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番外編TIPS:冒険者関連情報編:サクラメント群島


 世界開拓戦線の最前線よりも奥に存在する群島地帯。多くの開拓関係者を魅了し、複数の士族が自治都市を築きたがっているが今のところは手付かずである。


 サクラメント群島は大陸からさほど離れていない位置にあり、距離的には現在のバッカス王国であれば渡航は不可能ではない。


 それでもなお開拓を困難にしているのは魔物の影響が大きい。


 この群島近辺の海域は非常に多くの水棲の魔物が生息しており、また、単に魔物が湧きやすいだけではなく、かなり広範囲から魔物が回遊してくるルートになっている事から倒しても倒してもキリがない場所になってしまっている。


 首都には劣るものの非常に強いレイラインの要所であるため、ラインメタル採掘だけでも十分な利益を出す事が出来るのだが、都市を築くのも維持するのも難しいほど海の中を覗き込むとビッシリと魔物がひしめき合っている場所である事から島に渡る事が出来た者はバッカス王国でも限られている。


 サクラメント群島の魅力はレイラインだけではない。


 群島には特殊な桜が島を埋め尽くす形で咲いており、これはこの群島であれば例年を通して花が完全に散ってしまうという事がない種である。


 しかもこの桜の花びらは淡い桜色、あるいは薄紅色に発光しており、常に散り続けているのだが、光る花びらが散りながらもすぐさま新しい花びらを咲かせ、舞い散る美しさは「都市郊外五大絶景」と言われるほどのもの。


 そのカラクリは桜達がレイラインの影響を強く受けている事にあり、性質的にはグラーヴ近郊の木々と似たものがある。起こる結果を夜闇から見つめると、群島に咲く無数の桜から舞う花びらが焔の如く空と海を照らすものであり、そのためにサクラメント群島の桜を移植する計画は何度か立てられ、現在は頓挫している。


 ブロセリアンド士族が犠牲を出しながらも移植そのものには成功したのだが、群島のレイラインにしか反応しない桜であったため移植後は普通の桜と大差ないものになったのだ。そのため手中に収めたければ群島を開拓する必要がある。


 魔物の障害に阻まれつつも、ラインメタルによる実利と異質の美を魅せる桜を観光資源、あるいは個人的に楽しむための美術品として欲している者は多く存在しており、現在は開拓困難であっても水面下では既に争奪戦が始まっている。


 一方、魔王は我が子の笑顔見たさに神から魔雀で財産をむしり、それを返してほしければサクラメント観光させなさいと脅迫し、「一国の王のする事かよォ!?」と神に泣かれつつも、年に一度は家族で空間転移して花見に行っている。



 ラドゥーン討伐のために都市郊外を進むイアソンとメーデイア達は、サクラメント群島が見える場所で野営を行っていた。


 夜闇の中にあっても煌々と光り、その存在感を示している群島を初めてみた者ははしゃぎ、一度は見た者も都市郊外に咲く魔性の美に魅せられていった。


 イアソンもはしゃいでいたが、彼の場合は巨人の少年に見せる事に対してはしゃいでおり、少年もサクラメントの美しい光景に感激しているようだった。


 三角座りして、群島初見の者達と見入っている少年から離れたイアソンは上機嫌で酒の席に戻っていったが、「仕事中だから」と酒を断っていたメーデイアはイアソンに嫌味混じりに話しかけていた。


「アンタ、あの子のこと、相当可愛がってるわね」


「そんなことない。ま、まあ、まだ子供だからな。今回は勝手についてきたとはいえ、ついてきた以上はアレを見せてやっとこうと思っただけだ。仕方なくな!」


「嘘つき……。素直になればいいのに。面倒くさい男」


「う、うるさいなぁ……お前には、関係ないだろっ」


「メーデイオスを拾ってきた時も……面倒くさい男っぷりを発揮してたわ。一々意地を張って、あれこれと言い訳しながら接してたわ……」


「…………」


「それで……私に、あの子を殺させた」


「…………」


「私、あの時の事……まだ恨んでるから」


 気まずげに黙るイアソンに対し、魔女は怒り混じりの咎める視線を向けていた。



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