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番外編TIPS:世情編:バッカス毒料理


 バッカスの治癒魔術は怪我・病気どころか猛毒にすら効果がある。毒の度合いによって必要となる魔術の技量は異なるが、仮に死んでも今度は蘇生魔術がある。


 そのためバッカス王国では色々と無茶が効くのだが、その無茶は冒険者業界だけではなく、飲食業界においても影響を及ぼしている。


 飲食業界で治癒魔術が最たる影響を及ぼしているのは「毒料理」であろう。


 これは毒のようにマズい料理ではなく、毒そのものを食する刺激的な料理である。普通の料理では味わえないようなピリピリとした毒気は激辛料理の如くハマる食通が少なからず存在しており、時に度胸試しに使われる事すらある。


 バッカス毒料理の一般的な食し方は、治療師に同席して貰いながら毒料理を口にし、脂汗をかきながら毒に耐え、頑張って完食するというものである。


 あぶ普通ノーマルな毒料理に口にする食通が死にそうな顔をしながらも食べ続けている姿を見た治療師がドン引きしている光景は、あまり見受けられない。


 というのも毒の治療は怪我の治療とは少し要領が違うため、口にする事になる毒の治療に慣れ親しんでいる専門の治療師がつく事が多いからだ。


 最初こそドン引きしても、段々と慣れっこになるので顔が土気色になる食通の横で真顔で治療師が座っているというのがよくある毒料理食事の光景である。毒料理は専門的な調理技術も必要であるため、毒料理専門店には専属の毒治療師がいるのが一般的である。


 毒料理は猛毒キノコのソテー、猛毒を生成する魔物の内臓レバ刺し、毒液のスープなど様々存在するが、バッカスで特に人気があるのは毒酒である。


 毒酒の中でも特に人気があるのはヒュドラの内臓を使った毒酒である。ヒュドラは竜種ながらも比較的多く存在しており、死ぬ気で頑張れば熟練冒険者が100人ほど集っていれば討伐も可能である。


 そこらの熟練冒険者では半数以上が猛毒で死ぬのを覚悟しないといけないが、竜種の中では比較的倒しやすい部類なのは確かである。あくまで、比較的の話だが。


 ただ、ヒュドラの内臓を手に入れる事に成功してもヒュドラ酒を作れる酒造工房は、非常に少なくなる。作成可能な工房ですら死者を出さず、無事に完成にこぎつける事は容易くない。


 しかし、バッカス屈指の薬師である魔女・サンムラマートはヒュドラ毒を原液のまま摂取しても「あ、辛い」という感想だけで終わるほど猛毒への強い耐性を持っており、当然、ヒュドラ酒も鼻歌交じりに作ってのける事が出来る。


 死者無く作られたヒュドラ酒は「ヴァージン」と讃えられるほど人気で、そのヴィンテージ物となるとヴィンテージ・ヴァージンとして尊ばれている。


 現在、魔女・サンムラマートはヒュドラ酒の生産を止めているが卸していた頃はかなりの良心価格で販売しており、毒酒専門酒造所泣かせで有名であった。


 アルゴ隊のイアソンはヒュドラ酒・ヴァージンの大ファンであり、「天にも昇る旨さ!」と大いに讃えながらたまによく死んでいる。


 自分が後見人になった巨人の少年がヒュドラを難なく倒し、ヒュドラ毒を浴びても別段苦しまず、ばっちそうにぶるぶると身体を振るうだけであった。普通の巨人種の尺度で考えるとあり得ないほど猛毒に異常な耐性を示した事を見たイアソンは「ヒュドラ酒で一儲けしたろっ!」と画策。


 自分は猛毒で「ギャアアアアアアア!」とのたうち回って死につつも、まったく平気そうにしている巨人の少年をそそのかしてヒュドラを乱獲。サンムラマートには持ち前の弁舌で上手いこと転がしてヒュドラ酒の量産に成功した。


「これで大儲けだヤッター!!」


 と、大喜びしたのも束の間、後ろから伸びてきた大淫魔メーヴに頭を鷲掴みにされ、「私の名前を使って、ウチの妹に毒酒量産させたそうね?」と怒られ、脳に直接快楽を叩き込まれ、「はおおおおおおおおおお❤❤❤❤❤」と叫び、穴という穴から体液を噴射し、しばらく感度3000倍にされて放置される事となった。


 このイアソンの獣の如き痴態は巨人の少年が泣いて怖がるほどのトラウマになり、しばらく少年は類似した声が聞こえてくる娼館街ですら両耳を必死に塞いでぷるぷる震えながら通り過ぎるようになったのであった。



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