表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/103

番外編TIPS:バッカス街歩き編:旧クワス区


 首都サングリア60丁目近隣の呼び名。別名、巨人街。


 元々、クワスという村があった場所で首都の都市領域拡大に伴って首都に併合される事になった地域であるため、旧をつけて呼ばれる事がある。現在も60丁目の中央広場に記念碑が築かれ、かつてここに村があった事が記されている。


 クワス村はバッカス建国後、巨人達が寄り集まって出来た村である。バッカス建国の経緯からサングリアとは程々に距離を取っていたものの、クワス村の顔役であったグレンデル家が渡りをつけ、60丁目が拓かれる頃には概ね和解した。


 現在も巨人が多く住んでおり、様々なもののスケールが巨大である。


 特筆すべきは街路であろう。旧クワス区の街路は裏路地に至るまで巨人用の大きさとなっており、他の区画より格段に道幅が広くなっている。


 場所によっては10メートル超えの巨人が道路脇の店舗に目線を合わせやすいよう、道の中心部を5メートルほど掘削した谷の如き専用道路を敷設している。


 この手の大型街路の両脇には5メートル以下の巨人用の道だけではなく、2メートル以下の者のための空中回廊が地上より2、3メートル上に設けられている。当然小さきものには道を渡り辛いものだが、あくまで巨人街なのでそこはあまり重んじられていない。巨人にとっては他の区が暮らし辛いものである。


 ここまで大型街路は旧クワス区でも一部のものだが、それ以外の道も3~5メートルほどの巨人を意識した道路が敷かれ、道沿いの店舗は軒先営業のみの場合、複数回に跨ってサイズごとの受付が設けられている。


 全てが他の地区より大きいため、好奇心旺盛な子供達が「探検」と称して旧クワス区に向かい、空中回廊に立ち並び、10メートル超の巨人が歩いていくところを「すげー!」「デケー!」と興奮した様子で見送り、時に道行く親切な巨人の手と身体を橋代わりに道の反対側に渡り、巨人サイズのオヤツを買い、友達みんなで一つを分け合って食べるという光景が散見されている。


 グレンデル開拓社――グレンデル家の邸宅も旧クワス区にあり、アルゴ隊に拾われた巨人の少年は先日、毒にやられて弱っていた時の礼のための品を隊の冒険者に付き添ってもらい、持っていった事で始めて旧クワス区へと踏み込んだ。



「あ、あぶないですよ……そこを飛んで渡るのは、だめです……」


「むふん♪ あにゃなら出来るっ♪ いくぞ~!」


「ひぅ……」


「にゃにゃにゃにゃにゃ! にゃッ! ……アニャアアァァ~~~~!?」


「ひぅぅぅぅ!?」


「…………!」


 道中、巨人街に遊びに来ていた子供が大型街路をジャンプして渡ろうとして失敗したのを助けつつ、グレンデル家に辿り着いた少年と付き添いの冒険者は歓迎されたが――そこにイアソンの姿は無かった。


 少年はその事をグレンデル家の巨人に問われ、申し訳なさそうにイアソンが元気を無くし、ふさぎ込み気味という事を説明した。


 少年は元気が無い原因を、自分が弔魂祭の手紙を書いた所為だと落ち込まずにはいられなかった。イアソンは別段、怒ったり少年を遠ざけたりはしなかったが、ただいつもの元気はなく、萎んだ風船のような空気を醸し出していた。


「そうちょ……げんきなて、ほし……どしたら、いぃ……?」


「うーん……総長さんの好きなものでも贈るとか?」


「…………! そうちょ、お金すき……お金、あげる……!」


「いやいや、そういうのじゃなくてね?」


「お金以外は? 何か心当たりない?」


「ゥ……おしゃけ、とか……? あま、しらな……そうちょの、こと……」


「あー、泣かないで……。いま知らないなら、知ってる人に聞けばいいんだよ」


「アルゴ隊の人とか……あと、確かイアソンさんって、奥さんいなかった?」


「あー……確か政務官だっけ?」


「冒険者じゃなかった? 奥さん」


「ぉくさン?」


 少年は心当たりのない言葉に思わず首をひねっていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ