↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
26/103

番外編TIPS:魔物関連情報編:森狼


 親の顔より見た魔物序列1位の魔物。一時絶滅した事があるものの、度重なる神の設計変更(アップデート)で広範囲に生息域を増やしているバッカスでは定番魔物。


 神が集計している「人類殺した魔物種族別ランキング1位」「異世界人キラー1位」にも輝いているのだが、単体での戦闘能力は概ね野犬よりは強い程度である。


 が、群れで行動する森狼は熟練冒険者でも殺されかねない脅威となる。単騎戦闘能力の低さを魔物らしく退く事知らない闘争本能と数の暴力でカバーしている。


 その上、殺しても血肉が大した価値のない森狼は駆除する旨味が大して無く、その事が単に嫌われるだけではなく、腕の立つ熟練冒険者が積極的に駆除しない事に繋がり、駆け出し冒険者や異世界人が殺される事態へと繋がっている。


 数多いる魔物の中でも神の自信作であるらしく、複数の冒険者向け雑誌のインタビューでろくろを回すポーズを取りながら「程よくウザい雑魚魔物」と語っているが、多くの冒険者が「程よくない……」と静かにキレている。


 森狼は「一匹狼(ぼっち)型」「集団行動型」の二種が存在し、都市近郊に現れる森狼の群れは10匹ほどのものとなっている。


 ただ、奥地に行けば行くほど群れの規模は大きくなる傾向にある。


 これは神が「程々の強さ」を心がけて設計した事が関係しており、駆け出し冒険者がいるような都市近郊ではいるとしても比較的少数の群れしか形成されないようにして、複数の冒険者が遠征で訪れるような奥地には100匹以上の群れが出る事も珍しくない。


 絶対に厳守される魔物設計ではないので、都市近郊に1000匹規模の群れがやってくる事もある。


 バッカス冒険者ギルドの記録に残る中で最大の群れは10万匹以上のもので、見渡す限り海のようにひしめき合っている観測史上最大級の魔物の群れであった。


 群れを率いていたのは森狼ではなく黒猟獣(ジェヴォーダン)という単一竜種。シルエットは狼に近い四足歩行の獣だが、戦闘能力は森狼どころか他の竜種に全く劣らないものがあり、各地の森狼を群れに吸収しながら首都サングリアに向け進撃。


 森狼で構成された群れとはいえ、野戦での勝利は絶望的とされていたがカンピドリオ士族戦士団が首都で防衛戦構築中の防衛部隊を尻目に先んじ、野戦にて激突。


 戦士団のうち半数が広範囲から群れに戦闘、挑発をかけつつ後退。群れが散らばっていた隙に地下に伏兵として潜っていた強襲部隊が群れをコントロールしている黒猟獣へと襲いかかった。


 強襲部隊は全滅したものの、相討ちの形で黒猟獣の討伐は完遂。主を欠いた森狼の群れは広範囲にバラけていき、各個撃破されていく事となった。


 黒猟獣の死体はカンピドリオ士族が回収し、毛皮は鱗衣として士族戦士団預かりとなった。着用すると激しい精神汚染をもたらす鱗衣となったが、凶悪かつ強力な性能を持つ事から要所に投入されている。現在、主な着用者はアンニアちゃんの従姉妹である。



 弔魂祭に背を向け、遠征に向かったイアソンと巨人の少年、数人のアルゴ隊の行先にも森狼が度々現れたが、どの群れも容易く蹴散らされ死んでいく事となった。


 蹴散らしつつ進んだアルゴ隊は森の中で野営の準備をし、夕餉を食した後に見張りすら立てず好き勝手にくつろぎ始めた。


 出発前は不機嫌そうだったイアソンもこの時にはもう、大分機嫌が良くなっており、コップを使ったお風呂に浸かって頬を緩めていた。


 そんなイアソンから離れていた巨人の少年は、自分の背嚢の中から便箋の束をこっそり取り出し、眺めていた。眺めつつ、物思いにふけっていた。


「ふー、いいお湯だった~」


「…………! ぁ、ぁっ……そうちょ、おかえぃ……」


 ただ、イアソンが帰ってくると慌てて便箋を隠し、ニコニコと笑ってごまかしていた。イアソンは様子がおかしいのに気づきつつも首をかしげるだけに留め、少年が用意していた寝床にゴロンと転がり、卓上遊戯のシナリオを一つ、したため始めた。少年が「じっ……」と見つめてくるため、直ぐに筆を置いたが。


「なんだ。どうした? 一人でおしっこいけないのか?」


「ゥー……」


「違うのか?」


 少年はしばし黙り、言いよどんだ。イアソンはくつろぎつつ、急かしたりはせずにじっと少年の言葉が紡がれるのを待っていた。


「そうちょの……トモダチの、はなし、ききぁい……」


「……ヘラクレスのことか? 何で、そんなこと聞く」


 少年はおどおどとした様子で、イアソンの大親友が自分の名前の由来になっているからこそ聞きたい……知っておきたいという言葉をたどたどしく紡いだ。


 それは、少年が初めて口にした嘘であった。


 だがイアソンはその事に気づかず、頬をほころばせながら自分の親友である――いまは亡き冒険者の英雄譚を語り始めていった。少年は総長の言葉、一字一句とも逃さまいと居住まい正し、清聴し始めた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。