番外編TIPS:第九試練:プロメテウス
魔物の一種である悪魔であり、悪魔の中でも最上級の強さを持つ天魔。そして悪魔の中でも「異端」で知られる者の一体。
その姿はトレンチコートと帽子を被った巨人に似ているが、コートの内側にあるのは骨人間の如き細い身体で、顔面も真紅の巨大な眼球が一つハマっているだけという異形である。
身の丈より巨大な和弓を持つ弓使いの天魔だが、狙撃手としては致命的なほど遠目でも目立つ姿をしている。具体的には全身が赤金色に輝いている。
オマケに相手が自分に気づいていない様子であれば、第一射をわざと外す形で放ち、挑発的に――あるいは人間的に手招きをする習慣がある。
そうして狙撃手としてのアドバンテージを手放しつつもなお、未だ堕ちぬ強敵としてバッカス王国の前に立ちはだかり続けている。
放たれた矢は曲がりくねりながら飛び、たった一矢で順繰りに相手の頭を貫き殺し、10秒で100人近くを瞬殺した事すらある魔技の持ち主である。
防護魔術で防ごうにも、その貫通能力は都市防衛用に張られた魔王の防壁すら抜いた事があるほどで、弾いて逸らす事は不可能ではなくとも、音を置き去りにする速度相手では迎撃も回避も容易ではない。
天魔の中でも五指に入る直接戦闘能力の持ち主だが、出現はかなり不定期で、長く存在が確認されているが数十年に一度しか出てこない時期もある。
また、逃げる相手や恐怖に打ち震える相手には射掛けず、手を振って見送る事もある。西方諸国の兵に追われる者達を助けたという事例もいくつか存在しており、その事からプロメテウス信仰も生まれた事があるほど、変わり種の悪魔である。
その手の救出の目撃例の中には、名無しの上級悪魔にせっつかれて動いているように見えたものもある。
プロメテウスは天魔であり、上級悪魔より上の存在であるが、「どこか子分のように動いていた」という話もあるが真偽は定かではない。
悪魔としては異端なところもある。
だが、単に酔狂なだけではなく、バッカス最強の冒険者クラン・アルゴ隊と正面からやりあって殲滅した事すらあるほど古豪の天魔・プロメテウス。
それが神により、第九試練として動員された事は数多の開拓戦線に参加してきたイアソンに内心、冷や汗をかかせるのに十分な材料となった。
プロメテウスともう一体の天魔・アレースはラドゥーンやパイアを戦っている討伐隊に横槍を入れる事もなく、傍観……戦闘を見物していた。
その戦闘があらかた片が付き、アルゴ隊はリベンジに燃え――あるいは面白がりながら――プロメテウス達へと襲いかかってくるのを見てようやく動き出した。
迎撃を開始する天魔達の様子はどこか楽しげで、二体は身振り手振りも交えて何か言葉を交わしているようであった。
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『eep@%<seeqesbq@t@c;f3sid94p@』
応戦し始めた二体の天魔の振る舞いは堂々としたもので、敗北など、一ミリ足りとも考えていないものであった。イアソンとは真逆の思考の最中にあった。
「そうちょ……ぼくも、いくね? まってて」
「あっ、いや……ちょ、待て……!」
「だいじょぶ。勝つ。そうちょの、やくに、たつ……!」
巨人の少年は天魔側の思考を抱いていた。
いい加減ながらも、ひとたび猛れば阻む者無しと思えるほど信頼のおける仲間達と共にあれば敗北はない。勝てば総長が喜ぶ。だから勝利を目指し戦い始めた。
その先に待っているものを、知らないままに。