が働いているようです。かろうじて拾えているだけで……」


 政務官長とその部下達がイアソンとの交信に四苦八苦している時。


 執務室に残された魔王の前に全ての元凶たる神が現れていた。


「よう魔王! ご機嫌いかがかなぁ? ぼくはいまとても機嫌が良い。機嫌が良いので勝負をしよう。なに、いつもの勝負だ、単なる魔物討伐と……防衛戦だよ」


「それより、あのアルゴ隊の子の件を――」


「アイツにも関わりがある事だよ。ルールは簡単、いまイアソン君達が戦って、何も出来ずに見送る事になった魔物と、その取り巻きを殺してみせてほしい」


 神は楽しくてたまらないと言いたげな表情を浮かべ、討伐対象を告げた。



「アルゴ隊がやっていた十二試練の続きだ。


 第九試練・プロメテウス。第十試練・アレース。第十一試練・サーベラス。


 この三体と、木っ端の竜種まものが護衛している親玉ボス……


 第十二試練・エキドナ……この四体を殺せ。


 特にエキドナはしっかり無力化しないと……ひひ……大変な事になるぞぉ~」




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