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番外編TIPS:技術編:遠隔蘇生保険


 未開の地で死せども魂だけが首都に戻り、生き返る仕組み。逃走のためだけではなく、勝利のためにも重宝されるバッカス王国、最大の武器。


 今日こんにちでは当たり前に利用されている保険だが、このシステムが正式に実装された当時は嫌厭けんえんされがちなものであった。


 理屈の上では便利なのだが、実装当時は広く親しまれていなかった事から多くの国民が「怪しい」「蘇生ではなく魂を奪われそう」「そんな奇跡があるものか」と距離を置かれていた。


 距離を置かれたのは加入料が高価という事もあったが、最大の理由は「未知よくわからないもの」というであった。料金の高さはバッカス政府が不当に搾取するため集金機構ゆえのものと言われる事さえあった。


 通常の蘇生魔術ですら一般に使われる機会が出てきた当初は「単に死体を動かして装っているだけ」と怖がられていたぐらいである。


 人類を苦しめる神は、遠隔蘇生システムが普及しない事を「これ幸い」と思ってより一層、国民に不安を煽る――という事はしなかった。


「ほどほどに大胆に動いてくれた方が楽しいんだよなー」


 という理由で、自分に不利に働くのは承知でバッカス国民に対し、「みんなー! 遠隔蘇生は良い仕組みだよー!」と説得を手伝ったぐらいである。邪神ゆえに余計怪しまれる事になったが、本人に悪気は無かった。本当に無かった(この後いっぱい魔王にお仕置きされた)


 最終的には政府が加入費を持ち、腕利き冒険者らに遠隔蘇生をかけ、実際に蘇生された者達の太鼓判を重ねる事で冒険者業界から普及していく事になったが、死というリスクは魔術に親しんだ国民でも二の足を踏むものがあったのだ。


 遠隔蘇生は死後、直ぐ様に行われるものではない。


 およそ30分から1時間ほどで死体から魂が離れ、その後は数分で首都の保険屋に魂が帰還。そこから蘇生魔術待ちとなる。


 誰が死して首都に戻ってきたかは処置済みラインメタルを入れた瓶にラベルで個人情報が記載されており、重要な作戦に参加している者や事情がある者は優先して蘇生される事になっている。


 蘇生を待つ間は睡眠時と類似した状態となる。


 時に夢を見る事もある。


 ここに、蘇生を待つ魂がおり、その魂は過去の記憶を夢として見ていた。


 その魂にとってその過去は忌まわしいものであったが、バッカス王国には過去を改変する術は無く、記憶操作も神の手中にあり、どちらに頼る事は出来なかった。


 出来ない以上は――どれだけ目をそらそうとしても――忘れ得ぬ記憶として、彼の魂にこびりついていた。




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