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番外編TIPS:バッカスの文化編:蜂蜜酒


 バッカス王国で新婚夫婦に贈られる定番の品。新婚夫婦以外も飲むが、新婚相手の贈り物として用意された蜂蜜酒は外で飲むと大変な事になる時がある。


 新婚夫婦用の蜂蜜酒は「強壮と媚薬作用」のあるものが多く、「それを飲みながら頑張って子作りに励んでね!」という意図で贈られている。もちろんそういった作用のない蜂蜜酒もあるが、その気のない者が誤って飲むと大変な事になる。


 バッカスでは初夜から1週間~1ヶ月分は家に籠もって励む夫婦が多く、それだけの分量がまとめて販売されている。籠もったままでいられるよう食品もセットで売られている事が多い。


 そのため、取扱店舗の店員は新婚家庭へ配達に行く事が多く、「こいつらこの後メチャクチャらぶらぶセックスするんだろうな……」と思い、鬱病になる事が多いという事が政府の統計で判明しているが対処はされていないのが実情である。


 ちなみにこの統計を元に書かれた作品「リア充」はバッカス四大悲劇の一つとして数えられている。


 蜂蜜酒で最も高値で取引されているのは「スットゥングの蜜酒」というもの。


 これは異世界より稀に流れ着き、発掘される酒で魔術的に解析してもなお、詳細な製法は明らかにされておらず、それゆえに「神酒」と讃えられ尊ばれている。


 スットゥングの次に高値で取引されているのは「三脚巴トリスケリオン」という名の蜂蜜葡萄酒。こちらは製法は明らかになっているのだが、作れるのは世界に一人、あるいは二人だけとされている。


 制作に携わっているのが赤蜜園の孤児院長・メーヴであり、淫魔である彼女が仕上げに施す魔術かくしあじにより、媚薬酒としては他の追随を許さないほどの逸品に仕上がり、人気を博している。


 ただ、手に入れるのは少し難しい。


 というのも三脚巴は基本的に赤蜜園を出る子供達だけしか贈られておらず、製造元から一般販売されるのは100年に一度程度で、ごく限られた数量のみとなる。


 手に入れるとなるとその極稀なチャンスを掴むか、元孤児達が売りに出したものを買うだけとされている。元孤児達も園を出る時に二本の三脚巴を渡され、「一本はお金に困った時に売りなさい。二本目を売らないといけない時は、まず私に相談に来なさい」と言われているので、まったく市場に出回らないわけではない。


 しかし絶対数はとても少なく、それでいて性行為における実際的な効果が得られる事から三脚巴一本の値段は最低でも家一つ買えるほどのものとなっている。


 孤児院長としては少ない投資で園を出た子供達のために財産を持たせてあげる狙いで作っているので、概ね狙い通りにブランド化出来ているようである。


 一人、赤蜜園を訪れていたアルゴ隊のイアソンは孤児院長の私室に置かれていた三脚巴にこっそり手を出そうとしたが、部屋の主にペチンと叩かれる事となった。


「院長先生、そんないけずなことせず売ってくれよぅ」


「ダメよ。イアソン君にあげても、一緒に使う相手がいないでしょう?」


「そんなことないですぅ。ぼくはモテモテだもん」


「お金で買った相手かしら? メーデイアちゃんとも、今は喧嘩別れ中でしょ」


「まあそうっすけど……」


 惜しそうにしつつ、イアソンは赤蜜園に来た本題について語りだした。


 アルゴ隊で拾い、その一員として立派に冒険者稼業をしている巨人の少年について相談し始めるのであった。


「……アイツの事なんですけど、赤蜜園ここで引き取って貰えますか」


「ええ、最初から言っている通り、それでもいいわ。巨人の子なら他にもいるし、必要なら身体も暮らしやすい大きさに縮めてあげる」


「冒険者稼業以外に就かせる事も可能ですか?」


「本人のやる気次第ね。私は、自分のところの子供を冒険者にしたくはないけれど……それでも本人がやりたいと言って、相応の力があるなら、もう止めないわ」


 つまり完全には止めてくれないんすね、とイアソンは呟き、溜息をついた。赤蜜園とバッカスの夜を統べる女王はその様子を少し面白げに見つめていた。


「彼は貴方の金づるとして、立派な冒険者にするんじゃなかったのかしら?」


「いやもう邪魔だから、誰かに押し付けちゃおうかな~と思ってて。赤蜜園がダメならグレンデル家もいっかな? ちょうど、本人が親しくなってるから押し付けやすいでしょ~?」


「貴方はホント、嘘つきゴブリンねぇ」


「……邪魔に思い始めたのは、ホントっすよ」


「そう……。とりあえず、貴方がもう匙を投げるなら、ウチで引き取る事も可能です。ただ、冒険者になる事は禁止しないわ。本人の適正と意志を重視するから。それが嫌ならグレンデル家の方に預けなさい」


「…………」


「あちらなら、問題はないでしょう。他所がちょっかいかけてくるようなら、私の方でも見ておいてあげるわ。貴方には色々と無理難題をお願いしてきた借りもあるから、オマケしといてあげる」


「そりゃ、どうも……」


「ただ、個人的には少し残念だわ。イアソン君はハッキリ言ってダメ人間で、普通、子供なんて預けたくない子だけど……それでも政府の方でも、彼を貴方に預ける判断をした意味も考えてほしいわ。貴方自身も、本当に投げ出してしまっていいのかを、よく考えておきなさいな」


 そう言って、たおやかに微笑んだ淫魔に対し、ゴブリンの冒険者は迷いに満ちた表情で「もう少し考えてみます」と言って頷き、俯いた。




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